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新撰組異聞外伝 〜 小満の頃 〜


〜 第三版 〜


始めに。

改訂により頁数が増えて、約三十九頁(後書きも含む)の物語になります。

本来ならば「新撰組異聞外伝 中編」の掲載になりますが、「新撰組異聞外伝 短編」で書いた物語のため、変更せずに掲載します。

ご了承ください。


物語の世界へどうぞ。




*      *      *      *      *      *




今は初夏。


ここは、東京。


青空に白い雲が浮かんでいる。


僅かに暑さを感じるが、過ごしやすい日が続いている。


ここは、弓道場。


今は稽古中。


敬一は真剣な表情で居る。

敬一は弓道着を着ている。


敬一は弓に矢を番えると、真剣な表情でゆっくりと構えた。

敬一は矢を番えながら、弓の弦を真剣な表情で少しずつ引いていく。

敬一は弦が伸びると、真剣な表情で手を弦から放した。


矢は的へと真っ直ぐに勢い良く飛んだ。


矢は的の中央に当たった。


敬一は弓を持ち、的と矢を真剣な表情で見た。


敬一は弓に矢を番えると、真剣な表情でゆっくりと構えた。

敬一は矢を番えながら、弓の弦を真剣な表情で少しずつ引いていく。

敬一は弦が伸びると、真剣な表情で手を弦から放した。


矢は的へと真っ直ぐに勢い良く飛んだ。


矢は的の中央に当たった。


敬一は弓を持ち、的と矢を真剣な表情で見た。


暫く後の事。


ここは、弓道場。


敬一の弓道の稽古が終わった。


敬一は真剣な表情で居る。

師範は普通の表情で居る。


敬一は道場の師範に真剣な表情で話し出す。

「ありがとうございました!」

師範は敬一に普通の表情で頷いた。


敬一は矢筒を持つと、真剣な表情で居なくなった。


若い生徒が師範の傍に普通に来た。


師範は若い生徒を普通の表情で見た。

若い生徒は師範に不思議な様子で話し出す。

「最近、稽古に来る回数が減りましたね。」

師範は若い生徒に普通に話し出す。

「彼の様子から判断すると、本当に学びたい内容が見付かったのだと思う。」

若い生徒は師範に不思議な様子で話し出す。

「筋の良い子なので、父か母は弓道が得意なのだと思いました。父親はかなり前に亡くなり、母親は武芸の経験は無いに等しい、と話すのを聞きました。」

師範は若い生徒に普通に話し出す。

「父親が武術関連の能力に秀でていると思う。」

若い生徒は師範を普通の表情で見た。

師範は若い生徒に普通に話し出す。

「人には様々な事情がある。詮索は控えるように。」

若い生徒は師範に普通に話し出す。

「はい。」

師範は若い生徒に普通の表情で頷いた。


暫く後の事。


ここは、藤田五郎、妻の時尾、幼い息子の敬一が住む家。


玄関。


敬一は矢筒を持ち、笑顔で訪れた。


時尾は微笑んで来た。

勉は笑顔で来た。


敬一は矢筒を持ち、時尾に笑顔で話し出す。

「こんにちは!」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「こんにちは。」

勉は敬一に笑顔で話し出す。

「こんにちは。」

敬一は矢筒を持ち、勉に微笑んで話し出す。

「勉君。こんにちは。」

勉は敬一に笑顔で頷いた。

敬一は矢筒を持ち、時尾に微笑んで話し出す。

「斉藤さんの指導する剣道の稽古の時間まで少し余裕があります。勉君と少し遊んでも良いですか?」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「勉と遊んでくれるのね。ありがとう。私から五郎さんに伝えるわ。」

敬一は矢筒を持ち、勉に微笑んで話し出す。

「勉君。少しだけになるけれど、遊ぼう。」

勉は敬一に笑顔で頷いた。

時尾は敬一と勉を微笑んで見た。


僅かに後の事。


ここは、藤田五郎の家。


縁。


勉は笑顔で居る。

敬一は微笑んで居る。

矢筒は敬一の傍に微笑んで置いてある。


敬一は勉に微笑んで話し出す。

「勉君。庭で遊ぼう。」

勉は敬一に笑顔で頷いた。

敬一は勉を微笑んで見た。


少し後の事。


ここは、藤田五郎の家。


縁。


矢筒が置いてある。


勉は笑顔で来た。

敬一は微笑んで来た。


敬一は微笑んで座った。

勉は笑顔で座った。


縁は適度な暖かさを感じた。


敬一は微笑んで横になった。

勉は笑顔で横になった。

敬一は横になり、勉に微笑んで話し出す。

「勉君。気持ち良いね。」

勉は横になり、敬一に笑顔で頷いた。

敬一は横になり、勉を微笑んで見た。

勉は横になり、気持ち良くゆっくりと目を閉じた。

敬一は横になり、空を微笑んで見た。


つばめが青空の中を飛ぶ姿が見える。


敬一は横になり、勉を微笑んで見た。

勉は横になり、気持ち良く眠っている。


敬一はつばめを見ながら、庭へ微笑んで行った。


僅かに後の事。


ここは、藤田五郎の家。


庭。


つばめが青空の中を飛ぶ姿が見える。


敬一はつばめを微笑んで見ている。


縁から微かな音が聞こえた。


敬一は縁を不思議な様子で見た。


僅かに暑さを感じる風が吹いた。


敬一は縁を驚いて見た。


敬一は縁へと慌てて走った。


直後の事。


ここは、藤田五郎の家。


勉の居る縁。


敬一は慌てて来た。


勉は敬一を笑顔で見た。

勉の傍に矢筒が在る。


敬一は勉に怒鳴った。

「勉君! 駄目!」

勉は敬一を驚いて見た。


同じ頃。


ここは、藤田五郎の家。


時尾が居る部屋。


時尾は微笑んで居る。


敬一の怒鳴る声が聞こえた。

「勉君! 駄目!」

勉の泣き声が聞こえた。


同じ頃。


ここは、藤田五郎の家。


藤田五郎の部屋。


藤田五郎は普通に居る。


敬一の怒鳴る声が聞こえた。

「勉君! 駄目!」

勉の泣き声が聞こえた。


藤田五郎は障子を普通に開けた。


僅かに後の事。


ここは、藤田五郎の家。


勉と敬一の居る縁。


時尾は不思議な様子で来た。


勉は泣いている。

敬一は時尾を困惑して見た。

敬一の傍に矢筒が在る。


時尾は勉に優しく話し出す。

「勉。大丈夫?」

勉は時尾に泣いて抱き付いた。

時尾は勉を優しく抱くと、勉に微笑んで話し出す。

「勉。いつまでも泣かないの。」

勉の泣き声が僅かに小さくなった。

時尾は勉を抱いて、勉に微笑んで話し出す。

「勉。良い子ね。」

勉の泣き声が僅かに小さくなった。

時尾は勉を抱いて、敬一に優しく話し出す。

「敬一君。何が遭ったの?」

敬一は時尾に小さい声で話し出す。

「勉君を叩きました。すいませんでした。」

時尾は勉を抱いて、敬一を不思議な様子で見た。

敬一は悲しい様子で下を見た。

時尾は勉を抱いて、敬一に微笑んで話し出す。

「勉を部屋に連れて行くわね。」

敬一は時尾を見ると、寂しく小さく頷いた。


時尾は勉を抱いて、微笑んで居なくなった。

勉は僅かに泣いて、居なくなった。


僅かに後の事。


ここは、藤田五郎の家。


藤田五郎の前に在る縁。


藤田五郎は普通に居る。


時尾は勉を抱いて、微笑んで来た。

勉は静かに泣いている。


藤田五郎は時尾と勉を普通の表情で見た。

時尾は勉を抱いて、藤田五郎に微笑んで話し出す。

「敬一君が勉を叩いたと言って、謝りました。」

藤田五郎は時尾と勉を普通の表情で見ている。

時尾は勉を抱いて、藤田五郎に微笑んで話し出す。

「後はよろしくお願いします。」

藤田五郎は時尾に普通の表情で頷いた。


時尾は勉を抱いて、微笑んで居なくなった。

勉は静かに泣いて、居なくなった。


藤田五郎は普通に歩き出した。


直後の事。


ここは、敬一の居る縁。


敬一は寂しく居る。

敬一の傍に矢筒が在る。


藤田五郎は普通に来た。


敬一は藤田五郎を真剣な表情で見た。

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。

敬一は藤田五郎に真剣な表情で話し出す。

「勉君を叩きました。申し訳ありませんでした。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「勉を叩いた理由を教えろ。」

敬一は藤田五郎に真剣な表情で話し出す。

「僕が全て悪いです。申し訳ありませんでした。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「今の敬一の返事は、俺の質問の答えにならない。」

敬一は藤田五郎に真剣な表情で話し出す。

「僕が全て悪いです。他に話す内容はありません。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「今の敬一の返事も、俺の質問の答えにならない。俺の質問に早く答えろ。」

敬一は藤田五郎に真剣な表情で話し出す。

「僕が全て悪いです。他に話す内容はありません。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「今日の稽古は中止にする。」

敬一は藤田五郎を驚いて見た。

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。

敬一は矢筒を持つと、藤田五郎に真剣な表情で話し出す。

「今日は帰ります。たくさん迷惑を掛けてしまって、本当に申し訳ありませんでした。」

藤田五郎は敬一が矢筒を持たない手首を普通の表情で掴んだ。

敬一は矢筒を驚いた表情で放した。


矢筒は縁に落ちた。


藤田五郎は敬一の手首を掴み、敬一に普通に話し出す。

「敬一。手を開け。」

敬一は藤田五郎を見ながら、不安な様子でゆっくりと手を開いた。


敬一の掌に、傷がある。


藤田五郎は敬一の手首を掴み、敬一の掌の傷を普通の表情で診た。

敬一は藤田五郎を不安な様子で見た。

藤田五郎は敬一の手首を普通の表情で静かに放した。

敬一は藤田五郎を不安な様子で見ている。

藤田五郎は矢筒を持つと、敬一に普通に話し出す。

「敬一。一緒に来い。」

敬一は藤田五郎に不安な様子で頷いた。


藤田五郎は矢筒を持ち、普通に居なくなった。

敬一は不安な様子で居なくなった。


僅かに後の事。


ここは、藤田五郎の家。


食卓の有る部屋。


時尾は微笑んで繕い物をしている。


藤田五郎は矢筒を持ち、普通に来た。

敬一は不安な様子で来た。


時尾は繕い物を止めると、藤田五郎と敬一を微笑んで見た。

藤田五郎は矢筒を置くと、時尾に普通に話し出す。

「敬一が掌に怪我をしている。手当てを頼む。」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一君。掌を見せて。」

敬一は時尾に困惑した様子で掌を見せた。

時尾は敬一の掌を微笑んで診た。


藤田五郎は普通居なくなった。


時尾は敬一を見ると、敬一に微笑んで話し出す。

「少し待っていてね。」

敬一は手を引くと、時尾に不安な様子で頷いた。


時尾は微笑んで居なくなった。


敬一は掌を不安な様子で見た。


時尾が手拭と薬を持ち、微笑んで来た。


敬一は時尾を不安な様子で見た。

時尾は手拭と薬を卓に置くと、敬一に微笑んで話し出す。

「傷の手当てを始めるわね。」

敬一は時尾に掌を不安な様子で見せた。

時尾は敬一の掌の傷の手当を微笑んで始めた。

敬一は時尾に掌を見せて、時尾に不安な様子で話し出す。

「すいません。」

時尾は敬一の掌の傷の手当てをしながら、敬一に微笑んで話し出す。

「敬一君の治療するのは当然よ。謝らないで。」

敬一は時尾に掌を見せて、時尾に不安な様子で話し出す。

「勉君は大丈夫ですか?」

時尾は敬一の掌の傷の手当てをしながら、敬一に微笑んで話し出す。

「勉は直ぐに泣き止んだわ。勉は部屋で寝ているわ。安心して。」

敬一は時尾に掌を見せて、時尾に不安な様子で話し出す。

「本当にすいません。」

時尾は敬一の掌の傷の手当てをしながら、敬一に微笑んで話し出す。

「敬一君。何について謝っているの?」

敬一は時尾に掌を見せて、時尾に不安な様子で話し出す。

「いろいろです。」

時尾は敬一の掌の傷の手当てをしながら、敬一を微笑んで見た。

敬一は時尾に掌を見せて、時尾を不安な様子で見た。

時尾は敬一の掌の傷の手当を微笑んで終えた。

敬一は時尾を不安な様子で見た。

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「怪我の手当ては終わりよ。」

敬一は時尾に申し訳なく話し出す。

「ありがとうございました。」

時尾は敬一を微笑んで見た。

敬一は時尾を申し訳なく見た。


僅かに後の事。


ここは、藤田五郎の家。


藤田五郎の部屋の前に在る縁。


敬一は矢筒を持ち、不安な様子で来た。


障子が普通に開いた。


藤田五郎が敬一を普通の表情で見る姿が現れた。


敬一は矢筒を持ち、藤田五郎を驚いて見た。


藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「部屋の中に入れ。」


敬一は矢筒を持ち、藤田五郎に不安な様子で小さく頷いた。


敬一は矢筒を持ち、部屋の中に不安な様子で入っていった。


直後の事。


ここは、藤田五郎の家。


藤田五郎の部屋。


敬一は矢筒を持ち、部屋の中に不安な様子で入った。


藤田五郎は障子を普通に閉めた。

敬一は矢筒を近くに置くと、藤田五郎を不安な様子で見た。

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「敬一。自分から進んで悪い立場になる状況は、相手のためになる時と相手のためにならない時がある。何が遭ったのか隠さずに教えろ。」

敬一は藤田五郎に不安な様子で小さい声で話し出す。

「矢筒を縁に置いて、勉君と遊びました。遊びが終わったので、勉君と縁に戻りました。縁が暖かくて気持ち良くて、縁に横になりました。勉君は直ぐに眠りに就きました。僕は空を見ました。つばめが青空を飛んでいました。僕は、つばめが広い青空で飛ぶ様子を見たくて、庭に出ました。僕が広い青空を飛ぶつばめを見ている時に、縁から微かな音が聞こえました。僕は縁を見ました。勉君が矢筒を開けていました。縁に置いた矢筒の中には、折れた矢が入っています。勉君が、矢を持つか、矢を振り回すと、危険です。勉君が折れた矢を持って怪我をする可能性があります。僕は縁に慌てて戻りました。勉君は折れた矢を持ちました。僕は勉君から折れた矢を慌てて取り上げました。折れた矢は、矢筒に直ぐに戻しました。勉君は僕が怒鳴って矢を取り上げたから、驚いて泣いたと思います。勉君に怪我はありませんでした。僕は矢の折れた部分を持ったので、掌に少しだけ怪我をしました。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「俺と時尾が、勉を怒ると思ったから、敬一が勉を叩いて泣かしたと嘘を付いたのか?」

敬一は藤田五郎に不安な様子で頷いた。

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「俺の家の敷地内には刀が仕舞ってある。敬一が先程の出来事を教えてくれたから、勉に矢や刃物は危険だと教える日を早める必要があると分かった。今の勉は矢や刃物が危険だと教えても直ぐに理解できない。勉が理解できるまで、俺と時尾が注意をする必要がある。」

敬一が藤田五郎に不安な様子で小さい声で話し出す。

「僕は勉君のためにならない言動をしたのですか?」

藤田五郎が敬一に普通に話し出す。

「今回の件に関しては、敬一の話のとおりになる。」

敬一は藤田五郎を不安な様子で見た。

藤田五郎が敬一に普通に話し出す。

「先程の出来事に関する話は終わりにする。」

敬一は藤田五郎に不安な様子で話し出す。

「斉藤さん。今日の稽古は中止ですか?」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「敬一は掌に怪我をしている。今回の稽古は中止だ。」

敬一は藤田五郎に不安な様子で話し出す。

「今回の怪我の状態ならば、稽古は出来ると思います。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「敬一が怪我した掌で受けられるほど、俺の就ける稽古は楽なのか。次回からは、更に厳しい内容の稽古を就ける。」

敬一は藤田五郎に慌てて話し出す。

「斉藤さん! 誤解する内容を話してしまって、申し訳ありません!」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「総司と似ている。」

敬一は藤田五郎に心配な様子で話し出す。

「僕は変な内容を話したのですか?」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「敬一は変な内容を話していない。安心しろ。」

敬一は藤田五郎に不思議な様子で話し出す。

「はい。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「敬一。話の内容を変える。弓道の稽古を受けているのか?」

敬一は藤田五郎に寂しく小さい声で話し出す。

「はい。」

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。

敬一は藤田五郎に寂しく話し出す。

「剣道の稽古を受けると、お父さんについて尋ねる人がいます。剣道と繋がりの薄い柔術や弓道の稽古を受けたいと思うようになりました。東京に来てから、弓道の稽古が受けられる機会が訪れました。僕は弓道の稽古を受けるようになりました。気付いたら、弓道の稽古を受ける時にも、お父さんについて尋ねる人がいました。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「敬一。剣道も弓道も共に続けたいのか?」

敬一は藤田五郎に寂しく小さい声で話し出す。

「以前は、様々な武術の稽古を受けたいと思いました。斉藤さんと逢ってからは、斉藤さんから剣道の稽古を就けてもらうようになってからは、剣道の稽古を一番に受けたいと思うようになりました。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「敬一。弓は道場で預かってもらっているのか?」

敬一が藤田五郎に寂しく小さい声で話し出す。

「弓は道場から借りて稽古を受けています。矢はお母さんに頼んで用意してもらいました。矢は、普段は家で保管して、稽古の時に道場に持ってきています。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「敬一の掌の怪我が治るまで、稽古は中止する。掌の怪我が治るまでは、手を使わない鍛錬を無理せずに続けろ。」

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「はい。」

藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。


時尾の穏やかな声が、部屋の外から聞こえた。

「お茶とお菓子の用意が出来ました。」


藤田五郎は障子を普通に開けた。


時尾がお茶とお菓子を持ち、部屋の中に微笑んで入った。


藤田五郎は障子を普通に閉めた。

時尾は敬一の前にお茶とお菓子を微笑んで置いた。

敬一は時尾に微笑んで軽く礼をした。

時尾は藤田五郎の前にお茶を微笑んで置いた。

藤田五郎は時尾に普通の表情で頷いた。


時尾は部屋の外へ微笑んで出て行った。


敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「いただきます。」

藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。

敬一はお菓子を美味しく食べ始めた。

藤田五郎が敬一に普通に話し出す。

「菓子を笑顔で美味しく食べるな。」

敬一はお菓子を食べるのを止めると、藤田五郎に申し訳なく話し出す。

「すいません。」

藤田五郎が敬一に普通に話し出す。

「時尾は敬一が美味しく食べる姿を見ると喜ぶ。遠慮せずに菓子を食べろ。」

敬一は藤田五郎を微笑んで見た。

藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。

敬一はお菓子を美味しく食べた。

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。

敬一はお菓子を美味しく食べ終わった。

藤田五郎は敬一を普通の表情で見ている。

敬一はお茶を美味しく飲んだ。

藤田五郎は敬一を普通の表情で見ている。

敬一はお茶を美味しく飲み終わった。

藤田五郎は敬一を普通の表情で見ている。

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「ごちそうさまでした。」

藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。

敬一は藤田五郎に不思議な様子で話し出す。

「斉藤さん。僕が勉君を叩いていない、僕が手に怪我をしている、と分かった理由は何ですか?」

藤田五郎が敬一に普通に話し出す。

「嘘を付く、嘘を付かれる。嘘を見破られないようする、嘘を見破る。僅かな言動の変化、僅かな表情の変化、僅かな仕草変化、などで、真意を探り合う。俺は今の話の出来事を長く続けて過ごしていたから、敬一の手の怪我が分かった。」

敬一は藤田五郎に不思議な様子で話し出す。

「お父さんも斉藤さんと同じ生活をしていますよね。お父さんも斉藤さんと同じく嘘を見抜く力が優れているのですか?」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「総司も俺も、新撰組で任務に就く日々を過ごしたが、違う生き方をしていた。普段の総司は、嘘を付くのも隠し事をするのも苦手だから、分かりやすかった。総司は、剣術に係わる時、任務に就く時、美鈴さんを守る時は、嘘を瞬時に見抜き、仲間も勘違いをするほどの嘘を付いた。」

敬一は藤田五郎を不思議な様子で見た。

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「敬一は普段の時と限定すれば、総司より嘘を付くのが上手だ。」

敬一は藤田五郎に苦笑して話し出す。

「喜んで良いのか、落ち込んで良いのか、分かりません。」

藤田五郎が敬一に普通に話し出す。

「細かい内容を気にするな。」

敬一は藤田五郎を苦笑して見た。

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「話の内容を変える。勉の心配はするな。今日の出来事に関する心配もするな。怪我を早く治すのを一番に考えて過ごせ。」

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「はい。」

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。

敬一が藤田五郎に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。今日はたくさんありがとうございました。」

藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「近い内に再び来ます。」

藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。

敬一は藤田五郎を微笑んで見た。

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。


少し後の事。


ここは、藤田五郎の家。


玄関。


藤田五郎は普通に居る。


勉は笑顔で来た。

時尾は微笑んで来た。


藤田五郎は時尾と勉を普通の表情で見た。

時尾は勉に残念な様子で話し出す。

「敬一君は少し前に帰ったの。間に合わなかったわね。」

勉は時尾を寂しく見た。

藤田五郎は時尾に普通に話し出す。

「敬一は近い内に来ると話していた。」

時尾は勉に微笑んで話し出す。

「敬一君は近い内に家に来るそうよ。楽しみに待ちましょう。」

勉は時尾に笑顔で頷いた。

時尾は勉を微笑んで見た。

藤田五郎は時尾と勉を普通の表情で見た。

時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「敬一君の笑顔が戻って良かったですね。」

藤田五郎は時尾に普通の表情で頷いた。


藤田五郎と敬一が共に紡ぐ時間は、始まったばかり。

藤田五郎にとって楽しみな出来事が増える予感が強まっている。

藤田五郎は勘の鋭い人物のため、予感ではなく、実感になるかも知れない。




*      *      *      *      *      *




ここまで読んで頂いてありがとうございます。

ここからは後書きになります。

この物語は既に掲載している物語の再改訂版です。

物語の展開や雰囲気を出来るだけ残して掲載しました。

改訂前の物語を掲載するのは止めました。

以上の点、ご了承願います。

ここからは改訂前の後書きを加筆訂正して掲載します。

敬一君は、本格的ではありませんが、弓道も習っています。

藤田五郎さんは、敬一君の嘘と怪我を直ぐに見抜きました。

時尾さんは、敬一君の嘘を大体ですが見抜きました。

「小満(しょうまん)」は「二十四節気の一つ」です。

五月二十一日頃、または、この日から「芒種」までの期間になります。

万物が次第に成長をして、一定の大きさに達してくる頃だそうです。

麦畑が緑黄色に色づき始める頃だそうです。

小満の頃を考えながら物語を書きました。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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