このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

新撰組異聞外伝 〜 菊有黄花 〜


〜 第三版 〜


今は秋。


ここは、江戸。


菊の花などの秋の花が、次々に見頃を迎えている。


ここは、町中。


山口一は普通に歩いている。

山口一の姉の山口勝は、微笑んで歩いている。


山口勝は微笑んで止まった。

山口一は山口勝を見ると、普通に止まった。


菊の花が綺麗な姿で咲いている。


山口勝は菊の花を微笑んで見た。

山口一は山口勝と菊の花を普通の表情で見た。

山口勝は山口一を見ると、山口一に微笑んで話し出す。

「菊の花が綺麗に咲いているわね。」

山口一は山口勝を見ると、普通の表情で頷いた。

山口勝は山口一に微笑んで話し出す。

「短い言葉で良いから、言葉にして喜んでくれると嬉しいな。」

山口一は山口勝に普通に話し出す。

「綺麗だと思う。」

山口勝は山口一に微笑んで話し出す。

「私が一に最初に話した時に、綺麗だと返事をする方が、更に嬉しいな。」

山口一は山口勝に普通に話し出す。

「姉さんは俺に菊の花が綺麗に咲いていると話した。俺は姉さんの話に同意した。姉さんが俺に短い言葉で構わないから、言葉にして喜んで欲しいと話した。俺は姉さんに綺麗だと言葉にして話した。問題ないと思う。」

山口勝は山口一に呆れた様子で話し出す。

「私が一に菊の花が綺麗に咲いていると話した時に、一は頷いたわ。一の行動から、一が菊の花を綺麗だと思う気持ちは伝わったわ。でも、言葉にした返事が無いと心配になるの。」

山口一は山口勝を不思議な様子で見た。

山口勝は山口一に呆れた様子で話し出す。

「一に仲の良い人や好きな人が現れたら、相手は大変ね。」

山口一は山口勝に不思議な様子で話し出す。

「仲の良い人や好きな人が俺に話し掛けたら、今までどおり返事をする。」

山口勝は山口一に微笑んで話し出す。

「一に仲の良い人や好きな人が現れたら、一にとって、とても大切な人物になるわ。一。相手を大切にしてね。」

山口一は山口勝に普通の表情で頷いた。

山口勝は山口一を微笑んで見た。


山口一は普通に歩き出そうとした。


山口勝は山口一に慌てて話し出す。

「一! 待って! 菊の花を見たいの!」


山口一は歩き出すのを止めると、山口勝を普通の表情で見た。


山口勝は山口一を苦笑して見た。

山口一は山口勝に普通に話し出す。

「姉さん。話しは終わっただろ。姉さんも家に帰るだろ。」

山口勝は山口一に苦笑して話し出す。

「私の話しは終わったけれど、菊の花を見るのは続いているわ。」

山口一は山口勝に普通に話し出す。

「姉さんは俺を必要な時は呼ぶ。姉さんは俺を呼んだ。俺は姉さんの傍に居る。姉さん。菊の花を思う存分に見てくれ。」

山口勝は山口一に苦笑して話し出す。

「一の話す内容は間違っていないけれど、一の言動によって、一に気を遣う人物がいると思うの。気を付けてね。」

山口一は山口勝に普通に話し出す。

「相手の性格や状況に合わせて言動を変えるのは当然だろ。」

山口勝は山口一に感心して話し出す。

「一が話すと、当然に思えて、簡単に思えるわ。」

山口一は山口勝を不思議な表情で見た。

山口勝は山口一を微笑んで見た。

山口一は山口勝を不思議な表情で見ている。

山口勝は山口一に微笑んで話し出す。

「私が家を出ると、一と話す機会が減るわ。良い機会だから、菊の花について教えるわ。」

山口一は山口勝を不思議な表情で見た。

山口勝は山口一に微笑んで話し出す。

「今の時点では、私が家を出る話は無いみたい。でも、来年の菊の花の咲く頃に、私が家に居るか分からないわ。たくさんの物事を知っていると、役に立つわ。私が菊の花について知る内容を、出来るだけ教えるわ。」

山口一は山口勝に普通の表情で話し出す。

「教えてくれ。」

山口勝は山口一を微笑んで見た。

山口一は山口勝に普通の表情で見た。


幾つかの季節が過ぎた。


ここは、江戸。


山口勝は既に嫁いだため、山口家には居ない。

山口一、兄の山口廣明、父親の山口祐助、母親の山口ますの四人で過ごしている。


秋になった。


ここは、江戸。


山口一、山口廣明、山口祐助、山口ます、の家。


山口祐助の部屋。


山口一は部屋の中に普通に入った。


山口祐助は山口一を普通の表情で見た。

山口一は山口祐助に普通の表情で軽く礼をした。

山口祐助は山口一に普通に話し出す。

「実は、一に私の任務を継いで欲しいと考えている。」

山口一は山口祐助に普通に話し出す。

「断ります。」

山口祐助は山口一に普通に話し出す。

「断る理由を教えてくれ。」

山口一は山口祐助に普通に話し出す。

「長男の兄さんに頼んでください。俺は強くなりたいです。父さんの任務を継いだら、強くなっても意味が無くなります。」

山口祐助は山口一に普通に話し出す。

「廣明は長男だ。しかし、剣の技術、体力、知識、性格、などを全て含めて考えると、一が適任だと考えた。」

山口一は山口祐助に普通に話し出す。

「父さんが何を理由にしても、俺は断ります。」

山口祐助は山口一に普通に話し出す。

「考え直して欲しい。」

山口一は山口祐助に普通に話し出す。

「考え直しても、考えは変わりません。」

山口祐助は山口一を僅かに困惑した表情で見た。

山口一は山口祐助に普通の表情で軽く礼をした。

山口祐助は山口一を僅かに困惑して見ている。


山口一は部屋を普通に出て行った。


僅かに後の事。


ここは、山口一、山口廣明、山口祐助、山口ます、の家。


山口祐助の部屋の傍に在る縁。


山口一は部屋から普通に出てきた。


山口廣明は普通に来た。


山口一は山口廣明を普通の表情で見た。

山口廣明も山口一を普通の表情で見た。


山口一は普通に歩き出した。


山口廣明は山口一を不思議な表情で見た。


山口一の姿は見えなくなった。


山口廣明は部屋の中に普通に入って行った。


僅かに後の事。


ここは、山口一、山口廣明、山口祐助、山口ます、の家。


山口祐助の部屋。


山口祐助は困惑して居る。

山口廣明は普通に居る。


山口祐助は山口廣明に困惑して話し出す。

「一が納得する様子が無い。困った。」

山口廣明は山口祐助に普通に話し出す。

「一の性格ならば、直ぐに納得しないと思います。」

山口祐助は山口廣明に困惑して話し出す。

「廣明。私の任務を継いでくれ。」

山口廣明は山口廣明に普通に話し出す。

「私では、父さんの任務は勤まりません。一を説得してください。」

山口祐助は山口廣明を困惑して見た。

山口廣明は山口祐助に普通の表情で軽く礼をした。

山口祐助は山口廣明を困惑して見ている。


山口廣明は部屋を普通に出て行った。


山口祐助は困惑した様子で、軽くため息を付いた。


幾日か後の事。


ここは、江戸。


町中。


山口一は普通に歩いている。


山口一の視線の先に、菊の花が綺麗に咲く姿が見えた。


山口一は菊の花の傍で立ち止まった。


山口一は菊の花を普通の表情で見た。


同じ頃。


ここは、多摩。


試衛館。


庭。


塾生達の稽古をする音が聞こえる。


試衛館の本日の稽古の指南役は、沖田総司。


沖田総司の声と塾生達の声が聞こえる。

「たるんでいるぞ!」

「すいません!」

「今、逃げようとしたな!」

「逃げようとしていません!」

「真面目に稽古しろ!」

「真面目に稽古しています!」

「口答えするな!」

「申し訳ありません!」

「次! 何をしている! 早く掛かってこい!」

「はい!」


怒鳴り声と緊張感を含む声が聞こえる。

普段と違う雰囲気の稽古になっている。


近藤勇は僅かに困惑して居る。


近藤勇は目を閉じると、僅かに困惑した様子で軽く息をはいた。


少し後の事。


ここは、試衛館。


稽古が終わった。


庭。


沖田総司が道場から普通に出てきた。


近藤勇が苦笑して来た。


近藤勇は沖田総司に苦笑して話し出す。

「総司。僅かで良いから、稽古の時に気を配って欲しい。みんなが怪我をしてしまう。」

沖田総司は近藤勇に不思議な様子で話し出す。

「稽古中に怪我をする状況になるのは、日々の鍛錬が出来ていない証拠です。稽古の時に手加減をすると、塾生が上達しません。手加減をする稽古は、稽古をしないのと同じです。」

近藤勇は沖田総司に困惑した様子で話し出す。

「総司。考え直す気はないのか?」

沖田総司は近藤勇に強い調子で話し出す。

「近藤さんが何を話しても、私は考え直しません! 近藤さんが幾度も同じ内容を頼んでも、私は今までどおりの稽古を続けます!」

近藤勇は沖田総司を困惑して見た。


沖田総司は元気良く居なくなった。


近藤勇は困惑した様子で、軽く息をはいた。


直後の事。


ここは、江戸。


たくさんの菊の花が咲く場所。


綺麗な青空が広がっている。


菊の花は綺麗な姿で咲いている。


山口一は菊の花を普通の表情で見ている。


山口一は空を普通の表情で見た。


綺麗な青空が広がっている。


山口一は前を見ると、普通に歩き出した。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語は既に掲載している物語の再改訂版です。

物語の雰囲気や展開などを出来るだけ残しながら改訂しました。

改訂前の物語を掲載するのは止めました。

以上の点、ご了承願いします。

ここからは改訂前の後書きを加筆訂正して書きます。

山口一さん、山口廣明さん、山口勝さん姉弟の父親は、山口祐助さん、です。

山口祐助さんは、長い間隠された秘密になっていたらしいのですが、或る組織の諜報部員だったそうです。

或る組織とは? と疑問に思い調べましたが、或る組織については分かりませんでした。

物語の設定当時は、諜報部員などのような特殊な任務だけでなく、仕事や芸事などは、親から子へと跡を継いでいく事が非常に多かったようです。

史実の山口一さんは、浪人を経験しているため、山口祐助さんの任務は継いでいないと思います。

兄の山口廣明さんは、浪人の経験をしていないようですが、任務を継いでいないと思います。

山口一さんと山口廣明さんが父親の任務を継がなかったのか、不思議です。

山口一さんは、後に斉藤一と名前を変えて、新撰組(当時は壬生浪士組)に入隊します。

斉藤一さんは、新撰組の中で、剣術関係が強く、人斬りとして名前が知られていきます。

物語の設定当時より後の出来事になりますが、新撰組の諜報活動の任務に就いた有名な話があります。

斉藤一さんの就いた任務と山口祐助さんの就いた任務には、重なる部分があります。

謎の残る部分だと思います。

山口勝さんは、祝言を挙げて、相馬勝さん、へと名前が変わります。

山口勝さんが祝言を挙げた年や月の確認は出来ませんでした。

そのため、この物語の最初の場面の山口一さんと山口勝さんの会話は、祝言が決まる前の出来事として書きました。

山口勝さんが心配して話すとおり、「新撰組異聞」や「新撰組異聞外伝」の物語の中で、沖田総司さんや鈴ちゃんが山口一さん(後の斉藤一さん)の前に現れて、いろいろな出来事が起きていきます。

新撰組時代以降は、幾つかの名前を名乗ります。

明治時代の途中から、藤田五郎さん、と名乗ります。

藤田五郎さんは、時尾さんと祝言を挙げて、お子さんが生まれて、家族が出来ます。

この物語の中で、山口祐助さんは山口一さんと山口廣明さんの父親ですが、命令口調で話していません。

山口祐助さんが山口一さんや山口廣明さんに命令しても、嫌な時は、はっきりと話す性格、跡を継ぐ任務が特殊のため、という理由にしました。

山口一さんが浪人生活を始めた理由の一つに、父親の任務を継がなかった、父親の任務を継がないと断った、などがあったのかなと思いました。

この物語の題名は、季節感と文字の雰囲気と意味から考えました。

「菊有黄華(きくにこうかあり)」は「二十四節気の寒露の頃の中国での七十二候の末候の言葉」です。

「菊の花が咲き出す」という意味です。

楽しんで頂けると嬉しいです。





←前            目次             次→


このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください