このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
新撰組異聞外伝 〜 半夏生の咲く頃 〜
〜 第三版 〜
今は夏。
ここは、江戸。
暑さを感じる日が増えてきた。
梅雨の名残なのか、はっきりとしない空模様の日が多い。
今日は、灰色と青色が混ざった空が覆っている。
ここは、町中。
山口一は普通に歩いている。
山口一の兄の山口廣明が走ってきた。
山口一は立ち止まると、山口廣明を普通の表情で見た。
山口一は山口廣明を普通の表情で見た。
山口廣明は山口一に困惑して話し出す。
「なぜ俺を待たずに先に行くんだ?」
山口一は山口廣明に普通に話し出す。
「兄さんは俺に迷わずに追い付くから、先に行った。」
山口廣明は山口一を苦笑して見た。
山口一は山口廣明を普通の表情で見た。
山口廣明は山口一を苦笑して見ている。
山口一は普通に歩き出した。
山口廣明は苦笑して歩き出した。
山口一は山口廣明を普通の表情で見た。
山口廣明は山口一を微笑んで見た。
山口一は前を向くと、普通の表情で歩いた。
山口廣明は前を向くと、微笑んで歩いた。
同じ頃。
ここは、多摩。
試衛館。
近藤勇の部屋。
沖田総司は部屋の中に微笑んで入った。
近藤勇は沖田総司に普通に話し出す。
「総司。出稽古に行って欲しい。」
沖田総司は近藤勇に不思議な様子で話し出す。
「私が出稽古に行くのですか?」
近藤勇は沖田総司に普通の表情で頷いた。
沖田総司は近藤勇に普通に話し出す。
「分かりました。」
近藤勇は沖田総司に普通に話し出す。
「今回の稽古には、子供が参加する。子供には厳しい稽古を控えてくれ。」
沖田総司は近藤勇に不思議な様子で話し出す。
「私は厳しい稽古を就けていません。私の就ける稽古が厳しいと感じるのは、精進していないからです。」
近藤勇は沖田総司を困惑して見た。
沖田総司は近藤勇を微笑んで見た。
近藤勇は沖田総司に困惑して話し出す。
「総司。考え直してくれ。」
沖田総司は近藤勇に微笑んで話し出す。
「考え直すつもりはありません。普段通りに稽古を就けます。」
近藤勇は沖田総司を諦めた様子で見た。
沖田総司は近藤勇を微笑んで見た。
近藤勇は沖田総司を見ながら、諦めた様子で軽く息をはいた。
沖田総司は近藤勇に微笑んで話し出す。
「近藤さん。失礼します。」
近藤勇は沖田総司に諦めた様子で頷いた。
沖田総司は部屋を微笑んで出て行った。
数日後の事。
ここは、江戸。
雨の降る様子は無いが、一日の間に曇りと晴れを幾度も繰り返している。
はっきりとしない空模様となっている。
ここは、町中。
山口一は普通に歩いている。
山口廣明が走ってきた。
山口一は立ち止ると、山口廣明を普通の表情で見た。
山口一は山口廣明を普通の表情で見た。
山口廣明は山口一に苦笑して話し出す。
「何度も話しているが、一人で先に行かないでくれ。」
山口一は山口廣明に普通に話し出す。
「兄さんは必ず追い付く。兄さんは待たなくても大丈夫だ。」
山口廣明は山口一に苦笑して話し出す。
「今回は、俺が一の代わりに話す間に居なくなっただろ。次回からは、一の代わりに話さないぞ。」
山口一は山口廣明に普通に話し出す。
「俺が兄さんより先に居なくなれば、兄さんが代わりに話す状況になる。結果として、今までと同じ行動が出来る。」
山口廣明は山口一を苦笑して見た。
山口一は山口廣明を普通の表情で見た。
山口廣明と山口一の元に、竹刀で打ち合う音が聞こえた。
山口廣明は竹刀で打ち合う音が聞こえる方向を微笑んで見た。
山口一は竹刀で打ち合う音が聞こえる方向を普通の表情で見た。
道場が山口廣明と山口一の近くに在る。
山口廣明は道場を普通の表情で見た。
山口一は道場を普通の表情で見た。
道場から、若い男性の大きな声が聞こえる。
「なぜ稽古をしない!」
「稽古は終わっていないぞ!」
「稽古をしているつもりなのか?!」
「休憩には早いぞ!」
「謝る暇があるならば、素振りをしろ!」
「逃げるな!」
「逃げていないのなら、私に掛かって来い!」
「今の動きは遅い! 直ぐに斬られるぞ!」
「逃げるなと言っただろ!」
山口廣明は山口一を見ると、山口一に微笑んで話し出す。
「若い塾頭だね。」
山口一は山口廣明を見ると、普通の表情で頷いた。
道場から、子供の泣き声が聞こえた。
山口廣明は山口一を苦笑して見た。
山口一は道場を普通の表情で見た。
山口廣明は道場を不思議な様子で見た。
道場から、若い男性の大きな声と子供の泣き声が混じって聞こえる。
「今回の稽古の内容で泣くな!」
「私は子供だとしても稽古に手加減をしない! 私の話を忘れるな!」
山口廣明は山口一を見ると、山口一に苦笑して話し出す。
「話す内容が少しずつ怖くなっている。若さのためかな? 性格のためかな?」
山口一は山口廣明を見ると、山口廣明に普通に話し出す。
「若さと性格の関係で、厳しい稽古を就けていると思う。」
山口廣明は山口一に微笑んで話し出す。
「さすが一。」
山口一は山口廣明を普通の表情で見た。
山口廣明は山口一に微笑んで話し出す。
「一は別な道場に通い始めているな。」
山口一は山口廣明に普通の表情で頷いた。
山口廣明は山口一に微笑んで話し出す。
「一が通った道場の塾頭の中で、一は道場を変えずに通い続ければ免許皆伝を取得できると話す人物、一が早く道場を辞めて残念だと話す人物、が居る。」
山口一は山口廣明に普通に話し出す。
「俺は免許皆伝の取得を目的に稽古を受けていない。俺にとって必要な内容を覚えたから、道場を辞めた。」
山口廣明は山口一に微笑んで話し出す。
「一は幾つの流派を覚える予定だ?」
山口一は山口廣明に普通に話し出す。
「流派毎に特徴がある。全ての流派を覚えるのが理想だが、現実的に無理がある。覚えられる範囲の流派を覚えたい。」
山口廣明は山口一に微笑んで話し出す。
「一は柔術の道場にも通っているな。」
山口一は山口廣明に普通の表情で頷いた。
山口廣明は山口一に微笑んで話し出す。
「一は槍と鎖鎌も覚える勢いがある。」
山口一は山口廣明を普通の表情で見た。
山口廣明は山口一を微笑んで見た。
道場から、少年の大きな声が聞こえた。
「沖田先生! 申し訳ありません!」
道場からは、若い男性の大きな声が聞こえる。
「謝る時間は、稽古のために使え!」
「しっかりと稽古をしろ!」
「逃げるな!」
山口廣明は山口一を驚いた表情で見た。
山口一は道場を普通の表情で見た。
山口廣明は道場を驚いた表情で見た。
山口一は道場を普通の表情で見ている。
山口廣明は山口一を見ると、山口一に微笑んで話し出す。
「まさか。」
山口一は山口廣明を見ると、山口廣明に普通に話し出す。
「兄さんの勘は当たっていると思う。」
山口廣明は山口一に微笑んで話し出そうとした。
道場から、一人の若い武士が出てきた。
山口廣明は話し出すのを止めると、若い武士を不思議な様子で見た。
山口一は若い武士を普通の表情で見た。
若い武士は山口廣明と山口一を見ると、山口廣明と山口一に懐かしく話し出す。
「久しぶり。」
山口廣明は若い武士に微笑んで話し出す。
「お久しぶりです。」
山口一は若い武士に普通の表情で軽く礼をした。
少し後の事。
ここは、道場の傍。
道場から大きな声が聞こえた。
「今日の稽古は終わりだ!」
「沖田先生! 今日はありがとうございました!」
「沖田先生! とても勉強になりました! ありがとうございます!」
ここは、道場の中。
幾人もの塾生が居る。
二人の若い武士の姿が見える。
二人の若い武士は普通に話し出す。
「道場の外に一時的に出た時に、以前に同じ道場に通った兄弟と会った。驚いたよ。」
「兄弟は強いのですか?」
「弟は、物凄く強くて凄みがある。弟と幾度も手合わせしたが、一度も勝てなかった。どのような稽古をしたら強さと凄みが得られるのか知りたいと思った。」
「弟は相当に強いのですね。今は、免許皆伝を取得して塾生達に稽古を就ける、免許皆伝を取得して別な道場で稽古を就けるために止めた、などの状況で過ごしていますよね。」
「免許皆伝の取得前に道場を辞めたんだ。今は別な道場に通っている。」
「もったいないですね。」
「本当にもったいない。」
「兄弟の名前を教えてもらえますか?」
「兄の名前は、山口廣明。弟の名前は、山口一。」
二人の若い武士は、後ろから勢い良く肩を掴まれた。
二人の若い武士は、後ろを驚いて見た。
沖田総司が二人の若い武士の肩を真剣な表情で掴んでいる。
二人の若い武士は沖田総司を驚いた表情で見た。
沖田総司は二人の若い武士の肩を掴んで、二人の若い武士に真剣な表情で話し出す。
「二人の名前を教えてくれ!」
二人の若い武士は沖田総司を驚いた表情で見ている。
沖田総司は二人の若い武士の肩を掴んで、二人の若い武士に真剣な表情で話し出す。
「早く二人の名前を教えてくれ!」
二人の若い武士の内の一人が、沖田総司に驚いた表情で話し出す。
「兄の名前は、山口廣明。弟の名前は、山口一。」
沖田総司は二人の若い武士の肩を掴んで、二人の若い武士に真剣な表情で話し出す。
「近くで二人に会ったのか?!」
二人の若い武士は沖田総司に驚いた表情で頷いた。
沖田総司は二人の若い武士の肩を放した。
二人の若い武士は沖田総司を驚いて見た。
沖田総司は慌てて居なくなった。
僅かに後の事。
ここは、道場の外。
沖田総司は慌てて出てきた。
沖田総司は辺りを落ち着かない様子で見た。
山口廣明らしい姿も、山口一らしい姿も、見付からない。
沖田総司は辺りを見ながら、落ち着かない様子で呟いた。
「山口君に兄がいる話は初めて聞いたけれど、剣の上手な山口一と表現できる人物は、山口君しか考えられない。」
沖田総司は辺りを落ち着かない様子で見た。
山口廣明らしい姿も、山口一らしい姿も、見付からない。
沖田総司は辺りを見ながら、寂しく呟いた。
「山口君が道場の傍に居たのはかなり前だよね。山口君は道場の近くに居ないよね。」
沖田総司は辺りを見ながら、寂しく軽く息をはいた。
沖田総司は道場の中に寂しく入っていった。
僅かに後の事。
ここは、町中。
山口廣明は普通に歩いている。
山口一も普通に歩いている。
山口一は山口廣明に普通に話し出す。
「兄さん。天然理心流をどのように思う?」
山口廣明は山口一に考え込んで話し出す。
「人から聞いた話と子供の頃に稽古を僅かに見た様子の感想になるが、今までに稽古を受けた流派と雰囲気が違うと思う。」
山口一は山口廣明に普通の表情で頷いた。
山口廣明は山口一に微笑んで話し出す。
「天然理心流が気になるんだ。」
山口一は山口廣明を普通の表情で見た。
山口廣明は山口一に微笑んで話し出す。
「次は天然理心流の道場に通うのか?」
山口一は山口廣明を普通の表情で見ている。
山口廣明は山口一に考え込んで話し出す。
「天然理心流に、沖田という優秀な人物が居る話を聞いた。」
山口一は山口廣明を普通の表情で見ている。
山口廣明は山口一を何かを思い出した表情で見た。
山口一は山口廣明を普通の表情で見ている。
山口廣明は山口一に微笑んで話し出す。
「一は惣次郎君と何度か会った。一は惣次郎君が成長していく容姿と声を知っている。先程の道場から聞こえた沖田先生と呼ばれる人物が、惣次郎君なんだ。惣次郎君は若いのに出稽古を行える立場なんだ。凄いね。」
山口一は山口廣明に普通の表情で頷いた。
山口廣明は山口一に微笑んで話し出す。
「天然理心流には強い人達がたくさん集まっていると聞いた。強い人達と共に稽古を行うのは、一にとって良い経験になる。天然理心流の道場に通うのは良いと思う。」
山口一は山口廣明を普通の表情で見た。
山口廣明は山口一に微笑んで話し出す。
「次回に通う道場は、天然理心流の予定なんだ。」
山口一は山口廣明に普通に話し出す。
「今は他に目指す内容がある。目指す内容が終わった後に考える。」
山口廣明は山口一を不思議な様子で見た。
山口一は山口廣明を普通の表情で見た。
山口一の視線の先に、半夏生の白色の葉がたくさん生える場所が見えた。
半夏生の白色の葉が生える場所は、雪が積もったように染まっている。
山口廣明は半夏生を見ると、山口一に微笑んで話し出す。
「今は半夏生の葉が白色に染まる時期だから、半夏生の生える場所が雪の積もる様子に見える。」
山口一は山口廣明を見ると、普通の表情で頷いた。
山口廣明は山口一に微笑んで話し出す。
「当面は天然理心流の道場に通う考えがないんだ。もったいないな。一の目指す内容が知りたくなった。一。差し支えなければ教えてくれ。」
山口一が山口廣明に普通に話し出す。
「強くなる。」
山口廣明は山口一を不思議な様子で見た。
山口一は山口廣明を普通の表情で見た。
山口廣明は山口一を微笑んで見た。
半夏生の時期に、緑色から白色に変わる葉を持つ“半夏生”。
半夏生の時期が終わると、白色から緑色へと戻る葉を持つ“半夏生”。
或る夏の日に、江戸の町で不思議な出来事が起きた。
沖田総司と山口一の絆が、僅かだが更に強まった。
* * * * * *
ここからは後書きになります。
この物語は既に掲載している物語の再改訂版です。
改訂前の物語の展開や雰囲気を出来るだけ残して改訂しました。
改訂前の物語を掲載するのは止めました。
以上の点、ご了承願いします。
ここからは改訂前の後書きを加筆訂正して書きます。
この物語は、沖田総司さんが「指南免許」を取得したといわれる十九歳前後を想定して考えました。
沖田総司さんについてです。
沖田総司さんは十九歳前後で「天然理心流」の「指南免許(他の流派では、“免許皆伝”と呼ぶ事があります)」を取得します。
沖田総司さんは近藤勇さんの代わりなどを含めて、稽古や出稽古を行っていたそうです。
沖田総司さんの稽古は、手加減をしない、乱暴だった、怖かった、などと伝わっています。
しかし、京に居る時以降は、厳しい稽古ではなかった話も残っています。
年齢が上がるにつれて考えが変わったのか、状況の変化なのか、何かの出来事によって考えが変わったのか、詳しい事は分かりません。
斉藤一さんについてです。
斉藤一さんの剣の流派は「無外流」だそうです。
他には「津田一伝流」も習得したそうです。
他の流派も習得した説がありますが、「無外流」と「津田一伝流」は習得した可能性の高い流派のようです。
斉藤一さんの剣の流派は、「無外流」が主で、「津田一伝流」も習得している、となるようです。
柔術は、「関口流」を習得していたそうです。
斉藤一さんは、新撰組の当初頃から活動していたので、「天然理心流」も習得している可能性があります。
武芸関係についてです。
昔の流派は「総合武術」となっていた事が多いらしく、「剣術」の他にも、「柔術」、「棒術(槍)」、「鎖鎌」などいろいろとあったそうです。
流派ごとに得意分野があったそうです。
そのため、塾生達は、一つの流派を全て習得、流派の得意分野のみ習得、などのように、様々な学び方をしていたそうです。
沖田総司さん達が学んだ頃の「天然理心流」にも「柔術」と「剣術」があったそうです。
「指南免許」は、基本的には「天然理心流」の全てを習得した人が取得できるそうです。
「指南皆伝」を取得した沖田総司さんと近藤勇さんは、「柔術」が出来た事になります。
後々の事になりますが、「総合武術」だった流派が、「剣術」、「柔術」などと、分かれていったそうです。
植物の「半夏生(はんげしょう)」についてです。
「半夏生」の時期にだけ、葉の表面が真っ白になります。
「半夏生」の頃に花が咲くので「半夏生」と呼ぶそうです。
または、葉が半分白くなるから「半化粧」で「はんげしょう」とも呼ぶそうです。
この物語では、「半夏生」の頃に咲くので「半夏生」と呼んでいます。
季節の「半夏生(はんげしょう)」についてです。
現在の暦で七月二日前後になります。
「半夏(烏柄杓)」が生える頃だそうです。
「雑節の一つ」です。
元々は夏至から数えて十一日目の日だったそうです。
この日は天から毒気が降ると言われ、井戸にフタをして毒気を防ぎ、この日に採った野菜は食べてはいけないとされていたそうです。
楽しんで頂けると嬉しいです。
←前
目次
次→
このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |