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新撰組異聞外伝 〜 入梅の頃 〜
〜 改訂版 〜
はじめに。
今回の物語は、後書きまで含めると、原稿用紙で約40枚になります。
当サイトでは本来だと中編として掲載します。
今回の物語は、藤田五郎さんと敬一君が登場する他の短編の物語と関係があるため、短編のまま掲載する事にしました。
以上の点、ご了承ください。
では、物語の世界へどうぞ。
* * * * * *
ここは、東京の町。
梅雨の季節になろうとしている。
雨が静かに降っている。
ここは、藤田五郎、妻の時尾、幼い息子の勉の住む家。
玄関。
敬一は元気良く訪れた。
時尾は敬一の前に微笑んで表れた。
勉は敬一の前に笑顔で現れた。
敬一は時尾と勉に笑顔で話し出す。
「こんにちは!」
時尾は敬一に微笑んで話し出す。
「こんにちは。雨の降る中を出掛けてくるのは大変だったわよね。」
敬一は時尾に笑顔で話し出す。
「小雨のように降っているので、余り大変ではありませんでした!」
時尾は敬一を微笑んで見た。
勉は敬一に笑顔で話し出す。
「おにいちゃん。こんにちは。あそぼ。」
敬一は勉に申し訳なさそうに話し出す。
「ごめんね。今日は剣道の稽古で来たから、遊ぶ時間はないと思うんだ。」
勉は敬一を寂しそうに見た。
時尾は勉に微笑んで話し出す。
「今日は敬一君が剣道の稽古をしっかりと就けてもらう日なの。遊んでもらうのは別な日にしましょう。」
勉は時尾に微笑んで頷いた。
敬一は時尾と勉を微笑んで見た。
それから少し後の事。
ここは、稽古場。
藤田五郎と敬一は、稽古着に着替えている。
敬一は藤田五郎に真剣な表情で話し出す。
「よろしくお願いします。」
藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。
敬一は藤田五郎を真剣な表情で見た。
藤田五郎は木刀を手に取ると、敬一に普通の表情で差し出した。
敬一は藤田五郎から木刀を受け取ると、不思議そうに話し出す。
「今日は木刀で稽古を行うのですか?」
藤田五郎は木刀を持ちながら、敬一に普通の表情で頷いた。
敬一は木刀を不思議そうに見た。
藤田五郎は木刀を持ちながら、敬一に普通に話し出す。
「稽古を始める。」
敬一は藤田五郎に向かって、真剣な表情で木刀を構えた。
藤田五郎は敬一に向かって、普通の表情で木刀を構えた。
敬一は藤田五郎に向かって、木刀を勢い良く打ち込んだ。
藤田五郎は敬一の木刀を普通の表情で受けた。
敬一は藤田五郎に向かって、真剣な表情で木刀を強く押した。
藤田五郎は敬一の木刀を普通の表情で後ろに向かって押した。
敬一は木刀を持ったまま、後ろに向かって勢い良く倒れた。
藤田五郎は敬一に向かって木刀を構えながら、普通に話し出す。
「稽古が始まったばかりなのに、もう休憩しているのか?」
敬一は木刀を持ちながら、勢い良く立ち上がると、藤田五郎に真剣な表情で話し出す。
「休憩などしていません!」
藤田五郎は敬一に向かって木刀を構えながら、普通に話し出す。
「話す暇があるのなら早く打ち込め。」
敬一は藤田五郎に向かって、勢い良く木刀を打ち込んだ。
藤田五郎は普通の表情で、敬一の木刀を強く払った。
敬一は木刀を払われた勢いで、前に向かって勢い良く倒れた。
藤田五郎は敬一に木刀を構えながら、普通に話し出す。
「前に向かって倒れたな。」
敬一は木刀を持ちながら、勢い良く立ち上がると、藤田五郎に真剣な表情で話し出す。
「僕は前に倒れていません!」
藤田五郎は敬一に向かって木刀を構えながら、普通に話し出す。
「前に倒れたのは事実だ。言い訳をする暇があるのなら早く打ち込め。」
敬一は藤田五郎に向かって、真剣な表情で木刀を打ち込もうとした。
藤田五郎は普通の表情のまま、敬一の竹刀を素早い動きで交わした。
敬一は木刀を持ちながら、前に向かって倒れた。
藤田五郎は木刀を持ちながら、敬一から普通の表情で少し離れた。
藤田五郎の足元に、予備の木刀が有る。
藤田五郎は木刀を持ちながら、敬一から視線を外さずに、素早くしゃがみ込んだ。
敬一は木刀を持ちながら、勢い良く立ち上がると、真剣な表情で藤田五郎を見た。
藤田五郎は敬一を普通の表情で見ながら、二本の木刀を持っている。
敬一は木刀を構えながら、藤田五郎を僅かに驚いた表情で見た。
藤田五郎は敬一に向かって、普通の表情のまま一本の木刀を勢い良く投げた。
敬一は構えていた木刀で、藤田五郎が投げた木刀を弾いた。
敬一の構えていた木刀が折れた。
藤田五郎は木刀を持ちながら、敬一に向かって大きな声を出した。
「敬一! 危ない!」
敬一は木刀を素早く離すと、両腕を使って顔を覆った。
腕に痛さを感じた途端に、目の前が暗くなり、記憶が無くなった。
それから暫く後の事。
敬一はゆっくりと目を開けた。
ここは、藤田五郎の部屋。
藤田五郎は部屋の中に居ない。
敬一は床の中で横になって寝ている。
顔に痛さは感じない。
腕は怪我の手当てがされている。
敬一は床に横になったまま、腕をゆっくりと動かした。
腕を動かすと少し痛さを感じたので、無理に動かすのを止めた。
時尾が部屋の中に静かに入ってきた。
敬一は辛そうな表情で、床の上にゆっくりと体を起こそうとした。
時尾は敬一に微笑んで話し出す。
「無理をしないで横になって休んでいてね。」
敬一は体を起こすのを止めて、床に横になったまま、時尾に申し訳なさそうに話し出す。
「怪我の手当てや床の用意など、迷惑を掛けて申し訳ありませんでした。」
時尾は敬一に微笑んで話し出す。
「気にしないで休んでね。」
敬一は床に横になったまま、時尾を申し訳なさそうに見た。
時尾は敬一に申し訳なさそうに話し出す。
「藤田が乱暴な稽古を行ってごめんなさい。」
敬一は床に横になったまま、時尾に心配そうに話し出す。
「斉藤さんは乱暴な稽古を行っていません。謝らないでください。」
時尾は敬一を申し訳なさそうに見た。
敬一は床に横になったまま、時尾に心配そうに話し出す。
「斉藤さんはどこに居るのですか?」
時尾は敬一に微笑んで話し出す。
「斉藤は出掛けているの。直ぐに戻ってくるから心配しないで。」
敬一は床に横になったまま、時尾を安心した様子で見た。
時尾は敬一に微笑んで話し出す。
「敬一君。喉が渇いたわよね。何か飲みたいものはある?」
敬一は床に横になったまま、時尾に微笑んで話し出す。
「喉は渇いていません。」
時尾は敬一に微笑んで話し出す。
「喉が渇いた時のために、水を用意するわね。飲みたい物があったら、遠慮なく言ってね。」
敬一は床に横になったまま、時尾に微笑んで頷いた。
時尾は静かに部屋を出て行った。
敬一は床に横になったまま、ゆっくりと目を閉じた。
それから少し後の事。
ここは、藤田五郎の部屋。
敬一は床の中で静かに寝ている。
藤田五郎が静かに部屋の中に入ってきた。
敬一は床の中でゆっくりと目を開けた。
藤田五郎は敬一に普通に話し出す。
「無理な稽古を行って申し訳なかった。」
敬一は床の上にゆっくりと体を起こすと、藤田五郎に微笑んで話し出す。
「斉藤さんは、僕の技術に合わせて稽古を就けてくれます。今回は偶然の出来事です。斉藤さんに謝られたら困ります。」
藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。
敬一は床の上に体を起こしたまま、藤田五郎を微笑んで見た。
藤田五郎は敬一に普通に話し出す。
「食事をしてから帰るか?」
敬一は床の上に体を起こしたまま、藤田五郎に微笑んで話し出す。
「お母さんが食事を作って待っているはずです。僕が早く帰らないと、お母さんが心配します。食事を一緒に食べるのは、別の機会にさせてください。」
藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。
敬一は床の上に体を起こしながら、藤田五郎を微笑んで見た。
藤田五郎は敬一に普通に話し出す。
「敬一は怪我をしている。帰りに辛くなるかも知れない。念のために送っていく。」
敬一は床の上に体を起こしたまま、藤田五郎に微笑んで話し出す。
「斉藤さん。よろしくお願いします。」
藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。
それから少し後の事。
ここは、玄関。
藤田五郎、時尾、敬一は、一緒に居る。
時尾は包みを持ちながら、敬一に微笑んで話し出す。
「お菓子を用意したの。美鈴さんと一緒に食べてね。」
敬一は時尾に微笑んで話し出す。
「ありがとうございます。」
時尾は藤田五郎に微笑んで包みを差し出した。
藤田五郎は時尾から普通の表情で包みを受け取った。
時尾は敬一に心配そうに話し出す。
「今日は迷惑を掛けてしまって、本当にごめんなさい。気を付けて帰ってね。」
敬一は時尾に微笑んで話し出す。
「偶然が重なっただけです。何度も謝られると困ります。気にしないでください。」
時尾は敬一を微笑んで見た。
藤田五郎は包みを持ちながら、時尾と敬一を普通の表情で見た。
それから少し後の事。
ここは、東京の町。
雨は既に止んでいる。
空には薄っすらと月と星が見えている。
藤田五郎と敬一は、一緒に歩いている。
敬一は藤田五郎に申し訳なさそうに話し出す。
「僕の不注意で怪我をしたために、斉藤さんや時尾さんに迷惑を掛けてしまいました。」
藤田五郎は包みと傘を持ちながら、敬一に普通に話し出す。
「敬一は俺の不注意で怪我をした。敬一には悪いと思っている。」
敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。
「斉藤さんは、たくさん気遣ってくれます。謝らないでください。」
藤田五郎は包みと傘を持ちながら、敬一を普通の表情で見た。
敬一は藤田五郎に不思議そうに話し出す。
「斉藤さんが稽古で二本の木刀を持つ姿を見た時は、二刀流を行なうのかと思いました。木刀を投げるとは思いませんでした。さすが斉藤さんだと思いました。」
藤田五郎は包みと傘を持ちながら、敬一に普通に話し出す。
「二刀流で打ち合うより、木刀を投げた方が、敬一が驚くと考えた。」
敬一は藤田五郎に苦笑しながら話し出す。
「二刀流で打ち合うと思う人は多いと思うので、木刀を投げた方が効果的ですよね。木刀が自分に向かって投げられれば、驚いて隙が出来るから、次の行動に余裕が出来ますね。」
藤田五郎は包みと傘を持ちながら、敬一に普通に話し出す。
「刀が二本あれば、一本を投げるという行動が考えられる。覚えておくと役に立つかも知れない。」
敬一は藤田五郎に笑顔で話し出す。
「はい!」
藤田五郎は包みと傘を持ちながら、敬一を普通の表情で見た。
敬一は空を見ると、藤田五郎に笑顔で話し出す。
「雨が止んで、薄っすらとですが、月と星が見えます! 綺麗ですね!」
藤田五郎は包みと傘を持ちながら、敬一に普通の表情で頷いた。
敬一は藤田五郎を見ると、笑顔で話し出す。
「斉藤さんに稽古を就けてもらったり、斉藤さんと一緒に月や星が見える空の下を歩いたり、いろいろな経験が出来て嬉しいです!」
藤田五郎は包みと傘を持ちながら、敬一を普通の表情で見た。
敬一は藤田五郎を嬉しそうに見た。
それから少し後の事。
ここは、東京の町。
敬一と母親の美鈴の住む家。
玄関。
敬一は笑顔で帰ってきた。
藤田五郎は包みと傘を持ちながら、普通の表情で訪れた。
美鈴は藤田五郎と敬一の前に心配そうに現れた。
美鈴は敬一を僅かに驚いた様子で見た。
敬一は美鈴を僅かに困惑した様子で見た。
藤田五郎は包みと傘を持ちながら、美鈴に普通の表情で軽く礼をした。
美鈴は藤田五郎を見ると、微笑んで話し出す。
「お久しぶりです。敬一の付き添いありがとうございます。家に上がって休んでください。」
藤田五郎は傘と包みを持ちながら、美鈴に普通の表情で頷いた。
それから僅かに後の事。
ここは、食卓が在る部屋。
藤田五郎、美鈴、敬一は、食卓を囲んで座っている。
食卓の上には、食事の一部が載っている。
藤田五郎は美鈴に普通に話し出す。
「敬一は俺が本格的な剣道を就けている。今日は、俺の不注意のために、総司と美鈴さんの大切な息子の敬一に、稽古中に怪我をさせてしまった。本当に申し訳ないと思っている。」
敬一は美鈴に慌てた様子で話し出す。
「お母さん! 僕はたいした怪我でないから大丈夫だよ!」
美鈴は敬一に心配そうに話し出す。
「怪我の様子を見せて。」
敬一は美鈴に心配そうに頷いた。
美鈴は敬一の怪我の様子を心配そうに見た。
藤田五郎は敬一と美鈴を普通の表情で見た。
美鈴は藤田五郎を心配そうに見た。
藤田五郎は美鈴を普通の表情で軽く礼をした。
美鈴は藤田五郎に微笑んで話し出す。
「名前も変わりましたが、雰囲気も変わりましたね。今も昔も斉藤さんが謝る姿を見ると、とても不思議な感じがします。」
藤田五郎は美鈴に普通に話し出す。
「敬一は総司と美鈴さんの大切な息子だ。俺と居る時にもしもの出来事が起きたら、総司と美鈴さんに申し訳がないし申し開きも出来ない。今回は俺の不注意のために敬一が怪我をした。俺は出来る限りの事をしたい。遠慮なく言ってくれ。」
敬一は美鈴に心配そうに話し出す。
「お母さん! 斉藤さんは悪くないよ! 斉藤さんの家族も良い人だよ! 僕のために剣道を教えてくれるし、お菓子を何度も用意してくれるんだよ! 迷惑を掛けているのは僕だよ! 斉藤さんを怒らないで!」
美鈴は敬一を微笑んで見た。
敬一は美鈴を心配そうに見た。
美鈴は藤田五郎を見ると、微笑んで話し出す。
「剣術関係の稽古では、注意をしていても怪我をする時があると聞きました。斉藤さんが敬一のために、細心の注意を払ってくださるのが伝わってきます。これ以上は謝らないでください。」
藤田五郎は美鈴に普通に話し出す。
「当分は怪我の手当を続ける必要はあるが、無理をしなければ医者に再び診てもらわなくても良いそうだ。もし医者に再び診てもらう時は、俺の方で治療費などの面倒を見る。遠慮なく言ってくれ。」
美鈴は藤田五郎に微笑んで話し出す。
「お気遣いありがとうございます。もしもの時は、お言葉に甘えさせて頂きます。」
藤田五郎は美鈴に普通の表情で頷いた。
美鈴は藤田五郎に微笑んで話し出す。
「食事の支度はほとんど出来ています。よろしければ一緒に食事をしていきませんか?」
藤田五郎は美鈴に普通に話し出す。
「敬一は疲れていると思う。俺が長居をすると落ち着かないと思う。そろそろ失礼する。」
美鈴は藤田五郎を微笑んで見た。
敬一は藤田五郎と美鈴を微笑んで見た。
それから暫く後の事。
ここは、藤田五郎の家。
藤田五郎の部屋の前に在る縁。
藤田五郎は立ち止まると、庭を普通の表情で見た。
庭には季節はずれの桜が満開になって咲いている。
藤田五郎は障子を開けると、普通の表情で部屋の中へと入った。
ここは、藤田五郎の部屋の中。
藤田五郎は障子を少し開けたまま、普通の表情で横を見た。
沖田総司は藤田五郎を微笑んで見ている。
藤田五郎は沖田総司に普通に話し出す。
「稽古中に敬一に怪我をさせてしまった。申し訳ない。」
沖田総司は藤田五郎に微笑んで話し出す。
「怪我と言っても、大怪我ではありません。最新の注意を払っていても、稽古中に木刀が折れる時があります。斉藤さんの不注意ではなく、偶然の重なった中で起きた怪我です。私にまで謝らないでください。」
藤田五郎は沖田総司に普通に話し出す。
「敬一は総司と美鈴さんの大切な息子だ。敬一を見ていると、美鈴さんが大事に育てているのが良く分かる。だからこそ、俺が一緒に居る時に敬一に何か起きれば、俺は総司と美鈴さんに謝らなければいけない。」
沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。
「今回の稽古では木刀を相手に向かって投げたのですね。さすが斉藤さんです。」
藤田五郎は沖田総司に普通に話し出す。
「二本の刀を持っていれば、普通は二刀流と思う。今回の稽古では、二刀流以外の戦い方があると教えたかった。敬一は驚きながらも理解した。やはり他の者達とは違う。」
沖田総司は斉藤一に笑顔で話し出す。
「斉藤さんと敬一の剣の稽古を見ていると、敬一の成長が分かって楽しいです。斉藤さんの敬一に稽古を就けている様子を見るのも楽しいです。」
藤田五郎は沖田総司を普通の表情で見た。
沖田総司は藤田五郎に真剣な表情で話し出す。
「一番頼りになり一番信頼できる人は、斉藤さんです。同時に私には斉藤さんしか頼める人がいません。我がままな頼みですが、敬一と鈴をよろしくお願いします。」
藤田五郎は沖田総司に普通の表情で頷いた。
沖田総司は藤田五郎に微笑んで話し出す。
「そろそろ時間のようです。また呼んでください。」
藤田五郎は沖田総司に普通の表情で頷いた。
沖田総司は微笑みながら、藤田五郎の元から静かに居なくなった。
藤田五郎は障子の開いている所から、庭を普通の表情で見た。
桜の姿は元に戻っている。
藤田五郎は普通に障子を閉めた。
それから何日か後の事。
ここは、東京の町。
雨が静かに降っている。
ここは、敬一と美鈴の住む家。
食卓の在る部屋。
美鈴は微笑んで縫い物をしている。
敬一は美鈴に傍に心配そうに来た。
美鈴は縫い物を止めると、敬一を不思議そうに見た。
敬一は美鈴に不安そうに話し出す。
「お母さん。斉藤さんの家に出掛けても良い?」
美鈴は敬一に心配そうに話し出す。
「怪我が治っていないのに剣道の稽古をするの?」
敬一は美鈴に微笑んで話し出す。
「剣道の稽古中に怪我をしてから、斉藤さんの家に一度も出掛けていないよね。斉藤さんか時尾さんに会って、怪我の様子を見せたいんだ。」
美鈴は敬一を心配そうに見た。
敬一は美鈴に心配そうに話し出す。
「お母さんに剣道の稽古について話しをしなかったのは、僕の判断だよ。稽古中に怪我をしたのは、僕のせいだよ。斉藤さんは悪くないよ。」
美鈴は敬一に心配そうに話し出す。
「今日は雨が降っているわ。出掛けるのは雨の降っていない日にしなさい。」
敬一は美鈴に微笑んで話し出す。
「分かった。雨の降っていない日に出掛けるね。」
美鈴は敬一に心配そうに話し出す。
「敬一。無茶はしないですね。斉藤さんの家で我がままを言わないようにね。」
敬一は美鈴に微笑んで頷いた。
美鈴は敬一を安心した表情で見た。
その翌日の事。
ここは、東京の町。
灰色の空だが、雨の降る様子はない。
ここは、藤田五郎の家。
玄関。
敬一は微笑んで訪れた。
時尾は敬一の前に微笑んで現れた。
勉は敬一の前に嬉しそうに来た。
時尾は敬一に微笑んで話し出す。
「こんにちは。怪我は辛くないの?」
敬一は時尾に微笑んで話し出す。
「こんにちは。怪我が酷くなったり辛くなったりしないように、雨の降らない日に出掛けてきました。」
勉は敬一に笑顔で話し出す。
「おにいちゃん。げんき。」
敬一は勉に微笑んで話し出す。
「勉君。心配してくれてありがとう。」
勉は敬一に笑顔で話し出す。
「おにいちゃん。げんき。あそぶ。まつ。」
敬一は勉に微笑んで話し出す。
「勉君。僕の怪我が治ったら、たくさん遊ぼうね。」
勉は敬一に嬉しそうに頷いた。
敬一は勉を微笑んで見た。
時尾は敬一に微笑んで話し出す。
「藤田は部屋に居ます。藤田も心配しているの。遠慮せずに部屋に行ってね。」
敬一は時尾に微笑んで話し出す。
「はい。」
時尾は敬一を微笑んで見た。
それから少し後の事。
ここは、藤田五郎の部屋。
藤田五郎と敬一は、一緒に居る。
藤田五郎の前にはお茶が、敬一の前にはお茶とお菓子が置いてある。
敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。
「斉藤さんに怪我の様子を見せに来ました。」
藤田五郎は敬一の怪我の様子を普通の表情で見た。
敬一は藤田五郎に申し訳なさそうに話し出す。
「無理はしていないのですが、怪我が治るまでには少し時間が掛かるようです。」
藤田五郎は敬一を見ると、普通に話し出す。
「無理をすると、怪我の治りが遅くなるし、後々にまで影響が残る時がある。焦らず無理をしなければ怪我は治る。焦らずに養生しろ。」
敬一は藤田五郎に心配そうに話し出す。
「斉藤さん。剣道の稽古は前回で終わりになるのでしょうか?」
藤田五郎は敬一に普通に話し出す。
「美鈴さんが敬一に何か言ったのか?」
敬一は藤田五郎に心配そうに話し出す。
「お母さんは、僕に稽古を辞めなさいとも続けなさいとも言いません。」
藤田五郎は敬一に普通に話し出す。
「敬一はどのようにしたいんだ?」
敬一は藤田五郎に真剣な表情で話し出す。
「僕は稽古を辞めたくないです。斉藤さんに稽古を就けて欲しいです。」
藤田五郎は敬一に普通に話し出す。
「敬一は美鈴さんに大切な話しをしていなかった。敬一は美鈴さんに対して、申し訳ないという思いと、稽古の関する思いも伝えなければならない。美鈴さんが稽古を続けるなと言ったら、敬一が美鈴さんを説得しろ。結論が出るまでに時間が掛かった場合は、少なくとも怪我が治るまでは訪ねてくるな。俺は結論が出るまでは敬一に会わない。」
敬一は藤田五郎に真剣な表情で頷いた。
藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。
敬一は、沖田総司の刀と藤田五郎が斉藤一と名乗っていた時の刀が仕舞ってある所を、寂しそうに見た。
藤田五郎は敬一に普通に話し出す。
「刀を見たいのか?」
敬一は藤田五郎を見ると、微笑んで首を横に振った。
藤田五郎は敬一に普通に話し出す。
「お茶が冷める。早く飲め。忘れずに菓子を食べろ。」
敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。
「はい。」
藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。
敬一はお菓子を美味しそうに食べ始めた。
藤田五郎は敬一を見ながら、普通の表情でお茶を飲み始めた。
それから少し後の事。
ここは、玄関。
藤田五郎、時尾、敬一は、一緒に居る。
敬一は藤田五郎と時尾に微笑んで話し出す。
「稽古が続けられるように、お母さんを説得します。」
藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。
時尾は敬一を微笑んで見た。
敬一は藤田五郎と時尾に微笑んで話し出す。
「今日もお気遣いありがとうございました。」
時尾は敬一に心配そうに話し出す。
「藤田が付き添わなくても大丈夫なの?」
敬一は時尾に微笑んで話し出す。
「一人で出掛けてきました。怪我は辛くありません。一人で帰ります。」
時尾は敬一に微笑んで話し出す。
「気を付けて帰ってね。」
敬一は時尾に微笑んで話し出する
「はい。」
時尾は敬一を微笑んで見た。
藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。
敬一は微笑みながら帰っていった。
時尾は藤田五郎に心配そうに話し出す。
「敬一君の稽古について、美鈴さんはどのように話しているのですか?」
藤田五郎は時尾に普通に話し出す。
「美鈴さんに会った時には、敬一が怪我をしていたから、稽古を続けるかなどの話しをする余裕がなかった。後日に届いた手紙には、俺と時尾に任せると書いてあった。」
時尾は藤田五郎に安心した様子で話し出す。
「敬一君は剣道の稽古は辞めずに続けられるのですね。」
藤田五郎は時尾に普通に話し出す。
「美鈴さんは敬一が真剣に話せば許すと思う。敬一には美鈴さんの手紙が届いた話しをせずに、一人で説得しろと言った。俺は敬一が美鈴さんを説得するので会わないと言った。説得が長引いた場合は、少なくとも怪我が治るまでは来ないように言った。敬一の性格ならば、説得をするまで訪ねてこないと思う。」
時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。
「敬一君が自分の想いを美鈴さんに上手に伝えられると良いですね。」
藤田五郎は時尾に普通の表情で頷いた。
時尾に藤田五郎を微笑んで見た。
それから暫く後の事。
ここは、敬一と美鈴の住む家。
食卓の在る部屋。
敬一と美鈴は、一緒に居る。
敬一は美鈴に真剣な表情で話し出す。
「斉藤さんから本格的な剣道の稽古を就けてもらっていたのを黙っていたのは、お母さんに心配を掛けたくなかったからなんだ。僕が怪我をしてからのみんなを見ていて、僕の判断が間違っていると分かった。お母さんに悪いと思っている。僕は斉藤さんにこれからも稽古を就けてもらいたい。僕の我がままを許して欲しいんだ。」
美鈴は敬一に真剣な表情で話し出す。
「敬一は、斉藤さんから本格的な稽古を就けてもらっていたのを隠していたの。お母さんは、敬一が本格的な稽古を就けてもらっているとは思わなかったの。斉藤さんが道具の用意や管理までしていると思わなかったの。お母さんは、斉藤さんやご家族の方にお礼が伝えられない状態が続いていたの。お母さんは敬一が怪我をしてから詳しい内容を知ったの。敬一も一人で過ごす時間が増えてきているから、お母さんに全てを伝えるのは無理だし、隠し事をしなければならない時があると思うの。今回は敬一が黙っていたから、斉藤さんにも時尾さんにも迷惑を掛けたの。大事な出来事は隠さずに話しをしてね。」
敬一は美鈴に真剣な表情で話し出す。
「分かった。約束する。」
美鈴は敬一に微笑んで話し出す。
「稽古については、斉藤さんと敬一に任せるわ。稽古を続けるにしても辞めるにしても、挨拶をしっかりとしてね。斉藤さんやご家族に迷惑を掛けないように気を付けてね。」
敬一は美鈴に嬉しそうに話し出す。
「お母さんありがとう!」
美鈴は敬一を微笑んで見た。
敬一は美鈴に嬉しそうに抱き付いた。
美鈴は敬一を微笑んで受け止めた。
* * * * * *
ここからは後書きになります。
この物語は既に掲載している物語の改訂版です。
改訂前の展開や雰囲気を出来るだけ残しながら改訂しました。
改訂前の物語を掲載するのは止めました。
以上の点、ご了承願います。
ここからは改訂前の後書きを加筆訂正しながら書いていきます。
今回の物語の中で、藤田五郎さんが敬一君に木刀を投げる場面があります。
一本しか刀を持っていない場合は、投げて刀が無くなると戦えなくなるため、無しの行動ですが、二本の刀を持っている場合は、一本(短い方の刀か脇差です。そうしないと戦えなくなります。)を投げて相手を驚かせる事があるそうです。
今回の物語では、木刀が折れた場面が登場します。
藤田五郎さんの責任というよりは不可抗力だと思ってください。
木刀の管理や手入れをしっかりと行っていても、練習の内容で折れる事があるそうです。
稽古の内容が激しいと木刀が折れる事があるために、竹刀が作られたという話しがあるそうです。
竹刀は新撰組の時代よりかなり以前からあるそうです。
「入梅(にゅうばい)」は、雑節の一つです。
六月十一日前後の頃になります。
梅雨の季節に入る日とされていますが、梅雨入りの時期は地域や年によって異なるために実際の梅雨とは関係がないそうです。
旧暦では梅雨の入りを芒種の後の最初の壬の日、梅雨明けを小暑の後の最初の壬の日としていたそうです。
「入梅」の語源は、梅の実が熟す頃に雨期に入る事からきているそうです。
楽しんで頂けると嬉しいです。
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