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新撰組異聞外伝 〜 八十八夜に藤花が咲いて 〜


〜 改訂版 〜


ここは、東京。


八重桜が次々に葉桜に姿を変えていく。

桜の季節が終わりを告げようとしている。

早咲きの藤の花が辺りに彩りを添えていく。


今日は、青い空が広がっている。


ここは、町中。


沖田総司の息子の敬一は微笑んで歩いている。

母親の美鈴は微笑んで歩いている。


敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「お母さん。空が青いね。」

美鈴は敬一に微笑んで頷いた。

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「お母さん。直ぐに家に帰るのはもったいないよね。藤の花を見に行こう。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「家に帰る前に、お茶を買いたいと思っているの。藤の花は、少し経つとたくさん咲くと思うの。藤の花がたくさん咲いたら見に行きましょう。」

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「分かった。」

美鈴は敬一を微笑んで見た。


暫く後の事。


ここは、お茶を販売する店の前。


敬一は包みを持ち、店から微笑んで出てきた。

美鈴は店から微笑んで出てきた。


美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一。家に帰りましょう。」

敬一は包みを持ち、美鈴に微笑んで頷いた。


敬一は包みを持ち、微笑んで歩き出した。

美鈴は微笑んで歩き出した。


少し後の事。


ここは、敬一と美鈴の住む家。


食卓の有る部屋。


敬一は微笑んで居る。

美鈴も微笑んで居る。

食卓の上に、包みが置いてある。


美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一。八十八夜の前日までに、斉藤さんのお家に、今日の買ったお茶を届けて欲しいの。大丈夫?」

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「任せて。」

美鈴は敬一を微笑んで見た。


数日後の事。


ここは、敬一と美鈴の住む家。


玄関。


敬一は包みを持ち、微笑んで来た。

美鈴は微笑んで来た。


美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一。斉藤さんと時尾さんに、伝えて欲しい内容があるの。」

敬一は包みを持ち、美鈴に微笑んで頷いた。

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「八十八夜にお茶を飲むと長生き出来ると聞きました。みなさんでお茶を飲んでください。以上の内容を伝えてね。」

敬一は包みを持ち、美鈴に微笑んで話し出す。

「分かった。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「時尾さんに迷惑を掛けないようにね。」

敬一は包みを持ち、美鈴に微笑んで話し出す。

「分かった。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一。行ってらっしゃい。」

敬一は包みを持ち、美鈴に微笑んで話し出す。

「行ってきます。」

美鈴は敬一に微笑んで頷いた。


敬一は包みを持ち、微笑んで居なくなった。


少し後の事。


ここは、町中。


青空が広がっている。

白い雲がゆっくりと流れている。


敬一は包みを大事に持ち、微笑んで歩いている。


心地良い風が吹いた。


敬一は包みを持ち、風を気持ち良く受けた。


風は静かに止んでいった。


敬一は包みを大事に持ち、微笑んで歩いた。


少し後の事。


ここは、藤田五郎、妻の時尾、幼い息子の勉の住む家。


藤田五郎は居ない。

時尾と勉は、居る。

敬一が訪ねている。


食卓の有る部屋。


時尾は微笑んで居る。

敬一は笑顔で居る。

敬一の傍には、包みが置いてある。


敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「時尾さん。体調は大丈夫ですか?」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「体調は良いわ。安心して。」

敬一は時尾に包みを渡すと、時尾に微笑んで話し出す。

「八十八夜が近いです。八十八夜にお茶を飲むと、長生き出来ると聞きました。お母さんがみなさんでお茶を飲んで欲しいと話しました。お母さんがお茶を用意しました。受け取ってください。」

時尾は敬一から包みを受け取ると、敬一に微笑んで話し出す。

「ありがとう。」

敬一は時尾を微笑んで見た。

時尾は包みを持ち、敬一に微笑んで話し出す。

「八十八夜の日。五郎さんと勉と私の三人で、今回の贈り物のお茶を飲むわ。」

敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「お母さんに僕からお礼の内容を伝えます。」

時尾は包みを傍に置くと、敬一を微笑んで見た。

敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「帰ります。」

時尾は敬一に不思議な様子で話し出す。

「敬一君。来て直ぐなのに帰るの?」

敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「今日は、お母さんの用意したお茶を渡すために来ました。用事は終わりました。帰ります。」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一君。暫く休んでから帰って。」

敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「今日は突然の訪問です。迷惑が掛かります。帰ります。」

時尾は敬一に微笑んで話し掛ける。

「敬一君の訪問は大歓迎よ。私は病気ではないわ。今までと同様に接して。」

敬一は時尾を考えながら見た。

時尾は敬一を微笑んで見た。

敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「お言葉に甘えて、少し休んでから帰ります。」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「お茶の用意をするわ。少し待っていてね。」

敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「ありがとうございます。」

時尾は敬一を微笑んで見た。


時尾は微笑んで居なくなった。


少し後の事。


ここは、藤田五郎、時尾、勉の住む家。


食卓の有る部屋。


敬一は微笑んで居る。


時尾はお茶とお煎餅を持ち、微笑んで来た。


時尾は敬一の前にお茶とお煎餅を微笑んで置いた。

敬一は時尾に笑顔で話し出す。

「ありがとうございます! いただきます!」

時尾は敬一に微笑んで頷いた。

敬一はお茶とお煎餅を美味しく笑顔で味わった。

時尾は敬一を微笑んで見た。


時尾は微笑んで居なくなった。


敬一はお茶とお煎餅を美味しく笑顔で食べ終わった。


勉が笑顔で来た。


敬一は勉に微笑んで話し出す。

「勉君。こんにちは。」

勉は敬一に笑顔で話し出す。

「こんにちは。」

敬一は勉に微笑んで話し出す。

「勉君。遊ぼう。」

勉は敬一に笑顔で話し出す。

「あそぶ。」

敬一は勉に微笑んで話し出す。

「勉君。何をして遊ぶ?」

勉は敬一に笑顔で話し出す。

「へや。あそぶ。」

敬一は勉に笑顔で話し出す。

「部屋で遊ぼうね。」

勉は敬一に笑顔で頷いた。


敬一は部屋を微笑んで出て行った。

勉は部屋を笑顔で出て行った。


暫く後の事。


ここは、藤田五郎、時尾、勉の住む家。


藤田五郎は帰ってきている。

時尾と勉は、居る。

敬一は既に居ない。


食卓の有る部屋。


藤田五郎は杯の酒を普通の表情で飲んでいる。

時尾は微笑んで居る。

食卓には、酒と肴が乗っている。


時尾が藤田五郎に微笑んで話し出す。

「今日、敬一君が訪ねてきました。敬一君と美鈴さんから、八十八夜の日に飲むためのお茶を頂きました。」

藤田五郎は杯の酒を飲みながら、時尾に普通の表情で頷いた。

時尾が藤田五郎に微笑んで話し出す。

「お返しが必要だと思いました。」

藤田五郎は杯の酒を飲みながら、時尾に普通に話し出す。

「考えておく。」

時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「ありがとうございます。」

藤田五郎は杯の酒を飲みながら、時尾に普通の表情で頷いた。


翌日の事。


今日は八十八夜の日になる。


ここは、敬一と美鈴の住む家。


玄関。


敬一は微笑んで居る。

美鈴も微笑んで居る。


敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「お母さん。今日は八十八夜だね。今日はお茶を忘れずに飲もうね。」

美鈴は敬一に微笑んで頷いた。

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「今日は藤の花を見に行こうね。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「今日は早く帰れるの?」

敬一は美鈴に微笑んで頷いた。

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「無理しないでね。」

敬一は美鈴に微笑んで頷いた。

美鈴は敬一を微笑んで見た。

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「行ってきます。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「行ってらっしゃい。」

敬一は美鈴を微笑んで見た。


敬一は微笑んで居なくなった。


暫く後の事。


ここは、敬一と美鈴の住む家。


玄関。


敬一は笑顔で帰ってきた。


美鈴は微笑んで来た。


美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一。お帰りなさい。」

敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「お母さん! ただいま! 早く出掛けよう!」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一。出掛ける前に少し休みなさい。」

敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「休まなくても大丈夫だよ! 早く出掛けよう!」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「分かったわ。今から出掛ける準備をするわ。敬一も出掛ける準備をしなさい。」

敬一は美鈴に笑顔で頷いた。


少し後の事。


ここは、藤の花の咲く場所。


敬一は微笑んで来た。

美鈴も微笑んで来た。


敬一は藤の花を笑顔で見た。

美鈴は藤の花を微笑んで見た。

敬一は美鈴を見ると、美鈴に笑顔で話し出す。

「お母さん! 藤の花がたくさん咲いているね! 藤の花が綺麗に咲いているね!」

美鈴は敬一を見ると、敬一に微笑んで頷いた。

敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「藤の花は綺麗な色の雨が降っているみたいに見えるね!」

美鈴は敬一に微笑んで頷いた。

敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「藤の花の香は、甘くて良い香りだね!」

美鈴は敬一に微笑んで頷いた。

敬一は美鈴に恥ずかしく話し出す。

「はしゃぎ過ぎた。」

美鈴は敬一を寂しいような懐かしいような表情で見た。

敬一は美鈴を心配して見た。

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「お父さんから、東京に在る、境内に藤の花がたくさん咲く天神様の話を、聞いた時があるの。」

敬一は美鈴に心配して話し出す。

「お母さん。お父さんの話した藤の花のたくさん咲く天神様に行きたいの?」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「お父さんが、お父さんと斉藤さんとお母さんで、境内に藤の花がたくさん咲く天神様に行って、たくさんの藤の花を見たい、と話していたの。お父さんは病で亡くなったわ。叶わない話になっているの。」

敬一は美鈴の手を握ると、美鈴に微笑んで話し出す。

「斉藤さんは一緒に行けないかも知れないけれど、僕がお父さんの代わりに、境内に藤の花がたくさん咲く天神様に一緒に行って、たくさんの藤の花を見るよ。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一。ありがとう。」

敬一は美鈴の手を握り、美鈴に微笑んで話し出す。

「今年は無理だと思うんだ。来年は一緒に行こうね。」

美鈴は敬一に微笑んで頷いた。

敬一は美鈴の手を握り、美鈴に微笑んで話し出す。

「お母さん。今日は僕が一緒に居るからね。境内に藤の花がたくさん咲く天神様の以外の場所だけど、楽しく見ようね。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一。ありがとう。藤の花を楽しく見ましょう。」

敬一は美鈴の手を握り、美鈴に微笑んで頷いた。

美鈴は敬一を微笑んで見た。

敬一は美鈴の手を微笑んで放した。

美鈴は敬一と藤の花を微笑んで見た。

敬一も美鈴と藤の花を微笑んで見た。


暫く後の事。


ここは、敬一と美鈴の住む家。


食卓の有る部屋。


敬一はお茶を笑顔で美味しく飲んでいる。

美鈴はお茶を微笑んで飲んでいる。


敬一はお茶を飲みながら、美鈴に笑顔で話し出す。

「お母さん! 夕飯の時もお茶を飲もうね! 夕飯が終わった後もお茶を飲もうね!」

美鈴はお茶を飲みながら、敬一に微笑んで頷いた。


暫く後の事。


ここは、敬一と美鈴の住む家。


食卓の有る部屋。


敬一はお茶を笑顔で美味しく飲んでいる。

美鈴はお茶を微笑んで飲んでいる。


敬一はお茶を飲みながら、美鈴に微笑んで話し出す。

「美味しいね。」

美鈴はお茶を飲みながら、敬一に微笑んで頷いた。

敬一はお茶を飲みながら、美鈴に微笑んで話し出す。

「お母さん。お茶をたくさん飲んで長生きしてね。」

美鈴はお茶を飲みながら、敬一を微笑んで見た。

敬一はお茶を飲みながら、美鈴に心配して話し出す。

「お母さん?」

美鈴はお茶を飲みながら、敬一に微笑んで話し出す。

「敬一。お茶をたくさん飲んで長生きしてね。」

敬一はお茶を飲みながら、美鈴に微笑んで頷いた。

美鈴はお茶を飲みながら、敬一を微笑んで見た。

敬一もお茶を飲みながら、美鈴を微笑んで見た。


暫く後の事。


ここは、敬一と美鈴の住む家。


食卓の有る部屋の前に有る縁。


敬一は部屋から微笑んで出てきた。


敬一は空を微笑んで見た。


橙色の空になっている。


敬一は空を見ながら、微笑んで呟いた。

「お父さん。お母さんを長生きさせてあげてね。お母さんはいつも無理ばかりしているんだ。僕には出来ない内容がたくさんあるんだ。僕はもっとしっかりとするからね。お母さんの手伝いをたくさんするからね。」

敬一は空を微笑んで見た。


美鈴は微笑んで来た。


敬一は美鈴を微笑んで見た。

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一。夕食の用意が出来たわ。お茶の用意も出来たわ。」

敬一は美鈴に微笑んで頷いた。


美鈴は家の中に微笑んで入って行った。

敬一も家の中に微笑んで入って行った。


直後の事。


ここは、藤田五郎、時尾、勉の住む家。


食卓の有る部屋。


時尾は微笑んで食事の用意をしている。

勉は笑顔で居る。


藤田五郎が普通に来た。


時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「食事の用意が出来ました。美鈴さんと敬一君からの贈り物のお茶の用意も出来ました。」

藤田五郎は時尾に普通の表情で頷いた。

時尾は勉に微笑んで話し出す。

「勉。夕飯を食べましょう。」

勉は時尾に笑顔で頷いた。

藤田五郎は時尾と勉を普通の表情で見た。


今日は八十八夜。

何時もよりお茶を飲む回数が増えている。

八十八夜は何時もと少しだけ違う楽しみが増えている。

八十八夜の一日は穏やかに過ぎていく。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語は既に掲載している物語の改訂版です。

改訂前の物語の展開や雰囲気を出来るだけ残して改訂しました。

改訂前の物語を掲載するのは止めました。

以上、ご了承願います。

ここからは改訂前の後書きを加筆訂正して書きます。

この物語の中で、敬一君が時尾さんに、時尾さんの体の調子について話す場面があります。

敬一君は時尾はさんが妊娠中なので心配して話しています。

「藤花(とうか)」についてです。

「藤の花」のことです。

「八十八夜(はちじゅうはちや)」についてです。

雑節の一つです。

立春から八十八日目の日を言います。

五月一日から五月二日の頃になります。

「八十八夜の別れ霜」といい、この日以降は、霜が降りる心配がないとされています。

また、この日に摘んだ新茶は上等なものとされ、この日にお茶を飲むと長生きすると言われているそうです。

2006年の八十八夜は、「五月二日」でした。

2012年の八十八夜は、「五月一日」だそうです。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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