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新撰組異聞 〜 夢占 白蓮華 〜


〜 第三版 〜


今は夏。


今は夜。


ここは、京の町。


夜空には綺麗な月が浮かんでいる。


ここは、町中。


土方歳三は月を一瞥しながら、微笑んで歩いている。


土方歳三は月を一瞥しながら、微笑んで呟いた。

「総司と斉藤と酒を飲む時間が楽しみだ。総司と斉藤の組み合わせだから、俺の到着を待たずに酒を飲み始めるな。総司と斉藤の組み合わせだ。怒る気にならない。」


土方歳三を不思議な気配が包んだ。


土方歳三は辺りを不思議な様子で見た。


少し離れた場所に、一本の木が見える。


綺麗な女性が土方歳三を微笑んで見ている。


土方歳三は綺麗な女性へと微笑んで歩いた。


直後の事。


ここは、綺麗な女性の居る木の下。


綺麗な女性は土方歳三を微笑んで見ている。


土方歳三は綺麗な女性の傍に微笑んで来た。


土方歳三は綺麗な女性に微笑んで話し出す。

「月の綺麗な夜ですが、外は暗いです。女性が一人で外を歩くには危ない時間です。」

綺麗な女性は土方歳三に心配して話し出す。

「私の傍に居てくれる猫が、何処かに行ってしまいました。心配なので探しています。外は暗くて、猫は見付からなくて、不安になっていました。お武家様の姿が見えたので、安心して笑顔になってしまいました。」

土方歳三は綺麗な女性に微笑んで話し出す。

「猫の名前。猫の特徴。教えてください。」

綺麗な女性は土方歳三に心配して話し出す。

「猫の名前は、“白”、です。とても綺麗な白色の毛並みの猫です。」

土方歳三は綺麗な女性に微笑んで話し出す。

「私が歩いた道には、該当する白猫は居ませんでした。」

綺麗な女性は土方歳三に心配して話し出す。

「分かりました。白は私の元に必ず戻ります。今夜は戻ります。改めて探します。」

土方歳三は綺麗な女性を感心した表情で見た。

綺麗な女性は土方歳三を不思議な様子で見た。

土方歳三は綺麗な女性に感心した表情で話し出す。

「物憂げな姿が物凄く綺麗なので、見惚れてしまいました。」

綺麗な女性は土方歳三を不思議な様子で見ている。

土方歳三は綺麗な女性に微笑んで話し出す。

「綺麗な貴女の名前を知りたくなりました。差し支えなければ、名前を教えてください。」

綺麗な女性は土方歳三に微笑んで話し出す。

「褒めて頂いてとても嬉しいです。お礼に私の名前を教えます。」

土方歳三は綺麗な女性を微笑んで見た。

綺麗な女性は土方歳三に微笑んで話し出す。

「私の名前は、“蓮華”、です。」


綺麗な女性の名前は、“蓮華”、らしい。


土方歳三は蓮華に微笑んで話し出す。

「姿も名前も、綺麗です。」

蓮華は土方歳三に微笑んで話し出す。

「名前も褒めて頂いてとても嬉しいです。」

土方歳三は蓮華を微笑んで見た。


月の光が土方歳三と蓮華を先程より明るく照らした。


土方歳三は蓮華を微笑んで見ている。

蓮華は土方歳三を微笑んで見た。


綺麗な白猫が蓮華の傍に静かに現れた。


蓮華はしゃがみ込むと、綺麗な白猫を嬉しく抱いた。

綺麗な白猫は静かにしている。

蓮華はしゃがみ込んで、綺麗な白猫を抱いて、綺麗な白猫に嬉しく話し出す。

「白。戻ってこないから心配したのよ。」


蓮華が抱く綺麗な白猫の名前が、“白”、らしい。


土方歳三は蓮華に微笑んで話し出す。

「白が見付かって良かったですね。」

蓮華はしゃがみ込んで、白を抱いて、土方歳三を見ると、土方歳三に微笑んで話し出す。

「はい。」

土方歳三は蓮華を微笑んで見た。

白が地面へと急に飛び降りた。

蓮華はしゃがみ込んで、白を僅かに驚いた表情で見た。

土方歳三は白を僅かに驚いた表情で見た。

白は土方歳三の元にゆっくりと来た。

蓮華は微笑んで静かに立った。

土方歳三は白を僅かに驚いた表情で見ている。

蓮華は土方歳三に妖しい微笑みで話し出す。

「土方様。“白”の姿に変化がありましたか?」

土方歳三は蓮華を見ると、蓮華を睨んで話し出す。

「何者だ?」

蓮華は土方歳三に妖しい笑みで話し出す。

「土方様。とても怖い表情をしています。端正なお顔がもったいないです。私は蓮華の名前を持つ女性です。とても怖い表情は止めてください。」

土方歳三は蓮華を睨んで話し出す。

「白猫が突然に黒猫に姿を変えた。何故だ?」

蓮華は土方歳三に妖しい微笑みで話し出す。

「土方様には、“白”が黒猫に見えるのですか? 私は気付きませんでした。土方様が物凄く素敵なので、私の勘が鈍ったのでしょうか?」

土方歳三は蓮華を睨んで話し出す。

「女性を怪しむのは避けたいが、貴女は物凄く怪しい。白猫が黒猫になった理由を早く教えろ。」

蓮華は土方歳三に妖しい微笑みで話し出す。

「ひ、み、つ、です。」

土方歳三は蓮華を睨んで話し出す。

「話を逸らすな。早く教えろ。」

蓮華は土方歳三に怪しい微笑みで話し出す。

「土方様。逆に質問します。土方様から見える“白”の姿を教えてください。」

土方歳三は白を睨んで見た。

蓮華は土方歳三を怪しい微笑みで見た。

土方歳三は白を驚いた表情で見た。

蓮華は土方歳三に妖しい微笑みで話し出す。

「土方様。“白”は誰の姿かの見えていますね。土方様から見える人物の名前を教えてください。」

土方歳三は蓮華を見ると、蓮華を睨んで話し出す。

「俺だ。」

蓮華は土方歳三に妖しい微笑みで話し出す。

「土方様。“白”には不思議な能力があります。“白”の能力を説明します。“白”を見る人物の身近な人物の中で、近い内に亡くなる人物の姿に見えます。」

土方歳三は蓮華を睨んだ。

蓮華は土方歳三に寂しく話し出す。

「土方様が見た“白”の姿は、土方様ご本人ですよね。驚きました。私の勘が鈍る状況が続いています。」

土方歳三は蓮華に睨んで話し出す。

「俺は近い内に亡くなるのか?」

蓮華は土方歳三に寂しく話し出す。

「物凄く残念ですが、答えは、はい、になります。」

土方歳三は蓮華に睨んで話し出す。

「俺は実行したい内容がたくさんある。俺は楽しみたい内容がたくさんある。俺は叶えたい望みがたくさんある。俺は近い内に死ぬ訳にはいかない。」

蓮華が土方歳三の首に両手を回すと、土方歳三に妖しい微笑みで話し出す。

「土方様のお気持ち。良く分かります。」

土方歳三は蓮華を睨んだ。

蓮華は土方歳三の首に両手を回して、土方歳三に妖しく微笑んで話し出す。

「私は土方様を好きになりました。土方様の生き様をもっと見たくなりました。」

土方歳三は蓮華に睨んで話し出す。

「武士の誇りを命の代償として売れと話しているのか?」

蓮華は土方歳三の首に両手を回して、土方歳三に妖しく微笑んで話し出す。

「土方様には、武士の誇りを最期まで持ち続けて欲しいです。私は土方様に武士の誇りを捨てて欲しくないです。」

土方歳三は蓮華を睨んだ。

蓮華は土方歳三の首に両手を回して、土方歳三に妖しく微笑んで話し出す。

「私との約束を守れば、土方様は思い通りに生きられて、土方様の望む場所で死ねます。私との約束を守りますか?」

土方歳三は蓮華に睨んで話し出す。

「約束の内容を教えろ。」

蓮華は土方歳三の首から、怪しく微笑んで、ゆっくりと両手を放した。

土方歳三は蓮華を睨んだ。

蓮華は土方歳三の耳元で妖しく微笑んで囁いた。

「一つ目・・・」

土方歳三は蓮華を睨んでいる。

蓮華は土方歳三の耳元で妖しく微笑んで囁いた。

「二つ目・・・」

土方歳三は蓮華を睨んでいる。

蓮華は土方歳三の耳元で妖しく微笑んで囁いた。

「最後。三つ目・・・」

土方歳三は蓮華を睨んでいる。

蓮華は土方歳三を妖しく微笑んで見た。

土方歳三は蓮華に怪訝な様子で話し出す。

「武士として当たり前の内容を約束するのか?」

蓮華は土方歳三に妖しく微笑んで話し出す。

「私は無理な内容を提示しません。私の約束を守れない人物は、武士ではありません。私の約束を守れない人物に、望みが叶う可能性は無いです。土方様は誠の武士ですよね。誠の武士ならば、守れる約束の内容ですよね。」

土方歳三は蓮華を真剣な表情で見た。

蓮華は土方歳三を妖しく微笑んで見た。

土方歳三は蓮華に真剣な表情で話し出す。

「分かった。約束する。」

蓮華は土方歳三の首に両手を回すと、土方歳三に妖しく微笑んで話し出す。

「今後の土方様の武士としての生き様が楽しみです。土方様は私が好きになった人物です。私を残念な気持ちにしないでくださいね。」

土方歳三は蓮華を真剣な表情で見た。

蓮華は土方歳三の首に両手を回して、土方歳三に妖しく微笑んで話し出す。

「念のために、今の約束の確認をします。土方様は私の約束を武士として了承しました。私の約束を守れない時は、土方様は武士ではないので、土方様の望みは叶いません。私は土方様の生き方を楽しみに見ています。」

土方歳三は蓮華を真剣な表情で見ている。

蓮華は土方歳三の首に両手を回して、土方歳三に妖しく微笑んで話し出す。

「土方様。くれぐれも忘れないでくださいね。」

土方歳三は蓮華を真剣な表情で見ている。

蓮華は土方歳三の首から、妖しく微笑んで、ゆっくりと両手を離した。

土方歳三は蓮華を真剣な表情で見ている。

蓮華は白を見ると、白に微笑んで話し出す。

「白も土方様が好きよね。」

白は蓮華にゆっくりと擦り寄った。

蓮華は土方歳三を見ると、土方歳三に微笑んで話し出す。

「土方様。白の今の姿は、綺麗な白猫に見えていますか?」

土方歳三は蓮華に真剣な表情で頷いた。

蓮華は土方歳三に微笑んで話し出す。

「土方様とお話しが出来て、とても嬉しかったです。土方様は、私の姿が見えない時は、私を思い出せません。土方様は、私の姿が見える時のみ、私と話した内容を思い出せます。常に私を覚えていて欲しいですが、常に私を覚えていると困ります。物凄く残念ですが、仕方が無い状況ですよね。」

土方歳三は蓮華に普通に話し出す。

「貴女はとても綺麗だ。忘れる時間が多いのは残念だ。」

蓮華は土方歳三に嬉しく抱き付いた。

土方歳三は蓮華を普通の表情で見た。


妖しく静かな雰囲気が、土方歳三、蓮華、白を強く包んだ。


土方歳三の横から、沖田総司の不思議な様子の声が聞こえた。

「土方さん。大丈夫ですか?」


土方歳三は横を僅かに驚いた表情で見た。


沖田総司は土方歳三を不思議な様子で見ている。

斉藤一は土方歳三を普通の表情で見ている。


土方歳三は沖田総司と斉藤一を不思議な様子で見た。

沖田総司は土方歳三を不思議な様子で見ている。

斉藤一は土方歳三を普通の表情で見ている。

土方歳三は沖田総司に普通に話し出す。

「大丈夫だ。」

沖田総司は土方歳三を不思議な様子で見ている。

土方歳三は沖田総司と斉藤一に普通に話し出す。

「突然だが思い出した疑問が有る。“白”と“蓮華”を合わせると、意味を持つ言葉になる。“白”と“蓮華”を合わせる言葉は、別な意味もある。理由は分からないが、思い出せない。総司。斉藤。知っているか?」

沖田総司は土方歳三に不思議な様子で話し出す。

「白い蓮の花の別な呼び方ですか?」

土方歳三は沖田総司に普通に話し出す。

「“白”と“蓮華”を合わせた言葉。理由は分からないが、とても気になる。」

斉藤一は土方歳三に普通に話し出す。

「“白蓮華”には、“永遠に生き続ける釈尊”の意味があると聞いた時があります。」

土方歳三は斉藤一を見ながら、不思議な様子で呟いた。

「永遠に生き続ける釈尊。」

斉藤一は土方歳三を普通の表情で見た。

土方歳三は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤の話を聞いて思い出した。ありがとう。」

斉藤一は土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「“白蓮華”には、“永遠に生き続ける釈尊”の意味があるのですね。知りませんでした。斉藤さん。凄いですね。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「普通だ。」

土方歳三は沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。

「飲みながら続きを話そう。」

沖田総司は土方歳三に微笑んで話し出す。

「はい。」

斉藤一は土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。


土方歳三は微笑んで歩き出した。

沖田総司も微笑んで歩き出した。

斉藤一は普通に歩き出した。


一本の木が月明かりに照らされている。


蓮華が白を抱いて、土方歳三、沖田総司、斉藤一を微笑んで見ている。


蓮華は白を抱いて、土方歳三、沖田総司、斉藤一を見て、白に微笑んで話し出す。

「白。土方様は約束を守りとおせるかしら? 土方様は沖田様と斉藤様を悲しませずに過ごせるのかしら? 土方様は・・・」

白が僅かに動いた。

蓮華は白を抱いて、話しを途中で止めて、白を微笑んで様子を見た。

白は直ぐに動きを止めた。

蓮華は白を抱いて、白に微笑んで話し出す。

「今の時点では、私が何を話しても、状況は変わらないわね。今後が楽しみね。白も私と同じく楽しみに思っているわよね。」

白は僅かに動いた。

蓮華は白を抱いて、白に微笑んで話し出す。

「白。帰りましょう。」

白は僅かに動いた。

蓮華は白を抱いて、白を微笑んで様子を見た。


辺りに静かな風が吹いた。


蓮華は白を抱いて、微笑んで静かに居なくなった。

白は蓮華に抱かれて、静かに居なくなった。


月の光は、不思議な出来事が起きた木を静かに照らし続けた。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語は既に掲載している物語の再改訂版です。

改訂前の雰囲気や展開を出来るだけ残して改訂しました。

改訂前の物語を掲載するのは止めました。

以上、ご了承ください。

ここからは改訂前の後書きを加筆訂正して書きます。

この物語を書いたきっかけは、土方歳三さんにとっての理想の生き方について考えた事でした。

土方歳三さんにとって、函館の五稜郭で最期を迎える事が本当の目的ではないと思います。

あの時の土方歳三さんにとっては、函館の五稜郭で最期を迎える事は、理想に近い選択肢だったと思います。

大河ドラマ「新撰組!」の中で、土方歳三さんは近藤勇さんを大名にしたいという内容を話す場面があります。

史実の土方歳三さんも、自分達を武士として認めて欲しい、自分達を見下した人達を見返したい、などの複雑な思いを抱えていたと考えました。

土方歳三さんが望んだ最期、土方歳三さんにとっての武士らしい最期を、どのようにして迎えたかったのかと考えました。

「蓮華(れんげ)」についてです。

一般的には、「蓮の花(はすのはな)」をいいます。

他の意味では、「蓮(はす)」を仏教用語で「蓮華(れんげ)」といいます。

極楽浄土を象徴する花になります。

「白」と合わせて「白蓮華」の言葉にすると、仏教の世界では「プンダリーカ」といって「永遠に生き続ける釈尊」となるそうです。

「釈尊」は「釈迦の尊称」です。

「夢占」についてです。

「ゆめうら」、または、「むせん」と読みます。

「夢のよしあしや吉凶を占う事。夢合わせ。」です。

この物語では「ゆめうら」と読んでいます。

「蓮華」は、どのような女性なのか、「蓮華」と土方歳三さんとの約束とは何か、いろいろとご想像して詠んでください。

ちなみに、「黄泉路」と「白」には、同じ能力があります。

「白蓮華」と土方歳三さんの話す内容は、基になる逸話があります。

鎌倉時代の出来事に遡ります。

草創期の頃に、北条時政が江ノ島に参詣し子孫の繁栄を祈ったそうです。

二十一日目に姿の美しい女房が現れたそうです。

姿の美しい女房は、「そなたの子孫は日本の主となって栄華を極めるであろう。しかし、道理に背くことがあれば、その栄えも七代を超えず滅びるであろう。」と言ったそうです。

その事を告げると、姿の美しい女房は大蛇となり海中へ消えたそうです。

ちなみに、鎌倉時代の執権政治は、七代を超えてから滅びました。

しかし、執権は兄弟などの間でも継いでいるので、「世代」として考えると「七代目」に滅びた考え方も出来るそうです。

このお告げは当たっていたのか、それとも、このお告げは外れたのか、考え方によって、どちらにも当てはまると思います。

不思議な逸話だと思いました。

姿の美しい女房と「白蓮華」は、似ている部分はありますが違います。

この物語の時間設定は、沖田総司さん達が、京の町に来て最初の夏の頃を想像して書きました。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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