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新撰組異聞 〜 五月雨月の杜若 〜


〜 改訂版 〜


ここは、京の町。


暦は夏になったが過ごしやすい日が続いている。

本格的な暑さになるのは、もう少し先に感じる。


ここは、季節の花がたくさん咲く場所。


杜若と菖蒲が、綺麗な姿で咲いている。


沖田総司と少女は、楽しそうに話しをしている。


沖田総司は前を指すと、少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。菖蒲が咲いているのかな?」

少女は沖田総司が指した方向を見ると、微笑んで話し出す。

「杜若だと思います。」

沖田総司が指すのを止めると、少女に恥ずかしそうに話し出す。

「外れてしまった。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「杜若と菖蒲は似ていますよね。私も一緒に咲いていたら区別が付かないと思います。」

沖田総司は少女に恥ずかしそうに話し出す。

「私は一緒に咲いていなくても分からない。鈴ちゃんは物知りだね。」

少女は沖田総司に恥ずかしそうに話し出す。

「私は物知りではありません。」

沖田総司は少女を不思議そうに見た。

少女は杜若を恥ずかしそうに見た。

沖田総司は杜若を微笑んで見た。


杜若は綺麗な姿で咲いている。


少女は沖田総司を見ると、微笑んで話し出す。

「総司さん。最近は山南さんのお姿を見掛けません。お仕事がお忙しいのですか?」

沖田総司は杜若を見ながら、困惑と悲しみが混じった表情になった。

少女は沖田総司を心配そうに見た。

沖田総司は杜若を見ながら、少女に悲しそうに話し出す。

「山南さんは少し前に亡くなった。」

少女は沖田総司を心配そうに見た。

沖田総司は少女を見ると、僅かに不機嫌そうに話し出す。

「なぜ亡くなった時期や理由を私に尋ねないんだ?」

少女は沖田総司に心配そうに話し出す。

「ごめんなさい。」

沖田総司は少女に僅かに不機嫌そうに話し出す。

「鈴ちゃんが山南さんの近況を訊ねたから、私は答えただけだ。なぜ鈴ちゃんが謝るんだ?」

少女は沖田総司を心配そうに見た。

沖田総司は少女に僅かに不機嫌そうに話し出す。

「鈴ちゃん。なぜ黙っているの?」

少女は沖田総司を心配そうに見ている。

沖田総司は少女に真剣な表情で話し出す。

「山南さんは切腹した。」

少女は沖田総司を驚いた表情で見た。

沖田総司は少女に真剣な表情で話し出す。

「切腹する時は、介錯を務める人がいるんだ。切腹や介錯の様子を見る人がいるんだ。鈴ちゃん。想像できる?」

少女は沖田総司を見ながら、小さく首を横に振った。

沖田総司は杜若を見ると、少女に真剣な表情で話し出す。

「山南さんの介錯を務めたのは、私だ。」

少女は沖田総司を驚いた表情で見た。

沖田総司は少女を見ると、苦笑しながら話し出す。

「鈴ちゃん。私が怖いだろ。」

少女は沖田総司を見ながら、真剣な表情で首を横に振った。

沖田総司は少女を真剣な表情で見た。

少女も沖田総司を真剣な表情で見た。

沖田総司は少女に真剣な表情で話し出す。

「本当に私が怖くないのか?」

少女は沖田総司に真剣な表情で頷いた。

沖田総司は少女に真剣な表情で話し出す。

「山南さんは、優しく接してくれた、困っている時に助けてくれた。山南さんにはどのような言葉で表しても足りないくらい世話になった。私は恩人の山南さんから介錯を頼まれた。私は山南さんの介錯を引き受けた。最低だと思うだろ。」

少女は沖田総司に小さい声で話し出す。

「総司さんはたくさん考えて悩んでお返事をされたんですよね。最低ではありません。」

沖田総司は少女に真剣な表情で話し出す。

「幾ら考えて悩んでも、恩人を介錯した事実は変わらない。幾ら悩み続けても、恩人を介錯した事実は変えられない。」

少女は沖田総司に悲しそうに話し出す。

「ごめんなさい。」

沖田総司は少女に僅かに不機嫌そうに話し出す。

「なぜ鈴ちゃんが謝るんだ?」

少女は沖田総司に悲しそうに話し出す。

「ごめんなさい。」

沖田総司が少女に不機嫌そうに話し出す。

「なぜごめんなさいしか言わないんだ?! やはり私が怖いんだろ!」

少女は下を向くと、悲しそうな表情で首を横に振った。

沖田総司は少女に不機嫌そうに話し出す。

「世話になった恩人を平気で介錯した私が怖いんだろ!」

少女は下を向いたまま、悲しそうな表情で首を横に振った。

沖田総司は少女に不機嫌そうに話し出す。

「鈴ちゃん! なぜ下を向いているんだ?!」

少女は下を向いたまま、沖田総司に悲しそうに話し出す。

「私が悪いからです。」

沖田総司が少女に不機嫌そうに話し出す。

「鈴ちゃんは何も悪くないだろ! 悪いと思う理由を教えてくれ!」

少女は下を向いたまま、沖田総司に小さい声で話し出す。

「私の気が利かないために、総司さんに迷惑を掛けているからです。」

沖田総司は少女に不機嫌そうに話し出す。

「鈴ちゃんは迷惑を掛けていないだろ! 私が怖いから質問に答えられないのだろ!」

少女は下を向いたまま、沖田総司に小さい声で話し出す。

「怖くないです。」

沖田総司は少女に不機嫌そうに話し出す。

「怖くないのなら私を見られるだろ! 私を見ないのは怖いからだろ!」

少女は下を見たまま、沖田総司に小さい声で話し出す。

「悪いのは私です。ごめんなさい。」

沖田総司は少女に不機嫌そうに話し出す。

「先程から同じような会話になっている! 話しをする意味がない! 早く帰ろう!」

少女は顔を上げると、沖田総司を悲しそうに見た。


沖田総司は不機嫌そうに歩き出した。

少女は悲しそうな表情で歩き出した。


その翌日の事。


ここは、昨日に沖田総司と少女が訪れた季節の花がたくさん咲く場所。


杜若が綺麗な姿で咲いている。


沖田総司と斉藤一は、一緒に居る。


沖田総司は杜若を見ながら、落ち込んだ様子でため息をついた。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は杜若を見ながら、斉藤一に悲しそうに話し出す。

「昨日は鈴ちゃんと一緒に杜若を見ました。鈴ちゃんが山南さんに会っていないので、私に山南さんの近況を尋ねました。私は鈴ちゃんが山南さんの話しをしたので、最初は驚いて動揺しました。次に怒りのような気持ちが込み上げてきました。鈴ちゃんに酷い言葉をたくさん言ってしまいました。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に悲しそうに話し出す。

「最初は、鈴ちゃんが山南さんは亡くなっていると知りながら話しているように錯覚してしまって、私は怒りながら話しました。直ぐに、私は鈴ちゃんに山南さんが亡くなった出来事も経緯も伝えていないと気付きました。鈴ちゃんは悪くないのに、私に謝り続けました。鈴ちゃんが私に謝る姿が、私の気持ちや姿と重なりました。私は鈴ちゃんに謝りたいのに謝れずに、酷い言葉を言い続けました。私が山南さんの死について深く考えるのを避けていたのだと思います。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見ている。

沖田総司は杜若を悲しそうに見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。俺に話したい内容が残っているだろ。悩まずに早く居え。」

沖田総司は斉藤一を見ると、斉藤一に悲しそうに話し出す。

「怒っている私は怖いですよね。逃げ出したくなりますよね。でも、鈴ちゃんは私の傍に居てくれました。悪くないのに怒られていたら、普通は言い返しますよね。鈴ちゃんは私に何度も謝りました。私が怒って話す内容を、悲しそうに下を向きながら聞いていました。鈴ちゃんは辛かったはずです。そんな鈴ちゃんの姿が、私の気持ちと更に重なってしまいました。鈴ちゃんの姿を見ていたら、悪いのは全て私だと責められているような気持ちになりました。鈴ちゃんが、鈴ちゃん本人が全て悪いと言いました。私に対して言った言葉のように感じました。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司は自分が悪いと分かっているのだろ。今は気持ちが落ち着いているのだろ。美鈴さんに早く謝りに行け。」

沖田総司は斉藤一に悲しそうに話し出す。

「山南さんの出来事は吹っ切れたと思っていましたが、吹っ切れていませんでした。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「人は簡単に吹っ切れない出来事があると思う。総司にとっては、山南さんが亡くなる出来事が、簡単に吹っ切れない出来事の一つなのだと思う。俺に厳しい言葉を言っても構わない。美鈴さんは俺や総司の詳しい事情をほとんど知らない。美鈴さんは周りから新撰組関連のいろいろな噂を聞いていると思う。総司か俺が美鈴さんに話さない限り、美鈴さんは何が正しくて何が間違っているのか分からないと思う。だからこそ、総司は美鈴さんに早く謝りに行かなければならない。」

沖田総司は斉藤一に心配そうに話し出す。

「鈴ちゃんに謝りに言って、私が再び酷い言葉で話してしまったら、どのようにすれば良いのですか?」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「美鈴さんは俺や山南さんとは違う。総司より年下の普通の子だ。俺も総司より年下だが、俺は総司の事情をある程度は知っている。美鈴さんは総司の事情をほとんど知らない。総司にとって、亡くなった山南さんが大事なのは分かるが、生きている美鈴さんは大事か違うのかのどちらに該当するんだ?」

沖田総司は斉藤一を心配そうに見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。美鈴さんに酷い言葉で話しをしたまま、美鈴さんが急に亡くなったら後悔するはずだ。」

沖田総司は斉藤一を心配そうに見ている。

斉藤一は沖田総司の手を掴むと、普通に話し出す。

「総司。悩むだけでは状況は進展しない。逆に辛い展開になる可能性がある。辛い展開になる前に、美鈴さんに会いに行くぞ。」

沖田総司は斉藤一を心配そうに見ている。


斉藤一は沖田総司の手を掴みながら、普通に歩き出した。

沖田総司は困惑した様子で、普通に歩き出した。


それから暫く後の事。


ここは、京の町。


少女の家の傍。


沖田総司と斉藤一は、一緒に来た。


斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「早く美鈴さんに会いに行け。」

沖田総司は斉藤一に心配そうに話し出す。

「鈴ちゃんに酷い言葉をたくさん言ってしまいました。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「だから総司が謝りに来たんだろ。」

沖田総司は斉藤一に心配そうに話し出す。

「何と言って謝ったら良いのでしょうか?」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「謝る言葉に悩んでいるのなら、少し前に俺に話した内容で謝れ。」

沖田総司は斉藤一に心配そうに頷いた。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「一つの可能性として話しをしておく。美鈴さんは新撰組関連のいろいろな噂を聞いていると思う。山南さんが亡くなった関連の噂を聞いているかも知れない。山南さんの切腹や総司が介錯を務めた出来事についての噂も聞いているかも知れない。新撰組内部の噂話の真偽を確認できるのは俺か総司しかいないだろ。いろいろな噂を聞いているはずなのに、何も言わずに総司と会っている美鈴さんの気持ちを考えろ。」

沖田総司は斉藤一に僅かに不機嫌そうに話し出す。

「鈴ちゃんが山南さんの亡くなった出来事に関する噂を聞いていたとしたら、遠回しな話し方をせずに、はっきりと話しをすれば良かったのではないですか?」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「これから謝りに行こうとしているのに、不機嫌になるな。武士は切腹も介錯も当たり前の出来事だろ。美鈴さんがいろいろな噂を聞いた中で当然の出来事と判断していたら、総司にどのような話し方をしても構わないだろ。美鈴さんは何も悪くないだろ。」

沖田総司は斉藤一を見ながら、納得いかない様子で呟いた。

「でも・・・」

斉藤一は沖田総司の話しを遮ると、普通に話し出す。

「俺は何日か経ったら、京の町の外に出掛ける任務に就く。任務に就いたら、当分は戻って来られない。総司は俺に悩みを話した。俺は総司に助言をした。総司は美鈴さんに謝るのを渋っている。俺は相談を受けて助言をしたのに、結果の分からないまま何日も放っておかれるのか?」

沖田総司は話しの続きを言うのを止めると、斉藤一を困惑した様子で見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。もう一度だけ言う。美鈴さんに何か遭って二度と逢えなくなっても後悔しないんだな。総司は美鈴さんを大事な友達と何度も言うが、総司にとっての大事な友達というのは、その程度の重みしかないんだな。俺の話しが合っているのなら、美鈴さんに直ぐに謝る必要は無いよな。俺と一緒に屯所に戻ろう。」

沖田総司は少女の家を真剣な表情で見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「考える余裕があるのなら、一刻も早く美鈴さんに謝れ。」

沖田総司は斉藤一を僅かに驚いた表情で見た。

斉藤一は普通の表情で、沖田総司の背中を僅かに強く押した。


沖田総司は背中を押された勢いで、少女の家の前に来た。


少女が不思議そうに家から出てきた。


沖田総司は少女を驚いた表情で見た。

少女も沖田総司を驚いた表情で見た。

沖田総司は少女に僅かに驚いた様子で話し出す。

「鈴ちゃん! こんにちは!」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さん。こんにちは。」

沖田総司は少女に僅かに驚いた様子で話し出す。

「鈴ちゃんが家から出てきたから驚いたよ!」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さんと斉藤さんの声が聞こえた気がしたので、様子を見に来ました。総司さんに逢えて嬉しいです。」

沖田総司は少女に僅かに驚いた様子で話し出す。

「斉藤さんも一緒に来ているんだ!」

少女は不思議そうに辺りを見回した。

沖田総司は辺りを見回しながら、少女に不思議そうに話し出す。

「斉藤さんが居ない。もしかしたら帰ったのかな?」

少女は沖田総司を不思議そうに見た。

沖田総司が少女に言い難そうに話し出す。

「鈴ちゃん。少し話しがしたいんだ。時間は大丈夫かな」

少女は沖田総司に微笑んで頷いた。

沖田総司は少女を安心した様子で見た。


それから少し後の事。


ここは、昨日に沖田総司と少女が訪れた季節の花がたくさん咲く場所。


杜若が綺麗な姿で咲いている。


沖田総司と少女は、到着した。


沖田総司は少女に真剣な表情で話し出す。

「鈴ちゃん。先日は、私が一人で勝手に怒って、鈴ちゃんに酷い言葉で話してしまった。悪かった。」

少女は沖田総司に心配そうに話し出す。

「私が総司さんのお気持ちを考えずにお話しをしてしまいました。総司さんは悪くありません。悪いのは私です。」

沖田総司は少女に真剣な表情で話し出す。

「私は鈴ちゃんに山南さんが亡くなる出来事について説明していなかった。鈴ちゃんは何も知らなかったのだから、鈴ちゃんは悪くない。悪いのは私だ。」

少女は沖田総司を心配そうに見た。

沖田総司は少女に真剣な表情で話し出す。

「鈴ちゃん。一人で悩ませてしまってごめん。亡くなった山南さんより、生きている人を大切にするという大事な出来事を忘れていた。本当に悪かった。」

少女は沖田総司に心配そうに話し出す。

「総司さん。私のために何度も謝らないでください。私の気配りが足りないために起きた出来事です。総司さんが悪くありません。」

沖田総司は少女に真剣な表情で話し出す。

「この場所で鈴ちゃんに話していた時に、私は怒っていたよね。あの時の私の怒りは八つ当たりだった。」

少女は沖田総司を心配そうに見た。

沖田総司は少女に真剣な表情で話し出す。

「謝り続けている鈴ちゃんを見ていたら、私自身の気持ちと重なってしまった。怒って話す私に対して、下を向いて黙って耐えている鈴ちゃんの姿が、私自身の気持ちと重なってしまった。あの時の私が怒っていたのは、鈴ちゃんではなく、私自身に怒っていたんだ。」

少女は沖田総司に心配そうに話し出す。

「総司さん。自分を責めないでください。」

沖田総司は少女に真剣な表情で話し出す。

「あの時の出来事は、私が悪い。鈴ちゃんには悪いと思っている。」

少女は沖田総司に心配そうに話し出す。

「私は大丈夫です。総司さん。これ以上は謝らないでください。」

沖田総司は少女を真剣な表情で見た。

少女は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃんの笑顔が見られた。良かった。」

少女は沖田総司を微笑んで見ている。

沖田総司も少女を微笑んで見た。

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さんが私に逢いに来てくださいました。総司さんの笑顔が見られました。私も嬉しいです。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃんと二度と話しが出来ないかも知れないと思って不安になっていたんだ。鈴ちゃんとこれからも話しが出来るんだね。本当に良かった。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さん。菖蒲と杜若のように似ている人を知っています。」

沖田総司は少女に不思議そうに話し出す。

「菖蒲と杜若のように似ている人というのは誰なのかな?」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「秘密です。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「ずっと秘密だと気になるなら、いつか教えてくれるかな?」

少女は沖田総司に微笑んで頷いた。

沖田総司は少女を笑顔で見た。


それから暫く後の事。


ここは、屯所。


斉藤一の部屋。


沖田総司が元気良く訪れた。


斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に笑顔で話し出す。

「斉藤さん! いろいろとありがとうございました!」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一を嬉しそうに見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司には姉が三人いるみたいだな。」

沖田総司は斉藤一に不思議そうに話し出す。

「私には姉は二人しかいません。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「江戸に二人の姉、京に一人の姉。合わせて三人の姉だ。」

沖田総司は斉藤一に不思議そうに話し出す。

「京に姉は居ませんよ。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「確かに総司の姉と言ったら失礼だな。次に会ったら謝っておく。」

沖田総司は斉藤一を不思議そうに見た。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司が斉藤一に思い出したように話し出す。

「鈴ちゃんが、菖蒲と杜若の違いが分かり難いという話しと、菖蒲と杜若のような人を知っているという話しをしました。私も菖蒲と杜若のように似ている人を見付けました。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に不思議そうに話し出す。

「なぜ私に質問をしてくれないのですか?」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「俺が質問しても総司は教えてくれないだろ。」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「はい。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「俺は忙しい。総司の冗談に付き合っている暇はない。早く部屋から出て行ってくれ。」

沖田総司は斉藤一に僅かに慌てた様子で話し出す。

「斉藤さん! 冗談ではありません! すいません!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「俺に話しがあって部屋を訪ねてきたんだろ。冗談は言わずに、残りの話しを早くしろ。」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃんが斉藤さんにお礼が言いたいと話していました。子供達が斉藤さんと一緒に遊びたいと話していました。斉藤さん。江戸に行く前に都合を付けてもらえたら嬉しいです。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一に笑顔で話し出す。

「斉藤さん! ありがとございます! 都合が付いたら直ぐに教えてください!」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一を嬉しそうに見た。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。


沖田総司は元気良く部屋から出て行った。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語は既に掲載している物語の改訂版です。

改訂前の展開や雰囲気を出来るだけ残しながら改訂しました。

改訂前の物語を掲載するのは止めました。

以上の点、ご了承願います。

ここからは改訂前の後書きを加筆訂正しながら書いていきます。

山南敬助さんが亡くなってから初めて迎える杜若の咲く季節です。

杜若と菖蒲は、隣り合って咲いている場合は、近くで見ないと区別が付き難いと思います。

杜若の咲き始めの頃ならば、離れて見ていても見分けが付きやすいと思います。

しかし、杜若と菖蒲が隣り合って咲く事はほとんどないと思うので心配ないと思います。

山南敬助さんの切腹後の物語は幾つか掲載していますが、沖田総司さんにとっても周りの人にとっても、辛さや迷いを乗り越えたり気持ちを切り替えたりするには時間が掛かったと思います。

今回の物語では、鈴ちゃんが何度も謝る姿を見て、沖田総司さんが自分の姿と重ねて怒ってしまう場面が登場します。

沖田総司さんは、付き合っていた人がいたとしても、詳しい説明はしなかったと思います。

しかし、沖田さんと付き合っている人は、何かしらの噂を聞いた可能性はあると思います。

今回の物語の時間設定は、斉藤一さんが江戸に行く前の出来事として書きました。

「五月雨月(さみだれづき)」は、「陰暦五月の異称」です。

杜若は現在の暦で五月の間に掛けて咲きます。

陰暦五月は、現在の暦で、五月中旬から六月頃になります。

時期は少しずれる可能性があるのですが、物語の雰囲気から題名を考えました。

こちらについてもご了承ください。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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