新撰組異聞　〜　鳴神月に降る雫　鈴の音鳴って　〜


〜　改訂版　〜


〜　前編　〜


今は夏。



ここは、京の町。



夕日が空を綺麗な緋色に染めている。



沖田総司が不逞浪士を冷たい表情で追っている。

不逞浪士は必死に逃げている。



ここは、細い道。



塀の在る場所。



不逞浪士は塀の前で止まると、沖田総司を恐怖の表情で見た。



沖田総司は不逞浪士の前で止まると、不逞浪士を冷たい表情で見た。



沖田総司は素早く刀を抜くと、冷たい表情で素早く三段突きをした。

不逞浪士は塀にもたれながら、地面へと崩れ落ちた。

沖田総司は血の付く刀を持ち、不逞浪士を冷たい表情で見た。



不逞浪士は既に事切れている。



夕日は、沖田総司、沖田総司の持つ血の付く刀、不逞浪士の亡骸を、綺麗な緋色に染めた。



沖田総司は血の付く刀を持ち、不逞浪士の亡骸を冷たい表情で見ている。



澄んだ鈴の音が微かに聞こえた。



沖田総司は血の付く刀を持ち、鈴の音が聞こえた方向を、冷たい表情で見た。



少女が陰に隠れて立っている。



少女は沖田総司と血の付く刀を驚いた様子で見ている。



沖田総司は血の付く刀を持ち、少女を驚いた表情で見た。



少女は沖田総司を怯えて見た。



沖田総司は血の付く刀を持ち、少女に冷たい表情で近付いた。



沖田総司は血の付く刀を持ち、少女に冷たい表情で静かに話し出す。

「なぜ此処に居る。」

少女は沖田総司に小さい声で話し出す。

「近道をする時に使う道の近くです。偶然に来ました。」

沖田総司は血の付く刀を持ち、少女に冷たい表情で怒鳴った。

「私の質問の答えになっていない！」

少女は怯えて目を閉じた。

沖田総司は血の付く刀を持ち、少女を驚いた表情で見た。

少女は怯えて目を閉じている。

沖田総司は血の付く刀を持ち、少女に真剣な表情で静かに話し出す。

「危険だ。早く逃げろ。」

少女は怯えて目を閉じている。

沖田総司は血の付く刀を持ち、少女の手を困惑した表情で掴もうとした。



少女の手に沖田総司の手が僅かに触れた。



少女は怯えて目を閉じたまま、手を引いた。

沖田総司は血の付く刀を持ち、少女を悲しく見た。

少女は驚いて目を開けた。



少女は数歩ほど後ろに下がった。



少女は沖田総司を怯える表情で見た。



沖田総司は血の付く刀を持ち、少女の傍に真剣な表情で来た。



少女は怯えて目を閉じた。

沖田総司は血の付く刀を持ち、少女に真剣な表情で静かに話し出す。

「目を閉じて怯える余裕はない。早く逃げろ。」

少女は怯えて目を閉じている。



斉藤一が普通に現れた。



斉藤一は沖田総司と少女を普通の表情で見た。

沖田総司は血の付く刀を持ち、斉藤一を驚いた表情で見た。

少女は怯えて目を閉じている。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。何をしている？」

少女はゆっくりと目を開けると、斉藤一を怯える表情で見た。

沖田総司は血の付く刀を持ち、斉藤一に真剣な表情で話し出す。

「彼女を安全な場所へ連れて行きます。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。



斉藤一は普通に居なくなった。



沖田総司は血の付く刀を持ち、少女に真剣な表情で静かに話し出す。

「行くぞ。」

少女は沖田総司を怯える表情で見た。

沖田総司は血の付く刀を持ち、少女に睨んで話し出す。

「死にたいのか？」

少女は沖田総司を怯える表情で見ている。

沖田総司は血の付く刀を持ち、睨んで少女の手を握った。

少女は沖田総司を驚いた表情で見た。



沖田総司は血の付く刀を持ち、少女の手を握り、急いで歩き出した。

少女は驚いた表情で歩き出した。



僅かに後の事。



ここは、大通りに近い道。



沖田総司は血の付く刀を持ち、少女の手を握り、急いで来た。

少女は驚いた表情で来た。



沖田総司は血の付く刀を持ち、少女の手を離すと、少女に睨んで話し出す。

「早く行け。」

少女は沖田総司を怯える表情で見た。

沖田総司は血の付く刀を持ち、少女に睨んで話し出す。

「危険だ。早く行け。」

少女は沖田総司に怯える表情で頷いた。

沖田総司は血の付く刀を持ち、少女を睨んだ。



少女は大通りへと向かってゆっくりと歩き出した。



沖田総司は血の付く刀を持ち、少女を睨んでいる。



少女の姿は見えなくなった。



沖田総司は血の付く刀を持ち、辛い表情になった。

沖田総司は血の付く刀を持ち、辛い表情で、手を強く握った。

沖田総司は血の付く刀を持ち、強く握り締めた手を横に在る塀に思い切り叩き付けた。

沖田総司は血の付く刀を持ち、辛い表情で、手を握る力を弱めた。

沖田総司は血の付く刀を持ち、冷たい表情になった。



沖田総司は血の付く刀を持ち、冷たい表情で、急いで歩き出した。



暫く後の事。



ここは、屯所。



斉藤一の部屋。



斉藤一は普通に居る。



沖田総司は悲しい表情で訪れた。



斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司が斉藤一に辛く話し出す。

「鈴ちゃんに見られてしまいました。怯える鈴ちゃんを見たのは初めてです。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「人が斬られて死んでいく現場を見慣れていない人物は、誰でも怖がり怯える。」

沖田総司は斉藤一を辛く見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「美鈴さんの気持ちは日数が経てば落ち着くと思う。」

沖田総司は斉藤一に不安な様子で話し出す。

「鈴ちゃんと逢う約束した日は明日です。明日は任務でも、時間を作って鈴ちゃんと逢うと約束をしました。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「明日が約束の日。」

沖田総司は斉藤一に不安な様子で頷いた。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。



翌日の事。



ここは、少女の家。



玄関。



沖田総司は微笑んで訪れた。



少女は普通に現れた。



沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。時間があれば、出掛けて話したいな。」

少女は沖田総司に小さく頷いた。

沖田総司は少女を微笑んで見た。



少し後の事。



ここは、落ち着いた雰囲気の寺。



境内には、遅めに咲き始めた紫陽花が咲いている。



紫陽花の季節は終わり掛けているが、境内の紫陽花は遅めに咲き始めたらしく、色鮮やかに咲いている。



ここは、寺の中。



沖田総司は微笑んで来た。

少女は困惑して来た。



沖田総司は少女に悲しく話し出す。

「鈴ちゃん。私と居るのが怖いから、困惑した表情なのか？」

少女は沖田総司を見ながら、小さく首を横に振った。

沖田総司は少女に悲しく話し出す。

「鈴ちゃん。話せないほどに、私が怖いのか？」

少女は沖田総司を見ながら、小さく首を横に振った。

沖田総司は少女を悲しく見て、僅かに強い調子で話し出す。

「鈴ちゃん。なぜ私を困惑して見るんだ？　なぜ私に話し掛けないんだ？」

少女は沖田総司を辛い表情で見た。

沖田総司は少女を悲しく見て、強い調子で話し出す。

「私は人を斬るから、私が怖いのだろ！　違う理由ならば、早く理由を言ってくれ！」

少女は沖田総司を見ながら、悲しく小さく首を横に振った。

沖田総司は少女を悲しく見て、少女の手を握ろうとした。

少女は沖田総司の手が触れると、直ぐに手を引いた。

沖田総司は少女の手を取らずに、少女を悲しく見た。

少女は沖田総司に悲しく話し出す。

「総司さん。ごめんなさい。」

沖田総司は少女に悲しく大きな声で話し出す。

「私が鈴ちゃんを斬ると思うから怖いのだろ！　私が鈴ちゃんに触れた後に斬ると思うから怖いのだろ！　私は壬生狼だから怖いのだろ！」

少女は沖田総司を見ながら、悲しく小さく首を横に振った。

沖田総司は少女に悲しく大きな声で話し出す。

「鈴ちゃん！　私は怖い人物なのか？！　私は冷たい人物なのか？！　私と話せないほど、に私が怖いのか？！」

少女は静かに泣いた。

沖田総司は少女に悲しく話し出す。

「私は鈴ちゃんを泣かせるほどの悪い人物なのか？」

少女は静かに泣きながら、沖田総司に小さく首を横に振った。

沖田総司は少女を悲しく抱いた。

少女は静かに泣いた。

沖田総司は少女を抱いて、少女に悲しく話し出す。

「鈴ちゃん。悪かった。」

少女は沖田総司に静かに泣いて話し出す。

「総司さんは悪くありません。悪いのは、私です。」

沖田総司は少女を抱いて、少女を悲しく見た。

少女は静かに泣いた。

沖田総司は少女を抱いて、少女に悲しく話し出す。

「鈴ちゃん。少し経ったら、家まで送る。」

少女は沖田総司に静かに泣いて話し出す。

「お願いします。」

沖田総司は少女を抱いて、少女を悲しく見た。



暫く後の事。



ここは、屯所。



斉藤一の部屋。



斉藤一は普通に居る。



沖田総司は悲しく訪れた。



斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に辛く話し出す。

「鈴ちゃんの悲しむ様子を見る間に、鈴ちゃんを慰める方法が分からず、苛立って、怒ってしまいました。私は鈴ちゃんに八つ当たりをしてしまいました。鈴ちゃんの泣く様子を見る間に、物凄く辛く悲しくなりました。悪いのは私なのに、鈴ちゃんは、鈴ちゃん本人が悪いと言って私に謝りました。私は、鈴ちゃんが辛い想いをするほどに、鈴ちゃんが悲しむほどに、鈴ちゃんが泣くほどに、酷い行動をしたのでしょうか？　答えが見付かりません。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見ている。

沖田総司は斉藤一を辛い表情で見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。今日か明日の間に、美鈴さんに謝れ。」

沖田総司は斉藤一に辛く話し出す。

「二日後か三日後に、鈴ちゃんに逢いに行きます。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司が美鈴さんに逢うために日数を置くのは、総司の気持ちの問題だ。美鈴さんの気持ちは放って置くのか？」

沖田総司は斉藤一に辛く話し出す。

「私は武士です。任務のために、幾度も人を斬る場面に係わり、幾度も人を斬ります。私は鈴ちゃんを慰める方法が分かりません。私は鈴ちゃんの気持ちが落ち着く説明が分かりません。次に鈴ちゃんに逢った時に酷い内容を話したら、鈴ちゃんは私に二度と逢ってくれない気がします。」

斉藤一沖田総司に普通に話し出す。

「美鈴さんは、総司の話した内容を既に理解しているはずだ。美鈴さんはしっかりとした芯の強い子だが、総司より年下の女の子だ。総司の辛い気持ちを明るく出来ないから、泣いたと思う。美鈴さんは人を斬る現場を見慣れていないのに、総司が人を斬った場面を見た翌日なのに、総司に逢っても怯えなかったのだろ。総司が心配しなくても、美鈴さんは今後も総司と逢うはずだ。」

沖田総司は斉藤一に辛く話し出す。

「鈴ちゃんは、私が怒っても、怯えません。鈴ちゃんは、とても強く、とても優しく、とても良い子です。今の私は鈴ちゃんに笑顔を戻す方法が分かりません。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「美鈴さんに今日か明日の間に謝れ。何か起きた後に後悔をしても、時間は戻らないぞ。」

沖田総司は斉藤一に辛い様子で頷いた。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。





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