このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

新撰組異聞 〜 蝉時雨が降り注ぐ 〜


〜 改訂版 〜


ここは、京の町。


蝉時雨が響いている。


ここは、少女の家。


少女の部屋。


少女宛に文が届いた。


少女は文の差出人の名前を見た途端に、僅かに驚いた表情になった。

軽く息をはいてから、ゆっくりと文を読み始めた。


その翌日の事。


ここは、京の町。


沖田総司、斉藤一、少女が、良く訪れる寺。


寺の中。


縁の傍。


蝉時雨が寺の中にも響いてくる。


斉藤一と少女は、沖田総司が来るのを待っている。


少女は出入り口を心配そうに見た。

斉藤一は少女を普通の表情で見た。

少女は斉藤一を不安そうに見た。

斉藤一は少女に普通に話し出す。

「話しがあるのなら、悩まずに早く言え。」

少女は斉藤一に心配そうに話し出す。

「総司さんにとって山南さんは大切な方ですよね。山南さんが亡くなってから余り月日が経っていませんよね。総司さんは山南さんに関する出来事で、悩む時がありますよね。総司さんは私には何も言いません。斉藤さんには何かお話しをしていますよね。」

斉藤一は少女に普通に話し出す。

「総司との間に何か遭ったのか?」

少女は斉藤一に悩みながら話し出す。

「明里さんから私宛ての文が届きました。明里さんへの文のお返事について悩んでいます。」

斉藤一は少女に普通に話し出す。

「明里さんは美鈴さんを責める内容の文を書いたのか?」

少女は悩んだ表情のまま、斉藤一を見ながら小さく首を横に振った。

斉藤一は少女を普通の表情で見た。

少女は斉藤一に悩みながら話し出す。

「山南さんと明里さんは、慕い合う仲でしたよね。総司さんは、私に山南さんが亡くなる前後の出来事について、詳しいお話しをしてくださいません。山南さんと明里さんと総司さんとの間に何が遭ったのでしょうか? 私はどのようにすれば良いのでしょうか? 何を尋ねて何を相談すれば良いのか分からなくて悩んでいます。」

斉藤一は少女を普通の表情で見た。

少女は斉藤一に悩みながら話し出す。

「私は山南さんが亡くなった時の出来事を・・・」


沖田総司が少女の話しの途中で勢い良く寺の中に入ってきた。


少女は話しを止めると、沖田総司を笑顔で見た。

斉藤一は沖田総司と少女を普通の表情で見た。


沖田総司は斉藤一と少女の傍に、不機嫌そうに来た。


少女は沖田総司を困惑した様子で見た。

斉藤一は沖田総司と少女を普通の表情で見た。

沖田総司は少女に不機嫌そうに話し出す。

「二人で何を話していたの?!」

少女は沖田総司を不安そうに見た。

沖田総司は少女に不機嫌そうに話し出す。

「鈴ちゃん! なぜ黙っているんだ?!」

少女は沖田総司を不安そうに見ている。

沖田総司は少女に不機嫌そうに話し出す。

「私には言えない話しをしていたから黙っているのか?!」

少女は沖田総司に不安そうに話し出そうとした。

斉藤一は少女が話し出す前に、沖田総司に普通に話し出す。

「美鈴さんは俺に話しをしていない。」

沖田総司は斉藤一に不機嫌そうに話し出す。

「鈴ちゃんは斉藤さんに山南さんの名前を話していましたよね!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「話しが聞こえていたのなら、回りくどい話しをするな。」

沖田総司は斉藤一に強い調子で話し出す。

「どのような言い方をするかは私の勝手です!」

少女は沖田総司と斉藤一を不安そうに見た。

沖田総司は少女を不機嫌そうに見た。

少女は沖田総司に申し訳なさそうに話し出す。

「総司さん。すいません。」

沖田総司は少女に不機嫌そうに話し出す。

「私は話しの内容を尋ねているんだ! 謝って欲しいとは言っていない!」

少女は沖田総司を申し訳なさそうに見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。美鈴さんに強く言うのは止めろ。」

沖田総司は斉藤一に不機嫌そうに話し出す。

「私は鈴ちゃんに質問をしているだけです! 強く話していません!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「二人で山南さんの話しをしていた。」

沖田総司は斉藤一に不機嫌そうに話し出す。

「なぜ山南さんの話しをするのですか?!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「話したいからだ。」

沖田総司は斉藤一に強い調子で話し出そうとした。

少女は沖田総司が話し出す前に、不安そうに話し出す。

「喧嘩をしないでください。」

沖田総司は少女に不機嫌そうに話し出す。

「私は喧嘩などしていない! 斉藤さんと話しているだけだ!」

少女は沖田総司を不安そうに見た。

沖田総司は斉藤一に不機嫌そうに話し出す。

「斉藤さん! 鈴ちゃんに何を話したのですか?!」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

少女は沖田総司に悲しそうに話し出す。

「私から斉藤さんに話しを始めました。斉藤さんは悪くありません。悪いのは私です。お二人で喧嘩をしないでください。」

沖田総司は少女を不機嫌そうに見た。

少女は沖田総司に悲しそうに話し出す。

「総司さんと斉藤さんに迷惑を掛けてしまい申し訳ありませんでした。私はこれで失礼します。」

沖田総司は少女を不機嫌そうに見ている。


少女は寺の外へと寂しそうに出て行った。


斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。早く追い掛けろ。」

沖田総司は斉藤一を不機嫌そうに見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「美鈴さんは何も悪くないだろ。美鈴さんを悪者にしたまま帰して良いのか?」

沖田総司は斉藤一に不機嫌そうに話し出す。

「分かっています!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「怒る時間があるのなら、美鈴さんを早く追い掛けろ。」

沖田総司は斉藤一を不機嫌そうに見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。冷静になれ。後悔しても知らないぞ。」

沖田総司は斉藤一を僅かに驚いた表情で見た。

斉藤一は沖田総司の背中を僅かに強く押した。

沖田総司の体が揺らめいた。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。


沖田総司は寺の外へと勢い良く出て行った。


それから少し後の事。


ここは、京の町。


蝉時雨が響いている。


沖田総司は少女を捜しているが見付からない。


蝉時雨が沖田総司を包むように響き始めた。


沖田総司は少女を不安そうに捜し続けた。


それから少し後の事。


ここは、京の町。


屯所。


斉藤一の部屋。


蝉時雨は部屋の中にも響いてくる。


沖田総司は寂しそうに訪れた。


斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に悲しそうに話し出す。

「鈴ちゃんが見付かりませんでした。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「美鈴さんの家は訪ねたのか?」

沖田総司は斉藤一に悲しそうに話し出す。

「本来ならば、私と鈴ちゃんは逢っている最中です。そのような時間に私が鈴ちゃんの家を訪ねたら、家の人が不思議に思います。鈴ちゃんはどこかに一人で居るはずです。鈴ちゃんが一人で悲しんでいないか心配です。早く見付けてあげたいのに、見付けられませんでした。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。明日は何としてでも時間を作って美鈴さんに会いに行け。」

沖田総司は斉藤一に悲しそうな表情で頷いた。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。


その翌日の事。


ここは、少女の家の外。


沖田総司は少女の家から出てくると、寂しそうに軽く息をはいた。


蝉時雨が辺りに響いている。


沖田総司は辺りを見回しながら不安そうに歩き出した。


それから少し後の事。


ここは、屯所。


斉藤一の部屋。


沖田総司は不安そうに訪れた。


斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に不安そうに話し出す。

「鈴ちゃんは一人で出掛けたので家に居ませんでした。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「体調は悪くないようだな。取りあえずは一安心だな。」

沖田総司は斉藤一に不安そうに話し出す。

「鈴ちゃんは私や斉藤さんの知り合いに会うと言って出掛けたそうです。私や斉藤さんの知り合いというのは、新撰組の関係者ですよね。斉藤さんは鈴ちゃんから何か聞いていませんか?」

斉藤一は沖田総司を見ながら、普通の表情で首を横に振った。

沖田総司は斉藤一に不安そうに話し出す。

「昨日の鈴ちゃんは、斉藤さんに今日の用事のための相談をしていたのではないですか?」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「美鈴さんが話し始めて直ぐに総司が来た。話しは直ぐに止まったから、詳しい内容は分からない。」

沖田総司は斉藤一に不安そうに話し出す。

「斉藤さん。鈴ちゃんは誰と会うのですか? 鈴ちゃんが斉藤さんに相談しようとしていたのに、私が怒ったから鈴ちゃんが斉藤さんに相談が出来なくなりました。鈴ちゃんが何か言われて、傷ついたり悩んだりしたら私の責任です。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見ている。

沖田総司は斉藤一に不安そうに話し出す。

「山南さんに関する内容で呼び出されたのなら、良くない内容の可能性が高いですよね。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見ている。

沖田総司は斉藤一に強い調子で話し出す。

「鈴ちゃんが悲しい想いや辛い思いをしているかも知れません! 私は何も知らないままではいられません! 鈴ちゃんを放っておく訳にはいきません!」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見ている。

沖田総司は斉藤一に強い調子で話し出す。

「斉藤さん! なぜ黙っているのですか?!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。これから任務に就く予定があるだろ。早く任務の準備をしろ。」

沖田総司は斉藤一を納得のいかいない様子で見た。

斉藤一は沖田総司を見ながら普通に話し出す。

「美鈴さんのために総司の任務に支障が出たら、美鈴さんは悩んで苦しむぞ。美鈴さんのためにも任務が終わってから考えろ。」

沖田総司は斉藤一に納得のいかない様子で頷いた。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。


沖田総司は納得のいかない様子のまま、部屋から出て行った。


ちょうど同じ頃。


ここは、京の町。


落ち着いた雰囲気の寺。


蝉時雨が響いている。


寺の中。


明里と少女は、一緒に居る。


明里は少女に微笑んで話し出す。

「美鈴様。こんにちは。お久しぶりですね。」

少女は明里に真剣な表情で軽く礼をした。

明里は少女に微笑んで話し出す。

「山南先生が亡くなられたのは既にご存知ですか?」

少女は明里に真剣な表情で軽く礼をした。

明里は少女に微笑んで話し出す。

「山南先生が亡くなられてから、いろいろと考えていました。沖田様と斉藤様とは既に会って簡単ですが話しをしました。美鈴様とは何を話せばよいのか分からなくて、会うのを避けていたように思います。」

少女は明里を真剣な表情で見ている。

明里は少女に微笑んで話し出す。

「山南先生は、私を花街の外で過ごせるようにしてくださいました。山南先生には本当に感謝しています。私は山南先生に恥じない生き方をするつもりです。」

少女は明里を真剣な表情で見ている。

明里は少女に寂しそうに話し出す。

「私は花街の中で一生を過ごすようになったとしても、山南先生に生きていて欲しかったです。山南先生が生きてさえいてくだされば、どのような形でも逢う機会がありました。山南先生が亡くなられてからは、どのような形でも逢えません。」

少女は明里を真剣な表情で見ている。

明里は少女に微笑んで話し出す。

「私は武家の生まれではありません。切腹をした山南先生にも、山南先生を連れ戻して介錯をした沖田様にも、私の気持ちを伝えたいと思いました。生きている沖田様には私の気持ちを伝えられたとしても、亡くなられた山南先生には私の気持ちを伝えられません。」

少女は明里に真剣な表情で話し出す。

「総司さんに伝えたい想いは、私が代わりにお伺いします。遠慮せずにお話しください。」

明里は少女に微笑んで話し出す。

「私が山南先生の亡くなる経緯に関する気持ちを全て話したら、美鈴様はとても辛い気持ちになりますよ。」

少女は明里に真剣な表情で軽く礼をした。

明里は少女に微笑んで話し出す。

「しっかりと理解をされた上で、話しをされているのですね。」

少女は明里を真剣な表情で見た。

明里は少女に微笑んで話し出す。

「明里という名前は、花街で生きるために名付けられました。山南先生は私を明里と呼んでいました。明里という名前は、花街で過ごした良い出来事や悪い出来事を思い出す名前であると同時に、山南先生と私を結び付けてくれた大切な名前です。」

少女は明里を真剣な表情で見ている。

明里は少女に微笑んで話し出す。

「今は花街を出て別の所に住んでいます。沖田様や斉藤様や新撰組に関係のある方達と会うもうりはありません。」

少女は明里を真剣な表情で見ている。

明里は少女に微笑んで話し出す。

「話しは変わりますが、蝉時雨が響いていますね。」

少女は明里に真剣な表情で軽く礼をした。

明里は少女に真剣な表情で話し出す。

「美鈴様。もう一度だけ確認をします。本当に話しても良いのですね。」

少女は明里に真剣な表情で軽く礼をした。

明里は少女に微笑んで話し出す。

「美鈴様。話しを始めます。」

少女は明里に真剣な表情で軽く礼をした。


それから暫く後の事。


ここは、京の町。


空の色が僅かに橙色に染まり始めた。


ここは、少女の家の近く。


蝉時雨が響いている。


少女は一人でゆっくりと歩いている。


沖田総司が落ち着かない様子で辺りを見回している姿が見えた。


少女は立ち止まると、沖田総司を僅かに驚いた表情で見た。


沖田総司は少女の元に心配そうに来た。


少女は沖田総司に心配そうに話し出す。

「総司さん。今日はお仕事の日ですよね。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「今日の任務は終わったよ。昨日の出来事を謝ろうと思って鈴ちゃんの家を訪ねたら、鈴ちゃんは出掛けていると言われたんだ。鈴ちゃんに早く謝りたくて、鈴ちゃんの帰りを待っていたんだ。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「悪いのは私です。総司さんが謝る必要はありません。」

沖田総司は少女に心配そうに話し出す。

「昨日の出来事は私が悪い。鈴ちゃんは悪くないよ。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さんに逢えないかと思って不安になっていましたが、総司さんと逢えました。とても嬉しいです。」

沖田総司は少女に心配そうに話し出す。

「鈴ちゃん。今日は誰と会っていたの?」

少女は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は少女に心配そうに話し出す。

「私に言うと心配する相手だから黙っているのかな?」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さんが心配するお相手ではありません。安心してください。」

沖田総司は少女に心配そうに話し出す。

「鈴ちゃんが私のために悲しい想いをするのは嫌なんだ。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「お気遣いありがとうございます。私は大丈夫です。安心してください。」

沖田総司は少女に悲しそうに話し出す。

「私が怒ると思っているから隠しているんだね。」

少女は沖田総司を見ながら、微笑んで小さく首を横に振った。

沖田総司は少女に悲しそうに話し出す。

「怒らないから話しをしてくれ。」

少女は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は少女に悲しそうに話し出す。

「私は鈴ちゃんにとって頼りにない人物なのか?」

少女が沖田総司に抱きつくと、心配そうに話し出す。

「総司さん。私は大丈夫です。私のために辛い想いをしないでください。」

沖田総司は心配そうな表情のまま、少女をゆっくりと抱いた。

少女は沖田総司に抱きつきながら、心配そうに話し出す。

「今日は明里さんと会いました。」

沖田総司は少女を一瞬だけ強く抱いた。

少女は沖田総司に抱きつきながら、心配そうに話し出す。

「明里さんの辛いお気持ちも、総司さんの辛いお気持ちも、斉藤さんの辛いお気持ちも、分かっていたと思っていました。明里さんと会ってお話しを聞いて、私は何も分かっていないと気付きました。私は、総司さん、斉藤さん、山南さん、明里さんの間に何が遭ったのか今でも知りません。何も知らないのに辛いお気持ちが分かる訳がないですよね。」

沖田総司は少女を抱きながら、辛そうに話し出す。

「鈴ちゃん。ごめんね。鈴ちゃんが辛いのも明里さんが辛いのも全て私が悪いんだ。」

少女は沖田総司に抱きつきながら、心配そうに話し出す。

「明里さんが山南さんと親しくお付き合い出来たのは、総司さんがしっかりとお仕事をしていたからです。私が安心して過ごせるのは、総司さんがしっかりとお仕事をされているからです。総司さんに迷惑を掛けているのは私です。私は、何も知らないし、武家の生まれではないし、年下だし、頼りにならないし・・・」

沖田総司は少女を抱きながら、話しを遮ると、辛そうに話し出す。

「鈴ちゃんは優しいよ。鈴ちゃんはしっかりとしているよ。鈴ちゃんの笑顔は見ている人を明るくするよ。」

少女は沖田総司に抱きつきながら、悲しそうな表情になった。

沖田総司は少女を抱きながら、心配そうに話し出す。

「明里さんは鈴ちゃんに何を話したの?」

少女は沖田総司に抱きつきながら、心配そうに話し出す。

「総司さん。無理をせずに体に気を付けて過ごしてください。笑顔で過ごしてください。山南さんの分まで幸せに生きていてください。」

沖田総司は少女を悲しそうに抱いている。

少女は沖田総司に悲しそうに抱きついている。
沖田総司は少女を抱きながら、悲しそうに話し出す。

「鈴ちゃん。ありがとう。」

少女は沖田総司に抱きつきながら、悲しそうに頷いた。

沖田総司は少女を抱きながら、微笑んで話し出す。

「山南さんの思い出を、みんなと笑顔で話せるようになりたい。話しをする時には鈴ちゃんも一緒だよ。約束だよ。忘れたら駄目だよ。」


少女は沖田総司を抱きつきながら、微笑んで小さく頷いた。

沖田総司は少女をゆっくりと放すと、微笑んで話し出す。
「長く引き止めてごめんね。短い距離だけど鈴ちゃんの家まで送るよ。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「よろしくお願いします。」

沖田総司は少女を微笑んで見た。


沖田総司と少女は、蝉時雨の中をゆっくりと歩きだした。


「美鈴様ともみなさまとも会うつもりも機会もないと思います・・・」

「この場で話した内容を、沖田様にどのように伝えられるかは、美鈴様にお任せします・・・」

「美鈴様。不思議そうな顔をされていますね・・・」

「沖田様を一番に理解されているのは、美鈴様と斉藤様です・・・」

「今は分からなくても、分かる日が訪れます・・・」

「美鈴様は自信を持って生きてください・・・・」




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語は既に掲載している物語の改訂版です。

改訂前の展開や雰囲気を出来るだけ残しながら改訂しました。

改訂前の物語を掲載するのは止めました。

以上の点、ご了承願います。

ここからは改訂前の後書きを加筆訂正しながら書いていきます。

山南敬助さんが亡くなってから迎える最初の夏を設定して書いた物語です。

山南敬助さんが居ない時期の蝉時雨の物語になります。

「新撰組異聞 短編 藤の花咲く頃のこと」の中で、山南敬助さんが亡くなった後に、沖田総司さんと斉藤一さんが明里さんと偶然に再会した展開で話す場面があります。

明里さんが鈴ちゃんのような立場の人と親しかった場合は、直ぐには会わないように考えました。

今回の物語は、「新撰組異聞 短編 藤の花咲く頃のこと」より更に時間が経ってから、明里さんが自分から鈴ちゃんに宛てて文を書きました。

今回の物語では、明里さんが鈴ちゃんに宛てた文の内容や会って伝えた詳細については書かずに、鈴ちゃんに伝えた一部だけを書きました。

楽しんで頂けると嬉しいです。





←前             目次            次→


このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください