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新撰組異聞 〜 雷鳴 蓮始開 〜


〜 第三版 〜


今は、夏。


今は、夜。


ここは、京の町。


月の見えない暗い夜。


突然の雨が降り始めた。


ここは、或る場所。


斉藤一は前を睨んで立っている。


雨は斉藤一に絶え間なく降り続く。


斉藤一は雨に濡れていく。


斉藤一は前を睨んで静かに歩き始めた。


斉藤一の気配は分からない。

斉藤一の足音も分からない。


斉藤一の気配が分からない理由。

斉藤一の足音が分からない理由。

暗さ、雨、他に一つの理由がある。


斉藤一は前を睨んで静かに止まった。


斉藤一は前を睨んで、刀の鞘に手を掛けた。


僅かに後の事。


ここは、屯所。


入り口付近に在る部屋。


藤堂平助は普通に居る。

数人の隊士が普通に居る。


若い新撰組隊士が困惑して来た。


若い新撰組隊士は藤堂平助に困惑して話し出す。

「藤堂さん。斉藤さんが居ません。」

僅かに若い隊士が藤堂平助に不思議な様子で話し出す。

「斉藤さんの他にも居ない隊士がいます。」

藤堂平助は若い新撰組隊士と僅かに若い隊士を不思議な様子で見た。


大きな雷が鳴った。


雷の光の中で人影が浮かび上がった。


藤堂平助は人影を僅かに驚いた表情で見た。

数人の新撰組隊士は人影を驚いた表情で見た。


人影の主は、斉藤一。


斉藤一は、ずぶ濡れで、普通の表情で居る。


藤堂平助は斉藤一を僅かに驚いて見た。

数人の新撰組隊士は斉藤一を驚いて見た。

斉藤一はずぶ濡れで、藤堂平助と数人の新撰組隊士を普通の表情で見た。

藤堂平助が斉藤一に言い難く話し出す。

「何か遭ったのですか?」

斉藤一はずぶ濡れで、藤堂平助に普通に話し出す。

「外へ出て確認した。」

藤堂平助は斉藤一に言い難く話し出す。

「斉藤さん。姿の見当たらない隊士が居ます。」

斉藤一はずぶ濡れで、藤堂平助を普通の表情で見た。

藤堂平助は斉藤一を困惑して見た。

数人の新撰組隊士は斉藤一と藤堂平助を不安な様子で見た。

斉藤一はずぶ濡れで、数人の新撰組隊士を普通の表情で見た。


数人の新撰組隊士は慌てて急いで居なくなった。


斉藤一はずぶ濡れで、藤堂平助を普通の表情で見た。

藤堂平助は斉藤一に困惑して話し出す。

「斉藤さん。ずぶ濡れです。濡れた着物を長く着ていると風邪をひきます。着替えてください。」

斉藤一はずぶ濡れで、藤堂平助に普通の表情で頷いた。

藤堂平助は斉藤一を困惑して見た。


斉藤一はずぶ濡れで、普通に居なくなった。


暫く後の事。


早朝。


ここは、京の町。


雨は止んだ。


辺りは暗さが残っている。


静かな時間が続いている。


或る場所。


昨夜から姿の見当たらない新撰組隊士の亡骸が見付かった。


少し後の事。


ここは、屯所。


屋内。


数人の新撰組の隊士が、新撰組隊士の亡骸を運び込んだ。


新撰組隊士達の囁き合う声が聞こえる。

「刀を抜けず、一突きらしい。」

「凄腕の剣客が斬ったのか。」

「凄腕の剣客ならば、該当者は限られた人物になる。」

「沖田さんと永倉さんは、昨夜はずっと屯所に居た。」

「新撰組の剣客を思い付く理由を教えてくれ。」

「検分の内容を聞く前は、外部の人物だと思った。検分の内容を聞いて、関係者だと思った。」

「沖田さんと永倉さんを除く関係者で、凄腕の剣客。」

「昨夜、斉藤さんの姿が見付からない時間があったらしい。」

「斉藤さんが斬ったのか?」

「今の件について話し続けたら、俺達も斬られるかも知れない。」

「斬られたくないが、気になる。」


噂話は幹部の新撰組隊士にも当然に知る状況になった。


沖田総司は、新撰組隊士達の噂話を黙って聞く状況で過ごしている。

斉藤一は、新撰組隊士達の噂話を聞く時があるが、普通に過ごしている。


翌日の事。


ここは、屯所。


斉藤一の部屋。


斉藤一は普通に居る。


沖田総司は部屋を微笑んで訪れた。


斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「屯所の雰囲気が落ち着かないように感じますね。困りますね。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見ている。

沖田総司は斉藤一を苦笑して見た。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見ている。

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃんと蓮の花を見る約束をしました。斉藤さん。蓮の花を見ましょう。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃんの安全などを考えて、鈴ちゃんの家を陽が昇ってから出発します。約束の日ですが、私は鈴ちゃんの家に行く時間が少し遅れる可能性があります。鈴ちゃんには蓮の花を綺麗な状態で見て欲しいです。私の代わりに鈴ちゃんを迎えに行って、約束の場所に先に出掛けてください。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「出掛ける場所は決まっているのか?」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「私と鈴ちゃんで相談しました。私と鈴ちゃんが以前に出掛けた場所に決めました。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。ありがとうございます。鈴ちゃんに斉藤さんが迎えに行くと説明します。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。よろしくお願いします。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。


沖田総司は部屋から微笑んで出て行った。


数日後の事。


ここは、京の町。


空は晴れているが、暑さは余り感じない。


ここは、少女の家。


玄関。


斉藤一は普通に訪れた。


少女は微笑んで来た。


斉藤一は少女に普通の表情で頷いた。

少女は斉藤一に微笑んで話し出す。

「よろしくお願いします。」

斉藤一は少女に普通の表情で頷いた。


斉藤一は普通に居なくなった。

少女は微笑んで居なくなった。


少し後の事。


ここは、蓮の花がたくさん咲く場所。


近くに大きな木が在る。


斉藤一は普通に居る。

少女は微笑んで居る。


少女は辺りを僅かに落ち着かない様子で見た。

斉藤一は少女を普通の表情で見た。

少女は斉藤一を見ると、斉藤一に心配して話し出す。

「総司さんが居ないと寂しいですよね。」

斉藤一は少女を普通の表情で見ている。

少女は斉藤一に心配して話し出す。

「私は総司さんと違って、楽しいお話しが出来ません。私と居ても詰まらないですよね。総司さんが早く来ると良いですね。」

斉藤一は少女に普通に話し出す。

「詰まらない時は、詰まらないと話す。遠慮する姿を見ると気になる。美鈴さんは俺を気にせずに楽しめ。」

少女は斉藤一に心配して話し出す。

「斉藤さんに迷惑を掛けないように、総司さんに待ち合わせの場所には一人でお出掛けすると話します。」

斉藤一は少女に普通に話し話し出す。

「同行したくない人物と出掛けない。気遣いは要らない。」

少女は斉藤一を安心して見た。

斉藤一は少女を普通の表情で見た。

少女は斉藤一に微笑んで話し出す。

「総司さんと斉藤さんは仲が良いですよね。私のために仲が悪くなった時を想像して心配していました。」

斉藤一は少女を普通の表情で見ている。

少女は斉藤一を考えながら見た。

斉藤一は少女を普通の表情で見ている。

少女は斉藤一に心配して話し出す。

「私は事情を知りませんが、気になる内容があります。」

斉藤一は少女に普通に話し出す。

「遠慮せずに話せ。」

少女は斉藤一に心配して話し出す。

「総司さんが斉藤さんを心配しています。」

斉藤一は少女に普通に話し出す。

「事情を知らないのに、総司が俺を心配していると分かるのか?」

少女は斉藤一に心配して話し出す。

「総司さんは私と逢う度に、斉藤さんについて話します。総司さんは斉藤さんについて楽しく話します。数日前から、総司さんが斉藤さんについて話す時の様子が違います。」

斉藤一は少女に普通に話し出す。

「総司の様子が違う。美鈴さんの気のせいだと思わないのか?」

少女は斉藤一に心配して話し出す。

「私が勝手に話した内容です。総司さんと喧嘩しないでください。」

斉藤一は少女に普通に話し出す。

「仮定の話だ。俺が総司に美鈴さんが差し出がましい言動を取ったと怒る。俺が総司に失礼な内容を話した美鈴さんに逢わないと怒る。以上の展開になった時、美鈴さんの取る言動を教えて欲しい。」

少女は斉藤一を困惑して見た。

斉藤一は少女に普通に話し出す。

「仮定の話だ。俺と総司が今までどおりに接する条件として、総司と美鈴さんが二度と逢わない状況を提示した時、美鈴さんの取る言動を教えて欲しい。」

少女は斉藤一を困惑して見ている。

斉藤一は少女を普通の表情で見た。

少女は斉藤一に泣きそうな声で小さい声で話し出す。

「斉藤さんは、総司さんにとって、信頼できる大切なお友達で、信頼できる大切なお仕事の同僚です。斉藤さんは、私と違い、たくさんの人達の役に立つお仕事をしています。私が総司さんと一緒に居ても、お仕事の役に立ちません。総司さんに相応しい人物は、斉藤さんです。」

斉藤一は少女に普通に話し出す。

「美鈴さんは総司と逢い続けるのか? 美鈴さんは総司と逢うのを止めるのか? 返事を教えてくれ。」

少女は斉藤一を瞳に涙を浮かべて見た。

斉藤一は少女を普通の表情で見た。

少女は斉藤一に瞳に涙を浮かべて話し出す。

「私は総司さんと一緒に居たいです。私が総司さんと一緒に居ると、総司さんが斉藤さんとお話しが出来なくなります。総司さんは斉藤さんとお話し出来なくなったら、とても悲しんでお仕事に差し障りが出るかも知れません。」

斉藤一が少女に普通に話し出す。

「俺は仮定の内容を話した。美鈴さんの話す内容で、総司と逢うのを止めない。何故、泣く?」

少女は斉藤一を瞳に涙を浮かべて見た。

斉藤一は少女に普通に話し出す。

「総司の来る時間が近付いている。総司が美鈴さんの泣く姿を見たら、大騒ぎになる。早く泣き止め。」

少女は手で涙を拭いた。

斉藤一は少女に普通に話し出す。

「本気の話。仮定の話。区別を付けろ。」

少女は斉藤一に申し訳なく話し出す。

「すいません。」

斉藤一は少女に普通に話し出す。

「総司が心配する件は、心配の必要が無い。」

少女は斉藤一を安心して見た。

斉藤一は少女を普通の表情で見た。


沖田総司は笑顔で来た。


少女は沖田総司を微笑んで見た。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一と少女に笑顔で話し出す。

「鈴ちゃん! 斉藤さん! 遅くなってご免ね!」

少女は沖田総司に微笑んで頷いた。

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は少女を不思議な様子で見た。

少女も沖田総司を不思議な様子で見た。

沖田総司は斉藤一を見ると、斉藤一に僅かに強い調子で話し出す。

「斉藤さん。鈴ちゃんの目が赤いです。もしかして、鈴ちゃんを泣かせましたか?」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に僅かに強い調子で話し出す。

「斉藤さん。鈴ちゃんを泣かせたら、斉藤さんでも許しませんよ。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司は美鈴さんを幾度も泣かせている。他の人物が美鈴さんを泣かせる行為は、一度のみでも許せないのか。」

沖田総司が斉藤一を僅かに不機嫌に見た。

少女は沖田総司に不安な様子で話し出す。

「総司さん。何も起きていません。泣いていません。大丈夫です。」

沖田総司は斉藤一を納得のいかない様子で見た。

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さん。蓮の花を見たいです。」

沖田総司は斉藤一を納得のいかない様子で見ている。


斉藤一は蓮の花の咲く場所へ普通に歩き出した。


少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さん。約束どおり、総司さんと斉藤さんと私で、蓮の花を見たいです。」

沖田総司は少女を僅かに慌てて見た。

少女は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は少女に微笑んで頷いた。

少女は沖田総司を微笑んで見ている。


少女は蓮の花の咲く場所へ微笑んで歩き出した。

沖田総司は蓮の花の咲く場所へ微笑んで歩き出した。


翌日の事。


ここは、京の町。


沖田総司は微笑んで歩いている。

斉藤一は普通に歩いている。


沖田総司が斉藤一に微笑んで話し出す。

「昨日の帰る途中に、鈴ちゃんに斉藤さんの印象を質問しました。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃんは、斉藤さんを、優しい人物、信頼できる人物、と笑顔で話しました。とても嬉しかったです。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に笑顔で話し出す。

「鈴ちゃんはしっかりとした子ですよね! 鈴ちゃんはとても良い子ですね!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司にはもったいない。」

沖田総司は斉藤一に不思議な様子で話し出す。

「私にはもったいない物があるのですか?」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一を考えながら見た。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。


蓮の花の咲く頃。

斉藤一が関係すると噂される謎の多い出来事が起きた。

沖田総司と少女は、周囲の評価に関係なく、周囲の噂に関係なく、斉藤一と接している。

斉藤一にとって、不思議で穏やかな時が流れている。




*      *       *       *       *       *




ここからは後書きになります。

この物語は既に掲載している物語の再改訂版です。

改訂前の物語の雰囲気や展開を出来るだけ残して改訂しました。

改訂前の物語を掲載するのは止めました。

以上、ご了承願います。

ここからは改訂前の後書きを加筆訂正して書きます。

物語の始めに登場する、斉藤一さんが雨の降る中に居る場面、新撰組隊士の亡骸が見つかった場面は、基になる出来事があります。

斉藤一さんとある新撰組隊士との間に、以前からいざこざがあったそうです。

或る雨の日に、当番で屯所に居るはずの斉藤一さんが居ない時があったそうです。

その時は、一人の隊士(以前から斉藤一さんといざこざのあった新撰組隊士)が殺されたために、屯所内で騒いでいたそうです。

殺された隊士の検分をすると、刀を抜刀する事なく、一突きされていたそうです。

騒ぎの最中に、斉藤一さんがずぶ濡れの状態で屯所に戻ってきたそうです。

その場に居た隊士達は、隊士を殺した相手は、かなりの剣の使い手だから、斉藤一さんのようだと話したらしいです。

斉藤一さんはその話しを聞いて、笑ったとか、適当に話をはぐらかした、などと言われているそうです。

斉藤一さんの様子を見た隊士達は、怪しい雰囲気を感じたそうです。

真実の程は分かりませんが、斉藤一さんが疑われるような状況が幾つか重なっているので、怪しい雰囲気になったと思います。

簡単ですが、以上の内容になります。

隊士の人達が影でいろいろと言う状況の中で、沖田総司さんと斉藤一さんと鈴ちゃんが出掛けます。

この出来事とは関係なく、斉藤一さんは普段と少し違う雰囲気で鈴ちゃんに接します。

「蓮始開」は、「はすはじめてひらく」、または、「はすはじめてはなさく」、と読みます。

「蓮の花が開き始める」の意味です。

この物語では、文字どおりに近い読み方で、「はすはじめてひらく」と読んでいます。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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