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新撰組異聞 〜 愛逢月の夢語り 〜
〜 第三版 〜
今は夏。
ここは、江戸。
暑さが始まる頃だが、涼しい日が続いている。
沖田総司は隠れるように静養する日が続いている。
沖田総司は床に着く時間が少しずつ長くなっている。
沖田総司は体調が悪いため、涼しさが続くのは過ごしやすい。
今の新撰組は、維新側が優勢になったために、逆賊のような立場になってしまった。
沖田総司を含めた新撰組隊士にとって、危険な日々が続いている。
沖田総司も危険な日々が続いているが、戦いから離れているため静かな日が過ぎている。
ここは、沖田総司の療養先の家。
沖田総司の療養する部屋。
沖田総司は床の中で静かに横になっている。
障子が静かに開いた。
沖田総司は床の中で静かに横になっている。
障子が静かに閉まった。
沖田総司は床の上に体をゆっくりと起こすと、障子の方向を不思議な様子で見た。
文が障子の傍に置いてある。
沖田総司は文の傍に笑顔でゆっくりと来た。
沖田総司は文を大切に取ると、差出人を笑顔で確認した。
文の差出人は、沖田総司が大切に想う人物だった。
沖田総司は文を丁寧に広げると、文を笑顔で読み始めた。
沖田総司が文を読み始めて直ぐの事。
沖田総司は文を読みながら、笑顔で声を出した。
「男子が生まれたんだ〜! 鈴も子供も元気なんだ〜! 良かった〜! 嬉しいな〜!」
沖田総司は文を笑顔で読んだ。
沖田総司は文を読みながら、笑顔で声を出した。
「子供の名前は、何処に書いてあるのかな?!」
沖田総司は文を読みながら、恥ずかしい表情になった。
沖田総司は文を読みながら、恥ずかしく話し出す。
「子供の名前は私の考えたんだ! 嬉し過ぎて忘れてしまった!」
沖田総司は文を笑顔で読んだ。
少し後の事。
沖田総司は文を笑顔で読み終わった。
沖田総司は文を大切に持ちながら、笑顔で声を出す。
「剣術は幼い頃から教えた方が良いよね! もしかしたら、剣術を真剣に学ぶために、少し様子を見た方が良いのかな?! どちらが良いのかな?!」
沖田総司は文を大切に持ちながら、文を笑顔で見た。
沖田総司は文を大切に持ちながら、笑顔で声を出す。
「子供が成長したら酒が飲める! 斉藤さんと私と子供で、酒を飲める! 斉藤さんが祝言を挙げて男子が生まれたら、斉藤さん、斉藤さんの子供、私、私の子供、で酒が飲める! 物凄く楽しみだな!」
沖田総司は文を笑顔で読んだ。
少し後の事。
沖田総司は文を笑顔で読み終わった。
沖田総司は文を大切に持ちながら、笑顔で声を出す。
「斉藤さんも、鈴のような優しくて賢くてしっかりした女性と祝言を挙げると良いな! 斉藤さんが祝言を挙げると決めた女性は、斉藤さんに相応しい女性のはずだよね! 斉藤さんの子供と私の子供が祝言を挙げる報告をしたら、直ぐに了承の返事をするぞ! 子供が祝言を挙げて、子供が生まれたら、私は祖父になる! 鈴は祖母になる! 鈴が祖母になる姿は想像が出来ない! 凄いな〜! 楽しみだな〜!」
沖田総司は文を大切に持ちながら、文を笑顔で見た。
沖田総司は文を大切に持ちながら、部屋の外に微笑んでゆっくりと出て行った。
直後の事。
ここは、沖田総司の療養先の部屋の前に在る縁。
沖田総司は文を大切に持ちながら、空を笑顔で見た。
青空が広がっている。
沖田総司は文を大切に持ちながら、庭を笑顔で見た。
紫陽花が咲いている。
沖田総司は文を大切に持ちながら、微笑んでゆっくりと庭に行った。
僅かに後の事。
ここは、沖田総司の療養先の家の庭。
紫陽花が咲いている。
紫陽花の見頃の終わりに近く、青空の下で咲くため、しっとりとした美しさはない。
紫陽花は陽の光に当たって輝いている。
沖田総司は文を大切に持ちながら、紫陽花の傍に微笑んでゆっくりと来た。
沖田総司は文を大切に持ちながら、微笑んでゆっくりとしゃがんだ。
沖田総司は文を大切に持ちながら、紫陽花を見て、微笑んで静かに声を出す。
「私の子供として生まれてくれて、とても嬉しいよ。私の子供として生まれてくれたのに、逢えなくて、何も出来ない。ごめんね。幾日幾月も生きられるか分からないけれど、一日でも長く生きるからね。一日でも長く生きて、二人が悲しむ日を一日でも短くするからね。二人に物凄く逢いたいけれど、今は危険が多くて逢えないんだ。二人に逢えなくても、二人を常に想っているからね。二人に必ず逢えると信じているよ。二人に逢える日を楽しみに待ちながら過ごすからね。何も出来ない父親だけど、想うしか出来ない父親だけど、二人を本当に大切に想っているからね。」
沖田総司は文を大切に持ちながら、紫陽花を微笑んで見た。
紫陽花は陽の光に当たって輝き続けている。
沖田総司は文を大切に持ちながら、紫陽花を見て、微笑んで静かに声を出す。
「強く優しい人に育ってね。元気で丈夫な人に育ってね。お母さんを大事に大切にしてね。お母さんの笑顔を守ってね。」
沖田総司は文を大切に持ちながら、紫陽花を微笑んで見た。
僅かに風が吹いた。
心地良い風が、沖田総司の元に吹いてきた。
沖田総司は文を大切に持ちながら、涼しい表情になった。
風は止んだ。
沖田総司は文を持ちながら、紫陽花を見て、微笑んで静かに声を出す。
「鈴。何も出来ず、何も知らずに、江戸に来てしまった。本当にごめん。子供を授かったと分かっていれば、鈴を京に残さなかった、鈴を京に残す状況になったとしても、鈴が今よりは僅かでも安心できる状況を整えられた。鈴と子供が今の状況になってしまったのは、私が至らなかったせいだ。鈴に更なる苦労を掛ける状況になってしまった。鈴。本当にごめん。」
沖田総司は文を大切に持ちながら、紫陽花を寂しく見た。
紫陽花は陽の光に当たって輝き続けている。
沖田総司は文を大切に持ちながら、紫陽花を見て、微笑んで静かに声を出す。
「強くて優しい人に育ててくれ。元気で丈夫な人に育ててくれ。鈴は、しっかりとして優しくて賢い。後は、鈴に任せる。」
沖田総司は文を大切に持ちながら、微笑んでゆっくりと立ち上がった。
沖田総司は文を大切に持ちながら、空を微笑んで見た。
青空が広がっている。
沖田総司は文を大切に持ちながら、青空を見て、微笑んで静かに声を出す。
「斉藤さんに逢いたいな〜 私に待ちに待った子供が授かったと知る時は、どのような表情になるのかな〜? 子供が男子だと知る時は、どのような表情になるのかな〜 早く祝言を挙げないかな〜 女子を生んでくれないかな〜 私の子供と斉藤さんの子供が、祝言を挙げないかな〜 私と斉藤さんは、親戚になるんだけどな〜! 楽しい出来事がたくさんあるな〜」
沖田総司は文を大切に持ちながら、紫陽花を微笑んで見た。
紫陽花は陽の光に当たって輝き続けている。
沖田総司は文を大切に持ちながら、紫陽花を見て、真剣な表情で静かに声を出す。
「今は、頻繁に文を交わすのは危険な状況だ。危険な状況は暫く続くはずだ。想いを伝えるだけの文は、今回が最後だ。次に文を書く時は、二人に逢いに行く時だ。」
沖田総司は文を大切に持ちながら、真剣な表情で、ゆっくりと歩き出した。
少し後の事。
ここは、沖田総司が療養する部屋。
沖田総司は文を机に大切に置いた。
沖田総司は文を書く準備を真剣な表情で始めた。
少し後の事。
沖田総司は文を書く準備を終えた。
沖田総司は真剣な表情で文を書き始めた。
暫く後の事。
沖田総司は文を真剣な表情で書き終わった。
沖田総司はゆっくりと息をはくと、静かに声を出す。
「想像より書く内容がたくさんあった。少し疲れたかな。」
沖田総司は文を大切に持ちながら、部屋をゆっくりと出て行った。
僅かに後の事。
ここは、縁。
療養先の家の人は普通に歩いている。
沖田総司は文を大切に持ちながら、微笑んでゆっくりと歩いている。
療養先の家の人は立ち止まると、沖田総司を不思議な様子で見た。
沖田総司は文を大切に持ちながら、微笑んでゆっくりと来た。
療養先の人は沖田総司に普通の表情で軽く礼をした。
沖田総司は文を大切に持ちながら、療養先の人に微笑んで話し出す。
「文を書きました。いつもご迷惑をお掛けいたしますが、今回もよろしくお願い致します。」
療養先の家の人は、沖田総司に微笑んで軽く礼をした。
沖田総司は療養先の家の人に文を微笑んで差し出した。
療養先の家の人は沖田総司から文を受け取ると、沖田総司に微笑んで話し出す。
「文は必ず届けます。安心してください。」
沖田総司は療養先の家の人に微笑んで軽く礼をした。
療養先の家の人は文を持ちながら、沖田総司に微笑んで話し出す。
「今日はとても調子が良さそうですね。」
沖田総司は療養先の家の人に微笑んで話し出す。
「はい。早く元気になって、実施したい出来事がたくさんあります。後の出来事を考える間に、調子が良くなってきました。」
療養先の家の人は文を持ちながら、沖田総司を微笑んで見た。
沖田総司は療養先の家の人に微笑んで軽く礼をした。
療養先の家の人は文を持ちながら、沖田総司に微笑んで軽く礼をした。
沖田総司は微笑んでゆっくりと歩き出した。
僅かに後の事。
ここは、沖田総司の療養する部屋の前に在る縁。
沖田総司は微笑んで来た。
沖田総司は空を微笑んで見た。
綺麗な青空が広がっている。
沖田総司は青空を見ながら、微笑んで静かに声を出した。
「斉藤さんに今回も大事な文を預けます。斉藤さんが今回の文を読む日が楽しみです。」
沖田総司は部屋の中に微笑んでゆっくりと入って行った。
少し後の事。
ここは、沖田総司の療養する部屋。
沖田総司は床の中に静かに横になっている。
沖田総司は床の上にゆっくりと体を起こした。
沖田総司は床の上に体を起こしながら、考え込んだ。
沖田総司は床の上に体を起こしたまま、考え込んで呟いた。
「姉さんも鈴と子供の存在を知れば喜ぶと思う。鈴の望みどおり、姉さんに鈴と子供について伝えないと決めたけれど、最善の決断なのかな? 困った時と頼りたい時のために、姉さん宛ての文を書いて、鈴に預けるけれど、最善の決断なのかな? 今の私には何も出来ない。今の私は、鈴に全て任せるしかない。考えても分からない出来事が多い。難しいな。」
沖田総司は床の上に体を起こしながら、静かに軽く息をはいた。
沖田総司は床の上に体を起こしながら、考え込んで呟いた。
「斉藤さんに逢いたい。斉藤さんとたくさん話したい。」
沖田総司は床の上に体を起こしながら、静かに軽く息をはいた。
沖田総司は床の中にゆっくりと横になった。
当日の夜の事。
ここは、穏やかで心地良い日差しが辺りを照らす場所。
季節は夏だが、蒸し暑さはなく、過ごしやすい。
様々な色の綺麗な紫陽花が一面に咲いている。
紫陽花の見頃は終わりに近付いているはずだが、見頃のように綺麗に咲いている。
沖田総司は笑顔で来た。
斉藤一が紫陽花を普通に見る姿を見付けた。
沖田総司が斉藤一に笑顔で声を掛ける。
「斉藤さん〜!」
斉藤一は紫陽花を普通の表情で見ている。
沖田総司は斉藤一を見ながら、不思議な様子で呟いた。
「もしかして、違う名前だと返事をしてくれないのかな?」
斉藤一は紫陽花を普通の表情で見ている。
沖田総司は斉藤一を不思議な様子で見た。
斉藤一は普通に歩き出した。
沖田総司は斉藤一を笑顔で見た。
斉藤一は普通に来た。
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「総司の声は、しっかりと聞こえる。騒ぐな。」
沖田総司は斉藤一に嬉しく話し出す。
「斉藤さん! とても嬉しい出来事が起きました!」
斉藤一が沖田総司に普通に話し出す。
「総司を見るだけで、総司にとって、とても嬉しい出来事が起きたのが分かる。」
沖田総司は斉藤一を笑顔で見た。
「さすが斉藤さんです!」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「総司。何が起きた?」
沖田総司は斉藤一に嬉しく話し出す。
「それは、ひ、み、つ! です!」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「俺をわざわざ呼んだのは、俺に秘密だと話すためなのか?」
沖田総司は斉藤一を笑顔で見た。
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「総司。俺は忙しい。帰る。」
沖田総司は斉藤一に慌てて話し出す。
「斉藤さん! すいません! 怒りましたか?! とても嬉しい出来事が起きたので、調子に乗り過ぎてしまいました!」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「俺は怒っていない。安心しろ。ついでに、騒ぐな、動揺するな、しっかりしろ、も加える。」
沖田総司は斉藤一を驚いて見た。
斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。
沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。
「斉藤さんの話すとおりですよね。私は落ち着いてしっかりとしないといけませんね。」
斉藤一は沖田総司を普通の表情で見ている。
沖田総司が斉藤一に笑顔で話し出す。
「斉藤さんが怒っていなくて安心しました! 斉藤さんの話すとおり、しっかりとします! 斉藤さんに逢えてとても嬉しかったです!」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「総司。本当に嬉しい出来事が起きたんだな。良かったな。」
沖田総司は斉藤一に笑顔で話し出す。
「はい!」
斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。
沖田総司が斉藤一に笑顔で話し出す。
「斉藤さん! 次に逢った時もたくさん話しましょう!」
斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。
沖田総司は紫陽花の咲く中を、楽しく笑顔で歩き出した。
斉藤一は紫陽花の咲く中を、普通の表情で歩き出した。
朝になった。
ここは、一軒の屋敷。
一室。
斉藤一は横になって寝ている。
斉藤一は体を普通に起こした。
斉藤一は普通の表情で呟いた。
「夢。」
斉藤一は普通の表情で呟いた。
「総司は相変わらずだった。総司の話す秘密は何だ? 総司は時折だが面白く驚く言動をする。何が起きるのか想像が出来ない時がある。」
斉藤一は障子を静かに開けた。
紫陽花の花が見える。
斉藤一は紫陽花を見ながら、普通の表情で呟いた。
「今は何をしている?」
心地良く涼しい風が吹いた。
斉藤一は紫陽花を見ながら、普通の表情で呟いた。
「再び逢おう。楽しみに待つ。」
斉藤一は障子を静かに閉めた。
* * * * * *
ここからは後書きになります。
この物語は既に掲載している物語の再改訂版です。
改訂前の物語の展開や雰囲気を出来るだけ残しながら改訂しました。
改訂前の物語を掲載するのは止めました。
以上の点、ご了承願います。
ここからは改訂前の後書きを加筆訂正して書きます。
「新撰組異聞 短編 愛逢月が近づいて」の後日談です。
この作品も書く間に切なく悲しくなりました。
沖田総司さんが、子供が無事に生まれた事を知らずに亡くなるのが可哀想に思いました。
そのため、子供が生まれた事を知る物語を考えました。
斉藤一さんは、この時期の名前は別名ですが、名前を変えずに登場しています。
沖田総司さんは、自分の亡くなる時期が分かり始めている中で、覚悟、新しい家族のために最期まで生きる希望、両方の気持ちを抱いています。
沖田総司さんは複雑で哀しい思いを抱えながら、明るく希望を持って生きています。
斉藤一さんと沖田総司さんは、同時に同じ夢を見る設定です。
沖田総司さんは、斉藤一さんに伝えたい話があるのに、斉藤一さんの事を考えて、最後まで伝えませんでした。
斉藤一さんは沖田総司さんの様子は気になりますが、詳しい事は質問しませんでした。
沖田総司さんと斉藤一さんは、お互いの事を考えて、詳しい話をしませんでした。
沖田総司さんが書いた文は、二作品を合わせると、鈴ちゃん宛ての文、鈴ちゃんに託した斉藤さん宛ての文、子供に宛てた文、鈴ちゃん宛ての沖田総司さんのお姉さんにもしもの時に渡すための文、です。
沖田総司さんは亡くなる最後の方は、意識がはっきりとしていない事が多かったそうです。
沖田総司さんは両親を幼い時に亡くしています。
沖田総司さんに子供がいる状況でなくなる場合は、いろいろな事を考えたと思います。
この物語は、基本的には架空で、想像の部分が多いです。
沖田総司さんが病気のため療養中は、沖田総司さんが亡くなる時期が近くなっている、状況は、史実と重なります。
斉藤一さんが、沖田総司さんが夢の中で伝えたかった内容を知るのは、暫く後です。
斉藤さんが、沖田総司さんが夢の中で話した秘密の内容を知る物語は、「新撰組異聞外伝 清明 染井吉野が舞い散るなか」です。
沖田総司さんが亡くなったのは、慶応四年五月三十日(1868年7月19日)です。
この物語は、現在の暦で六月下旬〜七月の設定です。
「愛逢月(あいぞめづき)」は「七月の別名」だそうです。
「愛逢月」は題名の暦の時期と物語の時期が違いますが、この物語に合うと思い題名に使用しました。
楽しんで頂けると嬉しいです。
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