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新撰組異聞 〜 紅の扇 紅葉の舞う時 〜


〜 第三版 〜


ここは、京の町。


文久三年九月の半ば頃の事。


芹沢鴨が暗殺された。


芹沢鴨の暗殺は、新撰組にとっては大事件になる。

芹沢鴨の暗殺は、政局と京の町にとっては、大事件ではない。

京の町の雰囲気は、ほとんど変わっていない。


幾日か後の事。


冬の季節が近付いてきた。


ここは、京の町。


僅かに寒さを感じる時がある。


ここは、辺りが紅色の紅葉で覆わる場所。


紅葉の木の下。


沖田総司はため息をつきながら居る。


沖田総司はため息をつきながら、紅葉を見た。


微かに風が吹いた。


紅葉が沖田総司の傍に舞い落ちてきた。


沖田総司はため息を付きながら、舞い落ちる紅葉を見た。


紅葉はゆっくりと地面へと舞い落ちた。


沖田総司はため息をつきながら、空をゆっくりと見た。


白い雲が青空の中をゆっくり動いている。


沖田総司はため息をつくと、地面に舞い落ちた紅葉を見た。


斉藤一の普通の声が、沖田総司の後ろから聞こえた。

「何をしている?」


沖田総司は後ろを微笑んで見た。


斉藤一は沖田総司を普通の表情で見ている。


沖田総司は斉藤一を微笑んで見た。


斉藤一は沖田総司の横に普通に来た。


沖田総司はため息をつくと、地面に落ちた紅葉を見た。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一を見ると、斉藤一に不思議な様子で話し出す。

「斉藤さん。何故、私を黙って見ているのですか?」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司が感傷に浸っている。総司の感傷に浸る時間が終わるまで待っている。」

沖田総司は斉藤一に苦笑して話し出す。

「私は感傷に浸っている様子に見えますか?」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一に苦笑して話し出す。

「感傷に浸っている様子に見える場合は、普通は、励ましたり、慰めたり、しませんか?」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「俺は、励ます、慰める、性格ではない。励ましや慰めが、欲しいのか。該当する状況の得意な人物を連れてくる。」

沖田総司は斉藤一に苦笑して話し出す。

「連れてこなくて良いです。斉藤さん。一緒に居てください。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は辺りの紅葉を微笑んで見た。

斉藤一は辺りの紅葉を普通の表情で見た。


沖田総司の傍と斉藤一の傍に、紅葉がゆっくりと舞い落ちてきた。


沖田総司は舞い落ちる紅葉を微笑んで見た。

斉藤一は舞い落ちる紅葉を普通の表情で見た。


紅葉はゆっくりと地面へと舞い落ちた。


沖田総司は舞い落ちた紅葉を微笑んで拾った。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は紅葉を持ち、斉藤一を微笑んで見た。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見ている。

沖田総司は紅葉を持ち、斉藤一に静かに話し出す。

「芹沢さんは紅葉のような人物でしたね。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見ている。

沖田総司は紅葉を持ち、斉藤一に微笑んで話し出す。

「芹沢さんは、我がままで豪快に見えるけど、周りに気を配っていましたよね。芹沢さんは、豪快な人物に見える状況があるので、人目を引いていましたよね。芹沢さんと紅葉は、似ているように感じます。」

斉藤一は沖田総司の持つ紅葉を普通の表情で見た。

沖田総司は紅葉を持ち、斉藤一に考えながら話し出す。

「斉藤さん。芹沢さんは、何故、亡くなったのでしょうか?」

斉藤一は沖田総司を見ると、沖田総司に普通に話し出す。

「総司自身が既に分かっている内容だ。何故、俺に質問する?」

沖田総司は紅葉を持ち、斉藤一に寂しく話し出す。

「時折ですが、避ける方法は無かったのか、と考える時があります。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司は避けられなかった状況を後悔しているのか?」

沖田総司は紅葉を持ち、沖田総司の手に持つ紅葉を見ると、斉藤一に考え込んで話し出す。

「後悔はしていません。当時はあのように行動するしかなかったと思います。後になって思う内容ですが、芹沢さんは早く亡くなる状況が分かった中で、あのような行動をしていたように思えてきました。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司が、芹沢さんは普通の人物ではないと分かっているから、感じる内容かも知れない。」

沖田総司は紅葉を持ち、斉藤一を不思議な様子で見た。

斉藤一が沖田総司に普通に話し出す。

「芹沢さんは普通の人物ではない。芹沢さんはたくさんのものが見えていたと思う。」

沖田総司は紅葉を持ち、斉藤一を考えながら見た。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は紅葉を持ち、斉藤一に考えながら話し出す。

「芹沢さんには何が見えていたのでしょうか? 知りたいです。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「俺は芹沢さんではない。分からない。」

沖田総司は紅葉を持ち、斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さんは最初から分かっていましたよね?」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は紅葉を持ち、斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。何故、黙っているのですか?」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「知りたいのか?」

沖田総司は紅葉を持ち、斉藤一に微笑んで話し出す。

「当時、斉藤さんは私達と一緒に居ませんでした。当時、私は現場に居ました。当時、芹沢さんは、生きる状況に対して、執着している様子、執着していない様子、共に該当しているように見えました。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は紅葉を持ち、斉藤一に僅かに慌てて話し出す。

「すいません。話す内容が悪かったです。斉藤さんも現場に一緒に居れば、私には見えないものが見えたと思えました。斉藤さんに確認したくて話しました。」

斉藤一は沖田総司が手に持つ紅葉を静かに取った。

沖田総司は斉藤一を不思議な様子で見た。

斉藤一は紅葉を持ち、斉藤一の持つ紅葉を見ると、沖田総司に普通に話し出す。

「総司が見た芹沢さんは、総司が感じた内容を思っていたかも知れない。総司は当時の言動を後悔していない。今の話す以上の内容は、考える必要がない。」

沖田総司は斉藤一を考えながら見た。

斉藤一は紅葉を持ち、斉藤一の持つ紅葉を見ながら、沖田総司に普通に話し出す。

「芹沢さんが、紅葉。総司にしては、良い表現だ。」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さんも同じ考えなのですね。嬉しいです。」

斉藤一は紅葉を持ち、沖田総司を見ると、沖田総司に普通に話し出す。

「俺達の今の居る場所は、普通の人物が居るには、楽な場所かも知れない。俺達の今の居る場所は、凄過ぎる人物が居るには、危険な場所かも知れない。」

沖田総司は斉藤一を考えながら見た。

斉藤一は紅葉を持ち、沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に心配して話し出す。

「斉藤さんの今の話が正しい場合、斉藤さんは気を付けてください。何としてでも生き残ってください。」

斉藤一は紅葉を持ち、沖田総司に普通に話し出す。

「今の総司の言葉は、総司にも当てはまる。」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「私は大丈夫です。斉藤さんは、私より危険な任務にたくさん就いています。斉藤さんは私以上に気を付けてください。」

斉藤一は紅葉を持ち、沖田総司に普通に話し出す。

「心配してくれて嬉しいよ。」

沖田総司は斉藤一に嬉しく話し出す。

「斉藤さんから嬉しいと言われた〜! 嬉しいです〜!」

斉藤一は紅葉を持ち、沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に心配して話し出す。

「私は変な内容を話しましたか?」

斉藤一は紅葉を持ち、沖田総司に普通の表情で首を横に振った。

沖田総司は斉藤一に笑顔で話し出す。

「良かった〜!」

斉藤一は紅葉を持ち、沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。私を心配して来てくれたのですね。ありがとうございます。」

斉藤一は紅葉を持ち、沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に不思議な様子で話し出す。

「違うのですか?」

斉藤一は紅葉を持ち、沖田総司に普通に話し出す。

「任せる。」

沖田総司は斉藤一に不思議な様子で話し出す。

「何を任せるのですか?」

斉藤一は紅葉を持ち、沖田総司に普通に話し出す。

「任せる。他に意味はない。」

沖田総司は斉藤一を考えながら見た。

斉藤一は紅葉を持ち、沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一を考えながら見ている。

斉藤一は紅葉を普通の表情でゆっくりと放した。


紅葉は地面へとゆっくりと舞い落ちた。


斉藤一は普通に歩き出した。


沖田総司は慌てた様子で歩き出した。


斉藤一は普通に止まった。


斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。


沖田総司は微笑んで来た。


斉藤一は普通に歩き出した。

沖田総司は微笑んで歩き出した。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語は既に掲載している物語の再改訂版です。

改訂前の物語の雰囲気や展開を出来るだけ残して改訂しました。

改訂前の物語を掲載するのは止めました。

以上、ご了承ください。

ここからは改訂前の後書きを加筆訂正して書きます。

この物語の題名は「紅の扇 紅葉の舞うとき」から「紅の扇 紅葉の舞う時」に変更しています。

この物語は、芹沢鴨さんの暗殺(文久三年九月十八日[1863年10月30日])の直後になる秋の終わり頃を想定して書きました。

芹沢鴨さんが暗殺された当時は、新撰組(当時は壬生浪士組)が実行したのではなく、別な人達が実行した、として処理されます。

結局は、疑われた別の人達が芹沢鴨さんの暗殺を実行した事として、暗殺されたようです。

芹沢鴨さんは乱暴者として描かれる事が多いです。

本当だとすると、近藤勇さんや土方歳三さんが頼って京で一緒に行動しなかったのではないかと思いました。

永倉新八さんは、後の事になりますが、芹沢鴨さんを褒めるような話などを残しているそうです。

芹沢鴨さんが乱暴をしていたのには、いろいろと理由があった説もあるそうです。

山南敬助さんや土方歳三などのように、優秀な人物のように思いました。

沖田総司さんは、芹沢鴨さんや近藤勇さんや土方歳三さんなどと接しながら、何か感じる事があったと思います。

斉藤一さんも京ではそのような関係を見ていた事になります。

「新撰組異聞」関連の設定では、斉藤一さんは、芹沢鴨さんとは、江戸に居た時には、接点がない、又は、ほとんど接点が無い、という設定です。

芹沢鴨さんの暗殺について、一つ疑問があります。

斉藤一さんは、新撰組幹部の暗殺や重要人物の暗殺の時には、何かの形で関係しているといわれるほど、名前が頻繁に登場します。

誤解されて、斉藤一さんの名前が登場している暗殺事件があるようです。

斉藤一さんの名前が、芹沢鴨さんの暗殺の人達の中には登場していません。

斉藤一さんの名前が登場しないからと言って、斉藤一さんが芹沢鴨さんの暗殺に関係していないと言い切れません。

斉藤一さんが間接的に関係していた事も考えられます。

事実が気になります。

沖田総司さんと斉藤一さんは、芹沢鴨さんの暗殺について、何を思っていたのか考えました。

新撰組は何かに秀でた人物が生き残るのは大変だったと思います。

人望も教養もある山南敬助さんは、この物語の時間設定より後に、切腹して亡くなります。

この物語の時間設定より後に、参謀として新撰組に入隊した伊東甲子太郎さんは、新撰組の人達に暗殺されて亡くなります。

そのような状況の中、新撰組最強の剣客といわれる沖田総司さん、新撰組最強の剣客といわれる斉藤一さんは、殺害される事なく生き残ります。

沖田総司さんの場合は、病気のために新撰組の最後を知る事なく亡くなります。

斉藤一さんの場合は、会津に残って戦いを続けるので、新撰組の最後の戦いには加わっていません。

新撰組最強の剣客といわれる沖田総司さん、新撰組最強の剣客といわれる斉藤一さんが、新撰組の最後に共に居ない状況は、不思議なものを感じます。

芹沢鴨さんの評価は、「粗暴、乱暴者、深く物事を考えない人」、「切れ者、知識人、豪快な人」と、評価が分かれます。

共に合っている評価のように思います。

「新撰組」の未来が分かる「切れ者」だったからこそ、どうにもならない状態の中に居るために「乱暴者」になった。

「新撰組」に納まりきらない「豪快な人」だから、周りからは「乱暴者」と思われてしまった。

共に当てはまるように思いました。

芹沢鴨さんは、初期の新撰組には必要な人物だったと思います。

芹沢鴨さんは、安定期の新撰組ならば居ても問題のない人物だったと思います。

芹沢鴨さんは初期を過ぎても新撰組に居ました。

新撰組の安定期には程遠い時期です。

いろいろな駆け引きが必要で、不安定な状況の中での暗殺だったと思います。

新撰組末期に芹沢鴨さんが居たら、少しだけ違う結果になっているように思いました。

芹沢鴨さんの暗殺に関係した人達は、どのような気持ちで過ごしていたのか考えました。

酷な言い方ですが、芹沢鴨さんの暗殺によって新撰組は落ち着いて結束が深まったように思います。

だからこそ、この物語の中で、沖田総司さんが、「後悔をしていない」という言葉を話したと思ってください。

斉藤一さんも、そのような状況が分かるからこそ、否定的な言葉を話したと思ってください。

優秀だけど生き残った沖田総司さん。

優秀だけど生き残った斉藤一さん。

優秀なために亡くなってしまった芹沢鴨さん。

優秀なために亡くなってしまった山南敬助さん。

山南敬助さんの切腹は、いろいろな意味で後々にまで影響が残ります。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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