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新撰組異聞外伝 〜 五月雨月の藤と芍薬観賞 〜


〜 第三版 〜


ここは、多摩。


雨の日が続いている。


少し早い梅雨のように感じる。


今日は霧雨が降り続いている。


ここは、広い道。


山口一の姉の山口勝が、傘を差して歩いている。


山口勝は傘を差して、立ち止まった。


空から霧雨が降り続いている。


山口勝は傘を差して、霧雨の降る様子を見て、詰まらない様子で呟いた。

「雨の降る日が続くわ。詰まらない日が続くわ。早く家に戻りたいな。」


霧雨は山口勝の差す傘をしっとりと濡らしている。


山口勝は傘を差して、視線を戻すと、ゆっくりと歩き出した。


少し後の事。


ここは、試衛館の近く。


山口勝は傘を差して、微笑んで立ち止まった。


霧雨の中に試衛館が見える。


山口勝は傘を差して、試衛館を見て微笑んで呟いた。

「試衛館。懐かしいわ。」


山口勝は傘を差して、微笑んで歩き出した。


僅かに後の事。


ここは、試衛館の出入り口の傍。


山口勝は傘を差して、微笑んで来た。


山口勝は傘を差して、試衛館の敷地内を微笑んで覗いた。


土方歳三は傘を差して、試衛館の敷地の外に普通に出てきた。


山口勝は傘を差して、土方歳三を僅かに慌てて見た。

土方歳三は傘を差して、山口勝を不思議な様子で見た。

山口勝は傘を差して、傘で自分の姿をさり気なく隠した。


土方歳三は傘を差して、不思議な様子で居なくなった。


山口勝は傘を差して、傘で自分の姿をさり気なく隠している。


土方歳三の姿は見えなくなった。


山口勝は傘を差して、試衛館から普通に居なくなった。


翌日の事。


ここは、多摩。


今日は曇り空となっている。


ここは、一軒の家の近く。


山口勝は微笑んで歩いている。


山口勝は空を見て、微笑んで呟いた。

「今日は曇りだから、安心して外を歩けるわ。」


山口勝は一軒の家の中に微笑んで入っていった。


僅かに後の事。


ここは、一軒の家。


玄関。


山口勝は微笑んで来た。


山口一は普通に現れた。


山口勝は山口一を微笑んで見た。

山口一は山口勝に普通に話し出す。

「迎えに来た。」

山口勝は山口一に笑顔で話し出す。

「一! 遅いぞ!」

山口一は山口勝を普通の表情で見た。


山口勝は家の中に笑顔で入って行った。

山口一は家の中に普通に入って行った。


少し後の事。


ここは、多摩。


霧雨が降り始めた。


ここは、一軒の家。


一室。


山口勝は霧雨の降る様子を残念な表情で見ている。


山口一は普通に来た。


山口勝は山口一を見ると、山口一に残念な様子で話し出す。

「霧雨が降っているわね。出発が翌日に延びたわね。」

山口一は普通の表情で頷いた。

山口勝は山口一に微笑んで話し出す。

「霧雨だから出掛けられるわよね。気晴らしに出掛けたいな。」

山口一は普通の表情で頷いた。

山口勝は山口一を微笑んで見た。


少し後の事。


ここは、多摩。


霧雨が降っている。


試衛館の傍。


山口勝は傘を差して、微笑んで歩いている。

山口一は傘を差して、普通の表情で歩いている。


霧雨は山口勝の傘と山口一の傘をしっとりと濡らしている。


山口勝は傘を差して、微笑んで立ち止まった。

山口一は傘を差して、普通の表情で立ち止まった。


山口勝は傘を差して、山口一を微笑んで見た。

山口一は傘を差して、山口勝を見ると、普通の表情で頷いた。

山口勝は傘を差して、試衛館を微笑んで覗いた。

山口一は傘を差して、試衛館を普通の表情で覗いた。

山口勝は傘を差して、試衛館を覗いて、山口一に微笑んで話し出す。

「あの時は廣明と三人で試衛館の中に入ったわね。今も中に入れそうね。」

山口一は傘を差して、山口勝を見ると、山口勝に普通に話し出す。

「止めた方が良いと思う。」

山口勝は傘を差して、山口一を見ると、山口一に微笑んで話し出す。

「稽古の邪魔をしたら悪いものね。戻りましょう。」

山口一は傘を差して、普通の表情で頷いた。


山口勝は傘を差して、微笑んで歩き出した。

山口一は傘を差して、普通の表情で歩き出した。


少し後の事。


ここは、芍薬の咲く場所。


山口勝は傘を差して、微笑んで歩いている。

山口一は傘を差して、普通の表情で歩いている。


山口勝は傘を差して、微笑んで立ち止まった。

山口一は傘を差して、普通の表情で立ち止まった。


芍薬がたくさん咲いている。


芍薬は霧雨に濡れてしっとりとした姿で咲いている。


山靴勝は傘を差して、芍薬を微笑んで見た。

山口一は傘を差して、芍薬を普通の表情で見た。

山口勝は傘を差して、芍薬を見ながら、山口一に微笑んで話し出す。

「白い芍薬の名前は、“白玉”と書いて“はくぎょく”と呼ぶの。名前の通りの芍薬ね。」

山口一は傘を差して、山口勝を見ると、山口勝に普通に話し出す。

「名前を教えてくれるのはありがたいが、興味が無い。」

山口勝は傘を差して、山口一に微笑んで話し出す。

「覚えて損になる内容は無いと思うの。役に立つ時のために覚えましょう。」

山口一は傘を差して、山口勝に普通に話し出す。

「花の名前を覚えて役に立つ時の状況が分からない。」

山口勝は傘を差して、山口一に微笑んで話し出す。

「花の種類は物凄くたくさんあるの。一つの種類の花には、たくさんの名前があるの。花の名前も含めて、知らない内容があると悩む時があると思うの。知りたい内容によっては、教えてもらう人物を見付けるのは大変よね。花について覚える時も、歌について覚える時も、同じよ。直ぐに役に立たなくても、後に役に立つ時のために覚えましょう。」

山口一は傘を差して、芍薬を普通の表情で見た。

山口勝は傘を差して、山口一を微笑んで見た。

山口一は傘を差して、山口勝を見ると、山口勝に普通に話し出す。

「教えてくれ。」

山口勝は傘を差して、微笑んで頷いた。

山口一は傘を差して、山口勝を普通の表情で見た。


少し後の事。


ここは、藤棚の傍。


山口勝は傘を差して、微笑んで歩いている。

山口一は傘を差して、普通の表情で歩いている。


山口勝は傘を差して、微笑んで立ち止まった。

山口一は傘を差して、普通の表情で立ち止まった。


山口勝は傘を差して、藤棚を微笑んで見た。

山口一は傘を差して、山口勝と藤棚を普通の表情で見た。


藤棚は霧雨に濡れてしっとりとした姿になっている。


山口勝は傘を差して、山口一を見ると、山口一に微笑んで話し出す。

「藤棚が雨に濡れて綺麗ね。」

山口一は傘を差して、藤棚を見て、普通の表情で頷いた。


直後の事。


ここは、藤棚の近く。


土方歳三は傘を差して、普通の表情で歩いている。

沖田惣次郎は傘を差して、普通の表情で歩いている。


土方歳三は傘を差して、普通の表情で立ち止まった。

沖田惣次郎は傘を差して、不思議な様子で立ち止まった。


土方歳三は傘を差して、藤棚を普通の表情で見た。

沖田惣次郎は傘を差して、土方歳三を不思議な様子で見た。


藤棚の下に、傘を差す少女と傘を差す少年の姿が見える。


土方歳三は傘を差して、藤棚の下に居る少女と少年を普通の表情で見た。

沖田惣次郎は傘を差して、藤棚の下に居る少女と少年を見ると、土方歳三に微笑んで話し出す。

「仲の良い雰囲気の二人ですね。」

土方歳三は傘を差して、藤棚の下に居る少女と少年を見ながら、沖田惣次郎に普通に話し出す。

「総司の話は、一部は有っているが、一部は違う。」

沖田惣次郎は傘を差して、土方歳三を見ると、土方歳三に不思議な様子で話し出す。

「違うのですか?」

土方歳三は傘を差して、沖田惣次郎を見ると、沖田惣次郎に普通に話し出す。

「仲の良い二人は合っている。ただし、惣次郎が想像する関係ではない。」

沖田惣次郎は傘を差して、土方歳三に微笑んで話し出す。

「さすが土方さん。」

土方歳三は傘を差して、沖田惣次郎を微笑んで見た。

沖田惣次郎は傘を差して、土方歳三に微笑んで話し出す。

「藤棚の下で話す二人の雰囲気は良いですね。」

土方歳三は傘を差して、沖田惣次郎に普通に話し出す。

「藤棚の下の二人の雰囲気は良い。ただし、惣次郎が想像する関係ではないから、惣次郎が話す内容を想像するのは難しい。」

沖田惣次郎は傘を差して、藤棚の下に居る少女と少年を不思議な様子で見た。


藤棚の下に居る少女と少年は、肩に傘の柄を掛けている。

藤棚のしたに居る少女と少年の姿は、ほとんど見えなくなっている。


沖田惣次郎は傘を差して、藤棚に下に居る少女と少年を見ながら、土方歳三に考え込んで話し出す。

「二人の姿が傘で隠れたので、詳しい様子が分かりません。」

土方歳三は傘を差して、藤棚の下に居る少女と少年を見ると、沖田惣次郎に普通に話し出す。

「惣次郎が変な内容を話したから、機嫌を悪くしたかも知れないな。」

沖田惣次郎は傘を差して、土方歳三を見ると、土方歳三に拗ねて話し出す。

「私と土方さんと二人の距離は離れています。霧雨が降っています。私の声は聞こえていないと思います。偶然に傘の差し方を変えただけだと思います。」

土方歳三は傘を差して、沖田惣次郎を見ると、沖田惣次郎に微笑んで話し出す。

「近藤さんが待っている。戻ろう。」

沖田惣次郎は傘を差して、土方歳三を拗ねた様子で見た。

土方歳三は傘を差して、沖田惣次郎を微笑んで見た。

沖田惣次郎は傘を差して、土方歳三を拗ねて見ている。


土方歳三は傘を差して、微笑んで歩き出した。


沖田惣次郎は傘を差して、僅かに慌てて歩き出した。


直後の事。


ここは、藤棚の下。


山口勝は傘の差し方を元に戻した。

山口一は傘の差し方を元に戻さずに差している。


山口勝は傘を差して、辺りを普通の表情で見た。


土方歳三は傘を差して、藤棚を普通の表情で見る姿が見えた。


土方歳三と山口勝の視線が合った。


山口勝は傘を差して、土方歳三からゆっくりと視線を外した。

山口一は傘を差して、山口勝を普通の表情で見た。


直後の事。


ここは、藤棚の近く。


土方歳三は傘を差して、藤棚の方向を微笑んで見た。

沖田惣次郎は傘を差して、土方歳三を不思議な様子で見た。

土方歳三は傘を差して、沖田惣次郎を微笑んで見た。

沖田惣次郎は傘を差して、土方歳三を不思議な様子で見ている。


土方歳三は傘を差して、微笑んで歩き出した。

沖田惣次郎は傘を差して、土方歳三を不思議な様子で見て、歩き出した。


直後の事。


ここは、藤棚の下。


山口勝は傘を差して、土方歳三と沖田惣次郎を普通の表情で見た。

山口一は傘を差して、土方歳三、沖田惣次郎、山口勝を、普通の表情で見た。


山口勝は傘を差して、土方歳三と沖田惣次郎の姿を見て、山口一に微笑んで話し出す。

「私と一の姿を見られても問題のない人物だったわね。」

山口一は傘を差して、普通の表情で頷いた。

山口勝は傘を差して、山口一を見ると、山口一に微笑んで話し出す。

「一の話しどおり、傘の差し方を変えたけれど、心配の必要はなかったわね。一は慎重ね。」

山口一は傘を差して、山口勝を普通の表情で見た。

山口勝は傘を差して、山口一に微笑んで話し出す。

「一は“五月雨月”の意味を知っている?」

山口一は傘を差して、山口一を普通の表情で見た。

山口勝は傘を差して、山口一を微笑んで見た。

山口一は傘を差して、山口勝に普通に話し出す。

「五月の別名。」

山口勝は傘を差して、山口一に微笑んで話し出す。

「正解。」

山口一は傘を差して、山口勝を普通の表情で見た。

山口勝は傘を差して、山口一に微笑んで話し出す。

「時期的には少し早いけれど、数日ほどの天気の中で過ごしたら、思い出したの。」

山口一は傘を差して、普通の表情で頷いた。

山口勝は傘を差して、藤棚を微笑んで見た。

山口一は傘を差して、藤棚を普通の表情で見た。

山口勝は傘を差して、山口一を見ると、山口一に微笑んで話し出す。

「藤の花の季節も終わりに近いわね。」

山口一は傘を差して、山口勝を見ると、普通の表情で頷いた。

山口勝は傘を差して、山口一に微笑んで話し出す。

「帰ろう。」

山口一は傘を差して、普通の表情で頷いた。


山口勝は傘を差して、微笑んで歩き出した。

山口一は傘を差して、普通の表情で歩き出した。


翌日の事。


ここは、多摩。


天気は落ち着いている。

青空が広がっている。


山口勝と山口一は、多摩から江戸に戻る日になった。


ここは、道。


山口勝は荷物を持ち、微笑んで歩いている。

山口一は荷物を持ち、普通に歩いている。


山口勝は荷物を持ち、山口一に微笑んで話し出す。

「やっと江戸に帰れるわ。嬉しいわ。一はとても強くなったから、一緒に居ると安心なの。 一と一緒に帰れて良かったわ。」

山口一は荷物を持ち、山口勝を普通の表情で見た。

山口勝は荷物を持ち、青空を見ると、山口一に微笑んで話し出す。

「今日は天気が良いから、更に嬉しいわ。」

山口一は荷物を持ち、青空を見ると、普通の表情で頷いた。

山口勝は荷物を持ち、山口一を微笑んで見た。

山口一は荷物を持ち、山口勝を普通の表情で見た。


霧雨が沖田惣次郎の姿と山口一の姿を覆い隠した。

沖田惣次郎と山口一は、近くに居たのにお互いの存在に気付かなかった。


沖田惣次郎と山口一が再び逢う日は、暫く先の日になる。




*      *      *      *       *      *




ここからは後書きになります。

この物語は既に掲載している物語の再改訂版です。

改訂前の雰囲気や展開を出来るだけ残して改訂しました。

改訂前の物語を掲載するのは止めました。

以上の点、ご了承願いします。

ここからは改訂前の後書きを加筆訂正して書きます。

この物語は、雨の降る日に傘を差して歩く山口勝さんと山口一さんが書きたくて、雨の降る中で花を見る山口勝さんと山口一さんが書きたくて、考えました。

山口一さんが傘の柄を少しの間だけ傾けて様子が見られないようにしたために、沖田惣次郎さんと山口一さんは近くに居るのにお互いの姿を確認する事が出来ませんでした。

この物語を考えたもう一つの理由は、「新撰組異聞 短編 清明 桜の記憶が甦る」の中で、土方歳三さんが山口勝さんを「見かけたことがある」という内容を話す場面があります。

この話す内容から物語を考えました。

雨の降る中で傘を差して芍薬や藤棚を見る、山口勝さんと山口一さん。

晴れれば江戸へと帰って行く、山口勝さんと山口一さん。

しっとりとした雰囲気の物語となりました。

ちなみに、なぜ山口勝さんが多摩に長居をしているのかなど、詳細な理由は考えずに書きました。

「五月雨月(さみだれづき)」は「陰暦五月の異称」です。

雨の降る中を歩く二人と物語の雰囲気に合うと考えて題名に使用しました。

陰暦の五月は、現在の暦にすると、五月下旬から七月中旬になります。

藤や芍薬ではなく、紫陽花や菖蒲や蓮などが咲く頃になります。

藤の花や芍薬も、物凄く遅く咲いていれば、大丈夫だと思い題名に使用しました。

この点についてもご了承ください。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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