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新撰組異聞 〜 桜月 福禄寿の咲く頃 〜
〜 前編 〜
今は春。
京の町は桜の季節になっている。
辺り一面が満開の一重桜で覆われている。
たくさんの人達が一重桜を見に来ている。
たくさんの人達の中に、沖田総司と少女の姿も見える。
沖田総司と少女は、一重桜を見ながらゆっくりと歩いている。
少女は沖田総司に微笑んで話し掛ける。
「総司さん。桜の花が綺麗に咲いていますね。」
沖田総司は少女を見ながら微笑んで頷いた。
少女は恥ずかしそうに沖田総司の腕に手を伸ばした。
沖田総司は少女の様子を微笑んで見ている。
少女は沖田総司と視線が合うと、直ぐに手を引っ込めた。
沖田総司は少女に不思議そうに話し掛ける。
「鈴ちゃん。どうかしたの?」
少女は沖田総司を微笑んで見ながら、ゆっくりと首を横に振った。
沖田総司は少女に微笑んで話し掛ける。
「鈴ちゃん。私の腕に掴まってもいいよ。」
少女は沖田総司を不思議そうに見た。
沖田総司は少女に微笑んで話し掛ける。
「ここは人がたくさんいるだろ。掴まっていないと、離れてしまうかもしれない。」
少女は沖田総司に申し訳なさそうに話し掛ける。
「すいません。」
沖田総司は少女に心配そうに話し掛ける。
「さっき私の腕を掴もうとしたよね。離れてしまいそうだったから、不安になったんだよね?」
少女は困った表情で下を向くと、小さい首を横に振った。
沖田総司は少女を心配そうに見ている。
少女は下を向いたまま、沖田総司に小さい声で話し出す。
「私は、ただ、総司さんの傍で桜が見たかっただけなんです。だから、総司さんの腕を掴もうとしたんです。ごめんなさい。」
沖田総司は微笑んで少女の手を取った。
少女は顔を上げると、驚いた様子で沖田総司を見た。
沖田総司は少女に微笑んで話し掛ける。
「鈴ちゃん。手を繋いで桜を見よう。その方が楽しいよね。」
少女は沖田総司を見ながら微笑んで頷いた。
沖田総司と少女は楽しそうに手を繋ぎながら、一重桜を見始めた。
それから少しだけ日付が過ぎた。
一重桜は散り始めた。
それとは反対に八重桜が咲き始めている。
そんなある日の事。
ここは屯所。
沖田総司は楽しそうな様子で、屯所の外へ出掛けていこうとした。
土方歳三は沖田総司の姿を見つけると、慌てて呼び止めた。
「総司。ちょっと待て。」
沖田総司は土方歳三を不機嫌そうな顔で見た。
土方歳三は沖田総司に怪訝そうに話し掛ける。
「今日は総司が稽古の師範の日だぞ。どこに行くんだ?」
沖田総司は土方歳三に不機嫌そうな顔で話し掛ける。
「どこでも良いではないですか。」
土方歳三は沖田総司に怪訝そうに話し掛ける
「稽古がもう少ししたら始まるだろ。出掛けるのはかまわないが、戻って来られる場所なのか?」
沖田総司は土方歳三を不機嫌そうな顔で見ながら、後ずさりしていく。
土方歳三は沖田総司に怪訝そうに話し掛ける。
「総司。まさか、今日も逃げる気じゃないだろうな。」
沖田総司は土方歳三に不機嫌そうに話しながら、後ずさりをしていく。
「だって、稽古をつけてもみんなのやる気が感じられません。稽古の師範をしてもやりがいを感じません。面白くも楽しくありません。時間の無駄です。だから、みんなには、稽古をしないのが稽古です、と伝えておいてください。」
土方歳三は沖田総司の話しを聞いて、慌てて捕まえようとした。
沖田総司は土方歳三に微笑んで話しながら、素早く後ずさりをしていく。
「土方さん〜! お願いします〜!」
土方歳三は沖田総司を捕まえようとした。
沖田総司は急いで去っていった。
土方歳三は沖田総司の去っていく後姿を見ながら、悔しそうに呟いた。
「今回も駄目だったか。」
沖田総司の姿はあっという間に見えなくなった。
土方歳三は悔しそうに辺りを見回した。
斉藤一が土方歳三を黙って見ていする姿があった。
土方歳三は斉藤一に普通に声を掛けた。
「斉藤。少し良いか?」
斉藤一は土方歳三の傍にやってきた。
土方歳三は斉藤一に呆れた表情で話し掛ける。
「総司が稽古の師範を嫌がって逃げた。斉藤。悪いが連れ戻してきてくれ。」
斉藤一は土方歳三を黙って見ている
土方歳三は斉藤一に呆れた表情で話し掛ける。
「逃げた総司を見つけるのは、普通の奴では無理なんだ。斉藤。お前しか頼める奴がいないんだ。」
斉藤一は土方歳三に普通に話し掛ける。
「あの子の所に行ったとは思わないのですか?」
土方歳三は斉藤一に怪訝そうに話し掛ける。
「総司が、あの子に心配を掛けたり、あの子の評判を落としたり、なんて事をする訳がないだろ。」
斉藤一は土方歳三に普通に話し掛ける。
「土方さんも総司の事を理解しているんですね。」
土方歳三は斉藤一に普通に話し掛ける。
「当たり前だろ。」
斉藤一は土方歳三を黙って見ている。
土方歳三は斉藤一に微笑んで話し掛ける。
「とにかく総司を連れ戻してきてくれ。」
斉藤一は土方歳三を見ながら黙って頷いた。
土方歳三は斉藤一に呆れた表情で話し掛ける。
「総司は本当に不思議な奴だよ。剣の腕は凄い。でも、剣以外の事は天才的に鈍い。刀捌きと逃げ足はとても速い。それ以外の事はとても鈍い。本当に不思議な奴だよ。」
斉藤一は土方歳三を見ながら黙って頷いた。
土方歳三は斉藤一に困った表情で話し掛ける。
「後は頼む。」
斉藤一は土方歳三を見ながら黙って頷いた。
土方歳三は困った様子のまま、その場を後にした。
斉藤一は沖田総司を探すために屯所を後にした。
沖田総司は屯所を出ると、子供達が遊んでいる場所を訪れた。
近くには少し遅れて咲いたのか、一重桜が満開になって咲いている。
子供達は沖田総司を見ると笑顔で話し掛ける。
「総司お兄ちゃん。こんにちは。」
沖田総司は子供達に微笑んで話し掛ける。
「こんにちは。みんな一緒に遊ばないか?」
子供達は沖田総司に笑顔で話し掛ける。
「いいよ! 何をして遊んでくれるの?!」
沖田総司は子供達に微笑んで話し掛ける。
「相撲をして遊ぼうか。」
子供達は沖田総司を見ながら微笑んで頷いた。
沖田総司と子供達は、一重桜の咲くなかで、楽しそうに遊び始めた。
それから少し後の事。
斉藤一は沖田総司と子供達が遊んでいる場所を訪れた。
子供達は斉藤一のもとに来ると、笑顔で話し出す。
「はじめお兄ちゃん! こんにちは!」
斉藤一は子供達を見ながら黙って頷いた。
沖田総司が斉藤一のもとに来ると、微笑んで話し掛ける。
「斉藤さん。何かありましたか?」
斉藤一は沖田総司に普通に話し掛ける。
「総司の様子を確認しに来た。」
沖田総司は斉藤一を苦笑して見ている。
子供達は不思議そうに沖田総司と斉藤一を見ている。
沖田総司は斉藤一に微笑んで話し掛ける。
「斉藤さん。せっかくここに来たのですから、みんなが相撲をしているところを見ていってください。」
斉藤一は沖田総司を黙って見ている。
沖田総司は子供達に微笑んで話し掛ける。
「みんな。相撲の続きをしよう。斉藤さんがみんなの相撲を見てくれるよ。」
子供達は沖田総司を見ながら笑顔で頷いた。
沖田総司と子供達は、相撲の続きを始めた。
斉藤一は一重桜の木の下で、沖田総司と子供達の遊んでいる様子を黙って見ている。
その日の沖田総司は、稽古の師範をする事もなく終わった。
沖田総司が稽古の師範の日の度に居なくなるが、何事もなく日々が過ぎていく。
一重桜はほとんどの場所で散ってしまい、緑色の葉を繁らせ始めた。
八重桜が一重桜の代わりに見頃になっている。
沖田総司が稽古の師範の日となった。
土方歳三は斉藤一を呼び止めると、普通に話し掛ける。
「斉藤。代わりに師範を出来る奴がいないんだ。今日は総司を逃がす事が出来ないんだ。」
斉藤一は土方歳三に普通に話し掛ける。
「俺はこれから任務があります。」
土方歳三は斉藤一に普通に話し掛ける。
「総司を稽古場まで連れて行ってくれ。それが終わったら任務に行ってくれ。」
斉藤一は土方歳三に普通に話し掛ける。
「もし総司が逃げたらどうするのですか?」
土方歳三は斉藤一に普通に話し掛ける。
「総司が戻ってくるまで稽古はしない。戻ってきたら稽古を再開する。」
斉藤一は土方歳三を黙って見ている。
土方歳三は微笑んで斉藤一に話し掛ける。
「斉藤は総司を稽古場まで連れて行く自信がないのか?」
斉藤一は土方歳三を睨んだ。
土方歳三は斉藤一を少し驚いた表情をして見た。
斉藤一は土方歳三に普通に話し掛ける。
「総司の所に行ってきます。」
土方歳三は斉藤一に微笑んで話し掛ける。
「斉藤さん。頼むな。」
斉藤一は沖田総司のもとへ向かった。
斉藤一は沖田総司のもとに来た。
沖田総司は斉藤一を不思議そうに見た。
斉藤一は沖田総司を黙って見ている。
沖田総司は斉藤一に不思議そうに話し掛ける。
「斉藤さん。何かありましたか?」
斉藤一は沖田総司に普通に話し掛ける。
「今日の稽古の師範は総司だよな。」
沖田総司は斉藤一に微笑んで話し掛ける。
「そうでしたっけ?」
斉藤一は沖田総司に普通に話し掛ける。
「土方さんから、総司が稽古場に入るまで見ていろと言われたんだ。」
沖田総司は斉藤一に微笑んで話し掛ける。
「今日の斉藤さんはこれから仕事ですよね。ここに居ても良いのですか?」
斉藤一は沖田総司に普通に話し掛ける。
「総司が逃げずに稽古の師範をしてくれれば、直ぐに仕事に出掛けられる。」
沖田総司は斉藤一を苦笑しながら見ている。
斉藤一は沖田総司に普通に話し掛ける。
「土方さんからの伝言だ。今日は、総司が逃げたら稽古を一時中断する。総司が戻ってきてから稽古を再開するそうだ。」
沖田総司は斉藤一を嫌そうな顔をして見ている。
斉藤一は沖田総司に普通に話し掛ける。
「総司。今日は諦めろ。」
沖田総司はため息を付きながら頷いた。
斉藤一は沖田総司に普通に話し掛ける。
「総司。早く支度をしろ。」
沖田総司はため息を付きながら頷いた。
斉藤一は沖田総司を黙って見ている。
沖田総司は、斉藤一の監視するような視線のなかで、稽古の準備を始めた。
沖田総司は稽古場に居る。
隊士達は沖田総司が稽古場に居る姿を見ると、げんなりとした顔をしている。
一人の隊士がため息を付いた。
沖田総司はため息を付いた隊士の居る方を見ると、厳しい声で話し出す、
「こらっ! 稽古を受け身でため息を付くなんて百年早いぞ!」
隊士達はお互いの顔を見合わせながら黙っている。
沖田総司は隊士達に厳しい声で話し出す。
「ため息を付いた人は誰だ! さっさと前へ出ろ!」
隊士達は顔を見合わせたまま黙っている。
沖田総司は隊士達に厳しい声で話し出す。
「ため息をついた人! 早く前に出ろ! 返事がないという事は、ここに居る全員がため息をついていたと判断するぞ!」
隊士達は顔を見合わせたまま黙っている。
沖田総司は隊士達に厳しい声で話し出す。
「稽古を始める! 一人ずつ前へ出ろ!」
隊士達は沖田総司を怯えた表情で見ている。
沖田総司は一人の隊士に向かって、厳しい声で話し掛ける。
「まずはお前だ! 前へ出ろ!」
沖田総司に指名された隊士は、恐る恐る前に出た。
沖田総司は厳しい表情のまま、隊士に向かって竹刀を構えた。
隊士は恐る恐る沖田総司に向かって竹刀を構えた。
沖田総司は厳しい表情で竹刀を構えたまま、隊士に向かって話し掛ける。
「そんな構えでいいのか?! もしかして、遊び半分で稽古をしているのか?!」
隊士は恐る恐る竹刀を構えながら、沖田総司に小さい声で話し掛ける。
「そんな事はありません。真剣に構えています。」
沖田総司は厳しい表情で竹刀を構えたまま、隊士に話し掛ける。
「返事をする暇があるなら、なぜ打ち込まない!」
隊士は恐る恐る沖田総司を見ている。
沖田総司は隊士に向かって、勢い良く竹刀を打ち込んだ。
隊士は沖田総司の竹刀をまともに受けたため、衝撃に耐えられずに後ろに向かって倒れた。
沖田総司は隊士の様子を厳しい表情のまま見ている。
隊士は床に倒れたまま起き上がってこない。
沖田総司は倒れている隊士に、冷たい表情で話し掛ける。
「竹刀を一撃うけたくらいで倒れるなんて、情けない奴だな。」
隊士は倒れたまま返事がない。
沖田総司は倒れた隊士を一瞥すると、他の隊士に向かって冷たく話し掛ける。
「こいつをさっさと外へ出せ。」
何人かの隊士達が倒れた隊士を担ぐと、稽古場から出て行った。
沖田総司は別な隊士を見ると、厳しい声で話し掛ける。
「次! お前だ! 早く前へ出ろ!」
沖田総司に指名された隊士は、恐る恐る前へ出た。
沖田総司は厳しい表情で、隊士に向かって竹刀を構えている。
隊士は不安そうな表情で、沖田総司に向かって竹刀を構えている。
沖田総司は竹刀を構えたまま、厳しい声で話し掛ける。
「なぜ打ち込んでこない! 様子見か?!」
隊士は慌てて沖田総司に話し掛ける。
「そんな事はありません。」
沖田総司は竹刀を構えたまま、厳しい声で話し掛ける。
「返事が出来る程の余裕があるんだ。」
隊士は沖田総司に向かって竹刀を打ち込んだ。
沖田総司は隊士の竹刀を軽く交わした。
隊士は床に向かって倒れた。
沖田総司は隊士に向かって冷たく話し掛ける。
「なぜ私の動きを見ないで打ち込んだ。打ち込めばいいってもんでもないだろ。」
隊士は起き上がると沖田総司に竹刀を構えた。
沖田総司は隊士に向かって突きの体制の構えをすると、素早く突いた。
隊士は沖田総司の竹刀の勢いに耐えられずに吹っ飛んだ。
沖田総司は隊士の様子を冷めた様子で見ている。
隊士は床に倒れたまま動かない。
沖田総司は厳しい表情で隊士達に話し掛ける。
「情けない奴だな。稽古の邪魔だ。外へ出せ。」
何人かの隊士達は、床に倒れている隊士を担ぐと、稽古場から出て行った。
沖田総司は厳しい表情で隊士に話し掛ける。
「次はお前だ! 前へ出ろ!」
沖田総司に指名された隊士は、ゆっくりと前へ出た。
沖田総司は冷たい表情のまま、竹刀を構えた。
隊士は沖田総司を見ながら、恐る恐る竹刀を構えた。
沖田総司が師範をする稽古が終わった。
稽古場に居た隊士の数が減っている。
沖田総司は冷たい表情で残った隊士に話し出す。
「これで稽古は終わりだ!」
隊士達は沖田総司に向かって話し出す。
「ありがとうございました。」
沖田総司は隊士達を厳しい表情で見ながら黙って頷いた。
隊士達は沖田総司の様子を恐る恐る見ている。
沖田総司は厳しい表情で、稽古場から出て行った。
沖田総司が稽古場から出て行ってから少し後の事。
隊士達は安心した表情になり、息をはいた。
青い色の空に少し赤みが差し始めた。
土方歳三は沖田総司を部屋に呼んだ。
沖田総司は土方歳三の部屋を不思議そうに訪れた。
土方歳三は沖田総司に困った表情で話し出す。
「総司。少しだけでいいから、稽古の手加減をしてくれ。」
沖田総司は土方歳三に不機嫌そうに話し掛ける。
「嫌です。」
土方歳三は沖田総司に困った表情で話し出す。
「稽古の度に怪我人がでるのは困るんだ。」
沖田総司は土方歳三に不機嫌そうに話し掛ける。
「稽古だからと油断しているから、怪我をするんです。」
土方歳三は沖田総司に困った様子で話し出す。
「稽古の度に怪我人がでると、任務に支障がでて困るんだ。」
沖田総司は土方歳三に不機嫌そうに話し掛ける。
「手加減の必要なんてありません。稽古で怪我をするような人が、任務の時に何も無い訳がありません。」
土方歳三は沖田総司を困った表情で見ている。
沖田総司は土方歳三に微笑んで話し掛ける。
「稽古をしないのが稽古です。やる気のない人は放って置けばいいんです。」
土方歳三は沖田総司を困った様子で見ている。
沖田総司は土方歳三に軽く礼をすると、部屋から出て行った。
土方歳三は沖田総司が部屋から出て行ったのを確認すると、ため息をついた。
はじめに
後編
後書き
目次
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