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新撰組異聞外伝 〜 松風月の星空の下 〜


〜 第三版 〜


ここは、東京。


梅雨が近付いてきた。


ここは、藤田五郎と妻の時尾の家。


藤田五郎は居ない。

時尾は居る。


藤田五郎の姉の相馬ひでが亡くなった知らせが届いた。


時尾が知らせを受けた。


“相馬ひで”は、祝言を挙げる前は“山口勝”と名乗っていた。

祝言を挙げて“山口勝”から“相馬勝”に氏名が変わった。

更に後に、“相馬勝”から“相馬ひで”に氏名を変えた。

藤田五郎も、“山口一”、“斉藤一”、などに氏名を変えた。

藤田五郎は公私の事情で氏名を幾度も変えたが、氏名を変える行為はたくさんの人達が以前から普通に行っていた。


藤田五郎が山口一を名乗り、相馬ひでが山口勝を名乗る頃に、山口勝は祝言を挙げて山口の家から居なくなった。

更に後に、山口一は或る事情のため、斉藤一を名乗り、京の都で過ごした。

姉弟ではあるが、様々な出来事が重なり、一緒に過ごした期間は余り長くなかった。

藤田五郎と相馬ひでは、氏名を変えながら別々に過ごしたが、姉弟の関係は変わらない。


藤田五郎が氏名を変えて過ごしている、相馬ひでが他家に嫁いでいる、などの理由から、藤田五郎が主だった行動はしない状況になっている。


暫く後の事。


ここは、藤田五郎と時尾の家。


玄関。


藤田五郎は普通に帰ってきた。


時尾は普通に現れた。


藤田五郎は時尾を普通の表情で見た。

時尾は藤田五郎に普通に話し出す。

「五郎さん。お帰りなさい。お話があります。玄関では話し難いので、家の中で話して良いですか?」

藤田五郎は時尾に普通の表情で頷いた。


時尾は家の中に普通に入って行った。

藤田五郎は家の中に普通に入って行った。


数日後の事。


夜。


ここは、東京。


雨の多い時期だが、たくさんの綺麗な星が夜空に輝いている。


ここは、藤田五郎と時尾の家。


庭。


藤田五郎は星を普通の表情で見ている。


時尾が微笑んで来た。


藤田五郎は時尾を普通の表情で見た。

時尾は藤田五郎を微笑んで見た。

藤田五郎は時尾に普通に話し出す。

「俺の部屋の前に在る縁で、星を見ながら酒が飲みたい。」

時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「準備をしてきます。」

藤田五郎は時尾に普通の表情で頷いた。


時尾は微笑んで居なくなった。


藤田五郎は星を普通の表情で見た。


少し後の事。


ここは、藤田五郎と時尾の家。


藤田五郎の部屋の前に在る縁。


藤田五郎は星を普通の表情で座って見ている。


時尾が酒と肴をお盆に載せて、微笑んで来た。


藤田五郎は時尾を普通の表情で見た。

時尾は藤田五郎の傍にお盆を微笑んで静かに置いた。

藤田五郎は時尾に普通の表情で頷いた。

時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「珍しいお漬物が手に入りました。」

藤田五郎は漬物を一瞥すると、時尾を見て、普通に話し出す。

「千枚漬。」

時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「はい。」

藤田五郎は時尾を普通の表情で見た。

時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「ゆっくりとお酒を飲んでください。」

藤田五郎は時尾に普通の表情で頷いた。


時尾は微笑んで居なくなった。


藤田五郎は、酒と千枚漬を見ながら、普通の表情で呟いた。

「千枚漬。偶然?」


淡い光が辺りを包んだ。


藤田五郎は庭を普通の表情で見た。


庭には季節はずれの桜が満開になって咲いている。


藤田五郎は横を普通の表情で見た。


沖田総司が藤田五郎の横に笑顔で座っている。


藤田五郎は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は藤田五郎に笑顔で話し出す。

「斉藤さん! お久しぶりです!」

藤田五郎は沖田総司に普通に話し出す。

「総司は常に明るく現れる。総司が現れると桜が満開になる。」

沖田総司は藤田五郎に笑顔で話し出す。

「私はいつも明るく元気で過ごしています!」

藤田五郎は沖田総司に普通に話し出す。

「俺は総司の近況報告を尋ねていない。」

沖田総司は藤田五郎に苦笑して話し出す。

「私が桜を満開にしている訳ではありません。」

藤田五郎は千枚漬を普通の表情で食べた。

沖田総司は藤田五郎を苦笑して見た。

藤田五郎は千枚漬を食べ終わると、杯に酒を普通に注いだ。

沖田総司は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。私に尋ねたい内容がありますよね。」

藤田五郎は杯の酒を飲むと、沖田総司に普通に話し出す。

「姉のひでが亡くなった。」

沖田総司は藤田五郎に不思議な様子で話し出す。

「斉藤さんの姉上の名前は、勝さんですよね。斉藤さんには二人の姉上がいたのですか?」

藤田五郎は沖田総司に普通に話し出す。

「“勝”から“ひで”に名前を変えた。」

沖田総司は藤田五郎を納得した表情で見た。

藤田五郎は沖田総司に普通に話し出す。

「姉と逢った時の出来事を覚えているだろ。」

沖田総司は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「はい。勝さんと逢った時の出来事は、良く覚えています。斉藤さんと勝さんが一緒に居る姿を見て、みんなが勘違いして騒ぎになりましたね。」

藤田五郎は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は笑いを堪えて、藤田五郎を見た。

藤田五郎は沖田総司に普通に話し出す。

「総司には笑顔で思い出せるほど、物凄く楽しい出来事だったんだ。」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「私にとって、楽しい思い出、懐かしい思い出、です。」

藤田五郎は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は藤田五郎に微笑んで静かに話し出す。

「斉藤さん。我慢せずに泣いて良いですよ。」

藤田五郎が沖田総司に普通に話し出す。

「俺は泣かない。気を遣うな。」

沖田総司は斉藤一に微笑んで頷いた。

藤田五郎は沖田総司に普通に話し出す。

「姉は総司と同じ場所に行ってないのか?」

沖田総司は真剣な表情で考え込んだ。

藤田五郎は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は藤田五郎に思い出した様子で話し出す。

「そういえば、“一をよろしく頼みます”と私に話した女性がいました! 女性は“ひで”と名乗っていました! 私は女性が何者か分からなくて不思議に思っていました! あの時の女性は斉藤さんの姉上だったのですね!」

藤田五郎は沖田総司に普通に話し出す。

「総司は姉の顔を忘れていたのか。総司の剣術以外に関する記憶は、相変わらずだな。」

沖田総司は藤田五郎に苦笑して話し出す。

「私と勝さんが会った時間は短いです。私が勝さんの姿や声を忘れるのは仕方がありません。」

藤田五郎は沖田総司に普通に話し出す。

「総司は姉の顔を忘れていたが、総司は俺の名前を話しの最中に思い出した。総司に話す人物が、俺の親しい関係者だと気付くだろ。」

沖田総司は藤田五郎に納得しない様子で話し出す。

「何年も会わないと、雰囲気の変わる人は多いです! 勝さんはひでさんに名前を変えました! 勝さんは、斉藤ではなく、一と話しました! 私は斉藤さんを、基本的には斉藤さんと呼びます! 斉藤さんの姉上だと気付かなくても仕方が無りません! 斉藤さんも同じ状況ならば絶対に分かりません!」

藤田五郎は沖田総司に普通に話し出す。

「総司は、総司と俺が初めて会った時の、俺の氏名を知っている。総司は、総司と俺が会った以降の、俺が名乗った氏名を知っている。総司の居る場所では、亡くなるまでの間の希望する年齢の容姿が選べるのだろ。突然に雰囲気が変わる人物は余りいない。突然に姿が変わった人物だとしても、僅かでも面影は残る。要は、総司が剣術関係以外で会った人物を、直ぐに忘れるだけの話だ。」

沖田総司は藤田五郎に納得しない様子で話し出す。

「斉藤さんの姉上は、私にとっても大事な人物です! 私は斉藤さんの姉上を忘れません!」

藤田五郎は沖田総司に普通に話し出す。

「力説中に邪魔をして申し訳ないが、近藤さんと土方さんから、総司は俺に逢いたいと幾度も話したと教えてもらった。俺と総司が多摩で再会した時に、俺は名乗らず総司に挨拶をしたら、総司は俺が何者か分からないまま居なくなった。俺と総司が京の都で再会した時に、俺が京の都で名乗る氏名を伝えたら、総司は俺を何者か分からなかった。総司は俺と公私共に過ごしながら、俺が何者か分からない状況が続いた。仕方がないから、俺が総司に昔の話をした。総司は俺が何者かやっと分かった。」

沖田総司は藤田五郎を困惑した表情で見た。

藤田五郎は杯の酒を飲みながら、沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は藤田五郎を困惑した表情で見ている。

斉藤一は千枚漬を普通の表情で食べた。

沖田総司は藤田五郎に不思議な様子で話し出す。

「斉藤さん。珍しい漬物を食べていますね。」

藤田五郎は千枚漬を食べ終わると、沖田総司に普通に話し出す。

「千枚漬。京都の漬物だ。」

沖田総司は藤田五郎に不思議な様子で話し出す。

「京の町で見た記憶がない漬物です。」

藤田五郎は沖田総司に普通に話し出す。

「千枚漬は、俺達が江戸に戻る頃に売り出した漬物らしい。総司が京の町で見た記憶がないのは当然かも知れない。」

沖田総司は千枚漬を不思議な様子で見た。

藤田五郎は杯の酒を飲むと、沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は藤田五郎を見ると、藤田五郎に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。千枚漬を食べたいです。」

藤田五郎は杯の酒を飲みながら、沖田総司に普通に話し出す。

「食べられるのか?」

沖田総司は藤田五郎に笑顔で話し出す。

「はい! 斉藤さんは私に千枚漬を食べて欲しいと思ってください!」

藤田五郎は杯の酒を飲みながら、沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は藤田五郎に笑顔で話し出す。

「漠然とした思いだと、私は食べられません! 斉藤さんが私を大切に思っているか分かりますね!」

藤田五郎は杯の酒を飲みながら、沖田総司に普通に話し出す。

「総司。千枚漬を食べられなくても文句を言うなよ。」

沖田総司は藤田五郎を僅かに驚いた表情で見た。

藤田五郎は千枚漬を普通の表情で食べた。

沖田総司は藤田五郎を寂しく見た。

藤田五郎は杯の酒を飲むと、庭に咲く桜を普通の表情で見た。

沖田総司は藤田五郎に不安な様子で話し出す。

「斉藤さん。私は変な内容を話しましたか? 怒りましたか?」

藤田五郎は杯の酒を飲みながら、沖田総司を見ると、沖田総司に普通に話し出す。

「千枚漬を食べるか?」

沖田総司は藤田五郎に笑顔で話し出す。

「はい!」

藤田五郎は杯の酒を飲みながら、沖田総司に普通に話し出す。

「総司に箸を渡せば良いのか?」

沖田総司は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「千枚漬を私の手に載せてください。」

藤田五郎は杯の酒を飲みながら、沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は藤田五郎に掌を微笑んで差し出した。

藤田五郎は咲杯の酒を飲むのを止めると、沖田総司の掌に千枚漬を置いた。

沖田総司は掌から千枚漬を取ると、千枚漬を笑顔で食べた。

藤田五郎は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は千枚漬を食べ終わると、藤田五郎に笑顔で話し出す。

「美味しいです!」

藤田五郎は沖田総司に普通に話し出す。

「もっと食べるか?」

沖田総司は藤田五郎に掌を差し出すと、藤田五郎に笑顔で話し出す。

「はい!」

藤田五郎は沖田総司の掌に千枚漬を普通に載せた。

沖田総司は掌から千枚漬を取ると、千枚漬を笑顔で食べた。

藤田五郎は沖田総司に普通に話し出す。

「酒は飲めるのか?」

沖田総司は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「斉藤さんと一緒に酒を飲みたい人物が居ます。今回は遠慮させてください。」

藤田五郎は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は藤田五郎を微笑んで見た。

藤田五郎は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は星を微笑んで見た。

藤田五郎は星を普通の表情で見た。

沖田総司は星を見ながら、藤田五郎に微笑んで静かに話し出す。

「星が綺麗に輝いていますね。」

藤田五郎は星を見ながら、普通の表情で頷いた。

沖田総司は藤田五郎を微笑んで見た。

藤田五郎は沖田総司を一瞥すると、星を普通の表情で見た。

沖田総司は星を微笑んで見た。

藤田五郎は星を普通の表情で見た。

沖田総司は藤田五郎を見ると、藤田五郎に微笑んで話し出す。

「斉藤さんが元気で安心しました。」

藤田五郎は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は藤田五郎を微笑んで見た。


辺りに風が吹いた。


沖田総司と藤田五郎の傍に、桜の花びらが舞い落ちてきた。


沖田総司は舞い落ちた桜の花びらを微笑んで見た。

藤田五郎は舞い落ちた桜の花びらを普通の表情で見た。

沖田総司は藤田五郎を見ると、藤田五郎に微笑んで話し出す。

「帰る時間が近付いています。」

藤田五郎は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。再び呼んでください。楽しみに待っています。」

藤田五郎は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は藤田五郎に微笑んで軽く礼をした。

藤田五郎は沖田総司に普通の表情で頷いた。


沖田総司は微笑んで、静かに居なくなった。


藤田五郎は庭を普通の表情で見た。


庭に咲いた季節はずれの桜は、元の姿に戻っている。


藤田五郎は千枚漬を普通の表情で食べた。


少し後の事。


ここは、藤田五郎と時尾の家。


藤田五郎の部屋の前に在る縁。


藤田五郎は杯の酒を飲んで、星空を普通の表情で座って見ている。


時尾が藤田五郎の傍に微笑んで来た。


藤田五郎は杯の酒を飲むのを止めると、時尾を普通の表情で見た。

時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「お開きの時間が過ぎたと思って来ました。楽しんでいる最中に邪魔をしてしまいました。申し訳ありません。」

藤田五郎は時尾に普通の表情で話し出す。

「時尾が来る僅か前に止めた。時尾は良い時間に来た。」

時尾は藤田五郎を微笑んで見た。

藤田五郎は時尾を普通の表情で見た。

時尾はお盆を微笑んで持った。


時尾はお盆を持ち、微笑んで居なくなった。


藤田五郎は普通に立ち上がった。


藤田五郎は部屋に普通に入っていった。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語は既に掲載している物語の再改訂版です。

物語の雰囲気や展開などを出来るだけ残して改訂しました。

改訂前の物語を掲載するのは止めました。

題名を「松風月の星空のした」から「松風月の星空の下」に変更しています。

以上の点、ご了承願います。

ここからは改訂前の後書きを加筆訂正して書いていきます。

藤田五郎さん(以前の名前は“斉藤一”さん。更に以前は“山口一”さん)の姉の相馬ひでさん(以前の名前は相馬[旧姓:山口]勝さん)が亡くなった時を元にして、物語を考えました。

山口勝さんは、時期は不明ですが、結婚後に「勝」から「ひで」に改名したそうです。

相馬ひでさんは、明治八年(1875年)六月一日に亡くなったそうです。

亡くなった時の年齢は、三十三〜三十四歳と思われます。

相馬ひでさんが亡くなった時の経緯などについては、確認が取れませんでした。

藤田五郎さんは、相馬ひでさんが亡くなった時には、藤田時尾さんと結婚しています。

長男の勉さんは生まれていません。

ちなみに、物語の設定時期の時点で、藤田五郎さんは敬一君の存在を知りません。

「千枚漬(せんまいづけ)」についてです。

京都の漬物です。

新撰組の人達が京都に居る間に食べられたどうかという時期に、販売された漬物のようです。

千枚漬が物語の設定した季節に食べられるかの確認は取っていませんが、物語の展開で使うと良い雰囲気になると考えて、物語に登場しています。

沖田総司さんが千枚漬を見ていないとしても不思議ではないので、この物語の中では千枚漬を珍しい表情で見る設定になしました。

沖田総司さんが千枚漬を食べる時に、お酒を飲まないと話す場面があります。

今回の物語では理由は書きませんでした。

「松風月(まつかぜづき)」は、「陰暦六月の異称」です。

陰暦なので物語の設定月と合いませんが、相馬ひでさんが亡くなったのが六月の関係から、沖田総司さんと藤田五郎さんが静かな雰囲気で話す時があるけれど暗い雰囲気で話していない、などの理由から、「松風月」を題名に付けました。

物語の中に会話のみで登場する、斉藤一さんと相馬勝さんを巻き込んだ騒動は、「新撰組異聞 短編 清明 桜の記憶がよみがえる」の出来事です。

藤田五郎さんと相馬ひでさんの付き合い方が、はっきりと分かりませんが、藤田五郎さんは相馬ひでさんが亡くなった時にいろいろと想った、と考えて物語を書きました。

藤田五郎さんの性格から考えると、余り普段と変わらないと考えて、落ち着いた雰囲気の物語になりました。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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