このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

〜 雪月花 新撰組異聞外伝 編 〜


〜 小寒 沖つ白波 沖の石 〜


〜 改訂版 〜


登場人物

沖田総司、藤田五郎、藤田時尾、敬一[沖田総司の息子]、美鈴[沖田総司の妻、敬一の母]



「わたの原 漕ぎ出でて見れば 久方の 雲居にまがふ 沖つ白波」

「小倉百人一首 七十六番」、及び、「詞花集」より

作者:法性寺入道前関白太政大臣(ほうしょうじにゅうどうさきのかんぱくだじょうだいじん)



「わが袖は 潮干に見えぬ 沖の石の 人こそ知らね かわく間もなし」

「小倉百人一首 九十二番」、及び、「千載集」より

作者:二条院讃岐(にじょういんのさぬき)



新年を迎えてから一週間が経つ頃。



ここは、東京。



沖田総司の息子の敬一と母親の美鈴の家。



食卓の有る部屋。



敬一は微笑んで居る。

美鈴も微笑んで居る。



敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「お母さん。斉藤さんの家に新年の挨拶に行けなかったね。」

美鈴は敬一に考え込んで話し出す。

「斉藤さんの過去とご家族の過去を気にする人物が訪問する可能性があるから、新年の挨拶の日付を決められなかったわ。斉藤さんとご家族に失礼になってしまったわ。」

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「斉藤さんに新年の挨拶に行けないかも知れないと話しんだ。斉藤さんは優しいから大丈夫だよ。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一。ありがとう。」

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「お母さん。新年の挨拶の時季は過ぎたけれど、斉藤さんの家に一緒に行って挨拶をしようよ。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「斉藤さんとご家族に失礼のないように、挨拶の日取りを決めて、しっかりと挨拶をしたいと思っているの。今回は斉藤さんの家に行くのは遠慮するわ。」

敬一は美鈴に微笑んで頷いた。

美鈴は敬一を微笑んで見た。

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「今から斉藤さんの家に出掛けるね。」

美鈴は敬一に心配な様子で話し出す。

「斉藤さんかご家族と逢う約束をした日なの?」

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「逢う約束はしていないよ。斉藤さんの家に挨拶を兼ねて出掛けたいんだ。斉藤さんと斉藤さんの家族が留守だったら、直ぐに帰ってくる。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「暗くなる前に帰ってきなさい。」

敬一は美鈴に微笑んで頷いた。

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「行ってらっしゃい。」

敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「行ってきます!」

美鈴は敬一を微笑んで見た。



敬一は元気良く居なくなった。



暫く後の事。



ここは、藤田五郎、妻の時尾、幼い息子の勉の家。



玄関。



敬一は元気良く訪れた。



時尾は微笑んで現れた。



敬一は時尾に笑顔で話し出す。

「こんにちは!」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「こんにちは。」

敬一は時尾を考え込んで見た。

時尾は敬一を不思議な様子で見た。

敬一は時尾に申し訳なく話し出す。

「新年の挨拶に来られなくて申し訳ありませんでした。お母さんも申し訳ないと話しています。」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「新年は忙しいわ。気にしないで。」

敬一は時尾を安心した表情で見た。

時尾は敬一を微笑んで見た。

敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「斉藤さんに挨拶をしたいです。」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「五郎さんは部屋に居るわ。遠慮せずに部屋へ行ってね。」

敬一は時尾に笑顔で軽く礼をした。

時尾は敬一を微笑んで見た。



敬一の家の中に笑顔で入って行った。

時尾は家の中に微笑んで入って行った。



僅かに後の事。



ここは、藤田五郎の家。



藤田五郎の部屋の前に在る縁。



敬一は笑顔で来た。



障子が普通に開いた。



藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。



敬一は部屋の中に向かって笑顔で話し出す。

「こんにちは! 斉藤さんに挨拶に来ました!」



藤田五郎は敬一に普通に話しだす。

「部屋の中に入れ。」



敬一は藤田五郎に笑顔で話し出す。

「はい!」



敬一は部屋の中へ笑顔で入って行った。



直後の事。



ここは、藤田五郎の家。



藤田五郎の部屋。



敬一は部屋の中に笑顔で入ってきた。



藤田五郎は障子を普通に閉めた。



敬一は藤田五郎を笑顔で見た。

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。

敬一は藤田五郎を考え込んで見た。

藤田五郎は敬一を普通の表情で見ている。

敬一は藤田五郎に申し訳なく話し出す。

「斉藤さん。新年の挨拶に来られなくて申し訳ありませんでした。お母さんも申し訳ないと話しています。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「気にするな。」

敬一は藤田五郎を安心した表情で見た。

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。



少し後の事。



ここは、藤田五郎の家。



藤田五郎の部屋。



藤田五郎は普通の表情で居る。

敬一は微笑んで居る。



敬一は、沖田総司の刀と藤田五郎が斉藤一と名乗る頃の刀を仕舞った場所を、普通の表情で見た。

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。

敬一は藤田五郎を見ると、藤田五郎に微笑んで話し出す。

「刀の近くに行っても良いですか?」

藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。



敬一は、沖田総司と藤田五郎が斉藤一と名乗る頃の刀を仕舞った場所の前に、普通の表情で来た。



敬一は、沖田総司と藤田五郎が斉藤一と名乗る頃の刀を仕舞った場所を、真剣な表情で見た。



藤田五郎は敬一の傍に普通に来た。



藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。

敬一は、沖田総司と藤田五郎が斉藤一と名乗る頃の刀が仕舞った場所を、真剣な表情で見ている。

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「刀を見たいか?」

敬一は藤田五郎を見ると、微笑んで首を横に振った。

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。

敬一は、沖田総司と藤田五郎が斉藤一と名乗る頃の刀を仕舞った場所を、真剣な表情で見た。

藤田五郎は敬一を普通の表情で見ている。

敬一は藤田五郎を見ると、藤田五郎に微笑んで話し出す。

「ありがとうございました。」

藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。

敬一は机を微笑んで見た。



机の上に小倉百人一首のかるたが置いてある。



敬一は机の前に微笑んで来た。

藤田五郎は机の前に普通に来た。



敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。お正月に小倉百人一首のかるたで遊んだのですか?」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「以前に贈り物で受け取った。勉は幼いから小倉百人一首のかるたで遊べない。俺と時尾の二人では、小倉百人一首のかるたで遊べない。正月の頃に時尾と歌について話す時間があるかも知れないと思って机に置いた。」

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「僕の家にも小倉百人一首のかるたが有ります。僕もお母さんと二人なので、小倉百人一首のかるたで遊べません。お母さんは僕に小倉百人一首についてたくさん教えてくれます。小倉百人一首の歌の勉強になります。」

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「他の人と小倉百人一首のかるたで何度か遊びました。誰にも取らせない自信のある歌があります。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「敬一が誰にも取らせない自信のある歌は何だ?」

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「“わたの原 漕ぎ出でて見れば 久方の 雲居にまがふ 沖つ白波”。“わが袖は 潮干に見えぬ 沖の石の 人こそ知らね かわく間もなし”。以上の二首は、お父さんの字が入っています。僕が絶対に取りたい歌だから、しっかりと覚えました。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「総司の氏名の字が入る歌は、他にも有る。」

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「今の二首には、お父さんの氏の“沖”の字が入っています。お父さんの氏の初めの字だから、今の二首に決めました。」

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「機会があれば、斉藤さんと小倉百人一首のかるたで遊びたいです。」

藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「斉藤さんと小倉百人一首のかるたで遊ぶ日までに、更にたくさんの歌を覚えます。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「小倉百人一首は、全部で百首だ。敬一は小倉百人一首の他に更に歌を覚える必要はない。」

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「お母さんから、お父さんは斉藤さんにたくさんの歌を教えてもらって、お母さんと斉藤さんはたくさんの歌について話して、お父さんと斉藤さんとお母さんで小倉百人一首のかるたを使って楽しんだ、と教えてもらいました。僕も、斉藤さんと小倉百人一首を使って楽しんで、斉藤さんとたくさんの歌について話したいです。」

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。

敬一は藤田五郎を微笑んで見た。

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「話題を変える。時尾は美鈴さんに逢いたいと話している。敬一と美鈴さんの都合の良い日で構わないから、美鈴さんと家に来ないか?」

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「お母さんが斉藤さんの話しを知ったら喜びます。お母さんに話します。」

藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。

敬一は藤田五郎を微笑んで見た。



暫く後の事。



ここは、藤田五郎の家。



玄関。



藤田五郎は普通に居る。

時尾は微笑んで居る。

敬一も微笑んで居る。



敬一は藤田五郎と時尾に微笑んで話し出す。

「今日もありがとうございました。お母さんに斉藤さんの家に一緒に行きたいと話します。」

藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。

時尾は敬一に微笑んで頷いた。



敬一は微笑んで居なくなった。



時尾が藤田五郎に微笑んで話し出す。

「美鈴さんは家に来てくれるでしょうか?」

藤田五郎は時尾に普通に話し出す。

「美鈴さんは、敬一に関する礼を伝えたいと考えているが、俺と時尾に迷惑が掛かると考えて遠慮している。今の状況では、家に来ない可能性が高い。」

時尾は藤田五郎に残念な様子で話し出す。

「美鈴さんに逢えるのは暫く先になる可能性が高いのですね。残念です。」

藤田五郎は時尾に普通に話し出す。

「以前に比べれば、世間の状況は落ち着いている。敬一が成長する間に、世間の状況は更に変わる。美鈴さんと逢える日が訪れると信じて過ごせ。」

時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「はい。」

藤田五郎は時尾を普通の表情で見た。



少し後の事。



ここは、藤田五郎の家。



藤田五郎の部屋。



藤田五郎は普通に居る。



部屋の中が穏やかな空気に包まれた。



藤田五郎は障子を開けると、庭を普通の表情で見た。



季節はずれの桜の花が満開になって咲いている。



藤田五郎は横を普通の表情で見た。



沖田総司は藤田五郎を微笑んで見ている。



藤田五郎は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。こんにちは。」

藤田五郎は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は藤田五郎を微笑んで見た。

藤田五郎は沖田総司に普通に話し出す。

「敬一は小倉百人一首をしっかりと覚えている。総司の息子に思えない。さすが美鈴さんの子供だ。」

沖田総司は藤田五郎に苦笑して話し出す。

「私は鈴の笑顔を見るために、歌について僅かずつですが勉強しました。敬一が歌をたくさん覚えるのは、鈴の影響ですが、私も僅かに影響していると思います。」

藤田五郎は沖田総司に普通に話し出す。

「敬一が歌をたくさん覚えられるのは、美鈴さんの影響だ。総司の影響は、物凄く僅かだ。正しく話せ。」

沖田総司は藤田五郎を苦笑して見た。

藤田五郎は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。気持ちを切り替えて話します。私を呼んで頂いてありがとうございます。鈴の様子と敬一の様子を見に行きます。」

藤田五郎は沖田総司に普通の表情で頷いた。



沖田総司は微笑んで、静かに居なくなった。



藤田五郎は庭を普通の表情で見た。



桜は元の姿に戻っている。



藤田五郎は障子を普通に閉めた。



少し後の事。



ここは、敬一と美鈴の家。



家の中が温かい空気に包まれている。



玄関。



敬一が元気良く帰ってきた。



美鈴は微笑んで現れた。



敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「お母さん。ただいま。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一。お帰り。」

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「家の中が暖かいね。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一が帰る少し前から急に暖かくなったの。」

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「不思議だね。」

美鈴は敬一に微笑んで頷いた。

敬一は美鈴を微笑んで見た。

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一。お腹が空いたわよね。少し経つと食事の用意が終わるの。少し待っていてね。」

敬一は美鈴に微笑んで頷いた。

美鈴は敬一を微笑んで見た。



少し後の事。



ここは、敬一と美鈴の家。



食卓の有る部屋。



敬一は笑顔で居る。

美鈴は微笑んで居る。

食卓の上には、豪華ではないが丁寧に作った美味しい食事が載っている。



敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「いただきます!」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「いただきます。」

敬一は美味しく食事を始めた。

美鈴は微笑んで食事を始めた。



「わたの原 漕ぎ出でて見れば 久方の 雲居にまがふ 沖つ白波」

「わが袖は 潮干に見えぬ 沖の石の 人こそ知らね かわく間もなし」

敬一が沖田総司と美鈴を想い覚えた歌。

敬一と美鈴を穏やかな空気が包む時がある。

敬一には穏やかな空気が優しい波のように感じる。

寒い日が続くが、今の敬一は幾つもの温かさに包まれて過ごしている。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語に登場する歌は二首です。

一首目は、「小倉百人一首 七十六番」、及び、「詞花集」

「わたの原 漕ぎ出でて見れば 久方の 雲居にまがふ 沖つ白波」

ひらがなの読み方は「わたのはら こぎいでてみれば ひさかたの くもゐにまがふ おきつしらなみ」

作者は「法性寺入道前関白太政大臣(ほうしょうじにゅうどうさきのかんぱくだじょうだいじん)」

歌の意味は「大海原に船を漕ぎ出して見渡してみると、雲と見間違えるばかりに沖に白波が立っています。」となるそうです。

二首目は、「小倉百人一首 九十二番」、及び、「千載集」

「わが袖は 潮干に見えぬ 沖の石の 人こそ知らね かわく間もなし」

ひらがなの読み方は「わがそでは しほひにみえぬ おきのいしの ひとこそしらね かわくまもなし」

作者は「二条院讃岐(にじょういんのさぬき)」

歌の意味は「引き潮の時でさえも、海中に隠れて見ることのできない石のように、あなたはご存知ないのでしょうが、私の袖はいつも涙に濡れて乾く間もないのですよ。」となるそうです。

この物語で新年の挨拶について話す場面があります。

現在は「年賀はがき」の形になっていますが、以前は、一月二日に挨拶回りをする事が普通だったそうです。

現在でも松の内までに新年の挨拶をするようになっています。

そのような状況から、敬一君と美鈴さんは、斉藤さん家に新年の挨拶に行けなかったので、物語のような話しをしていると思ってください。

「小寒(しょうかん)」は「二十四節気の一つ」です。

一月五日頃、及び、この日から「大寒」までの期間をいいます。

寒さが最も厳しくなる前の時期です。

この日を「寒の入り」といいます。

そして、この日から節分(立春の前日)までを「寒中(寒の内)」と言います。

「寒中(寒の内)」の時期は、冬の寒さが一番厳しくなる季節です。

この日から「寒中見舞い」を出し始めます。

楽しんで頂けると嬉しいです。





           目次            次→


このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください