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新撰組異聞 〜 花筏 〜
〜 第三版 〜
今は春。
ここは、京の町。
桜の花が咲いている。
今日は、朝から花散らしの雨が降り続いている。
ここは、たくさんの桜の花が咲く場所。
桜の花が綺麗な姿で咲いている。
花散らしの雨が降るために、桜の花びらと雨粒が、一緒に地面へと落ちていく。
しっとりと濡れた桜の花びらが、地面を桜色に染めていく。
小川が傍に流れている。
雨の降る音と小川の流れる音だけが聞こえている。
沖田総司は傘を差し、普通に歩いている。
斉藤一傘を差し、普通に歩いている。
沖田総司は傘を差し、普通の表情で止まった。
斉藤一も傘を差し、普通の表情で止まった。
沖田総司は傘を差し、辺りを普通の表情で見た。
斉藤一は傘を差し、沖田総司を普通の表情で見た。
沖田総司は傘を差し、斉藤一を見ると、斉藤一に微笑んで話し出す。
「雨が止みました。」
斉藤一は傘を差し、沖田総司に普通の表情で頷いた。
沖田総司は傘を微笑んでたたんだ。
斉藤一は傘を普通の表情でたたんだ。
沖田総司は傘を桜の木に立て掛けると、桜の花を微笑んで見た。
斉藤一は傘を桜の木に立て掛けると、沖田総司を普通の表情で見た。
沖田総司は斉藤一を見ると、斉藤一に僅かに寂しく話し出す。
「朝から雨が降っていたので、桜の花がたくさん散っていますね。昨日より葉が目立ちます。桜の花の咲く期間は短いですね。寂しいですね。」
斉藤一は沖田総司を普通に表情で頷いた。
沖田総司は斉藤一に僅かに寂しく話し出す。
「桜の花の咲く姿をもっと見たいですね。」
斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。
沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。
「辺り一面にたくさんの桜の花びらが落ちています。地面が桜色に染まっています。とても綺麗ですね。」
斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。
沖田総司は斉藤一に苦笑して話し出す。
「斉藤さん。綺麗だと思っていますか?」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「総司は俺を疑っているのか?」
沖田総司は斉藤一に苦笑して話し出す。
「疑っていません。」
斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。
沖田総司は斉藤一に苦笑して話し出す。
「斉藤さんも綺麗だと感じているのですね。嬉しいです。」
斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。
沖田総司は桜の花と地面へ落ちた桜の花びらを微笑んで見た。
斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。
ここは、沖田総司と斉藤一が居る場所から少し離れた場所。
近藤勇は傘を持ち、普通に居る。
土方歳三も傘を持ち、普通に居る。
土方歳三は傘を近くの桜の木に立て掛けると、沖田総司と斉藤一を普通の表情で見た。
近藤勇は傘を近くの桜の木に立て掛けると、沖田総司と斉藤一を微笑んで見た。
土方歳三は沖田総司と斉藤一を見て、近藤勇に普通に話し出す。
「近藤さん。考え続けている内容がある。」
近藤勇は土方歳三を見ると、土方歳三に不思議な様子で話し出す。
「歳が考え続けている内容。気になるな。」
土方歳三は沖田総司と斉藤一を見て、近藤勇に静かに話し出す。
「山南さんが新撰組から逃げた時に、総司は山南さんを追う役を任された。山南さんは総司と共に戻った。俺には、山南さんと総司が旅から戻った様子に感じた。山南さんは戻れば切腹の沙汰が下る可能性があると分かっていた。総司は、山南さんを見付けた時の様子、山南さんと戻るまでの状況、山南さんと話した内容、最小限の内容しか答えない。山南さんが総司と共に和やかに戻った理由を考え続けているが、今も理由が分からない。」
近藤勇は土方歳三に静かに話し出す。
「私も歳と同じ内容を考え続けている。」
土方歳三は近藤勇を寂しい微笑みで見た。
近藤勇は土方歳三に静かに話し出す。
「山南さんは、私達を悩ますために、大芝居を打ったのかも知れない。」
土方歳三は近藤勇に静かに話し出す。
「山南さんが大芝居を打ったとしたら、総司に介錯を頼む必要は無かったと思う。」
近藤勇は土方歳三に静かに話し出す。
「最期は山南さんの思うとおりにしたかったと思う。」
土方歳三は沖田総司と斉藤一に静かに話し出す。
「思うとおり、か。」
近藤勇は沖田総司斉藤一を寂しい微笑みで見た。
土方歳三は近藤勇に静かに話し出す。
「山南さんは、総司が介錯を受ければ、後々に亘って悩み続けると分かっていた。山南さんが総司に介錯を頼んだ理由は他にもあると思う。」
近藤勇は土方歳三に静かに話し出す。
「総司の悩む姿を見ると、私の代わりに悩んでいるように感じる。総司に申し訳ないと幾度も思う。」
土方歳三は近藤勇に静かに話し出す。
「俺も近藤さんと同じ気持ちだ。」
近藤勇は土方歳三を寂しい微笑みで見た。
土方歳三は近藤勇に静かに話し出す。
「総司が介錯を断った場合、山南さんは次に誰に頼んだと思う?」
近藤勇は土方歳三に静かに話し出す。
「斉藤に頼んだと思う。」
土方歳三が近藤勇に不思議な様子で話し出す。
「斉藤。」
近藤勇は土方歳三に静かに話し出す。
「意外か?」
土方歳三は近藤勇に微笑んで話し出す。
「意外ではない。」
近藤勇は沖田総司と斉藤一を見ると、土方歳三に静かに話し出す。
「山南さんが総司に介錯を断られた時に、斉藤に頼むと思うようになったのは、最近になる。」
土方歳三は近藤勇を寂しい微笑みで見た。
近藤勇も土方歳三を寂しい微笑みで見た。
土方歳三は近藤勇に静かに話し出す。
「総司は僅かずつだか立ち直り始めている。斉藤とあの子に、感謝している。」
近藤勇は土方歳三に寂しい微笑みで頷いた。
土方歳三は沖田総司と斉藤一を見ると、近藤勇に静かに話し出す。
「新撰組の副局長として話すと、斉藤が新撰組で活動する現状は、とても助かる。斉藤の知人として話すと、新撰組で活動する現状は、良い現状なのか悪い現状なのか、分からない。」
近藤勇は土方歳三を寂しい微笑みで見た。
土方歳三は近藤胃さを見ると、近藤勇に静かに話し出す。
「山南さんは総司と斉藤を気に掛けていた。芹沢さんも総司と斉藤を気に掛けていた。俺も総司と斉藤が気になる。」
近藤勇は土方歳三に寂しい微笑みで頷いた。
土方歳三は近藤勇に静かに話し出す。
「命が有る物には、別れの日が必ず訪れる。俺が一番に心配なのは、斉藤が新撰組から去った後に、残された総司の気持ちだ。」
近藤勇は土方歳三に静かに話し出す。
「斉藤は心配にならいのか?」
土方歳三は近藤勇に静かに話し出す。
「斉藤は全ての面に関して強い。斉藤は何が起きても一人で乗り越えられる。総司には斉藤のような強さは無い。総司が斉藤の新撰組から去った後の気持ちを想像すると、心配になる。」
近藤勇は土方歳三に静かに話し出す。
「総司の傍には、あの子が居る。あの子が総司の傍に居れば安心だ。」
土方歳三は近藤勇に静かに微笑みで話し出す。
「あの子が総司の傍に居続けられるならば、総司に何が起きても心配は無い。総司は悩み事を抱えているために、本当の気持ちに気付かないようにしている。あの子の家柄から考えると、総司が何も言わない状況が長く続くと、別れの日が訪れる。総司が何も言わない状況が長く続くと、総司が一人になってしまう。総司の気持ちは、総司本人が解決しなければならない。総司とあの子の関係は、総司が進展させなければならない。俺は表立って何も出来ない。歯がゆい。」
近藤勇は土方歳三に静かに話し出す。
「私も表立って何も出来ない。歯がゆい。」
土方歳三は近藤勇を寂しい微笑みで見た。
近藤勇は土方歳三に静かに話し出す。
「総司は、斉藤とあの子と逢ってから、僅かずつだが強くなっている。総司があの子と逢わず、斉藤が新撰組で活動していなければ、山南さんは総司に介錯は頼まなかったと思う。」
土方歳三は近藤勇に寂しい微笑みで頷いた。
近藤勇は土方歳三を寂しい微笑みで見た。
土方歳三は沖田総司と斉藤一を見ると、近藤勇に静かに話し出す。
「総司と斉藤を切り離すのは、俺かも知れない。」
近藤勇は土方歳三に寂しい微笑みで見た。
土方歳三は近藤勇を見ると、近藤勇に静かに話し出す。
「総司は、斉藤が新撰組から去って離れてしまうと、斉藤を常に心配して、寂しくても無理をして笑顔を見せる、寂しさを忘れるために無理な行動をする。俺は無理を続ける総司を見て、悩み続ける。俺は、山南さんと総司と斉藤とあの子に、酷い言動をしているのかも知れない。」
近藤勇は土方歳三を寂しい微笑みで見た。
土方歳三は近藤勇に静かに話し出す。
「俺は山南さんに復讐されている気がする。」
近藤勇は土方歳三に静かに話し出す。
「山南さんが歳に復讐しているならば、私も山南さんに復讐されている。」
土方歳三は近藤勇を寂しい微笑みで見た。
近藤勇は土方歳三に静かに話し出す。
「総司と斉藤が新撰組で共に活動する状況は、総司と斉藤にとって良い状況だ。総司の剣の技術も斉藤の剣の技術も、強過ぎる。総司と斉藤には、僅かに強さでは太刀打ちできない。総司が試衛館に居た時は、総司のみが、高くて遠い場所に居た。斉藤も総司と逢うまでは、強過ぎて、斉藤のみが高くて遠い場所に居たと思う。」
土方歳三は近藤勇に静かに話し出す。
「俺も近藤さんと同じ考えだ。」
近藤勇は土方歳三を寂しい微笑みで見た。
土方歳三は近藤勇を真剣な表情で見た。
近藤勇は土方歳三を不思議な様子で見た。
土方歳三は近藤勇に真剣な表情で話し出す。
「近藤さん。俺は一つ決めている内容がある。」
近藤勇は土方歳三を不思議な様子で見ている。
土方歳三は近藤勇に真剣な表情で話し出す。
「総司か斉藤を斬る事態が起きた場合、俺は総司にも斉藤にも命令を下さない。」
近藤勇は土方歳三に静かに話し出す。
「手段を選ばない策士と喩えられる土方歳三の言葉に思えない。歳。理由を聞いても良いのかな?」
土方歳三は近藤勇に真剣な表情で話し出す。
「一つ目の理由。俺は、武士だが、男だから。二つ目の理由。総司と斉藤を同時に失いたくないから。」
近藤勇は土方歳三を不思議な様子で見た。
土方歳三は近藤勇に真剣な表情で話し出す。
「総司は新撰組のためと判断すれば、斉藤を斬る命令を受けると思う。斉藤も新撰組のためと判断すれば、総司を斬る命令を受けると思う。総司は斉藤を斬った瞬間に、斉藤は総司を斬った瞬間に、俺からも新撰組からも居なくなると思う。俺は、俺の命令が終了した瞬間に、総司も斉藤も当時に失うと思う。」
近藤勇は沖田総司と斉藤一を真剣な表情で見た。
土方歳三は近藤勇に真剣な表情で話し出す。
「以前の俺は、総司を斬る命令は斉藤に下す、斉藤を斬る命令は総司に下す、一番に良い方法だと思っていた。山南さんが切腹をした頃から、総司を切る命令を下す人物は斉藤ではなく、斉藤を切る命令を下す人物は総司ではない、と考えるようになった。」
近藤勇は土方歳三を真剣な表情で見た。
土方歳三は近藤勇に微笑んで話し出す。
「俺らしくないかな?」
近藤勇は土方歳三に微笑んで話し出す。
「鬼の副局長で策士と喩えられる土方歳三らしい。俺が以前から知る歳らしい。」
土方歳三は近藤勇に微笑んで話し出す。
「近藤さんの答えを聞いて安心した。」
近藤勇は土方歳三を微笑んで見た。
土方歳三は近藤勇に真剣な表情で話し出す。
「俺は、総司にも斉藤にも今の内容の命令を下したくない。」
近藤勇は土方歳三に真剣な表情で頷いた。
土方歳三は近藤勇に真剣な表情で話し出す。
「俺の話す内容が起きないように、今後も頼む。」
近藤勇は土方歳三に真剣な表情で話し出す。
「共に努力しよう。」
土方歳三は近藤勇に真剣な表情で頷いた。
近藤勇は沖田総司と斉藤一を真剣な表情で見た。
土方歳三は近藤勇に微笑んで話し出す。
「近藤さん。屯所に戻ろう。」
近藤勇は土方歳三を見ると、土方歳三に微笑んで頷いた。
土方歳三は傘を微笑んで持った。
近藤勇も傘を微笑んで取った。
近藤勇は傘を持ち、微笑んで居なくなった。
土方歳三も傘を持ち、微笑んで居なくなった。
ここは、沖田総司と斉藤一が居る場所。
沖田総司は、周りの桜の花や小川に流れる桜の花びらを微笑んで見ている。
斉藤一は少し離れた場所を普通の表情で見ている。
沖田総司は斉藤一を見ると、斉藤一に笑顔で話し出す。
「鈴ちゃんが今の景色を見たら喜びますよね!」
斉藤一は少し離れた場所を普通の表情で見ている。
沖田総司は斉藤一に不思議な様子で話し出す。
「斉藤さん。何かありましたか?」
斉藤一は沖田総司を見ると、沖田総司に普通に話し出す。
「何も無い。総司の話すとおり、美鈴さんは喜ぶ。」
沖田総司は斉藤一に苦笑して話し出す。
「斉藤さん。無理して話しを合わせていませんか?」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「辺り一面が桜色で綺麗だ。美鈴さんが喜ぶ光景だ。美鈴さんは喜ぶ。」
沖田総司は斉藤一を微笑んで見た。
斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。
沖田総司は小川を見ると、斉藤一に微笑んで話し出す。
「先程まで雨が降っていたのに、小川の水は綺麗ですね。」
斉藤一は小川を見ると、普通の表情で頷いた。
沖田総司は斉藤一を微笑んで見た。
斉藤一は小川を普通の表情で見ている。
沖田総司は小川を微笑んで見た。
たくさんの桜の花びらが、小川のゆっくりとした流れに乗り、沖田総司と斉藤一の前を通り過ぎて行く。
沖田総司は斉藤一を見ると、斉藤一に笑顔で話し出す。
「斉藤さん! 小川にたくさんの桜の花びらが流れています! 綺麗ですね!」
斉藤一はたくさんの桜の花びらが小川を流れる様子を見て、沖田総司に普通に話し出す。
「花筏。」
沖田総司は斉藤一を見ると、斉藤一に微笑んで話し出す。
「花筏。以前に聞いた記憶のある言葉です。今の様子が花筏なのですね。」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「次回から、花筏の言葉を使えるな。」
沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。
「はい。」
斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。
沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。
「鈴ちゃんに今の景色と花筏を早く見せてあげたいです。」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「今から美鈴さんの家に行け。」
沖田総司は斉藤一に残念な様子で話し出す。
「近藤さんと土方さんは、私と斉藤さんが屯所に長く戻らないと、寄り道をしていると思います。鈴ちゃんと出掛ける時間的な余裕はありません。」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「総司の今の話す内容は、今回のみ当てはまらない。」
沖田総司は斉藤一を不思議な様子で見た。
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「直ぐに屯所に戻る。屯所に戻ったら、直ぐに美鈴さんの家に出掛ける。以上の内容で行動する。」
沖田総司は斉藤一に微笑んで頷いた。
斉藤一は傘を取ると、沖田総司に普通に話し出す。
「総司。屯所に戻るぞ。」
沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。
「はい。」
斉藤一は傘を持ち、沖田総司を普通の表情で見た。
沖田総司は傘を微笑んで持った。
花筏は小川のゆっくりとした流れに乗って動いている。
地面は花散らしの雨が降った関係で、桜の花びらがたくさん落ちて桜色に染まっている。
沖田総司は傘を持ち、微笑んで歩き出した。
斉藤一は傘を持ち、普通に歩き出した。
* * * * * *
ここからは後書きになります。
この物語は既に掲載している物語の再改訂版です。
改訂前の雰囲気を出来るだけ残して改訂しました。
改訂前の物語を掲載するのは止めました。
以上、ご了承願いします。
ここからは改訂前の後書きを加筆訂正して書きます。
山南敬助さんが切腹をした時から最初に迎える桜の季節を設定した物語です。
近藤勇さんと土方歳三さんは、沖田総司さんと斉藤一さんを遠くで見ながら話す設定です。
近藤勇さん、土方歳三さん、沖田総司さん、斉藤一さんが、山南敬助さんの切腹などを含めて、それぞれに考えて、それぞれに悩んでいます。
「花筏(はないかだ)」についてです。
「ミズキ科の落葉低木」(←春の季語)
「桜が散って、水面を流れる様子を筏にたとえた言葉」または、「花の枝を折りそえた筏」(←春の季語)
「花の折り枝を筏にそえた文様」、または、「紋所の名前」
以上の内容などをいいます。
この物語は「桜が散って、水面を流れる様子を筏にたとえた言葉」の意味で使っています。
楽しんで頂けると嬉しいです。
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