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新撰組異聞外伝 〜 蟋蟀在戸 〜


〜 第三版 〜


ここは、東京。


陽の差す時も静かな時には澄んだ虫の声が響く。

夜になると澄んだ虫の声が更に綺麗に響く。


今は夜。


ここは、町中。


月の綺麗に輝いている。


澄んだ虫の声が綺麗に響いている。


ここは、沖田総司の息子の敬一と母親の美鈴の住む家。


縁。


敬一は座りながら、虫の声を普通の表情で聞いている。


美鈴は微笑んで来た。


美鈴は敬一の横に微笑んで静かに座った。


美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一。何を考えているの?」

敬一は美鈴に考えながら話し出す。

「斉藤さんについて考えているんだ。いろいろと考えたけど、分からない内容が多いんだ。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「斉藤さんに全て質問していなかったの?」

敬一は美鈴に考え込んで話し出す。

「時が経つに連れて、質問していない内容があると思うようになったんだ。」

美鈴は敬一を微笑んで見た。

敬一は美鈴に考え込んで話し出す。

「斉藤さんは、僕とお母さんと長く付き合いたいから、先に話したのかな? 斉藤さんが、僕とお母さんと長く付き合いたいのは、お父さんが僕の力とお母さんの力になって欲しいと頼んでいたせいかな?」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「斉藤さん本人に質問するように話していたわね。斉藤さん本人に質問しなさい。」

敬一は美鈴に不思議な様子で話し出す。

「お母さんは斉藤さんの関連で不思議に思う内容は無いの? 僕は、お父さんについて知らないし、斉藤さんについても知らないから、不思議に思うの?」

美鈴は敬一を心配な様子で見た。

敬一は庭を寂しく見た。


澄んだ虫の声は、敬一と美鈴を包むように響いている。


敬一は庭を見ながら、寂しく呟いた。

「お父さんに質問したら、お父さんは何を返事するのかな?」

美鈴は敬一を抱きしめると、敬一に悲しく話し出す。

「敬一。ごめんね。」

敬一は美鈴に心配して話し出す。

「お母さん。大丈夫?」

美鈴は敬一を悲しく抱きしめている。

敬一は美鈴に心配して話し出す。

「お母さん。分からない内容は、斉藤さんに質問するよ。心配しないで。」

美鈴は敬一を心配な様子で、ゆっくりと放した。

敬一は美鈴に心配して話し出す。

「お母さん。心配を掛けてごめんね。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「斉藤さんは、敬一が斉藤さんについて分からない内容があれば、幾度でも答えてくれると思うの。敬一。焦らずに理解しなさい。」

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「斉藤さんは強くて優しいね。斉藤さんはお父さんと一緒だね。」

美鈴は敬一に微笑んで頷いた。

敬一は美鈴を微笑んで見た。


澄んだ虫の声は、敬一と美鈴を包むように響いている。


数日後の事。


ここは、藤田五郎、妻の時尾、幼い息子の勉の住む家。


玄関。


敬一は元気良く訪れた。


時尾は微笑んで来た。


敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「こんにちは。」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「こんにちは。」

敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「斉藤さんは居ますか?」

時尾は敬一に申し訳なく話し出す。

「今は外出中なの。敬一君と約束をしているのに、外出してしまったのね。ごめんなさい。」

敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「今日は約束していません。直ぐに帰ります。」

時尾は敬一に申し訳なく話し出す。

「敬一君を直ぐに帰せないわ。お茶を用意するわ。家の中で少し休んで。」

敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「お気遣いありがとうございます。」

時尾は敬一を微笑んで見た。


敬一は家の中に微笑んで入っていった。

時尾も家の中に微笑んで入っていった。


暫く後の事。


ここは、藤田五郎の家。


玄関。


藤田五郎は普通に帰ってきた。


時尾は心配して来た。


藤田五郎は時尾を普通の表情で見た。

時尾は藤田五郎に心配して話し出す。

「五郎さんの外出中に、敬一君が訪ねてきました。敬一君は笑顔で話していましたが、今までの笑顔と少し違いました。気になったので、敬一君に家に上がって休むように話しました。敬一君は少し休んだ後に、時間がないと話して帰りました。敬一君の様子が気になります。」

藤田五郎は時尾に普通に話し出す。

「気を遣わせて悪かった。」

時尾は藤田五郎に微笑んで小さく首を横に振った。

藤田五郎は時尾に普通に話し出す。

「敬一の家に出掛ける。」

時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「気を付けてお出掛けください。」

藤田五郎は時尾に普通の表情で頷いた。


藤田五郎は家を普通に出て行った。


少し後の事。


ここは、敬一と美鈴の住む家。


辺りには澄んだ虫の声が響いている。


縁。


敬一は微笑んで座っている。

美鈴も微笑んで座っている。


澄んだ虫の声は、敬一と美鈴を包むように響いている。


玄関から誰かが訪ねる音が聞こえた。


美鈴は微笑んで静かに立ち上がった。


美鈴は微笑んで静かに居なくなった。


敬一は虫の声を微笑んで聞いた。


藤田五郎が普通の表情で静かに来た。


藤田五郎は敬一の横に普通の表情で静かに座った。


敬一は藤田五郎を不思議な様子で見た。

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「俺に逢いに来たのに、直ぐに帰ったらしいな。気になるから、敬一に逢いに来た。」

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。僕に斉藤さんの過去に起きた出来事を教えてくれた理由は何ですか?」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「敬一は俺の過去に名乗った名前を知っている。敬一が俺の過去に名乗った名前で起きた出来事を知った時に、敬一が動揺せずに対処できるように話した。」

敬一は藤田五郎に不思議な様子で話し出す。

「僕に話したら、斉藤さんに逢うのを止める、斉藤さんに酷い内容を話す、など考えなかったの?」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「敬一ならば大丈夫だと判断したから、敬一に俺の過去をたくさん話した。」

敬一は藤田五郎に真剣な表情で話し出す。

「僕を信じたの?」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「大切な内容になるほど、信じる人物のみにしか話さない。」

敬一は藤田五郎に真剣な表情で話し出す。

「お父さんと斉藤さんは、仲が良いですよね。僕がお父さんの息子だから信じたの?」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「理由の中に、俺と総司の付き合いは入らない。俺が敬一から感じた内容から判断して話した。」

敬一は藤田五郎に真剣な表情で話し出す。

「斉藤さんはお母さんも信じているの?」

藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。

敬一は庭を真剣な表情で見た。

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。


澄んだ虫の声は、藤田五郎と敬一を包むように響いている。


敬一は藤田五郎を見ると、藤田五郎に真剣な表情で話し出す。

「斉藤さんが新撰組を離れた時は、最初から騙すために、みんなと一緒に新撰組を離れたの?」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「俺の上役と俺の仲間は、最初から決まっていた。“騙すつもり”ではなく、“騙すため”に、倒すべき人物を倒すために、偽りの仲間達と共に新撰組を離れた。」

敬一は藤田五郎を真剣な表情で見た。

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「俺の上役と俺の仲間。倒すべき偽りの上役と倒すべき偽りの仲間。一方が亡くならなければ、終わらない状況だった。互いに危険な状況だった。」

敬一は藤田五郎に真剣な表情で話し出す。

「斉藤さんは、最初から全てを理解した上で、行動していたのですね。」

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。

敬一は藤田五郎に真剣な表情で話し出す。

「怖くなかったのですか?」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「京の町で活動を始めてからは、危険な日々が続いていた。京の町で活動を始めてからは、安全な日は少なかった。当時の気持ちは忘れた。」

敬一は藤田五郎に真剣な表情で話し出す。

「斉藤さん。斉藤さんを見込んだ人物を殺したの?」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「俺が殺した。」

敬一は藤田五郎を真剣な表情で話し出す。

「斉藤さんは斬っていないですよね。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「俺は斬っていないが、俺が殺した。」

敬一は藤田五郎を真剣な表情で見た。

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。


澄んだ虫の声が藤田五郎と敬一を包むように響いた。


敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。今日はありがとうございました。」

藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。

敬一は藤田五郎を微笑んで見た。

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「今後も気になる内容があれば、俺に遠慮せずに質問しろ。俺の答えられる範囲で答える。」

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「はい。」

藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。


藤田五郎と敬一の後ろから、美鈴の穏やかな声が聞こえた。

「斉藤さん。お酒の用意が出来ました。」


藤田五郎は後ろを普通の表情で見た。

敬一は藤田五郎を微笑んで見た。


美鈴は微笑んで居る。


藤田五郎は美鈴に普通の表情で頷いた。

敬一は藤田五郎と美鈴を微笑んで見た。


美鈴は家の中に微笑んで入っていった。


敬一は家の中に微笑んで入っていった。

藤田五郎は家の中に普通に入っていった。


少し後の事。


ここは、敬一と美鈴の住む家。


食卓。


食卓には、酒と肴が載っている。


藤田五郎は杯の酒を普通の表情で飲んでいる。

敬一は微笑んで居る。

美鈴も微笑んで居る。


藤田五郎は杯の酒を飲みながら、美鈴に普通に話し出す。

「手際が良いな。」

美鈴は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「敬一が斉藤さんの家に出掛けて遅くなる可能性のある日は、お酒と肴を用意しています。」

藤田五郎は杯の酒を飲みながら、美鈴に普通に話し出す。

「美鈴さんも敬一も、酒は飲めない。俺が酒を飲まずに帰ると、肴は食事に利用できるが、酒を使う方法に悩むだろ。俺のために無理するな。」

美鈴は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「斉藤さんがお酒を飲まない日は、総司さんが代わりに飲みます。総司さんはお酒を飲む時間を楽しんでいるので、斉藤さんがお酒を飲まない日は喜んでいると思います。」

藤田五郎は杯の酒を飲みながら、美鈴を普通の表情で見た。

美鈴は藤田五郎を微笑んで見た。

敬一は藤田五郎と美鈴を微笑んで見た。


少し後の事。


ここは、敬一と美鈴の住む家。


玄関。


藤田五郎は普通に居る。

敬一は微笑んで居る。

美鈴は微笑んで居る。


美鈴は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「斉藤さんと一緒に、幾重にも重なる澄んだ虫の声が聞けました。斉藤さんと一緒に、素敵な時間が楽しめました。ありがとうございました。」

藤田五郎は美鈴を普通の表情で見た。

美鈴は藤田五郎に恥ずかしく話し出す。

「変な表現でしたか?」

藤田五郎は美鈴に普通の表情で首を横に振った。

美鈴は藤田五郎を微笑んで見た。

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「再び話そう。」

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「はい。」

藤田五郎は敬一と美鈴に普通の表情で頷いた。

美鈴は藤田五郎に微笑んで軽く礼をした。

敬一も藤田五郎に微笑んで軽く礼をした。


藤田五郎は普通に居なくなった。


少し後の事。


ここは、藤田五郎の家。


玄関。


藤田五郎は普通に帰ってきた。


時尾は微笑んで来た。


藤田五郎は時尾に普通の表情で頷いた。

時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「お帰りなさい。敬一君は元気になったのですね。」

藤田五郎は時尾に普通に話し出す。

「一応だが、元気になった。敬一は成長の途中だ。敬一の考える内容が増える可能性は高い。」

時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「私も敬一君の様子を気にします。私が気付いた内容は、五郎さんに直ぐに伝えます。」

藤田五郎は時尾に普通に話し出す。

「時尾に関係は無いが、よろしく頼む。」

時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「敬一君と美鈴さんは、五郎さんにとって大切な友人のご家族です。展開が違っていれば、私と勉、敬一君と美鈴さん、逆の立場になる可能性がありました。逆の立場になった場合は、五郎さんにとって大切な友人と美鈴さんと敬一君が、私と勉を助けてくれたと思います。私にも関係があります。お互い様です。」

藤田五郎は時尾を普通の表情で見た。

時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「変な内容を話してしまいました。」

藤田五郎は時尾に普通の表情で首を横に振った。

時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「立ち話が続いています。気付きませんでした。すいません。」

藤田五郎は時尾に普通の表情で首を横に振った。

時尾は藤田五郎を微笑んで見た。


僅かに後の事。


ここは、藤田五郎の家。


藤田五郎の部屋の前に在る縁。


藤田五郎は普通に来た。


藤田五郎は庭を普通の表情で見た。


庭には季節はずれの桜が咲いている。


藤田五郎は横を普通の表情で横を見た。


沖田総司は藤田五郎を微笑んで見ている。


藤田五郎は庭の桜を見ると、沖田総司に普通に話し出す。

「敬一を悩ませてしまった。悪かった。」

沖田総司は藤田五郎に寂しい微笑みで話し出す。

「本来ならば、私から敬一に話す内容です。当時の状況は複雑に展開していました。鈴にも分からない内容が有ります。鈴は敬一の悩みに答えられず、気持ちの沈む時があると思います。斉藤さんは敬一を気遣いながら話してくれました。感謝と申し訳ない気持ち。両方を感じます。斉藤さん。謝らないでください。」

藤田五郎は沖田総司に普通に話し出す。

「総司が俺に迷惑を掛けない時は、任務との時と斬り合いの時だ。総司は、斬り合いの時は、本当に役に立つし本当に頼りになる。今回の礼は要らない。礼は別な機会にしろ。」

沖田総司は藤田五郎に苦笑して話し出す。

「斉藤さんが本当に役に立つし本当に頼りになると話しました。斉藤さんの話を喜んで受け取ります。」

藤田五郎は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は藤田五郎に微笑んで頷いた。

藤田五郎は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。戻る時間が近付いています。敬一と美鈴をいつも気に掛けて頂いてありがとうございます。時尾さんにも感謝しています。」

藤田五郎は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。失礼します。」

藤田五郎は沖田総司に普通の表情で頷いた。


沖田総司は微笑んで静かに居なくなった。


藤田五郎は庭を普通の表情で見た。


庭は元の姿に戻っている。


藤田五郎は部屋の中に普通に入っていった。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語は既に掲載している物語の再改訂版です。

改訂前の雰囲気や展開を出来るだけ残して改訂しました。

改訂前の物語を掲載するのは止めました。

以上、ご了承願いします。

ここからは改訂前の後書きを加筆訂正して書きます。

この物語は「新撰組異聞外伝 短編 寒露の頃」の後日談です。

少し時間が経っていますが、いろいろと考えて悩む敬一君です。

そのような中で、藤田五郎さんと敬一君は話します。

藤田五郎さん(当時は別な名前)は、新撰組を出た時の出来事、他の出来事についても、全くと表現できるほど話していないそうです。

そのため、藤田五郎さんの生き方について分からない事が多いです。

藤田五郎さんに関係する出来事は、時代を背景にした理由だけでなく、敬一君や美鈴さんにとって疑問が多い出来事だと考えました。

「蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり)」は、「寒露」の七十二候の末候の言葉です。

「蟋蟀が戸のあたりで鳴く」という意味です。

「きりぎりす」と読みますが、「蟋蟀(こおろぎ)」の漢字になっています。

「きりぎりす」は、「蟋蟀(こおろぎ)」の古名だそうです。

「きりぎりす」と読みますが「こおろぎ」を差していると思います。

この物語では「こおろぎ」を想像して読んでください。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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