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新撰組異聞外伝 〜 忘れ去られた最初の出逢い 桜の下で 〜


〜 改訂版 〜


ある春の日の事。

朝から暖かく過ごしやすい一日となっている。


ここは江戸のとある場所。

暖かい日差しが桜の花に差している。

桜の花は暖かい日差しを受けて、僅かに輝きながら咲いている。

幼さの残る姉と幼い弟二人の姉弟が、桜の咲く中を歩いている。

姉は弟二人の様子を気にしながらも、周りに咲いている花を微笑んで見ながら歩いている。

弟二人は桜の咲く様子を気にする事なく、姉と一緒に黙って歩いている。


姉が満開の桜の木の下で立ち止った。

弟二人も姉と一緒に立ち止まった。

姉は弟二人を見ると、微笑んで話し出す。

「この桜の名前は、“染井吉野”と言うの。」

弟二人は姉の話に興味がないのか、普通の表情で辺りを見回している。

姉は弟二人に微笑んで話し出す。

「知っていると役に立つから覚えた方が良いよ。」

弟二人の近くに、つくしが見えた。

姉は弟二人を微笑んで見た。

弟二人はしゃがみ込むと、つくしを見ながら姉に話し出す。

「は〜い。」

姉は弟二人に微笑んで話し出す。

「行くよ。」

弟二人は立ち上がると、姉に黙って頷いた。

姉と弟二人は、桜の咲く中を再び歩き出した。


それら僅かに後の事。

一番幼い弟が立ち止まると、黙って前を指した。

姉と年上の兄も一番幼い弟と一緒に立ち止まると、一番幼い弟の指している方向を、不思議そうに見た。


満開の染井吉野の木の下で、男の子がしゃがみ込んでいる姿が見える。

男の子のしゃがみこんでいる様子は、泣いているようにも見える。


姉は弟二人を見ると、心配そうに話し出す。

「心配だね。」

弟二人は姉を見ると、黙って頷いた。

姉は弟二人に微笑んで話し出す。

「様子を見に行こう。」

弟二人は姉に黙って頷いた。

姉と弟二人は、染井吉野の木の下で泣いている男の子の元へと歩き出した。


姉と弟二人は、男の子の傍に来た。

男の子はしゃがみ込んだまま、姉と弟二人を見る様子は無い。

姉は男の子に心配そうに話し出す。

「男の子が泣いていては駄目だよ。」

男の子は姉を泣き顔の様な表情で見た。

男の子の目には、涙らしき物が残っている。

姉は男の子を僅かに驚いた様子で見た。

男の子は目に涙を残したまま、姉と弟二人に話し出す。

「泣いてないもん。」

姉は男の子に心配そうに話し出す。

「泣いている様に見えるよ。大丈夫?」

男の子は目に涙を残したまま、姉と弟二人に、むきになって話し出す。

「泣いてないもん!」

姉と弟二人は、男の子の様子を驚いた表情で見た。

男の子は手で涙を拭った。

姉と弟二人は、男の子の様子を驚いた表情で見ている。

男の子は姉と弟二人の様子を見ると、申し訳なさそうに話し出す。

「心配してくれた方に怒鳴ってしまい、申し訳ありませんでした。」

姉は男の子に笑顔で話し出す。

「やっと泣き止んだね! 男の子が泣いては駄目だよ! その調子だよ!」

男の子は姉にむきになって話し出す。

「だから泣いてないもん!!」

姉は男の子に笑顔で話し出す。

「その調子だよ! 男が人前で泣いて良い時は、親が死んだ時と一番大切な人が亡くなった時だけだよ! 忘れては駄目だよ!」

男の子は姉を少し驚いた表情で見た。

姉は男の子を笑顔で見た。

男の子は姉に微笑んで頷いた。

風が吹いてきた。

男の子と姉と弟二人の元に、桜の花びらが舞い落ちてきた。

姉は桜の花びらの舞い散る様子を見ながら、弟二人と男の子に微笑んで話し出す。

「綺麗だね。」

弟二人は姉を見ると、黙って頷いた。

男の子は桜の舞い散る様子を見ながら微笑んで頷いた。


姉は横に居る弟二人を微笑んで見た。

弟二人は桜の咲いている様子を黙って見ている。

男の子は桜の咲いている様子を微笑んで見ている。

姉は男の子を見ると、微笑んで話し出す。

「弟なの。」

弟二人は男の子に笑顔で話し出す。

「こんにちは!」

男の子は弟二人に微笑んで話し出す。

「こんにちは。」

男の子と姉と弟二人は、桜の木の下に座って話を始めた。


姉は男の子に微笑んで話し出す。

「今日ここに来たのは、父上の用事に一緒についてきたからなの。」

男の子は姉に微笑んで話し出す。

「僕は近くに住んでいます。」

年上の弟が男の子に不思議そうに話し出す。

「お兄ちゃんは、なぜ泣いていたの?」


男の子は年上の弟に苦笑しながら話し出す。

「泣いてないよ。」

姉は男の子に微笑んで話し出す。

「名前を聞いてもいいかな? 私は“勝”と言います。」

男の子は、勝と名乗った姉に、微笑んで話し出す。

「僕は“惣次郎”と言います。」

勝と名乗った姉は、惣次郎と名乗った男の子に、微笑んで話し出す。

「大きい弟が“廣明”、小さい弟が“一”と言うの。」

惣次郎と名乗った男の子は、一と言う名前の年下の弟に、微笑んで話し出す。

「二番目なのに“一”と言うんだ?」

勝と名乗った姉は、惣次郎と名乗った男の子に、微笑んで話し出す。

「そうなの。珍しいよね。」

惣次郎と名乗った男の子は、一と言う名前の年下の弟を微笑んで見た。

一と言う名前の年下の弟は、惣次郎と名乗った男の子を、不思議そうに見た。


一は惣次郎に微笑んで話し出す。

「惣次郎お兄ちゃんは、強いの?」

惣次郎は一に真剣な表情で話し出す。

「今は強い人がたくさんいるけど、たくさん稽古をして、僕が一番強い人だと言われるようになるんだ!」

一は惣次郎を微笑んで見た。

惣次郎は一に真剣な表情で話し出す。

「いつかの日か、二人で勝負をしようね。」

一は惣次郎に嬉しそうに話し出す。

「はい。」

惣次郎は一に笑顔で話し出す。

「約束だよ!」

一は惣次郎に嬉しそうに頷いた。

一と惣次郎は、微笑んで指きりをした。

勝は一に微笑んで話し出す。

「一も早く強くなろうね!」

一は勝に嬉しそうに話し出す。

「はい。」

廣明は、勝と一と惣次郎の様子を微笑んで見ている。

勝は思い出したように声を出した。

「もう直ぐ帰る時間だ! 父上の居る所に戻らないと!」

惣次郎は勝に残念そうに話し出す。

「もう時間なんだ。もっと話がしたかったな。寂しいな。」

勝は惣次郎に微笑んで話し出す。

「強くなれば、また会えるよ。惣次郎君。早く強くなってね。廣明と一と三人で待っているよ。」

惣次郎は勝と廣明と一に、真剣な表情で話し出す。

「わかった。早く強くなるよ。約束する。」

勝は惣次郎を微笑んで見た。

惣次郎は一を見ると、真剣な表情で話し出す。

「一君。お互いに早く強くなろうね。必ず会おうね。約束を忘れては駄目だよ。」

一は惣次郎に微笑んで頷いた。

惣次郎は一を笑顔で見た。

一は惣次郎に微笑んで話し出す。

「惣次郎お兄ちゃん。もう泣いては駄目だよ。」

惣次郎は一に苦笑しながら話し出す。

「泣いてないよ。でも、心配してくれてありがとう。」

一は惣次郎を微笑んで見た。

勝が立ち上がった。

惣次郎は勝に続いて立ち上がった。

廣明と一は、一緒に立ち上がった。

惣次郎、勝と廣明と一は、染井吉野を挟んで反対の方向に歩き出した。


惣次郎は少し歩くと、後ろを振り向いた。

勝と廣明と一の後姿が見える。

惣次郎は勝と廣明と一に向かって、大きく手を振りながら、笑顔で声を掛ける。

「勝ちゃん〜! 廣明君〜! 一君〜! またね〜!」

勝と廣明と一は、立ち止まると、惣次郎の居る方向を見た。


勝と廣明と一は、惣次郎に笑顔で手を振った。

廣明は手を振りながら、惣次郎に笑顔で話し出す。

「惣次郎君〜! またね〜!」

一は手を振りながら、惣次郎に笑顔で話し出す。

「惣次郎お兄ちゃんまたね〜! 早く強くなるからね〜!」

惣次郎は勝と廣明と一に、笑顔で手を振っている。


惣次郎、勝と廣明と一は、染井吉野を挟んで、反対の方向に向かって歩き出した。


惣次郎、勝と廣明と一の距離は、少しずつ離れていく。


染井吉野の周りに人の姿は見えなくなった。

風が吹いた。

染井吉野の桜の花びらが、辺りにゆっくりと舞い落ちていく。


勝と名乗った幼さの残る女の子、廣明と言う名前の幼い男の子、一と言う名前の幼い男の子、惣次郎と名乗った幼さの残る男の子が、染井吉野の咲く中で出逢いました。

後の事になりますが、再び出逢う事になります。


惣次郎と一は、特に不思議な縁があるのか、何度も再会を果たします。


“惣次郎”は、後に“新撰組一番組組長 沖田総司”となります。

二番目の弟の“一”は、“山口一”と言う名前を経て、後に“新撰組三番組組長 斉藤一”となります。


惣次郎と一の記憶から忘れ去られた、最初の出逢いの物語となります。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語は既に掲載している物語の改訂版です。

改訂前の物語を掲載するのは止めました。

以上の点、ご了承願います。

ここからは改訂前の後書きを加筆訂正しながら書いていきます。

物語の雰囲気や展開などは、ほとんど変えずに改訂しました。

山口一さん時代の記録は、ほとんど無いそうです。

斉藤一さんの姉兄は、斉藤一さんを含めて三人だそうです。

一番年上の山口勝さん(三人姉弟の一番上)、二番目の山口廣明さん(山口勝さんの弟、山口一さんの兄)、一番年下の山口一さん(後の斉藤一さん)という姉弟になります。

山口一さんと山口廣明さんの二人の名前は、幼い時は名前が違う可能性もあります。

しかし、この物語では「廣明」「一」という名前をそのまま使いました。

沖田総司さんの幼名は「惣次郎」と言います。

惣次郎という名前ですが、長男だそうです。

白川藩の江戸屋敷で生まれているそうです。

九歳の時に内弟子となり試衛館に行く事になります。

この物語は内弟子となる前の出来事として書きました。

山口勝さん、山口廣明さん、山口一さん、沖田惣次郎さん(後の沖田総司さん)という四人の幼少時代の物語です。

この物語を考えたきっかけは、幼い時の沖田総司さんと斉藤一さんは、どんな子供だったのだろうか? とふと考えた事から始まります。

そこで、少年時代より前の更に幼い頃の物語を考えました。

そういう事もあり、沖田惣次郎ちゃん、山口一ちゃん、と呼ばれていても良い時代の物語を書きました。

気が付いたら、しっかり者の山口勝さん、普通に話す子供らしい山口一君、子供らしい山口廣明君、妙に強がりだけど明るい沖田惣次郎君となってしまいました。

子供の頃の物語なので、みんなの雰囲気もかなり違います。

山口勝さんが話している言葉で、「男が人前で泣いて良い時は、親が死んだ時と一番大切な人が亡くなった時だけだよ。」という言葉は、大河ドラマの「新撰組!」で沖田総司さんが言ったセリフを少し変えて使っています。

沖田総司さんもまだ幼いし、山口一さんに逢っている時間も短いので、覚えていないだろうと考えて、こういう設定にしました。

山口一さんも幼ければ、いくら記憶が良くても覚えていないだろうと考えて、こういう設定にしました。

次に、「染井吉野(ソメイヨシノ)」についてです。

染井吉野は、「大島桜(オオシマサクラ)」と「江戸彼岸桜(エドヒガンザクラ)」との交配種と言われています。

江戸末期から明治時代頃に、「吉野桜」という名前で売り出していたそうです。

その後、「染井吉野」と名付けたらしいです。

売り出したのは、「染井(現在の豊島区駒込)」の植木屋といわれています。

時代的には、四人が見ている可能性もあるので、「染井吉野」を物語の中に使いました。

勝さんが「染井吉野」と言っていますが、「吉野桜」が正しい呼び方かも知れません。

この物語では、現在の呼び名である「染井吉野」をそのまま使いました。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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