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新撰組異聞 〜 愛逢月が近づいて 〜


〜 第三版 〜


ここは、江戸。


少し経つと本格的な夏の暑さが始まる。


数日前から、過ごしやすい日が続いている。


沖田総司は病気が悪化したため、新撰組の隊士達と離れて、一人で隠れるように静養を続けている。

沖田総司の体調は、数日前から続く過ごしやすさにより、僅かだが落ち着いている。


沖田総司は、新撰組の一番組組長を務め、京の治安のため、将軍のため、幕府のため、厳しい任務に就いてきた。

途中から、武士の時代を変えようとする維新側の勢力が優勢になり、新撰組は逆賊と呼ばれる立場に変わってしまった。


新撰組の隊士は、京に居ると危険になったため、江戸へ向かった。


京から離れた新撰組の隊士達は、戦いの中で亡くなる、新撰組から抜ける、逃げる、など、散り散りになってしまった。


沖田総司は、病気が悪化したため、新撰組の隊士達と離れているが、新撰組の幹部になる。

沖田総司は、逆賊の立場になる。


沖田総司は、長時間の体を動かす状態は辛くなっているため、多くの時間を床の中で過ごすようになっている。

療養中の沖田総司には、尋ねる者も、文を送る者も、ほとんど居ない。


ここは、沖田総司の療養先の家。


沖田総司の療養する部屋。


沖田総司は床の中で静かに横になっている。


障子が静かに開いた。


沖田総司は床の中で静かに横になっている。


静養先の家の人が、沖田総司を静かに見た。


沖田総司は床の中で静かに横になっている。


静養先の家の人は、静かに障子を閉めた。


沖田総司は床の中で静かに横になっている。


療養先の家の人の気配は無くなった。


沖田総司は床の上に体を起こすと、障子の方を不思議な様子で見た。


文が障子の傍に置いてある。


沖田総司は文の傍にゆっくりと不思議な様子で来た。


沖田総司は文を取ると、文を見て、苦笑して呟いた。

「今の私に文を書く奇特な人がいたんだ。」

沖田総司は文を持ちながら、差出人を苦笑して見た。


文の差出人は、沖田総司が知る人物だった。


沖田総司は文を持ちながら、文の差出人の名前を驚いて見た。

沖田総司は文を持ちながら、文の差出人の名前を微笑んで見た。

沖田総司は文を持ちながら、文の差出人の名前を見て、微笑んで呟いた。

「無事だったんだね。良かった。」

沖田総司は文を広げると、文を微笑んで読み始めた。


沖田総司が文を読んで直ぐの事。


沖田総司は文を読みながら、笑顔になった。

沖田総司は文を読みながら、笑顔で話し出す。

「少し経つと、私は父親になるんだ! 嬉しいな!」

沖田総司は文を読みながら、笑顔で話し出す。

「男子かな〜?! 女子かな〜?! 楽しみだな〜!」

沖田総司は文を読みながら、笑顔で話し出す。

「子供の名前は私に付けて欲しいと書いてあるから、男子の名前と女子の名前の両方を考えるんだ! 大変だけど嬉しいな〜!」

沖田総司は文を笑顔で読んだ。


少し後の事。


沖田総司は文を笑顔で読み終わった。


沖田総司は文を広げながら、笑顔で話し出す。

「斉藤さんに文を書こう! 斉藤さんも驚くよね! あっ! 今は斉藤さんと名乗っていなかった! 今回は気にしないでおこう!」


沖田総司は文を机に笑顔で大切に置いた。


沖田総司は文を書く準備を笑顔で始めた。


少し後の事。


沖田総司は文を書く準備を笑顔で終えた。


沖田総司は文を笑顔で書こうとした。

沖田総司は何かを思い出した様子になり、文を書くのを止めた。

沖田総司は寂しく呟いた。

「私と斉藤さんは、離れて過ごしているけれど、斉藤さんは今の私の状況を推測が出来る。斉藤さんは私の子供について知らない。斉藤さんが鈴と子供について知らせる内容の文を読めば、私が鈴と子供を頼む文ではないと書いても、鈴と子供を頼む内容の文だと判断する。私も斉藤さんの立場ならば、鈴と子供を頼む内容の文と判断する。」

沖田総司は寂しくため息をついた。

沖田総司は文を見ると、寂しく呟いた。

「斉藤さんに私の子供について伝えたいな。斉藤さんに逢って、たくさん話したいな。」

沖田総司は文を見ながら、寂しくため息をついた。


文から優しさが伝わってきた。


沖田総司は文を真剣な表情で見た。

沖田総司は文を見ながら、真剣な表情で呟いた。

「今の私は浮かれている状況ではない。今の私に出来る最善の言動を選ばなければならない。」

沖田総司は文を見ながら、真剣な表情で考え込んだ。


僅かに後の事。


沖田総司は文を見ながら、真剣な表情で呟いた。

「斉藤さんには、いつになるか分からないけれど、子供について必ず伝える。姉さんに子供について伝えたいけれど、鈴は文に伝えないで欲しいと書いているから、姉さんには伝えられない。鈴の望みどおりにする。私は騒がずに過ごす。鈴と子供の将来が係っている。気を引き締めて過ごす。」

沖田総司は文を見ながら、真剣な表情で軽く息をはいた。

沖田総司は文を真剣な表情で書き始めた。


暫く後の事。


沖田総司は文を書き終わった。


沖田総司は軽く息をはいた。

沖田総司は書いた文を見ながら、呟いた。

「疲れた〜」

沖田総司は文を大切に持った。


沖田総司は文を大切に持ちながら、部屋をゆっくりと出て行った。


直後の事。


ここは、沖田総司の居る部屋の外に在る縁。


青空が見える。


沖田総司は文を大切に持ちながら、ゆっくりと来た。


沖田総司は文を大切に持ちながら、青空を見て、微笑んで呟いた。

「良い天気だな。」


沖田総司は文を大切に持ちながら、微笑んでゆっくりと歩き出した。


僅かに後の事。


ここは、縁。


沖田総司は文を大切に持ちながら、微笑んでゆっくりと歩いている。


療養先の家の人が普通に歩く姿が見えた。


沖田総司は文を大切に持ちながら、療養先の家の人に近くに微笑んでゆっくりと来た。


療養先の家の人は立ち止まると、沖田総司を不思議な様子で見た。


沖田総司は文を大切に持ちながら、療養先の家の人に真剣な表情で話し出す。

「すいません。届けたい文が有ります。届け先は紙に書きました。お願いします。」

療養先の家の人は沖田総司に微笑んで軽く礼をした。

沖田総司は療養先の家の人に文を大切に差し出した。

療養先の人は沖田総司から文を微笑んで受け取った。

沖田総司は療養先の家の人に微笑んで軽く礼をした。

療養先の家の人は文を持ちながら、沖田総司に微笑んで話し出す。

「先程より元気に見えます。楽しい出来事がありましたか?」

沖田総司は療養先の家の人に微笑んで話し出す。

「とても嬉しい出来事がありました。」

療養先の家の人は文を持ちながら、沖田総司に微笑んで話し出す。

「文は確かにお預かりしました。必ず届けます。安心してください。」

沖田総司は療養先の家の人に微笑んで話し出す。

「よろしくお願いします。」

療養先の家の人は文を持ちながら、沖田総司に微笑んで軽く礼をした。


沖田総司は微笑んでゆっくりと歩き出した。


僅かに後の事。


ここは、沖田総司の部屋の前に在る縁。


沖田総司は微笑んでゆっくりと来た。


沖田総司は庭を微笑んで見た。


緑色の葉を繁らせる木が有る。


沖田総司は庭を見ながら、微笑んで呟いた。


「文の返事が楽しみだな。」


風が吹いた。


木の葉の重なる音が微かに聞こえた。


沖田総司は庭を見ながら、微笑んで呟いた。

「斉藤さんとたくさん話したいな。私が病気でなければ、斉藤さんに直ぐに話すのに。斉藤さんは私の話を、喜んで聞いてくれるのに。」

沖田総司は青空を微笑んで見た。


青空の中を白い雲がゆっくりと動いている。


沖田総司は青空を見ながら、微笑んで呟いた。

「斉藤さんが慕う女性が現れて、祝言を挙げて、子供が生まれる。みんなで楽しく遊べる。子供達が成長したら、酒が飲める。子供同士が祝言を挙げたら、斉藤さんと親戚になる。楽しみな出来事がたくさんある。」


青空の中を白い雲がゆっくりと動いている。


沖田総司は青空を見ながら、心配して呟いた。

「鈴に逢いたい。初産なのに、頼れる人物が物凄く限られていて、不安なはずだ。鈴の書いた文の内容から考えると、出産を迎えるための状況は調っているらしい。心配と安全が混じる不思議な気持ちだ。」


青空の中を様々な形の雲がゆっくりと動いている。


沖田総司は青空を見ながら、真剣な表情で呟いた。

「私は、一日でも長く生きなければならない。子供に一度で良いから逢いたい。子供と一日でも長く同じ空の下で生きたい。私は、まだ、死ねない。」

沖田総司は庭を真剣な表情で見た。


紫陽花が咲く姿が見える。


沖田総司は紫陽花を見ながら、微笑んで呟いた。

「綺麗だな。」

沖田総司は青空を微笑んで見た。


青空の中を白い雲がゆっくりと動いている。


沖田総司は紫陽花を見ると、寂しく呟いた。

「父親らしい言動が何も出来なくてごめんね。一日でも長く同じ空の下で過ごせるように、生きるからね。私は、まだ、死なないからね。」

沖田総司は青空を見ると、微笑んで話し出す。

「今日の私が受け取った大切な文は、斉藤さんに預けると決めました。今日の私が受け取った文を、斉藤さんが読んだ時の姿が楽しみです。」

沖田総司は視線を微笑んで戻した。


沖田総司は部屋の中にゆっくりと静かに入って行った。


当日の夜の事。


ここは、草原の広がる穏やかな場所。


穏やかな日差しが辺りを優しく包んでいる。


大きな木の下。


斉藤一は横になって普通に寝ている。


沖田総司は斉藤一に笑顔で話し出す。

「斉藤さん〜! 寝ないでください〜! 起きてください〜! たくさん話しましょう〜! 紫陽花も綺麗に咲いていますよ〜!」

斉藤一は横になったまま、普通に目を開けた。

沖田総司は斉藤一を笑顔で見た。

斉藤一は横になったまま、沖田総司に普通に話し出す。

「総司。うるさい。」

沖田総司は斉藤一に斉藤一に笑顔で話し出す。

「斉藤さんが起きてくれました! 斉藤さん! たくさん話しましょう!」

斉藤一は横になったまま、沖田総司に普通に話し出す。

「眠い。」

沖田総司は斉藤一を苦笑して見た。

斉藤一は横になったまま、普通に目を閉じた。

沖田総司は斉藤一に笑顔で話し出す。

「斉藤さん! 久しぶりに逢えたんですよ! 寝ないでください! たくさん話しましょう!」

斉藤一は横になったまま、目を開けると、沖田総司に普通に話し出す。

「仕方が無い。総司。早く話せ。」

沖田総司は斉藤一を苦笑して見た。

斉藤一は横になったまま、沖田総司に普通に話し出す。

「総司。話がないのか? 寝る。」

沖田総司は斉藤一に慌てて話し出す。

「斉藤さん! 寝ないでください!」

斉藤一は横になったまま、普通に目を閉じた。

沖田総司は斉藤一に苦笑して話し出す。

「斉藤さん〜! 寝ないでください〜!」

斉藤一は横になって普通に寝ている。

沖田総司は斉藤一を苦笑して見た。


朝になった。


ここは、一軒の或る建物。


一室。


斉藤一は普通に起きた。


斉藤一は部屋の中を普通の表情で見た。


変わった様子はない。


斉藤一は普通の表情で呟いた。

「夢?」

斉藤一は普通の表情で呟いた。

「総司に起こされたのは覚えているが、後の出来事が思い出せない。不思議な夢だ。」


斉藤一は障子を静かに開けた。


庭に紫陽花が咲く姿が見えた。


斉藤一は紫陽花を見ながら、普通の表情で呟いた。

「紫陽花。懐かしく感じる。」


斉藤一は障子を静かに閉めた。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語は既に掲載している物語の改訂版です。

改訂前の物語の展開や雰囲気を出来るだけ残しながら改訂しました。

改訂前の物語を掲載するのは止めました。

以上の点、ご了承願います。

ここからは改訂前の後書きを加筆訂正して書きます。

この物語は、「新撰組異聞外伝 短編 清明 染井吉野が舞い散るなか」で、沖田総司さんの子供が、藤田五郎さん(斉藤一さんが後に名乗る名前)に、手紙を渡す場面が登場します。

「新撰組異聞外伝 短編 清明 染井吉野が舞い散るなか」を書くために、それまでの経過などを考えました。

そこから考えた物語です。

斉藤一さんは、物語の時間設定には違う名前ですが、名前を変更していません。

細かい点をいろいろと想像して物語を書く間に、切なくて悲しくなりました。

悲しい物語にしないために、希望を持って明るく生きる沖田総司さんが登場する物語になるように考えました。

この物語は、沖田総司さんと斉藤一さんの距離は離れていますが、同じ時間を共有する場面があります。

この物語の時間設定時の沖田総司さんと斉藤一さんは、状況的に共に過ごせないので、一緒に居る場面を書きたくて考えました。

亡くなる直前の沖田総司さんは、意識がはっきりとしない事が多かったと伝わっています。

この物語の沖田総司さんは、強くしっかりと生きると決めました。

沖田総司さんの子供の生まれた時期の設定は、京や江戸での様々な出来事が重なった頃に生まれる状況と最初から決めていました。

生まれた日の詳細な日付は決めていません。

沖田総司さんが亡くなったのは、慶応四年五月三十日(1868年7月19日)です。

この物語は、現在の暦で六月頃の設定です。

「愛逢月(あいぞめづき)」は「七月の別名」だそうです。

「愛逢月」がこの物語に合うと思い、題名の暦の時期と物語の時期が違いますが、題名に使用しました。

この物語は想像の部分が多いです。

沖田総司さんが病気のため療養中は、沖田総司さんが亡くなる時期が近くなっている、状況は、史実と重なります。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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