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新撰組異聞 〜 端月を迎えて少し後の事 〜


お雪を亡くしてから始めて迎える正月。

お雪が亡くなる少し前から妹のお孝が一緒に住むようになった。

現在、お雪の家にはお孝がそのまま住んで居る。

お孝はお雪とは姉妹だが、一緒に住んだ期間はあまりない。

そのせいかもしれないが、悲しいとか寂しいとかという感情をあまり感じない。


お孝の家にはたくさんの来客が訪れる。

しかし、お雪は近藤勇が身請けした女性、お孝はお雪の妹。

来客と言っても新撰組の関係者ばかり。

近藤勇などからの言伝や文などを渡すと直ぐに帰っていく。

どうも、お祝いという雰囲気ではないために、気を遣って直ぐに帰ってしまうらしい。


正月という事もあって特別な事も出来ない。

お孝は詰まらなさそうな表情を時折見せている。


そんな端月を迎えて少し過ぎた頃。

近藤勇がお孝のもとを現れた。

近藤勇は微笑んでお孝に話し掛ける。

「元気そうだな。」

お孝は近藤勇を見ると普通に話し掛ける。

「はい。元気です。近藤さんは元気に見えません。もしかして、疲れていますか?」

近藤勇は苦笑しながらお孝に話し掛ける。

「お孝さんには、疲れているように見えるのか。困ったな。」

お孝は近藤勇に普通に話し掛ける。

「新撰組局長の近藤勇が疲れている姿を見せるなんて、部下にしめしがつきませんよね。困りますよね。」

近藤勇はお孝を苦笑しながら黙って見ている。

お孝は笑顔で近藤勇に話し掛ける。

「でも、来てくれて嬉しいです。」

近藤勇は微笑んでお孝を見た。

お孝は笑顔で近藤勇に話し掛ける。

「だって、ここに来て話しをしてくれる人は、姉さんの事ばかり話しをするの。だから、みんな同じ話しばかりになるの。私は姉さんと一緒に長く住む事が出来なかったら、知らない事も多いの。」

近藤勇はお孝の話しを微笑んで聞いている。

お孝は苦笑しながら近藤勇に話し掛ける。

「私の事を気遣ってくれている人もいるようなんです。だから適当に話しをあわせています。でも、結構辛いんです。」

近藤勇は微笑んでお孝を見ている。

お孝は近藤勇に笑顔で話し掛ける。

「近藤さん。もしかして、姉さんの話しをしにここに来たの? それとも、仕事が辛くてここに休みに来たの?」

近藤勇は苦笑しながらお孝を見ている。

お孝は近藤勇を笑顔で見ながら話し掛ける。

「私は別にどちらでもいいですよ。私と話しをしたいのなら相手をしますよ。わかる話しには返事をしますから安心してください。疲れていて休みしたいならどうぞ。この家は、近藤さんが姉さんのために建てた家ですから、私の事は気にしないで休んでください。」

近藤勇は苦笑しながらお孝を見ている。

お孝は近藤勇が話し掛けてこないため微笑んで話し出す。

「話しが無いなら私は部屋に戻りますね。話しがあったら呼んでください。」

近藤勇はお孝の様子を微笑んで見ながら頷いた。


お孝が居なくなり近藤勇は一人になった。

近藤勇はお雪の位牌の前にいる。


お孝は、近藤勇の様子を気にする様子もなく、自分の部屋の縁に座って庭を見ている。


それから少しだけ時間が経った。

近藤勇がお孝に微笑んで話し掛ける。

「お孝さん。今日はありがとう。」

お孝は普通に近藤勇に話し掛ける。

「私は別に何もいてしていないけど。」

近藤勇は微笑んでお孝を見ている。

お孝は近藤勇に微笑んで話し出す。

「また辛くなったらここに来ていいですよ。」

近藤勇は微笑んでお孝に話し掛ける。

「ありがとう。」

お孝は黙って近藤勇を見ている。

近藤勇は微笑んでお孝に話し掛ける。

「お孝さん。もう暫くはここに居るつもりなんだろ。」

お孝は近藤勇に微笑んで話し掛ける。

「その予定です。でも、近藤さんがもっと居ても良いと言ってくれれば、もう少しここに居たいです。」

近藤勇は微笑んでお孝を見ている。

お孝は微笑んで近藤勇に話し掛ける。

「姉さんに頼まれた事があるんです。それが終われば大阪に帰ろうと思います。」

近藤勇は寂しそうにお孝を見ている。

お孝は不思議そうに近藤勇に話し掛ける。

「まだ疲れているの? もう少しここに居たら?」

近藤勇は微笑んでお孝に話し掛ける。

「では、もう少し休んでいこうかな。」

お孝は近藤勇を見ていたが黙って居なくなった。

近藤勇は微笑んでお孝を見ている。


そんな出来事があってから後の事。

近藤勇がお孝のもとを微笑みながら訪れる。

お孝が近藤勇を普通に出迎える。

二人は普通に話しをする。

近藤勇は普通に帰っていく。

そんな日々が続いている。


近藤勇と土方歳三が京の町を歩いている。

土方歳三が近藤勇に微笑んで話し掛ける。

「近藤さん。最近、お孝さんの所に良く出掛けているな。」

近藤勇は微笑んで土方歳三に話し掛ける。

「あの家に居ると落ち着くんだ。お雪の居た家のせいかな。」

土方歳三は近藤勇に少しからかう様子で話し掛ける。

「お雪さんの居た家だから落ち着く訳じゃないだろ。」

近藤勇は苦笑しながら土方歳三を見ている。

土方歳三は近藤勇に微笑んで話し掛ける。

「近藤さん。もう少し待っていてくれ。」

近藤勇は苦笑しながら土方歳三を見ている。


近藤勇と土方歳三は、そのまま京の町を歩いている。

すると、少し遠くから少女が一人で歩いてくる姿が見えた。

近藤勇が立ち止まって少女を見た。

土方歳三も立ち止まり近藤勇を見ながら話し掛ける。

「どうしたんだ?」

近藤勇が少女を見ながら土方歳三に話し掛ける。

「歳。あの子は、総司と仲が良い子だよな。」

土方歳三は少女を一瞥すると近藤勇に普通に返事をする。

「そうだけど。」

近藤勇は少女を見ながら土方歳三に話し掛ける。

「名前は美鈴で良いんだよな。」

土方歳三は近藤勇を見ながら黙って頷いた。

近藤勇は少女を見ながら土方歳三に話し掛ける。

「歳。あの子と少しだけで良いから話ししたい。」

土方歳三は怪訝そうな表情で近藤勇を見ている。

近藤勇は土方歳三を見ながら普通に話し掛ける。

「お雪はあの子の事を最期まで気にしていた。俺と会う時間を減らして、あの子と総司のために最期の時間を使った。お孝さんにも二人の話しをしているらしい。あの子とどうしても話しがしたい。」

土方歳三は近藤勇に考え込みながら話し掛ける。

「話しをする事はかまわないが、総司や斉藤の耳に入ったら少し煩わしいかな。斉藤は話しをすればそれで終わるが、総司はそれで済まないかもしれないな。」

近藤勇は少女を見ながら土方歳三に話し掛ける。

「わかっている。でもあの子と話しがしたい。」

土方歳三は困った様子で近藤勇を見ている。


近藤勇と土方歳三が話しをしているうちに、少女が二人に近づいてきた。

少女は、二人が自分を見ているらしいと感じたらしく、立ち止まった。

近藤勇と土方歳三は少女を見ながら小さい声で話しをしている。

少女は軽く礼をすると、二人の横を通り過ぎようとした。

近藤勇が少女に直ぐに声を掛けた。

「美鈴さん。こんにちは。少し時間があるかな?」

少女は驚いて近藤勇を見た。

近藤勇は少女に微笑んで話し掛ける。

「美鈴さんと話しがしたいんだ。大丈夫かな?」

少女は不安そうに近藤勇を見ながら頷いた。

近藤勇は微笑んで少女に話し掛ける。

「話しは美鈴さんの都合もあるから、日を改めてしたいと思っている。都合の悪い日はあるかな?」

少女は心配そうに近藤勇を見ながら小さく首を横に振った。

近藤勇は微笑んで少女に話し掛ける。

「普通に話しがしたいだけだから、心配しなくてもいいよ。」

少女は心配そうに近藤勇を見ながら首を縦に振った。

近藤勇は少女に微笑んで話し掛ける。

「では、急で悪いが、明日でも良いかな。」

少女は近藤勇を見ながら心配そうに首を縦に振った。

近藤勇は少女に微笑んで話し掛ける。

「では、明日また会おう。斉藤を美鈴さんの家に迎えに行かせる。」

少女は心配そうに近藤勇を見ながら小さく頷いた。

近藤勇と土方歳三は去っていった。

少女は二人を心配そうに見ていたが、その場から直ぐに居なくなった。


そんな出来事があった翌日の事。

土方歳三と近藤勇と少女の三人は、料亭の一部屋に居る。

三人の前には、豪華な料理がたくさん並んでいるが、お酒は見当たらない。

少女は困った表情で近藤勇と土方歳三を黙って見ている。

近藤勇は少女に微笑んで話し掛ける。

「外だといろいろと気になる事も多いからここに来た。お酒は用意していない。安心して良いよ。」

少女は困った表情で二人を見ながら黙っている。

近藤勇は少女に微笑んで話し掛ける。

「美鈴さん。お雪と親しくしてくれてありがとう。」

少女は不安そうに近藤勇を見ている。

近藤勇は微笑んで少女に話し掛ける。

「お雪も最初の頃は気晴らしが出来なくていろいろと大変だったと思う。でも、美鈴さんと会うようになってから、お雪の笑顔が増えてきた。楽しそうだった。本当にありがとう。」

少女は困った表情で近藤勇を見ている。

近藤勇は少女に深く頭を下げた。

少女は困った表情で近藤勇を見ている。

近藤勇は微笑んで少女に話し掛ける。

「今はお雪の所にお孝が居る。お孝にもあの家にずっと居て欲しい。お孝とも仲良くしてくれると嬉しい。」

少女は困った様子で近藤勇を見ている。

近藤勇は、先程から何も言わない少女を見て困ってしまい、土方歳三を見た。

土方歳三は微笑んで少女に話し掛ける。

「美鈴さん。緊張しなくていいよ。美鈴さんはお客様なんだよ。遠慮しないで食べて良いよ。美鈴さんの好きなそうな物を用意したつもりだったんだけど違ったのかな? 他に食べたい物がある?」

少女は土方歳三を見ながら困った様子で話し出す。

「お気遣い頂いてありがとうございます。料理は大丈夫です。私はこういう場所での作法など、慣れていない事が多くて、ご迷惑をお掛けしました。では、いただきます。」

土方歳三は微笑んで少女を見ながら頷いた。

少女は二人に軽く礼をすると食事を始めた。

近藤勇は少女の様子を微笑んで見ている。


三人での食事が終わった。

少女は近藤勇に微笑んで話し掛ける。

「ごちそうさまでした。今日はありがとうございました。」

近藤勇は微笑んで少女を見ながら頷いた。

少女は近藤勇を微笑んで見ている。

近藤勇は微笑んで少女に話し掛ける。

「総司といつも仲良くしてくれて、ありがとう。」

少女は困った様子で近藤勇を見ている。

近藤勇は微笑んで少女に話し掛ける。

「総司は粗忽者だから、気苦労も多いと思う。でも、いつも美鈴さんが一緒に居てくれるせいか総司も楽しそうにしている。これからもよろしく頼む。」

少女は不安そうに近藤勇に話し掛ける。

「私はお仕事の事や武士の方の決まり事など、ほとんどわかりません。沖田様にもいつも迷惑を掛けています。迷惑をかけない様に努力します。沖田様がみなさまから悪く言われない様に努力します。これからもよろしくお願いします。」

近藤勇は少女を微笑んで見ている。

少女は近藤勇に深く頭を下げた。

近藤勇は微笑んで少女に話し掛ける。

「美鈴さん。あまり気負わないでくれ。総司とは今までどおり仲良くしてくれ。」

少女は頭を上げると近藤勇を不安そうに見ている。

近藤勇は少女に微笑んで話し掛ける。

「私の方からも礼を言う。お雪と仲良くしてくれてありがとう。総司の事、お孝の事をよろしく頼む。」

少女は近藤勇を真剣な表情で見ながら黙って礼をした。


三人の話しが終って直ぐの事。

斉藤一が三人の居る部屋にやってきた。

土方歳三が微笑んで斉藤一に話し掛ける。

「斉藤も一緒に食事をさせれば良かったな。」

斉藤一は土方歳三を見ながら普通に話し出す。

「でしたら任務を外してください。任務があるのに食事が出来る訳ないですよね。」

少女は近藤勇と土方歳三に微笑んで礼をしながら話し出す。

「今日はありがとうございました。」

近藤勇と土方歳三は微笑んで少女を見ながら頷いた。

斉藤一と少女は一緒に帰っていった。


近藤勇が微笑んで土方歳三に話し掛ける。

「まるでお雪を見ているようだった。」

土方歳三は近藤勇を見ながら微笑んで頷いた。

近藤勇は土方歳三に微笑んで話し掛ける。

「あの子は、可愛いし、一途だし、控えめだし、気配りも出来るし、思いやりもある良い子だな。総司にはもったいないな。でも、今は可愛いというよりは、綺麗になってきたという雰囲気に近いかな。総司にはもったいないと思わないか?」

土方歳三は怪訝そうな表情で近藤勇を見ている。

近藤勇は苦笑しながら土方歳三に話し掛ける。

「わかっているよ。」

土方歳三は怪訝そうなまま近藤勇を見ている。

近藤勇は少女が居なくなってから頼んだ酒を飲んだ。

土方歳三は怪訝な表情のまま酒を飲んだ。

近藤勇は苦笑しながら土方歳三に話し掛ける。

「だから、わかっているよ。」

土方歳三は近藤勇の様子を見ると少し安心した表情に変わった。


少女は斉藤一に申し訳なさそうに話し掛ける。

「今日はお仕事中なのに送り迎えをして頂いて、申し訳ありません。」

斉藤一は少女を見ながら普通に話し掛ける。

「これも仕事だから安心しろ。」

少女は斉藤一を見ながら不思議そうに話し掛ける。

「あの、お仕事の羽織は着なくても良いのですか?」

斉藤一は少女を見ないで普通に話し掛ける。

「目立つから着ていない。美鈴さんと一緒に居る時は目立たない様に着ない事にしている。総司も仕事中でも美鈴さんと一緒に居る時は着ていないだろ。」

少女は申し訳なさそうに斉藤一に話し掛ける。

「私は総司さんにも斉藤さんにも迷惑を掛けていますね。」

斉藤一は少女に普通に話し掛ける。

「あまり気なするな。お雪さんにもお孝さんにも同じ事をしている。」

少女は申し訳なさそうに斉藤一を見ている。

斉藤一は普通に少女に話し掛ける。

「隊服を着ていないと楽でいい。美鈴さんと一緒に居る時は楽が出来る。」

少女は斉藤一を微笑んで見た。


そんな出来事があった日から数日後の事。

少女と斉藤一はお孝の居る家にやってきた。

お孝は少女を見て普通に出迎えた。

三人は家の中へと入っていった。


斉藤一とお孝と少女はお孝の部屋に居る。

少女は深く頭下げると、申し訳なさそうにお孝に話し出す。

「お雪さんのお見舞いに来なかった事、重ねて、お通夜にもお葬式にも来なかった事など、知らなかったとはいえ、申し訳ありませんでした。」

お孝は普通に少女に話し掛ける。

「姉さんの病気の事も亡くなった事も伏せられていたんだから、美鈴さんが謝る必要はないよ。」

少女はお孝に申し訳なさそうに話し掛ける。

「でも、お雪さんとたくさん一緒に居たのに、病気の事に気が付きませんでした。」

お孝は少女に普通に話し掛ける。

「姉さんは自分の体調を美鈴さんに知られないようにしていたから、気が付かなくて当然だと思うよ。あまり気にしない方がいいよ。」

少女は申し訳なさそうにお孝を見ている。

お孝は不思議そうに少女に話し掛ける。

「美鈴さんは自分の事より人の事を考える人よね。姉さんに似ているね。」

少女は微笑んでお孝に話し掛ける。

「お雪さんと同じと言ってもらえると嬉しいです。」

お孝は少女を微笑んで見ている。

少女は真剣な表情になるとお孝に話し出す。

「お雪さんのご焼香をさせて頂けないでしょうか?」

お孝も真剣な表情になると少女に話し出す。

「駄目です。お断りします。」

少女は驚いてお孝を見た。

お孝は真剣な表情で少女に話し掛ける。

「私は詳しい話しは知らないけれど、姉さんからの伝言があるの。」

少女は不安そうにお孝を見ている。

お孝は真剣な表情で少女に話し掛ける。

「姉さんは美鈴さんに何かを伝えていますよね。それを覚えているなら、ここに来るべき時はいつだかわかりますよね。その時になったらここに来てください。それまでは焼香に来ないでください。これが姉さんからの伝言です。」

少女は斉藤一を見た。

斉藤一は少女を見ると軽く頷いた。

お孝は少女に普通に話し掛ける、

「姉さんから頼まれている事でもあるけど、私に相談や話したい事があれば聞くよ。辛くなったらここに来ていいよ。私は姉さんみたいに頼りにならないけど話しを聞くよ。」

少女は微笑んでお孝に話し出す。

「いろいろとお気遣いありがとうございます。ご焼香の件ですが、お雪さんの所に来る事が出来るようになりたいと思います。」

お孝は少女に微笑んで話し掛ける。

「早く来てね。もたもたしていちゃ駄目だよ。」

少女は恥ずかしそうにお孝を見た。


斉藤一と少女は、少女の家へと戻っている。

少女は斉藤一に寂しそうに話し出す。

「お雪さんにはいろいろとお世話になりました。それなのに、お見舞いもお通夜もお葬式もご焼香も何も出来ませんでした。」

斉藤一は少女に普通に話し掛ける。

「でも、だからこそ総司の事を考える時間がたくさんあっただろ。お雪さんの望みと美鈴さんの願いを叶える事は一緒だろ。だから、あまり気にするな。早く願いを叶えて三人で一緒にお雪さんの所へ焼香に行こう。」

少女は微笑んで斉藤一を見ると頷いた。


近藤勇がお孝の所にやってきた。

お孝は微笑んで近藤勇を出迎えた。

近藤勇は微笑んでお孝を見ながら話し掛ける。

「お孝さん。少し話しがしたい。」

お孝は笑顔で近藤勇を見ながら頷いた。

近藤勇はお孝に微笑んで話し掛ける。

「お孝さん。大阪にはまだ帰らないよな。」

お孝は近藤勇を見ながら微笑んで話し出す。

「帰らないよ。というより、ここにずっと居てもいい?」

近藤勇は少し驚いた様子でお孝を見た。

お孝は微笑んで近藤勇を見ながら話し出す。

「最初は姉さんにいろいろと頼まれていた事があるからここに居たんだ。でも、今は、みんなの笑顔をたくさん見たいな。私に出来る事があれば、それをやりたいと思うようになったの。」

近藤勇は少し驚いた様子でお孝を見ている。

お孝は近藤勇に微笑んで話し掛ける。

「私が近藤さんの話し相手になってあげる。」

近藤勇は微笑んでお孝を見ながら話し出す。

「ありがとう。」

お孝は微笑んではいるが、念を押す様に近藤勇に話し出す。

「近藤さん。言っておくけど、私は姉さんの代わりではないから。それに、姉さんとは違うから。後は、あまりいろいろな人と仲良くしないでね。私は奥方様や姉さんみたいに心が広くないから。気を付けてね。」

近藤勇は苦笑しながらお孝を見て頷いた。


沖田総司と少女は寺の中に居る。

沖田総司が微笑んで少女に話し掛ける。

「鈴ちゃん。お孝さんが大阪に戻らないで、ずっと京に居る事になったんだよ。」

少女は微笑んで沖田総司を見ている。

沖田総司は少女に申し訳なさそうに話し掛ける。

「鈴ちゃん。私が上手く話しが出来なかったから、お雪さんのお見舞いも通夜も葬式も行く事が出来なくなってしまったんだよね。本当にごめんね。」

少女は微笑んで沖田総司を見ながら小さく首を横に振った。

沖田総司は心配そうに少女に話し掛ける。

「鈴ちゃん。焼香に行った?」

少女は沖田総司を微笑んで見るとゆっくりと頷いた。

沖田総司は心配そうな表情で少女に話し掛ける。

「鈴ちゃん。何かあったの?」

少女は微笑んで沖田総司に話し掛ける。

「何もないです。大丈夫です。」

沖田総司は心配そうに少女に話し掛ける。

「本当?」

少女は沖田総司に抱きついた。

沖田総司は少女を抱きしめると心配そうに話し掛ける。

「鈴ちゃん。大丈夫?」

少女は沖田総司の腕の中で小さく頷いた。


沖田総司は少女を優しく抱きしめた。

少女は微笑んで沖田総司に話し出す。

「お雪さんが亡くなる前に私に伝言を残していたそうです。この前、伝言を聞きました。私はお雪さんと自分の夢が叶うまで、ご焼香にもお墓参りにも行きません。」

沖田総司は心配そうに少女を抱いている。

少女は沖田総司の腕の中で微笑んで話し掛ける。

「総司さん。私とお雪さんの夢が叶ったら、総司さんも一緒にお雪さんの所に行ってもらえると嬉しいです。斉藤さんも一緒に三人で出掛けたいです。」

沖田総司は少女を微笑んで抱いている。

少女は沖田総司の腕の中で微笑んで話し掛ける。

「総司さん。一緒に行ってくれますか?」

沖田総司は少女を抱きながら微笑んで話し掛ける。

「良いよ。三人で一緒に行こう。その時が楽しみだね。」

少女は嬉しそうな表情で沖田総司の腕の中に居る。

沖田総司は少女を見ながら微笑んで少女を抱いている。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語は、「新撰組異聞 竹の春に話しかけ」、「新撰組異聞 竹の春の頃」「新撰組異聞 年満月の星の中 冬桜の贈り物」の後の物語です。

お雪さんがなくなってから最初に迎える正月と一月の物語です。

実際の近藤勇さんとお孝さんは女の子を産みます。

そして、近藤勇さんとお孝さんが付き合うのはお雪さんが生きている間の事となります。

しかし、この「新撰組異聞」のなかでは亡くなってから付き合うという設定にしました。

そういう事もあって、今回は、近藤勇さんとお孝さんの二人が付き合うきっかけというか経過の物語を考えました。

そして、近藤勇さんが鈴ちゃんと会ってお雪さんの話しをする物語ともなっています。

今回、沖田総司さんは、近藤勇さんと鈴ちゃんとが会った事を気が付いていないという状況で物語は進んでいます。

タイトルの「端月」ですが、「たんげつ」と読みます。

「端」という字には「はじめ」の意味があるそうです。

そこから、「陰暦正月の異称」となっているそうです。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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