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新撰組異聞 〜 竹の秋に話しかけ 〜


〜 第三版 〜


今は春。


ここは、京の町。


青空が広がっている。


ここは、屯所。


竹林が見える。


近藤勇の部屋の前に在る縁。


斉藤一は普通に来た。


斉藤一は部屋の中に普通に声を掛ける。

「斉藤です。」


障子が開いた。


近藤勇の姿が見えた。


近藤勇は斉藤一に普通の表情で頷いた。


斉藤一は近藤勇に普通の表情で軽く礼をした。


斉藤一は部屋の中に普通に入った。


直後の事。


ここは、屯所。


近藤勇の部屋。


近藤勇は普通に居る。

斉藤一は普通に居る。


近藤勇は斉藤一に普通に話し出す。

「斉藤。待っていた。」

斉藤一は近藤勇に普通の表情で軽く礼をした。

近藤勇は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤。頼みがある。」

斉藤一は近藤勇に普通に話し出す。

「お断りします。」

近藤勇は斉藤一を驚いた様子で見た。

斉藤一は近藤勇に普通に話し出す。

「失礼いたします。」

近藤勇は斉藤一を驚いた様子で見ている。

斉藤一は近藤勇に普通の表情で軽く礼をした。

近藤勇は斉藤一に僅かに慌てて話し出す。

「斉藤。待て。」

斉藤一は近藤勇を普通の表情で見た。

近藤勇は斉藤一に不思議な様子で話し出す。

「斉藤。全ての話を聞く前に断った理由は何だ?」

斉藤一は近藤勇に普通に話し出す。

「局長の今の仕草、局長の今の声音は、面倒な内容を頼む時の特徴です。部屋に入る前の局長の声を聞いと時点で、面倒な内容を頼みたい様子が伝わりました。」

近藤勇は斉藤一を苦笑して見た。

斉藤一は近藤勇を普通の表情で見た。

近藤勇は斉藤一に苦笑して話し出す。

「面倒な内容を頼むと分かっていたのに、部屋の中に入った理由は何だ?」

斉藤一は近藤勇に普通に話し出す。

「部屋の前に来たのに、局長に会わずに帰る行動を取ると、局長は俺を再び呼びます。面倒な時間が増えるため、局長と会いました。」

近藤勇は斉藤一に苦笑して話し出す。

「斉藤。立場を分かっているのか?」

斉藤一は近藤勇に普通に話し出す。

「立場が分かっているので、近藤さんと呼ばず、局長と呼んでいます。」

近藤勇は斉藤一を苦笑して見た。

斉藤一は近藤勇に普通に話し出す。

「面倒な内容を他人に押し付ける。嫌な内容を他人に押し付ける。以上の内容は、局長の仕事に該当しないと考えています。局長。部下に面倒な内容を押し付けず、部下に嫌な内容も押し付けず、局長本人で対処をしてください。」

近藤勇は斉藤一を苦笑して見ている。

斉藤一は近藤勇に普通に話し出す。

「局長には、正妻の“ツネさん”がいらっしゃいます。局長は親しく付き合う女性が幾人もいます。親しく付き合う女性を更に増やしたいと考える理由が分かりません。」

近藤勇は斉藤一を苦笑して見ている。

斉藤一は近藤勇に普通に話し出す。

「局長の状況と土方さんの状況には、大きな開きがあります。土方さんが俺に頼む場合と局長が俺に頼む場合には、大きな違いがあります。」

近藤勇は斉藤一に苦笑して話し出す。

「斉藤が私に説教をしているように感じる。」

斉藤一は近藤勇に普通に話し出す。

「俺は局長に説教が出来る立場ではありません。」

近藤勇は斉藤一を苦笑して見た。

斉藤一は近藤勇に普通に話し出す。

「話し忘れた内容がありました。総司が、試衛館に宛てて、総司の家族に宛てて、ツネさんに宛てて、文を書く時があります。文の内容が気になりませんか?」

近藤勇は斉藤一に苦笑して話し出す。

「総司が次に文を書く日を教えてくれ。」

斉藤一は近藤勇に普通に話し出す。

「総司の話の内容から推測すると、近い内に文を書くと思います。」

近藤勇は斉藤一に普通に話し出す。

「総司が今回の出来事を文に書かない方法はあるのか?」

斉藤一は近藤勇に普通に話し出す。

「今回の出来事に関しては、総司は気付いていない様子です。」

近藤勇は斉藤一を僅かに安心した表情で見た。

斉藤一は近藤勇に普通に話し出す。

「局長。今回の件は、局長本人で上手に納めて、当面は静かに過ごしてください。」

近藤勇は斉藤一を苦笑して見た。

斉藤一は近藤勇に普通に話し出す。

「局長。思い出した出来事があります。数日前、総司が、近藤さんと綺麗な女性が一緒に居る姿を見て、怒っていました。更に数日前、総司が、近藤さんと別の綺麗な女性と一緒に居る姿を見て、怒っていました。総司の様子から推測すると、近い内に文を書きます。」

近藤勇は斉藤一を僅かに驚いた様子で見た。

斉藤一は近藤勇を普通の表情で見た。

近藤勇は斉藤一に僅かに困惑して話し出す。

「斉藤。気付いていないと話した後に、今の内容を話した理由を教えてくれ。」

斉藤一は近藤勇に普通に話し出す。

「今回の出来事に関しては、総司は気付いていない様子なので、総司は気付いていない様子だと話しました。今の内容は、突然に思い出したので話しました。」

近藤勇は斉藤一に苦笑して話し出す。

「斉藤は怖い人物だ。」

斉藤一は近藤勇に普通に話し出す。

「お褒めの言葉として受け取ります。」

近藤勇は斉藤一に苦笑して話し出す。

「総司の件は斉藤に任せる。無事に収めてくれ。」

斉藤一は近藤勇に普通に話し出す。

「総司の件は考えておきます。」

近藤勇は斉藤一を苦笑して話し出す。

「考えておきます、ではなく、収めてくれ。」

近藤勇は近藤勇を普通の表情で見た。

近藤勇は斉藤一を苦笑して見た。

斉藤一は近藤勇に普通に話し出す。

「失礼します。」

近藤勇は斉藤一を苦笑して見ている。

斉藤一は近藤勇に普通の表情で軽く礼をした。


斉藤一は部屋を普通に出て行った。


少し後の事。


ここは、屯所。


縁。


斉藤一は普通に歩いている。


沖田総司が笑顔で歩く姿が見えた。


斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。


沖田総司は斉藤一を笑顔で見た。


斉藤一は沖田総司を普通の表情で見ている。


沖田総司は斉藤一の傍に笑顔で来た。


斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「近藤さんの様子は普段と違いましたか?」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「普段と同じだ。」

沖田総司は斉藤一に不思議な様子で話し出す。

「本当ですか?」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「近藤さんは、俺に今回の総司の件を任せると話した。総司。今回は文を書くのは止めた方が良い。」

沖田総司は斉藤一に僅かに驚いて話し出す。

「近藤さんは私が文を書く考えがあると気付いたのですね。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に考え込んで話し出す。

「文を書くのは止めた方が良いのでしょうか?」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「時間がある。ゆっくりと考えて結論を出せ。」

沖田総司は斉藤一に不思議な様子で話し出す。

「時間がある? 意味が分かりません。」

斉藤一が沖田総司に普通に話し出す。

「総司が近い内に再び文を書きたいと思うから、時間があると話した。」

沖田総司は斉藤一に不思議な様子で話し出す。

「斉藤さん。意味が分かりません。詳しく説明してください。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一を考え込んで見た。


辺りに風が吹いた。


竹の葉が風に乗って舞いながら落ち始めた。


沖田総司は竹の葉の舞う様子を微笑んで見た。

斉藤一は竹の葉の舞う様子を普通の表情で見た。


風に乗って舞う竹の葉は、全て地面に舞い落ちた。


沖田総司は斉藤一を見ると、斉藤一に微笑んで話し出す。

「縁で長話をすると、疲れるし迷惑になりますよね。別な場所で話しましょう。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。


沖田総司は微笑んで歩き出した。

斉藤一は普通に歩き出した。


静かな風が吹いた。


竹の葉が風に舞いながら地面へと落ち始めた。


竹の葉の舞う様子を見ると、今の季節が秋だと錯覚する時がある。


風に乗って舞う竹の葉は、今の季節が秋だと錯覚する感覚を与えながら、全て地面に舞い落ちた。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語は既に掲載している物語の再改訂版です。

物語の展開や雰囲気を出来るだけ残して改訂しました。

改訂前の物語を掲載するのは止めました。

以上、ご了承願いします。

ここからは改訂前の後書きを加筆訂正して書きます。

土方歳三さんは「策士」と喩えられる人物なので、斉藤一さんは「新撰組異聞 短編 紫陽花談義」の物語では、言葉を選びながら話す雰囲気で書きました。

近藤勇さんは、真っ直ぐなイメージがあります。

この物語では、斉藤一さんは土方歳三さんより自由に話す設定です。

斉藤一さんは、誰かの指示で動いているのか、後で何か起きた時に、話を有利に進めるための行動なのか、他に理由があるのか、謎のある雰囲気になっています。

「竹の秋(たけのあき)」は、「秋」の文字を使っていますが、「春の季語」です。

春の時期に竹の葉が落ちるところから、「竹の秋」といいます。

「陰暦の三月の異称」になっています。

竹の葉がさらさらと落ちる姿が、この物語の雰囲気に合うと考えて題名に使用しました。

「竹の秋」の頃に、竹の葉が風に乗って落ちる竹林を見ながらお茶を飲む時間も良いと思います。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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