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〜 雪月花 新撰組異聞外伝 編 〜


〜 梅見月 若木の梅は花咲きにけり 〜


〜 第三版 〜


登場人物

近藤勇、土方歳三、沖田惣次郎、山口一、山口勝、山口廣明




「去年の春 いこじて植ゑし 我が屋戸の 若木の梅は 花咲きにけり」

「万葉集 第八巻 一四二三番」より

作者:阿部広庭(あべのひろには)




今は春。



ここは、江戸の町。



梅の見頃には少し早い。



町中。



山口一の姉の山口勝は、少女と喩える歳になる。

山口勝の弟で山口一の兄の山口廣明は、山口勝より僅かに幼い少年になる。

山口一は、幼さの残る少年になる。



山口勝は微笑んで歩いている。

山口廣明も微笑んで歩いている。

山口一は普通に歩いている。



山口勝は山口一と山口廣明に微笑んで話し出す。

「梅の木を庭に植えたいと思うの。廣明。一。考えを教えて。」

山口一は山口勝と山口廣明を普通の表情で見た。

山口廣明は山口勝に普通に話し出す。

「良いと思う。」

山口勝は山口廣明に微笑んで話し出す。

「廣明も一も、賛成なのね。嬉しいわ。」

山口廣明は山口勝と山口一に不思議な様子で話し出す。

「一も賛成の返事をしたの?」

山口勝は山口廣明に微笑んで話し出す。

「一は、私が話した時に、直ぐに賛成したわよ。」

山口廣明は山口一を不思議な様子で見た。

山口一は山口廣明に普通の表情で頷いた。

山口廣明は山口勝と山口一を微笑んで見た。

山口勝は山口廣明と山口一に微笑んで話し出す。

「廣明。一。私と一緒にお父さんを説得しましょう。」

山口廣明は山口勝に微笑んで話し出す。

「姉さんの頼みだから、父さんの説得に加わるよ。」

山口一は山口勝に普通の表情で頷いた。

山口勝は山口廣明と山口一に微笑んで話し出す。

「廣明。一。ありがとう。」

山口廣明は山口勝を微笑んで見た。

山口一は山口勝を普通の表情で見た。

山口勝は山口廣明と山口一に微笑んで話し出す。

「廣明。一。お父さんを説得する前に、庭に植える梅を決めましょう。」

山口廣明は山口勝に微笑んで話し出す。

「姉さんが好きな梅を選んで。」

山口一は山口勝に普通の表情で頷いた。

山口勝は山口廣明と山口一に微笑んで話し出す。

「紅梅が良いのか、白梅が良いのか、悩んでいるの。」

山口廣明は山口勝に微笑んで話し出す。

「白梅は清楚で落ち着いた雰囲気がある。紅梅は鮮やかで明るい雰囲気がある。姉さんの好みに任せる。」

山口一は山口勝と山口廣明に普通の表情で頷いた。

山口勝は山口廣明と山口一に微笑んで話し出す。

「枝垂れ梅も良いわね。枝垂れ梅の白梅が良いと思う? 枝垂れ梅の紅梅が良いと思う?」

山口廣明は山口勝に微笑んで話し出す。

「枝垂れ梅は豪華な雰囲気があって良いと思う。枝垂れ梅の紅梅は、豪華で見栄えがして存在感がある。枝垂れ梅の白梅は、豪華で見栄えがする中にも落ち着いた雰囲気がある。姉さんの好みで良いよ。」

山口一は山口廣明と山口勝に普通の表情で頷いた。

山口勝は山口廣明と山口一に微笑んで話し出す。

「お父さんを説得する時の参考にするわ。廣明。一。ありがとう。」

山口廣明は山口勝を微笑んで見た。

山口一は山口勝を普通の表情で見た。

山口勝は山口廣明と山口一に微笑んで話し出す。

「廣明。一。早く家に帰りましょう。お父さんが帰ったら、私と廣明と一で、梅の木を庭に植えて欲しいと頼みましょう。」

山口一は山口勝に普通の表情で頷いた。

山口廣明は山口勝に微笑んで頷いた。

山口勝は山口廣明と山口一を微笑んで見た。



幾日か後の事。



ここは、江戸の町。



山口勝、山口廣明、山口一の住む屋敷。



庭。



小さめの梅の若木が植わっている。



山口勝は梅の若木を微笑んで見ている。

山口一は山口勝と梅の若木を普通の表情で見ている。



山口勝は山口一を見ると、山口一に微笑んで話し出す。

「今年は無理だけど、来年は綺麗な梅の花が見られるわね。」

山口一は山口勝に普通の表情で頷いた。

山口勝は山口一に微笑んで話し出す。

「一にたくさんの歌とたくさんの花について教えるわ。」

山口一は山口勝に普通に話し出す。

「興味ない。」

山口勝は山口一に微笑んで話し出す。

「一も、たくさんの内容とたくさんの物事を知っていた方が良いわ。今は役に立たないと思う知識でも、後で必ず役に立つわ。」

山口一は山口勝に普通に話し出す。

「分かった。教えてくれ。」

山口勝は山口一に微笑んで話し出す。

「梅を詠んだ歌と梅について説明したいけれど、庭の梅の木に花が綺麗に咲くのは、早くても来年になるわ。梅の花が綺麗に咲く傍で、梅を詠んだ歌と梅について説明したいわ。今日は梅の花が綺麗に咲く場所に出掛けて説明して良いかしら?」

山口一は山口勝に普通の表情で頷いた。

山口勝は山口一に微笑んで話し出す。

「出掛けましょう。」

山口一は山口勝に普通の表情で頷いた。



山口勝は微笑んで居なくなった。

山口一は普通に居なくなった。



一年が過ぎた。



ここは、江戸の町。



梅の花が咲いている。



山口勝、山口廣明、山口一の住む家。



庭。



綺麗な梅の花が咲いている。



山口勝は梅の花を微笑んで見ている。

山口一は山口勝と梅の花を普通の表情で見ている。



山口勝は山口一を見ると、山口一に微笑んで話し出す。

「庭の梅の木と似た状況の歌があるの。今から歌を詠むわね。」

山口一は山口勝に普通の表情で頷いた。

山口勝は山口一に微笑んで詠い出す。

「“去年の春 いこじて植ゑし 我がやどの 若木の梅は 花咲きにけり”。」

山口一は山口勝を普通の表情で見た。

山口勝は山口一に微笑んで話し出す。

「歌の意味は、“去年の春に、私の家の庭に掘って植えた若い梅が、花を咲かせました。”、となるそうよ。掲載は、“万葉集 第八巻 一四二三番”。作者は、“阿部広庭”。」

山口一は山口勝に普通の表情で頷いた。

山口勝は山口一に笑顔で話し出す。

「再び歌を詠むわ。一。復唱してね。」

山口一は山口勝に普通の表情で頷いた。

山口勝は山口一に微笑んで詠い出す。

「“去年の春 いこじて植ゑし 我がやどの 若木の梅は 花咲きにけり”。歌の意味は、“去年の春に、私の家の庭に掘って植えた若い梅が、花を咲かせました。”、となるそうよ。掲載は、“万葉集 第八巻 一四二三番”。作者は、“阿部広庭”。」

山口一は山口勝に普通に話し出す。

「“去年の春 いこじて植ゑし 我がやどの 若木の梅は 花咲きにけり”。歌の意味は、“去年の春に、私の家の庭に掘って植えた若い梅が、花を咲かせました。”、となる。掲載は、“万葉集 第八巻 一四二三番”。作者は、“阿部広庭”。」

山口勝は山口一に微笑んで話し出す。

「合っているわ。」

山口一は山口勝を普通の表情で見た。

山口勝は梅の若木を微笑んで見た。

山口一は山口勝と梅の若木を普通の表情で見た。



直後の事。



ここは、多摩。



試衛館。



縁。



庭に植わる梅の若木に花の咲く様子が見える。



近藤勇は梅の花を微笑んで見ている。

土方歳三は微笑んで居る。



近藤勇は土方歳三を見ると、土方歳三に微笑んで話し出す。

「歳。去年に植えた梅の若木に花が咲いたな。」

土方歳三は近藤勇に普通の表情で頷いた。

近藤勇は土方歳三に不思議な様子で話し出す。

「歳。梅の花に興味が無いのか?」

土方歳三は近藤勇に微笑んで話し出す。

「梅の花は落ち着いた場所で見たい。試衛館の庭で咲く梅の花は落ち着いて見られないから、近藤さんに曖昧な返事をした。」

近藤勇は土方歳三に苦笑して話し出す。

「歳の話に同意できる部分はあるが、返事が難しい。」

土方歳三は近藤勇を微笑んで見た。

近藤勇も土方歳三を微笑んで見た。



沖田惣次郎が笑顔で走ってきた。



近藤勇は沖田惣次郎を微笑んで見た。

土方歳三も沖田惣次郎を微笑んで見た。

沖田惣次郎は近藤勇と土方歳三に笑顔で話し出す。

「近藤さん! 土方さん! 楽しい様子ですね! 私も話に混ぜてください!」

近藤勇は沖田惣次郎に微笑んで話し出す。

「試衛館の庭に昨年中に植えた梅の若木に花が咲いたと話していた。」

沖田惣次郎は梅の若木を笑顔で見た。

近藤勇は沖田惣次郎を微笑んで見た。

土方歳三も沖田惣次郎を微笑んで見た。

沖田惣次郎は近藤勇を見ると、近藤勇に不思議な様子で話し出す。

「近藤さんと土方さんが笑顔で話すから、凄い梅の花が咲いたのかと思いました。普通の梅の花でした。名所に咲く梅の花の方が、たくさん咲いて豪華で良いです。」

近藤勇は沖田惣次郎を苦笑して見た。

沖田惣次郎は近藤勇に微笑んで話し出す。

「近藤さん。話を変えます。私の稽古に付き合ってください。」

近藤勇は沖田惣次郎に苦笑して頷いた。

沖田惣次郎は近藤勇に微笑んで話し出す。

「近藤さん。今回は私の稽古の相手を近藤さんに頼みますが、私が更に強くなるためには、近藤さんより強い人物と稽古をする必要があります。私は早く強くなりたいので、物凄く強い人物と稽古をしたいです。近藤さんより物凄く強い人物を教えてください。」

近藤勇は沖田惣次郎を不思議な様子で見た。

沖田惣次郎は近藤勇を微笑んで見た。

土方歳三は近藤勇と沖田惣次郎を微笑んで見た。

近藤勇は沖田惣次郎に微笑んで話し出す。

「直ぐに思い浮かばない。」

沖田惣次郎は近藤勇を微笑んで見ている。

近藤勇は沖田惣次郎を微笑んで考えながら見た。

沖田惣次郎は近藤勇を微笑んで見ている。

近藤勇は沖田惣次郎に微笑んで話し出す。

「もしかしたら。」

沖田惣次郎は近藤勇を期待して見た。

近藤勇は沖田惣次郎に微笑んで話し出す。

「今は、私より物凄く強い人物を正確に答えられない。惣次郎が私より物凄く強い人物に逢いたいと強く願い続ければ、惣次郎が私より物凄く強い人物に逢える日が訪れる。」

沖田惣次郎は近藤勇に笑顔で話し出す。

「近藤さん! 私は近藤さんより物凄く強い人物に逢えた時に、今より更に強くなっていたいです! 早く稽古をしましょう!」

近藤勇は沖田惣次郎に微笑んで頷いた。

土方歳三は近藤勇に微笑んで囁いた。

「稽古嫌いの惣次郎が、物凄く珍しく張り切っている。何が起きたのかな?」

近藤勇は土方歳三に微笑んで囁いた。

「私も惣次郎に何が起きたのか知りたい。」

土方歳三は近藤勇を微笑んで見た。

近藤勇も土方歳三を微笑んで見た。

沖田惣次郎は近藤勇に笑顔で話し出す。

「近藤さん! 早く行きましょう!」

近藤勇は沖田惣次郎に微笑んで頷いた。



沖田惣次郎は笑顔で歩き出した。

近藤勇は微笑んで歩き出した。



土方歳三は近藤勇と沖田惣次郎を微笑んで見た。



沖田惣次郎の姿が見えなくなった。

近藤勇の姿も見えなくなった。



土方歳三は梅の若木を見ると、微笑んで呟いた。

「“去年の春 いこじて植ゑし 我が屋戸の 若木の梅は 花咲きにけり”。」

土方歳三は空を微笑んで見た。



青空が広がっている。



土方歳三は稽古場を微笑んで見た。



稽古場から、沖田惣次郎の元気の良い声が聞こえる。

「近藤さん! お願いします!」



土方歳三は稽古場を見ながら、微笑んで呟いた。

「梅の木を愛でて風流な気持ちで過ごす時間も良いが、今回は近藤さんと珍しく稽古に張り切る惣次郎の稽古を見て過ごそう。」



土方歳三は微笑んで歩き出した。



「去年の春 いこじて植ゑし 我が屋戸の 若木の梅は 花咲きにけり」

沖田惣次郎は、後に、沖田総司と名乗る。

山口一は、後に、斉藤一と名乗る。

沖田惣次郎と山口一は、幼い頃に逢っているが、互いの後の状況を知らない。

沖田惣次郎と山口一が再び逢う時は、少し先の出来事になる。

沖田惣次郎の住まいの庭の梅の若木も、山口一の住まいの庭の梅の若木も、後の起きる出来事を知らない。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語は既に掲載している物語の第三版です。

改訂前の物語の展開や雰囲気を出来るだけ残して改訂しました。

改訂前の物語を掲載するのは止めました。

以上、ご了承願います。

ここからは改訂前の後書きを加筆訂正して書きます。

この物語に登場する歌は「万葉集 第八巻 一四二三番」

「去年の春、いこじて植ゑし、我が屋戸の、若木の梅は、花咲きにけり」

ひらがなの読み方は「こぞのはる、いこじてうゑし、わがやどの、わかきのうめは、はなさきにけり」

作者は「阿部広庭(あべのひろには)」

歌の意味は「去年の春に、私の家の庭に掘って植えた若い梅が、花を咲かせました。」となるそうです。

原文は「去年春 伊許自而殖之 吾屋外之 若樹梅者 花咲尓家里」

「いこじて」は「掘って」という意味になるそうです。

「い」は接頭語だそうです。

「こず」は「掘る」という意味だそうです。

この物語の補足です。

沖田総司さんが沖田惣次郎さん、斉藤一さんが山口一さん、と名乗る頃で、更に少年時代、の物語です。

この頃の沖田惣次郎さんと山口一さんについての記録は、ほとんど無いようです。

そのため、この物語のような出来事があったかも知れないと考えて書きました。

沖田惣次郎さんと山口一さんが、初めて逢う物語やその後の物語は「新撰組異聞外伝」関連で既に掲載しています。

「新撰組異聞外伝 一瞬の出会い 桜の舞うなか」より前の出来事の物語です。

この物語には、試衛館に途中から参加する土方歳三さんが登場して、幾つかの名前を名乗った近藤勇さんが「近藤勇」さんと名乗っています。

細かい時間設定を省いて分かりやすさを優先して物語を書いた部分があります。

詳細な時間設定にすると、土方歳三さんは試衛館に参加せず、近藤勇さんは「近藤勇」さんと名乗る前の可能性があります。

ご了承ください。

「梅見月(うめみづき)」についてです。

「陰暦二月の異称」です。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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