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新撰組異聞 〜 美吉野の贈り物 〜


〜 第三版 〜


ここは、京の町。


梅雨に入っている。


雨の降る日が多くなっている。


今日は朝から雨が降っている。


ここは、花菖蒲がたくさん咲く寺。


本堂。


縁。


沖田総司は花菖蒲を微笑んで見ている。

少女も花菖蒲を微笑んで見ている。


沖田総司は少女を見ると、少女に微笑んで話し出す。

「花菖蒲にはたくさんの種類が有るね。白色の花菖蒲と紫色の花菖蒲は、たくさん有るね。黄色の花菖蒲などの珍しい色の花菖蒲も有るね。」

少女は沖田総司を見ると、沖田総司に微笑んで話し出す。

「はい。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃんとたくさんの花菖蒲を見られる。嬉しいよ。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「私も沖田さんとたくさんの花勝負が見られて嬉しいです。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。そろそろ“沖田さん”の呼び方を止めよう。」

少女は沖田総司に困惑して話し出す。

「沖田さんは、年上で、お侍様です。沖田さん、以外の呼び名では失礼になります。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「私は武士だけど、偉くないよ。私と鈴ちゃんの間に主従関係は無いよ。鈴ちゃんは私の大切な友達だよ。鈴ちゃんには私を気楽に呼んで欲しいんだ。」

少女は沖田総司を困惑して見た。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。悩まないで。近い内に、鈴ちゃんの呼びやすい私の別な呼び名を考えよう。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「はい。」

沖田総司は花菖蒲を指すと、少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。綺麗な薄い桃色の花菖蒲が咲いている。珍しい色の花菖蒲だと思うんだ。印象的な花菖蒲だよね。綺麗な薄い桃色の花菖蒲の名前は何かな?」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「“美吉野”、です。私の好きな花菖蒲です。沖田さんも気に入られたのですね。とても嬉しいです。」

沖田総司は花菖蒲を指すのを止めると、少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃんは美吉野に似ているよ。美吉野を見ると、鈴ちゃんを思い出すよ。」

少女は沖田総司に恥ずかしく話し出す。

「私は美吉野の足元にも及びません。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃんは美吉野と同じだよ。」

少女は沖田総司を恥ずかしく見た。

少女は沖田総司を微笑んで見た。


数日後の事。


ここは、京の町。


梅雨は続いている。


今日は曇り空だが、雨の降る様子は無い。


ここは、町中。


沖田総司は急いで走っている。


少し後の事。


ここは、少女の家。


玄関。


沖田総司は微笑んで来た。


少女は微笑んで来た。


沖田総司は少女を微笑んで見た。

少女も沖田総司を微笑んで見た。


少し後の事。


ここは、花菖蒲が綺麗に咲く寺。


本堂。


縁。


沖田総司は微笑んで居る。

少女も微笑んで居る。


沖田総司は少女に苦笑して話し出す。

「約束の時間に間に合わないと思って走ってきたんだ。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さんはお忙しいです。私のために無理をしないでください。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「無理はしていないよ。約束の時間に遅れると、鈴ちゃんと一緒に居る時間が少なくなるよね。焦ってしまうんだ。」

少女は沖田総司を恥ずかしく見た。

沖田総司は少女に心配して話し出す。

「鈴ちゃん。大丈夫? 私は変な内容を話したのかな?」

少女は沖田総司に恥ずかしく話し出す。

「総司さんに私のような者と一緒に居たいと思って頂けて、とても嬉しいです。」

沖田総司は少女に少し強い調子で話し出す。

「鈴ちゃんは私の大切な友達だよ。自分を下げる内容を話しては駄目だよ。」

少女は沖田総司に申し訳なく話し出す。

「すいません。私は武士の方とお話しする機会が少ないです。武士の方への失礼な言動が分からない時があります。気を付けます。」

沖田総司が少女に申し訳なく話し出す。

「強い調子で話してしまった。ご免ね。私は、幼い頃から道場に住み込んで、年齢の上下に関係なく、たくさんの人達と共に過ごしたんだ。鈴ちゃんは、町方出身で、年下で、女の子だけど、楽しく話したいんだ。私と鈴ちゃんは、主従関係が無いのに、自分を下げ過ぎる鈴ちゃんを見ると寂しくなるんだ。」

少女は沖田総司を不思議な様子で見た。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃんは私の大切な友達だよ。楽しく話そう。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「はい。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「花菖蒲を更に近くで見よう。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「はい。」


沖田総司は微笑んで立ち上がった。

少女も微笑んで立ち上がった。


沖田総司は少女の手を握り、笑顔で歩き出した。

少女は沖田総司の手を握り、引っ張られるようにして歩き出した。


沖田総司は少女の手を握り、何かを思い出した様子で立ち止まった。

少女は沖田総司の手を握り、不思議な様子で立ち止まった。


沖田総司は少女を微笑んで見た。

少女は沖田総司を不思議な様子で見た。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。少しだけ一人で待っていてね。」

少女は沖田総司に微笑んで頷いた。


沖田総司は笑顔で居なくなった。


少し後の事。


ここは、花菖蒲が綺麗に咲く寺。


本堂。


縁。


少女は境内と花菖蒲を微笑んで見ている。


少女の少し離れた後ろから、沖田総司の明るい声が、境内から聞こえた。

「鈴ちゃん!」


少女は少し離れた後ろを微笑んで見た。


沖田総司は本堂に体を半分ほど隠して、少女を笑顔で見ている。


少女は沖田総司を微笑んで見た。


沖田総司は美吉野を持ち、笑顔で走ってきた。


少女は沖田総司と美吉野を驚いて見た。

沖田総司は少女に美吉野を勢い良く差し出した。

少女は美吉野を驚いた表情で見た。

沖田総司は少女に美吉野を差し出して、少女に笑顔で話し出す。

「美吉野を分けて欲しいと事前に頼んでいたんだ! 住職さんから、美吉野を少しだけなら分けてもらえる返事があったんだ! 今日は鈴ちゃんと一緒に来たから、美吉野を分けてもらったんだ! 鈴ちゃんにはいつも迷惑を掛けているから、感謝と詫びの両方を込めているんだ!」

少女は沖田総司から美吉野を受け取ると、沖田総司に微笑んで話し出す。

「私は総司さんにいつも迷惑を掛けているのに、綺麗な美吉野を頂けました。嬉しいです。ありがとうございます。」

沖田総司は少女を笑顔で見た。

少女は美吉野を片手で抱えて、沖田総司に微笑んで見た。

沖田総司は少女の片手を握ると、少女に笑顔で話し出す。

「別な花菖蒲も近くで見よう!」

少女は美吉野を片手で抱えて、沖田総司に微笑んで話し出す。

「はい。」


沖田総司は少女の手を握り、勢い良く笑顔で歩き出した。

少女は片手で美吉野を抱いて、沖田総司が手を引く強さに耐えられずに、前に向かって倒れそうになった。


沖田総司は少女を慌てて受け止めようとした。


少女は美吉野を片手で抱えているため、普通に受け止められない。


沖田総司は美吉野を潰さないように、少女を慌てて支えた。

少女は片手で美吉野を抱いて、美吉野を押し潰さないために、沖田総司に驚いた様子で掴まった。


沖田総司は少女を支えて、驚いた様子で倒れた。

少女は片手で美吉野を抱いて、沖田総司に掴まり、驚いた様子で倒れた。


美吉野が少女の手から放れて転がった。


沖田総司は少女を支えて、背中側に驚いた様子で倒れた。

少女は沖田総司を掴んで、驚いた様子で前へと倒れた、


沖田総司の顔と少女の顔が、勢い良く近付く。


美吉野が沖田総司の顔の傍と少女の顔の傍に転がった。


美吉野は沖田総司の顔と少女の顔が隠れる場所で止まった。


沖田総司の動きが止まった。

少女の動きも止まった。


少女は赤面して、沖田総司から離れて、ゆっくりと起きた。

沖田総司は赤面して、驚いた様子で起きた。


沖田総司は少女に赤面して慌てて話し出す。

「大丈夫?! 怪我は無い?! 支えられなかった! ご免ね!」

少女は沖田総司に赤面して恥ずかしい様子で話し出す。

「私は大丈夫です。総司さん。お怪我をしていないですか?」

沖田総司は少女に赤面して慌てて話し出す。

「私は大丈夫。鈴ちゃんに怪我が無くて良かった。」

少女は美吉野を持つと、赤面して恥ずかしい様子で、美吉野で顔を隠した。

沖田総司は少女に赤面して心配して話し出す。

「鈴ちゃん。支えられなくてご免ね。不可抗力な出来事だから、気にしないで。私は直ぐに忘れるから、鈴ちゃんも早く忘れてね。」

少女は美吉野を持ち、美吉野で顔を隠して、沖田総司に寂しく話し出す。

「総司さんは今の出来事を直ぐに忘れるのですか?」

沖田総司は少女に赤面して心配して話し出す。

「鈴ちゃんは今の出来事を忘れたいよね。私も直ぐに忘れる。安心して。」

少女は美吉野を持ち、美吉野で顔を隠して、静かに泣き出した。

沖田総司は少女に赤面して心配して話し出す。

「鈴ちゃん。嫌な思いをさせてご免ね。私も直ぐに忘れる。鈴ちゃん。泣かないで。」

少女は美吉野を持ち、美吉野で顔を隠して、静かに泣いている。

沖田総司は少女に赤面して心配して話し出す。

「本当にご免ね。鈴ちゃん。泣かないで。」

少女は美吉野を持ち、美吉野で顔を隠して、沖田総司に静かに泣いて話し出す。

「総司さんが忘れても、私は忘れたくないです。総司さんには、迷惑ですよね。」

沖田総司は少女に赤面して心配して話し出す。

「迷惑だと思わないよ。嫌な思いをさせて本当にご免ね。」

少女は美吉野を持ち、美吉野で顔を隠して、沖田総司に静かに泣いて話し出す。

「私は嫌ではないです。私は迷惑でもないです。私は忘れたくないです。」

沖田総司は少女に赤面して心配して話し出す。

「鈴ちゃんが忘れたくないならば、私も忘れないよ。」

少女は美吉野を持ち、美吉野で顔を隠すのを止めると、沖田総司を静かに泣いて見た。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「私も鈴ちゃんも、共に忘れずに覚えていれば、鈴ちゃんの笑顔をたくさん見られるよね。」

少女は美吉野を抱くと、沖田総司を恥ずかしく見た。

沖田総司は少女を笑顔で見た。

少女は美吉野を抱いて、沖田総司を恥ずかしく見ている。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「天気の落ち着いている間に帰ろう。家まで送るね。」

少女は美吉野を抱いて、沖田総司に微笑んで話し出す。

「はい。」

沖田総司は少女を微笑んで見た。


沖田総司は微笑んで居なくなった。

少女は美吉野を抱いて、微笑んで居なくなった。


少し後の事。


ここは落ち着いた雰囲気の寺。


境内。


斉藤一は普通に居る。


沖田総司は元気良く現れた。


斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「家に送り届けてから来たのか?」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「はい。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に不思議な様子で話し出す。

「私が鈴ちゃんを支えられなくて、私と鈴ちゃんは、一緒に倒れてしまいました。直後から、いろいろな出来事が起きました。鈴ちゃんが困っている様子に見えました。私は鈴ちゃんに今回の出来事を直ぐに忘れると話しました。鈴ちゃんは私に忘れたくないと話しました。鈴ちゃんは泣いてしまいました。私は鈴ちゃんが泣く姿を見て、私も忘れないと話しました。鈴ちゃんは泣き止みました。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見ている。

沖田総司は斉藤一に不思議な様子で話し出す。

「鈴ちゃんが忘れないと話しました。私はとても嬉しい気持ちになりました。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見ている。

沖田総司は斉藤一に不思議な様子で話し出す。

「普通は忘れたいと思いますよね。鈴ちゃんが忘れないと話した理由は何でしょうか? 私がとても嬉しい気持ちになった理由は何でしょうか?」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司の話を聞くだけで、その子の気持ちが手に取るように分かる。」

沖田総司は斉藤一に強い調子で話し出す。

「斉藤さん! 鈴ちゃんは私の物凄く大切な友達です! 鈴ちゃんには、美鈴という名前があります! 鈴ちゃんは、鈴、と呼ばれる機会がたくさんあるので、鈴ちゃん、と呼ぶ許しはもらっています! その子、とか、あの子、などの、失礼な呼び方は止めてください! 鈴ちゃんに対して物凄く失礼です!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「分かった。言い直す。総司の話を聞くだけで、美鈴さんの気持ち手に取るように分かる。」

沖田総司は斉藤一を微笑んで見た。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一を不思議な様子で見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「後は、総司本人で考えろ。」

沖田総司は斉藤一に不思議な様子で話し出す。

「斉藤さんは既に答えが分かっているのですね。隠さずに答えを教えてください。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。念のために確認する。総司と美鈴さんが一緒に転んだ時に、何が起きた?」

沖田総司は斉藤一に赤面して話し出す。

「私と鈴ちゃんが一緒に倒れました。私と鈴ちゃんが勢い良く近付いてしまいました。美吉野が転がりました。私も鈴ちゃんも、顔が真っ赤になりました。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「美鈴さんは、総司が直ぐに忘れると話したら泣き出して、総司が忘れないと話したら泣き止んだ。総司は美鈴さんが忘れないと話したら嬉しい気持ちになった。理由は一つしか考えられない。」

沖田総司は斉藤一に笑顔で話し出す。

「斉藤さん! 答えを早く教えてください!」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一を笑顔で見ている。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「様々な方面から考えても、理由は一つだ。後は、総司本人が考えろ。」

沖田総司は斉藤一に納得いかない様子で話し出す。

「斉藤さん! 教えてください!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「理由は一つ。俺から話す内容の答えではない。後は、総司本人で考えろ。」

沖田総司は斉藤一に強い調子で話し出す。

「答えが分かったら、斉藤さんに最初に確認します! 斉藤さんの想像する答えが間違っていたら、ただでは済みませんよ!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「答えを間違える人物は、総司を含めて物凄く限られている。安心して答えを確認しろ。」

沖田総司は斉藤一を納得のいかない表情で見た。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。


京の町が梅雨の頃。

美吉野は沖田総司と少女に起きた出来事を傍で見ていた。

美吉野は沖田総司と少女に贈り物を届けたのかも知れない。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語は既に掲載している物語の再改訂版です。

改訂前の展開や雰囲気を出来るだけ残して改訂しました。

改訂前の物語を掲載するのは止めました。

以上、ご了承願いします。

ここからは改訂前の後書きを加筆訂正して書きます。

この物語の間に、「新撰組異聞 短編 墨田の花火」の出来事が起きた、鈴ちゃんの沖田総司さんの呼び方が「沖田さん」から「総司さん」へと変わった、と思ってください。

沖田総司さんと鈴ちゃんに、この物語のような場面を書きたいと考えました。

この物語の設定時期を逃すと、沖田総司さんにいろいろな問題が起きるため、いろいろと考える事が出てきます。

そこで、この物語の設定時期で書きました。

この物語は、沖田総司さんと鈴ちゃんがキスをする場面が登場します。

出逢って間もない頃の沖田総司さんと鈴ちゃんには、キスをする雰囲気がない設定のため、この物語のような展開と雰囲気になりました。

鈴ちゃんは、花菖蒲で喩えると「美吉野(みよしの)」だと思いました。

美吉野を使ってキスをする場面は、漫画の「なんて素敵にジャパネスク」の単行本(巻数は忘れてしまいました。すいません。)の折り返しの部分の絵に、「美吉野」で隠しながら主人公達が顔を近付けている絵があります。

この物語と雰囲気は違いますが、そこから考えました。

漫画については諸事情により掲載できないので、詳細は各自でお調べください。

私は、この絵を見て、花菖蒲の「美吉野」が見たいと思って探しました。

花菖蒲の「美吉野」は、淡いピンク色をしていて綺麗だと思いました。

余り見掛けない色の花菖蒲だと思いました。

「美吉野」は好きな花菖蒲の一つになりました。

新撰組の時代に「美吉野」が見られるか確認は取っていませんが、この物語の雰囲気に「美吉野」の名前も花も合っていると思い、題名と物語に登場しています。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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