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新撰組異聞 〜 緑の紅葉と紅の紅葉 〜


〜 第三版 〜


ここは、京の町。


真紅の紅葉に覆われている。


沖田総司は普通に歩いている。

斉藤一も普通に歩いている。

井上源三郎も普通に歩いている。


沖田総司は立ち止まると、少し離れた場所を不思議な様子で見た。

斉藤一は立ち止まると、沖田総司を普通の表情で見た。

井上源三郎は立ち止まると、沖田総司を不思議な様子で見た。


沖田総司の視線の先には、たくさんの真紅の紅葉が在る。


沖田総司はたくさんの真紅の紅葉を寂しさと懐かしさが混じった様子で見た。

斉藤一は沖田総司の視線の先を普通の表情で見た。

井上源三郎は、沖田総司の視線の先を不思議な様子で見た。

沖田総司は斉藤一と井上源三郎を見ると、斉藤一と井上源三郎に静かに話し出す。

「少し待っていてください。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

井上源三郎は沖田総司を不思議な様子で見た。


沖田総司はたくさんの真紅の紅葉に向かって走り出した。


井上源三郎は沖田総司に慌てた様子で話し出す。

「総司?!」


沖田総司は立ち止まると、井上源三郎を見て、井上源三郎に落ち着かない様子で話し出す。

「少しだけ待っていてください!」


井上源三郎は沖田総司を心配な様子で見た。

斉藤一は沖田総司と井上源三郎を普通の表情で見た。


沖田総司はたくさんの真紅の紅葉に向かって走り出した。


僅かに後の事。


ここは、たくさんの真紅の紅葉が在る場所。


沖田総司は走ってきた。


沖田総司は周りを見ながら呟いた。

「この場所は、あの時の場所と良く似ている。」


微かな風が吹き始めた。


真紅の紅葉の葉が重なりながら微かな音を鳴らし始めた。


時は遡る。


ここは、京の町。


たくさんの緑色の紅葉が在る。


山南敬助は沖田総司を微笑んで見ている。

沖田総司は下を困惑した様子で見ている。


山南敬助は沖田総司を微笑んで見ている。

沖田総司は山南敬助を見ると、山南敬助に申し訳なく話し出す。

「彼女にいろいろと言いました。申し訳ありませんでした。」

山南敬助は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司が謝りたいのは、私ではなく、彼女ですよね。」

沖田総司は山南敬助を困惑した様子で見た。

山南敬助は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司は“他生の縁”の言葉を知っていますか?」

沖田総司は山南敬助に不思議な様子で話し出す。

「一応は知っています。」

山南敬助は沖田総司に微笑んで話し出す。

「江戸や京でみんなに逢えたのは、縁だと思います。私はみんなと次の世も逢いたいと思っています。みんなと次の世で悔いの残る気持ちで逢わないために、今の世を過ごしたいと思いませんか?」

沖田総司は山南敬助に静かに話し出す。

「はい。」

山南敬助は緑色の紅葉を見ると、沖田総司に微笑んで話し出す。

「綺麗な色の紅葉ですね。」

沖田総司は緑色の紅葉を見ると、山南敬助に不思議な様子で話し出す。

「綺麗な色の紅葉ですが、紅色ではなくて緑色ですよ。」

山南敬助は沖田総司を見ると、沖田総司に微笑んで話し出す。

「今が綺麗な色の紅葉です。綺麗な紅色に染まる紅葉を想像できます。この場所の紅葉が紅色に染まったら、楽しく話して過ごしたいですね。」

沖田総司は山南敬助を見ると、山南敬助に静かに話し出す。

「はい。」

山南敬助は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は山南敬助に真剣な表情で話し出す。

「今から彼女に謝りに行きます。」

山南敬助は沖田総司に微笑んで頷いた。

沖田総司は山南敬助に真剣な表情で軽く礼をした。

山南敬助は沖田総司に微笑んで頷いた。


沖田総司は真剣な表情で走り出した。


沖田総司には、山南敬助の表情は分からない。

沖田総司には、山南敬助の視線の方向も分からない。

沖田総司に分かるのは、山南敬助が沖田総司の後ろに居る、たくさんの緑色の紅葉が在る、状況。

沖田総司は、彼女に謝るために、山南敬助と紅色に染まる紅葉の下で楽しく話すために、振り向かずに真剣な表情で走り続けている。


斉藤一の普通の声が、沖田総司の後ろから聞こえた。

「総司。源さんが心配しているぞ。」


時が一気に戻った。


ここは、京の町。


たくさんの真紅の紅葉が在る場所。


沖田総司は後ろを不思議な様子で見た。


斉藤一は沖田総司を普通の表情で見ている。


沖田総司は辺りを不思議な様子で見た。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見ている。


井上源三郎は先程と同じ場所で、沖田総司と斉藤一を不思議な様子で見ている。


沖田総司は斉藤一を見ると、斉藤一に驚いて話し出す。

「斉藤さん?! なぜこの場所に居るのですか?!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司は直ぐに戻ると言って走ったが、直ぐに戻る様子がない。源さんが総司を心配しているから、俺が総司に戻るように言いにきた。」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「この場所に長居していたのですね。気付きませんでした。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は真紅の紅葉を見ると、斉藤一に静かに話し出す。

「綺麗な紅葉だと思いませんか?」

斉藤一は真紅の紅葉を普通の表情で見た。

沖田総司は真紅の紅葉を見ながら、斉藤一に静かに話し出す。

「忘れ物を取りに来ました。」

斉藤一は沖田総司を見ると、普通に話し出す。

「忘れ物は見付かったのか?」

沖田総司は斉藤一を見ると、斉藤一に微笑んで話し出す。

「この場所には無い物でしたが、この場所で見付かりました。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「良かったな。」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「はい。」

斉藤一は真紅の紅葉を普通の表情で見た。

沖田総司は真紅の紅葉の幹に静かに手を当てると、真紅の紅葉を微笑んで見た。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は真紅の紅葉の幹に手を当てながら、真紅の紅葉を見て、微笑んで呟いた。

「約束どおり着きました。しっかりといきます。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「しっかりといく?」

沖田総司は真紅の紅葉の幹から手を離すと、斉藤一を見て、笑顔で話し出す。

「はい! しっかりといきます!」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一を笑顔で見た。


井上源三郎は不思議な様子で来た。


斉藤一は井上源三郎を普通の表情で見た。

井上源三郎は沖田総司と斉藤一に不思議な様子で話し出す。

「二人で何を話しているのですか?」

沖田総司は井上源三郎を見ると、微笑んで話し出す。

「忘れ物を取りに来ました。」

井上源三郎は沖田総司に微笑んで話し出す。

「忘れ物が見付かって良かったですね。」

沖田総司は井上源三郎に笑顔で話し出す。

「はい!」

井上源三郎は沖田総司を微笑んで見た。

斉藤一は沖田総司と井上源三郎を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一と井上源三郎を微笑んで見た。


原田左之助の明るい声が、沖田総司、斉藤一、井上源三郎、の元に聞こえた。

「総司〜!」


沖田総司は原田左之助の声が聞こえた方向を笑顔で見た。

斉藤一は原田左之助の声が聞こえた方向を普通の表情で見た。

井上源三郎は原田左之助の声が聞こえた方向を微笑んで見た。


原田左之助が笑顔で来た。


原田左之助は沖田総司に笑顔で話し出す。

「総司! 面白い物を見付けたんだ! 見に行こう!」

沖田総司は原田左之助に笑顔で話し出す。

「はい!」

原田左之助は、斉藤一と井上源三郎に笑顔で話し出す。

「二人で出掛けます! 後はよろしく頼みます!」

斉藤一は沖田総司と原田左之助を普通の表情で見た。

井上源三郎は沖田総司と原田左之助に微笑んで話し出そうとした。


原田左之助は笑顔で走り出した。

沖田総司も笑顔で走り出した。


井上源三郎は話し出すのを止めると、沖田総司と原田左之助を微笑んで見た。

斉藤一は沖田総司と原田左之助を普通の表情で見ている。


沖田総司の姿は見えなくなった。

原田左之助の姿も見えなくなった。


井上源三郎は斉藤一を見ると、斉藤一に微笑んで話し出す。

「急に元気になりましたね。」

斉藤一は井上源三郎を見ると、普通の表情で軽く礼をした。

井上源三郎は沖田総司と原田左之助が去った方向を微笑んで見た。

斉藤一は井上源三郎を普通の表情で見た。


土方歳三が不思議な様子で来た。


井上源三郎は土方歳三を見ると、微笑んで軽く礼をした。

斉藤一は土方歳三を見ると、普通の表情で軽く礼をした。

土方歳三は斉藤一と井上源三郎に不思議な様子で話し出す。

「総司と左之助が、共に元気良く走っていたな。」

斉藤一は土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。

土方歳三は斉藤一と井上源三郎に不思議な様子で話し出す。

「総司が普段より元気に見えた。何かあったのか?」

斉藤一は土方歳三に普通に話し出す。

「総司が忘れ物を取りに来たそうです。」

土方歳三は斉藤一に不思議な様子で話し出す。

「忘れ物?」

斉藤一は土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。

土方歳三は真紅の紅葉を見ると、不思議な様子で呟いた。

「ふ〜ん」

斉藤一は真紅の紅葉を普通の表情で見た。

土方歳三は斉藤一と井上源三郎を見ると、斉藤一と井上源三郎に普通に話し出す。

「源さん。斉藤。行くぞ。」

斉藤一は土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。

井上源三郎は土方歳三に微笑んで話し出す。

「はい。」


土方歳三は普通に歩き出した。

井上源三郎は微笑んで歩き出した。


斉藤一は真紅の紅葉を見ると、普通の表情で呟いた。

「ありがとうございました。」


微かに風が吹いた。


真紅の紅葉が葉を重ねながら音を鳴らし始めた。


斉藤一は真紅の紅葉に普通の表情で軽く礼をした。


真紅の紅葉は静かに葉を重ねながら音を鳴らし続けている。


斉藤一は少し早めに歩き出した。


辺りに人の姿は見えなくなった。


たくさんの真紅の紅葉が静かに葉を重ねながら音を鳴らし続けている。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語は、別な場所で掲載していた物語を、HP掲載用に改訂し、再改訂しました。

改訂前の物語の展開や雰囲気を出来るだけ残しながら掲載しました。

改訂前の物語を掲載するのは止めました。

以上の点、ご了承ください。

ここからは、改訂前の後書きを加筆訂正して書きます。

この物語に登場する「彼女」は、イメージした方はいますが、特定せずに書きました。

皆様で想像しながらお読みください。

山南敬助さんは春や初夏のイメージがありますが、花や植物をイメージすると、桜とは違うように思いました。

山南敬助さんは、緑色の葉が繁る木を想像しました。

沖田総司さんは山南敬助さんの最期を、介錯人を務める中で見ました。

沖田総司さんは、山南敬助さんの介錯を引き受けてから、介錯を務める時も、介錯を務めた後も、複雑な思いを長く抱えていたように思いました。

山南敬助さんの抱えた想いから、沖田総司さんの抱えた想いから、色の変わる紅葉が登場する物語を考えました。

色が変わる、月日は過ぎる、考え方が変わる、気持ちが変わる、などの様子を表現したくて物語を考えました。

「いく」の字は、いろいろと考えましたが、改訂前と同様に平仮名で「いく」にしました。

皆様にとって一番良いと思う字を当てはめて読んでください。

沖田総司さんが、山南敬助さんの事で悩む場面は幾話の物語に登場します。

この物語では、沖田総司さんが、立ち直り始めている雰囲気、立ち直った雰囲気、に感じます。

後々の物語と合わせると、つじつまの合わない部分が登場します。

この物語を、当初に掲載したのには、大きな理由ではありませんが、理由があります。

今回も理由を書かない事にしました。

基本的には短編集なので気にせずに読んでください。

「他生の縁(たしょうのえん)」は「多生の縁」とも書きます。

「この世に生まれ出るまで、何度も生死を繰り返している間に結ばれた因縁。前世で結ばれた縁。」をいいます。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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