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新撰組異聞外伝 〜 御車返の咲く下で 〜
〜 第三版 〜
ここは、東京。
一重の桜の花は次々に散り、葉桜に姿を変えていく。
一重の桜から八重の桜へと見頃が移っていく。
今は八重の桜が見頃を迎えている。
藤田五郎には幼い息子の勉がいる。
勉は長男で兄弟姉妹はいない。
沖田総司にも息子が一人いる。
僅かに幼さが残る少年になる。
沖田総司の息子は、藤田五郎に名乗っていない。
藤田五郎は、沖田総司の息子が名乗らない理由を知らない。
藤田五郎は、理由を考えても仕方がないので、沖田総司の息子と普通に接している。
ここは、八重桜の花が咲く場所。
勉と沖田総司の息子は、八重桜の木の傍で楽しく遊んでいる。
藤田五郎は、葉桜になった桜の木の下に座っている。
藤田五郎は、勉と沖田総司の息子を普通の表情で見ている。
藤田五郎の頭上の桜の木が、突然に満開になった。
藤田五郎は頭上の桜を普通の表情で見た。
一本の桜の木に、一重の桜の花と八重の桜の花が咲いている。
藤田五郎は横を普通の表情で見た。
沖田総司が藤田五郎の横に笑顔で座っている。
藤田五郎は沖田総司を普通の表情で見た。
沖田総司は藤田五郎に笑顔で話し出す。
「斉藤さん! お久しぶりです!」
藤田五郎は勉と沖田総司の息子を普通の表情で見た。
沖田総司は藤田五郎に笑顔で話し出す。
「斉藤さん! 私が見えますよね! 返事をしない理由は何ですか?! 嬉し過ぎて返事が出来ないのですか?!」
藤田五郎は勉と沖田総司の息子を見ながら、沖田総司に普通に話し出す。
「良く来るな。」
沖田総司は藤田五郎に笑顔で話し出す。
「私が見えていたのですね! 安心しました! 良く考えると、私は斉藤さんに呼ばれて来たので、斉藤さんに私の姿は見えますよね! 私が見えているのに、返事をしない理由は何ですか?!」
藤田五郎は沖田総司を普通の表情で見た。
沖田総司は藤田五郎に笑顔で話し出す。
「斉藤さん! 話を戻します! 良く来るな、の表現は酷いです!」
藤田五郎は沖田総司に普通に話し出す。
「総司が良く来るのは事実だ。」
沖田総司は藤田五郎を苦笑して見た。
藤田五郎は沖田総司に普通に話し出す。
「久しぶりだな。」
沖田総司は藤田五郎に笑顔で話し出す。
「お久しぶりです!」
藤田五郎は勉と沖田総司の息子を見ると、沖田総司に普通に話し出す。
「あの子は、総司の息子だろ。」
沖田総司は沖田総司の息子を見ると、藤田五郎に笑顔で話し出す。
「はい! 私の息子です! 私より格好が良くて、私より物覚えが良くて、私より優しくて、私より真面目で、私より元気で、私より丈夫です! 私ほどではありませんが、強いです! 自慢の息子です!」
藤田五郎は沖田総司を見ると、沖田総司に普通に話し出す。
「総司。子供を褒め過ぎると、総司が立派な人物に思えない。」
沖田総司は藤田五郎を見ると、藤田五郎に笑顔で話し出す。
「私が話した内容は事実です! 褒め過ぎではありません!」
藤田五郎は沖田総司を普通の表情で見た。
沖田総司は藤田五郎に笑顔で話し出す。
「とても良い子に育っています! 鈴には言葉で表わせない程の感謝をしています!」
藤田五郎は沖田総司に普通に話し出す。
「美鈴さんに逢って話したのか?」
沖田総司は藤田五郎に寂しく微笑むと、ゆっくりと首を横に振った。
藤田五郎は沖田総司を普通の表情で見た。
沖田総司は藤田五郎に寂しく微笑んで話し出す。
「当面に限定しますが、鈴と息子が私に逢えない方が良いと考えています。」
藤田五郎は沖田総司を普通の表情で見ている。
沖田総司は沖田総司の息子を寂しく微笑んで見た。
藤田五郎は沖田総司に普通に話し出す。
「総司。話を変える。総司の息子は、俺に名前を教えない。事情があるのか?」
沖田総司は藤田五郎を見ると、藤田五郎に微笑んで話し出す。
「息子には、斉藤さんに名前を秘密にするように文で伝えていません。息子本人の考えで、斉藤さんに名前を秘密にしています。」
藤田五郎は沖田総司を普通の表情で見た。
沖田総司は藤田五郎を微笑んで見た。
藤田五郎は勉と沖田総司の息子を普通の表情で見た。
沖田総司は勉と沖田総司の息子を微笑んで見た。
藤田五郎は勉と沖田総司の息子を見ながら、沖田総司に普通に話し出す。
「総司は息子の傍に行った時があるのか?」
沖田総司は沖田総司の息子を寂しく見た。
藤田五郎は沖田総司を普通の表情で見た。
沖田総司は藤田五郎を見ると、藤田五郎に寂しく話し出す。
「息子が私に逢いたいと想わないので、私は息子を遠くから見るだけです。寂しいですが、息子と鈴にとっては、私に逢いたいと想わずに過ごす方が良いです。」
藤田五郎は沖田総司を普通の表情で見ている。
沖田総司は藤田五郎に寂しく微笑んで話し出す。
「私について調べる言動は、今も危険が残っています。息子が一番に安全に過ごせる状況は、世間が私の子供だと知らない状況です。息子が私に逢いたいと想わない状況は、私にとっては寂しい状況ですが、息子と鈴にとっては良い状況です。」
藤田五郎は沖田総司に普通の表情で頷いた。
沖田総司は藤田五郎に寂しく微笑んで話し出す。
「息子が私の子供だと世間に知られない状況は、一番に良い状況ですが、息子が私の子供だと知らない状況は危険です。息子と鈴に万が一の出来事が起きた時に、息子が私について全く知らない状況は危険です。鈴には息子に私について早い頃から教えるように文で伝えました。」
藤田五郎は沖田総司に普通の表情で頷いた。
沖田総司は藤田五郎を微笑んで見た。
藤田五郎は勉と沖田総司の息子を普通の表情で見た。
沖田総司は勉と沖田総司の息子を微笑んで見た。
優しい風が吹いた。
沖田総司は勉と沖田総司の息子を見ながら、藤田五郎に微笑んで話し出す。
「楽しく遊んでいますね。」
藤田五郎は勉と沖田総司の息子を見ながら、普通の表情で頷いた。
勉が笑顔で歩いてきた。
沖田総司の息子は勉を気にしながら、笑顔で歩いてきた。
勉は藤田五郎と沖田総司の前に笑顔で立った。
沖田総司の息子は藤田五郎と沖田総司の前に笑顔で立った。
藤田五郎は勉と沖田総司の息子を普通の表情で見た。
沖田総司は勉と沖田総司の息子を微笑んで見た。
沖田総司の息子は藤田五郎に笑顔で話し出す。
「八重桜が綺麗に咲いています! 斉藤さんも一緒に近くで見ませんか?!」
藤田五郎は少年に普通の表情で首を横に振った。
沖田総司の息子は藤田五郎に笑顔で話し出す。
「斉藤さん! 少し長く遊んでも大丈夫ですか?!」
藤田五郎は沖田総司の息子に普通の表情で頷いた。
沖田総司の息子は勉を見ると、勉に笑顔で話し出す。
「勉君! 二人で八重桜の近くで遊ぼう!」
勉は沖田総司の息子に笑顔で頷いた。
勉は八重桜に向かって笑顔で歩き出した。
沖田総司の息子は勉を気にしながら、八重桜に向かって笑顔で歩き出した。
沖田総司は藤田五郎を見ると、藤田五郎に寂しく微笑んで話し出す。
「私は大丈夫です。心配しないでください。」
藤田五郎は沖田総司を普通の表情で見た。
沖田総司は藤田五郎に微笑んで話し出す。
「息子が、私を意識する時が、私について考える時が、必ず訪れます。息子が私に逢いたいと想う時が、訪れると思います。私の話す内容が重なった時に、息子に私の姿が見えて、私と息子が逢える時だと思います。」
藤田五郎は沖田総司に普通に話し出す。
「逢う時が楽しみだな。」
沖田総司は藤田五郎に笑顔で話し出す。
「はい!」
藤田五郎は頭上に咲く桜を一瞥すると、沖田総司を見て、普通に話し出す。
「俺と総司の居る場所の桜は、八重の桜の花と一重の桜の花が一緒に咲く。桜の名前を教えてくれ。」
沖田総司は藤田五郎に笑顔で話し出す。
「“御車返”です!」
藤田五郎は頭上の桜を見ると、普通の表情で呟いた。
「御車返。」
沖田総司は藤田五郎に笑顔で話し出す。
「はい!」
藤田五郎は沖田総司を見ると、沖田総司に普通に話し出す。
「総司が姿を現す時には、必ず咲く桜だ。向こうの人物が現れる時には、必ず咲く桜なのか?」
沖田総司は藤田五郎に笑顔で話し出す。
「それは、ひ、み、つです!」
藤田五郎は沖田総司に普通に話し出す。
「極秘か。総司から理由を聞く時を、楽しみに待つ。ただし、極秘でない場合は、期待させた分だけ、俺を楽しませろ。」
沖田総司は藤田五郎を困惑して見た。
藤田五郎は沖田総司を普通の表情で見た。
優しい風が吹いた。
御車返の花びらが、沖田総司と藤田五郎の元に舞い落ちてきた。
沖田総司は藤田五郎に僅かに寂しく話し出す。
「斉藤さん。戻る時間が近付いてきました。再び呼んでください。」
藤田五郎は沖田総司に普通に話し出す。
「総司は現れても直ぐに戻るな。」
沖田総司は藤田五郎に微笑んで話し出す。
「私には長く居られない場所です。」
藤田五郎は沖田総司に普通に話し出す。
「気が向いたら呼ぶ。」
沖田総司が藤田五郎に微笑んで話し出す。
「ありがとうございます。寂しいので早く呼んでください。次に逢える時を楽しみに待っています。」
藤田五郎は沖田総司に普通の表情で頷いた。
沖田総司は藤田五郎に微笑んで軽く礼をした。
藤田五郎は沖田総司に普通の表情で頷いた。
沖田総司は微笑んで、静かに居なくなった。
強い風が吹いた。
たくさんの御車返の花びらが舞い始めた。
藤田五郎は頭上の桜を普通の表情で見た。
桜は葉桜の姿に戻っている。
藤田五郎は辺りを普通の表情で見た。
勉が笑顔で歩いてきた。
沖田総司の息子は勉を気にしながら、笑顔で歩いてきた。
勉は笑顔で座った。
沖田総司の息子も笑顔で座った。
藤田五郎は勉と沖田総司の息子を普通の表情で見た。
沖田総司の息子は藤田五郎に笑顔で話し出す。
「斉藤さん! 帰る時間が近付いています! 今日はありがとうございました!」
藤田五郎は沖田総司の息子に普通に話し出す。
「次回も勉と遊んでくれ。」
沖田総司の息子は藤田五郎に笑顔で話し出す。
「はい!」
藤田五郎は沖田総司の息子を普通の表情で見た。
沖田総司の息子は藤田五郎に笑顔で話し出す。
「失礼します!」
藤田五郎は沖田総司の息子に普通の表情で頷いた。
沖田総司の息子は笑顔で立ち上がった。
沖田総司の息子は笑顔で走り出した。
勉は沖田総司の息子に笑顔で手を振った。
藤田五郎は勉と沖田総司の息子を普通の表情で見た。
沖田総司の息子の姿は見えなくなった。
藤田五郎は勉に普通に話し出す。
「家に戻る。」
勉は藤田五郎に笑顔で頷いた。
藤田五郎は普通の表情で立ち上がった。
勉は笑顔で立ち上がった。
藤田五郎は勉を普通の表情で抱いた。
勉は藤田五郎を笑顔で見た。
藤田五郎は勉を抱いて、普通の表情で歩き出した。
* * * * * *
ここからは後書きになります。
この物語は既に掲載している物語の再改訂版です。
物語の展開や雰囲気を出来るだけ残して改訂しました。
改訂前の物語を掲載するのは止めました。
以上、ご了承願います。
ここからは改訂前の後書きを加筆訂正して書きます。
沖田総司さんと藤田五郎さんが、自分達の子供について話す場面が登場します。
沖田総司さんも藤田五郎さんも、父親として話しています。
この物語の中で、沖田総司さんが自分の子供を見ながら話す内容は、当時の時代背景ならば、考えられる状況として書きました。
「御車返(みくるまかえし)」についてです。
「御車返し」とも書きます。
一つの木に八重と一重が一緒に咲く桜です。
「大島桜」から生まれたと思われる里桜のようです。
古くから知られている桜だそうです。
「御車返」の他に別名があります。
別名は、別な物語に登場しています。
この物語では秘密にします。
「御車返」の名前の由来は、幾つかあります。
一つ目です。
昔に遡ります。
この桜の木の下を車に乗って通った貴人達が、この桜を見て一人が八重咲き、別の一人が一重咲き、と争論を始めました。
車を返して見たところ、八重と一重が交じって咲いていました。
そこから、この名が付けられたと伝わっています。
二つ目です。
後水尾天皇がこの桜の前を通られました。
桜の花が余りに美しかったので、再び御車を返して観賞されたそうです。
そこから、この名前が付いたと伝わっています。
楽しんで頂けると嬉しいです。
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