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新撰組異聞 〜 年満月の星の中 聖夜の日の贈り物 〜


〜 改訂版 〜


〜 前編 〜


今は一年の終わりの月。



ここは、京の町。



冬の寒さを感じる日が続いている。



ここは、沖田総司と少女が良く訪れる寺。



寺の中。



沖田総司と少女が居る。



少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さん。冬桜を見に行きたいです。」

沖田総司は少女に不思議そうに話し出す。

「冬桜?」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「冬桜は、冬に咲く桜です。今は見頃です。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「冬桜は珍しい桜だね。私も冬桜が見たいな。一緒に見に行こう。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「嬉しいです。楽しみにしています。」

沖田総司は少女に微笑んで頷いた。

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さん。お雪さんも冬桜を見たら喜ぶと思います。お雪さんも一緒に冬桜が見られますか?」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「お雪さんと一緒に冬桜が見たいね。お雪さんも冬桜を見たら喜ぶと思うよ。」

少女は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司も少女を微笑んで見た。

少女は沖田総司に不思議そうに話し出す。

「総司さん。この前までお雪さんと何度も逢っていましたが、最近はお雪さんと逢えなくなりました。お雪さんからの連絡がなくなりました。お雪さん宛てに文を書いても返事が届かなくなりました。お雪さんに迷惑をお掛けしているように感じたので、お雪さん宛ての文を書くのを止めました。お雪さんは秋に時間に余裕が出来たとお話しされていましたが、再び忙しくなったのですか?」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「お雪さんは再び忙しくなったらしいよ。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「お雪さんが早く落ち着いてゆっくりと出来ると良いですね。お雪さんに体調に気を付けてくださいと伝えてください。」

沖田総司は少女に微笑んで頷いた。

少女は沖田総司を微笑んで見た。



それから暫く後の事。



ここは、京の町。



屯所。



斉藤一の部屋。



斉藤一は机に普通の表情で向かっている。



沖田総司は困惑した様子で訪れた。



斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に困惑した様子で話し出す。

「斉藤さん。鈴ちゃんにお雪さんが亡くなった事実をどうしても伝えられません。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見ている。

沖田総司は斉藤一に辛そうに話し出す。

「斉藤さんと一緒に居る時の鈴ちゃんは、お雪さんについて話をしていますか?」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一に不思議そうに話し出す。

「斉藤さんは、困惑した思いや辛さを感じないのですか?」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一に不思議そうに話し出す。

「なぜ困惑した思いや辛さを感じないのですか?

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「俺にとっても美鈴さんにとっても、どうでも良い出来事だから。」

沖田総司は斉藤一に僅かに不機嫌そうに話し出す。

「斉藤さん。どうでも良い出来事というのは、どのような意味ですか?」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「お雪さんは、美鈴さんに、病気について秘密にして欲しい、亡くなっても少しの間は黙っていて欲しい、と話していただろ。美鈴さんはお雪さんと友達になった訳ではない。美鈴さんの永い人生の中で、お雪さんは僅かな日々を親しく過ごしただけの関係だ。美鈴さんにお雪さんが亡くなって落ち着かない時に事実を伝えれば、美鈴さんの性格ならば何かしらの行動を取るはずだ。お雪さんが美鈴さんを心配して気遣った意味がなくなる。俺はお雪さんの願いを受けて、美鈴さんに話さないだけだ。」

沖田総司は斉藤一を辛そうに見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。お雪さんは亡くなった事実をずっと秘密にして欲しいと話していない。総司から美鈴さんにお雪さんが亡くなった事実を伝えるんだろ。俺に愚痴を話していても事態は解決しないぞ。」

沖田総司は斉藤一に僅かに不機嫌そうに話し出す。

「私は愚痴を話していません。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「ならば、なぜ総司は美鈴さんにお雪さんが亡くなった事実を早く伝えないんだ?」

沖田総司は斉藤一に辛そうに話し出す。

「それは、鈴ちゃんがお雪さんについて楽しそうに話すので、言い出し難いからです。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。無意味に長く事実を隠していると、良い結果にならないぞ。」

沖田総司は辛そうに息をはいた。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。



それから数日後の事。



ここは、京の町。



落ち着いた雰囲気の寺。



境内。



境内では、山茶花の咲く姿や南天の実が赤く色付いている。



沖田総司と少女が居る。



少女は山茶花や南天を微笑んで見ている。

沖田総司は少女を微笑んで見ている。

少女は境内の一部を不思議そうに見た。

沖田総司は少女の見た方向を不思議そうに見た。

少女は境内の一部を指すと、沖田総司を見て、微笑んで話し出す。

「総司さん。まだ紅葉が綺麗です。」

沖田総司は少女を見ると、微笑んで頷いた。

少女は境内の一部を指すのを止めると、沖田総司に微笑んで話し出す。

「紅葉を近くで見ても良いですか?」

沖田総司は少女に微笑んで頷いた。



少女は紅葉に向かって微笑んで歩き出した。

沖田総司も紅葉に向かって微笑んで歩き出した。



それから僅かに後の事。



ここは、境内。



紅葉の植わっている場所。



少女は紅葉の傍に微笑んで来た。

沖田総司も紅葉の傍に微笑んで来た。



少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「お雪さんもこちらのお寺に在る紅葉を見たら喜ぶと思います。総司さんからお雪さんにこちらのお寺に在る紅葉について伝えて頂いても良いですか?」

沖田総司は少女を真剣な表情で見た。

少女は沖田総司を不思議そうに見た。

沖田総司は少女に真剣な表情で話し出す。

「鈴ちゃん。お雪さんに紅葉について伝えられないんだ。」

少女は沖田総司を不思議そうに見ている。

沖田総司は少女に真剣な表情で話し出す。

「鈴ちゃん。お雪さんは少し前に亡くなっているんだ。紅葉も冬桜も見られないんだ。」

少女は沖田総司を驚いた表情で見た。

沖田総司は少女に辛そうに話し出す。

「お雪さんは鈴ちゃんに病気について秘密にして欲しいと話していた。お雪さんが亡くなった時は、鈴ちゃんに少しの間だけ秘密にして欲しいと話していた。鈴ちゃんがお雪さんと逢えなくなった頃から、お雪さんの病気はどのような治療を受けても良くならなくなっていた。お雪さんから文の返事が届かなくなった頃には、更に病気が悪化していたんだ。」

少女は沖田総司を驚いた表情で見ている。

沖田総司は少女に辛そうに話し出す。

「お雪さんが亡くなった事実は、私から鈴ちゃんに伝えると話したんだ。今まで隠していてごめん。」

少女は沖田総司を悲しそうな表情で見た。

沖田総司は少女に深く頭を下げた。

少女は沖田総司を悲しそうな表情で見ている。

沖田総司は頭を上げると、少女に悲しそうに話し出す。

「今回の出来事は、理由に関係なく、私が悪い。鈴ちゃん。何でも良いから話をしてくれ。」

少女は沖田総司に小さい声で話し出す。

「総司さんは私に今まで隠していたのですね。酷いです。私はお雪さんの話題を何度も話しました。総司さんは私を笑顔で見ていました。総司さん。何も知らない私を見ているのは、楽しかったですか? 何も知らない私を見ているのは、面白かったですか?」

沖田総司は少女に悲しそうに話し出す。

「私は鈴ちゃんへの伝え方が分からなくて、何度も悩んだし何度も辛い思いになった。」

少女は静かに泣き出した。

沖田総司は少女を悲しそうに抱いた。

少女は静かに泣きながら、沖田総司に話し出す。

「総司さんはみなさんと一緒に私を笑って見ていたのですね。酷いです。」

沖田総司は少女を抱きながら、悲しそうに話し出す。

「お雪さんは周りにも心配を掛けたくないと話していたから、お雪さんの病気は一部の人しか知らなかった。鈴ちゃんを笑って見ていた人も、鈴ちゃんについて笑って話していた人もいないよ。」

少女は静かに泣いている。

沖田総司は少女を抱きながら、悲しそうに話し出す。

「お雪さんは亡くなる最期の時まで鈴ちゃんを気に掛けていたよ。」

少女は静かに泣いている。

沖田総司は少女を抱きながら、悲しそうに話し出す。

「鈴ちゃん。私に酷い内容の話をしても良いから、泣かないで。本当にごめんね。」

少女は静かに泣いている。

沖田総司は少女を抱きながら、悲しそうに話し出す。

「鈴ちゃんがお雪さんについて楽しそうに話す姿を見ると、お雪さんが今でも生きている気持ちになってしまうんだ。だから、鈴ちゃんの話を聞きながら、笑顔になってしまったんだ。」

少女は静かに泣きながら、沖田総司に話し出す。

「私は総司さんのお話しを信じていました。総司さんは私に嘘を付いていたのですね。酷いです。」

沖田総司は少女を抱きながら、悲しそうに話し出す。

「鈴ちゃん。全て私が悪いんだ。鈴ちゃんに悲しい思いをさせてごめんね。」

少女は静かに泣いている。

沖田総司は少女を悲しそうに抱いている。



それから少し後の事。



ここは、境内。



少女は静かに泣いている。

沖田総司は少女を悲しそうに抱いている。



少女は静かに泣き止んだ。

沖田総司は少女を抱きながら、心配そうに様子を見た。

少女は沖田総司に小さい声で話し出す。

「疲れてしまいました。頭が痛いです。辛いです。」

沖田総司は少女を抱きながら、心配そうに話し出す。

「鈴ちゃん。大丈夫?」

少女は辛そうに下を向いた。

沖田総司は少女を抱きながら、心配そうに話し出す。

「鈴ちゃん。ごめんね。家まで送っていくよ。家に着いたら、ゆっくりと休んでね。」

少女は下を向きながら、小さく頷いた。

沖田総司は少女を心配そうに放した。



少女はゆっくりと歩き出した。

沖田総司は少女を気遣いながら、ゆっくりと歩き出した。





はじめに       後編       後書き

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