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新撰組異聞外伝 〜 神有月 十月桜の幻影 〜
〜 改訂版 〜
始めに。
この物語は、「市村鉄之助と十月桜」と「藤田五郎と十月桜」の二つの短編の構成です。
以上、ご了承ください。
物語の世界へどうぞ・・・
* * * * * *
〜 市村鉄之助と十月桜 〜
慶応から明治へ。
時代の名が変わった。
幕府側と薩摩藩長州藩が中心の新政府側の戦いは続いている。
幕府にはたくさんの藩がある。
新政府側に最初から味方する藩、不利な戦いに耐えられずに降伏する藩など、戦いを重ねる間に、幕府側の藩が減っている。
今は、北に在る藩が中心となり、新政府軍と戦っている。
市村鉄之助の名前の新撰組の隊士が居る。
土方歳三に付き従う新撰組隊士の一人になる。
土方歳三と共に戦いを続けながら、京都から函館の地に辿り着いた。
市村鉄之助は、函館が最期の地と覚悟を決めた。
或る日の事。
市村鉄之助は、土方歳三に呼ばれた。
土方歳三は、市村鉄之助に、多摩に住む土方歳三の身内に品物を届ける命令を下した。
市村鉄之助は、土方歳三の命令を拒否した。
土方歳三は、市村鉄之助を激しい怒りの表情で見た。
市村鉄之助は、土方歳三を驚いた表情で見た。
土方歳三は、刀を振り回して、市村鉄之助に激しい怒りを向けた。
市村鉄之助は、土方歳三の命令を受けた。
土方歳三は、市村鉄之助に多摩の身内に渡す品物を預けた。
市村鉄之助は、土方歳三から品物を大事に受け取った。
幕府側に味方する者は、新政府側の勢力地に居る時には、気軽な言動が出来ない。
市村鉄之助は、土方歳三から預かった品物と共に、新政府軍から隠れながら、多摩へと向かっている。
数ヵ月後の事。
市村鉄之助は、土方歳三から預かった品物と共に、多摩に到着した。
市村鉄之助は、土方歳三の身内の家に到着した時には、武士とは思えない姿をしていた。
市村鉄之助は、長旅で疲れている、家族の元に戻るには危険が伴う、などの理由から、暫くの間、土方歳三の身内の家にかくまってもらう話になった。
土方歳三は、立場などの理由から、たくさんの人達に、容姿も名前も、知られている。
市村鉄之助は、名前の知られる立場ではなく、名前の知られる功績も無い。
市村鉄之助は、名前の知られていない多くの隊士達とほとんど変わらない。
市村鉄之助の名前を知る者がいたとしても、容姿まで覚えている者は更に減る。
土方歳三と市村鉄之助が、多摩に共に居た日々は、僅かの日々になる。
市村鉄之助の名前を知っていても、市村鉄之助の姿を見ても、新撰組隊士だと気付く者は、いないに等しい。
市村鉄之助はかくまわれているが、緊張の伴う出来事はほとんど起きない。
市村鉄之助にとって、穏やかな時間が過ぎていく。
或る日の事。
市村鉄之助は、土方歳三の身内に頼んで、剣術の稽古を就けてもらう話になった。
市村鉄之助が新撰組に入隊して多くの月日を重ねる前に、戦いが始まった。
市村鉄之助は、ゆっくりと剣術を教わる余裕が無かったように思った。
武士の時代は終わったが、何が起こるか分からない。
市村鉄之助は、武士として剣術について学び直すと決めた。
数年後の事。
市村鉄之助の兄の市村辰之助から、市村鉄之助宛の手紙が届いた。
市村辰之助からの手紙には、家族で一緒に住む提案などが書いてあった。
市村鉄之助の身に危険があったので、土方歳三の身内にかくまってもらっていた。
気付いたら、数年が過ぎている。
土方歳三の身内に、いつまでも迷惑を掛けられない。
市村辰之助からの手紙の内容は、土方歳三の身内に今後について話すきっかけになると思った。
市村鉄之助は、土方歳三の身内に、家族の居る場所へ戻ると伝えた。
市村鉄之助が家族の元に戻ってから、約一年後の事。
市村鉄之助の兄の市村辰之助が病で亡くなった。
市村辰之助には、妻と幼い男の子が居る。
市村鉄之助が、家を継ぐ、幼い男の子の面倒、幼い男の子の後見、共に務める可能性は低い。
市村鉄之助にとって、様々な出来事は起きているが、比較的に穏やかな日々が続いていく。
或る日の事。
市村鉄之助の住む場所。
青空が広がっている。
市村鉄之助は青空を見ながら呟いた。
「土方先生。私はまだまだ未熟者です。」
市村鉄之助は視線を戻した。
桜の木に淡い色の花が咲く姿が見えた。
春以外の季節なのに、桜の花が咲いている。
市村鉄之助は、桜の花の咲く木に不思議な様子で近付いた。
市村鉄之助は桜の花を見ながら不思議な様子で呟いた。
「春ではないのに桜の花が咲いている。」
市村鉄之助は桜を不思議な様子で見た。
市村鉄之助は突然に何かを思い出した表情になった。
市村鉄之助は桜の花を微笑んで見た。
市村鉄之助は微笑んで視線を戻した。
市村鉄之助は微笑んで居なくなった。
一年後の事。
市村鉄之助は病に倒れた。
医者の診立ては、今年一杯もつかどうか、だった。
秋を迎えた。
市村鉄之助の病が快方に向かう様子は無い。
市村鉄之助は意識の無い時間が増えてきた。
市村鉄之助は床の中で眠る時間が増えていく。
市村鉄之助は床の中で、ゆっくりと目を開けた。
辺りに見える景色は、部屋の中の景色とは全く違う。
春ではないのに桜の花が咲いている。
市村鉄之助は桜の花の咲く木の下に居る。
市村鉄之助は桜の花を微笑んで見た。
市村鉄之助の横で人の気配を感じた。
市村鉄之助は横を不思議な様子で見た。
沖田総司が市村鉄之助を微笑んで見ている。
市村鉄之助は沖田総司を寂しく見た。
沖田総司は市村鉄之助に微笑んで話し出す。
「期待している人物と違ったんだ。」
市村鉄之助は沖田総司に微笑んで話し出す。
「いいえ。沖田先生とお逢いできて嬉しいです。」
沖田総司は市村鉄之助に苦笑して話し出す。
「鉄之助。私を先生と呼ぶのは止めてくれと幾度も話したよね。直ぐに忘れてしまうね。」
市村鉄之助は沖田総司に微笑んで話し出す。
「土方先生も沖田先生も、偉い人物です。先生と呼んでしまいます。」
沖田総司は市村鉄之助を微笑んで見た。
市村鉄之助は沖田総司に確認する様子で話し出す。
「沖田さんは、既に亡くなられていらっしゃいますよね。」
沖田総司は市村鉄之助に微笑んで頷いた。
市村鉄之助は沖田総司に確認する様子で話し出す。
「沖田さん。私は近い内に亡くなるのですか?」
沖田総司は市村鉄之助に微笑んで話し出す。
「どうかな?」
市村鉄之助は沖田総司を確認する様子で見た。
沖田総司は市村鉄之助に微笑んで話し出す。
「鉄之助。どうしたいのかな?」
市村鉄之助は沖田総司に真剣な表情で話し出す。
「多摩に居る時は、土方先生の身内の方に、剣の稽古を就けて頂きました。家族と一緒に住むようになってからは、私なりに剣の稽古を続けています。私は、まだまだ未熟者です。今のままでは、土方先生に逢えません。私は、更なる精進を積みたいです。今は武士の身分が無いですが、私は土方先生に武士として逢いたいと思っています。」
沖田総司は市村鉄之助を微笑んで見た。
市村鉄之助は沖田総司に考えながら話し出す。
「家に戻ってから、考え事が増えてきました。」
沖田総司は市村鉄之助を微笑んで見ている。
市村鉄之助は沖田総司に考えながら話し出す。
「兄は新撰組から去りました。私は新撰組に残りました。」
沖田総司は市村鉄之助を微笑んで見ている。
市村鉄之助は沖田総司に考えながら話し出す。
「私は何が起きたとしても、土方先生に付いて行くと決めていました。兄の行動は、武士としては間違っていたと思います。兄は、新撰組から去ったから、生き残りました。兄は、祝言を挙げて、男子が産まれました。市村の家には跡継ぎがいます。市村の家は、兄と私の代で終わらずに続きます。」
沖田総司は市村鉄之助を微笑んで見ている。
市村鉄之助は沖田総司に微笑んで話し出す。
「土方先生は、私と兄が共に新撰組に残っていたら、多摩に向かう命令をしたのか、と考えました。私は、土方先生の命令を受けて、多摩に向ったのか、と考えました。」
沖田総司は市村鉄之助を微笑んで見ている。
市村鉄之助は沖田総司に微笑んで話し出す。
「兄と私が共に新撰組に残っていたら、私は土方先生と兄を残して多摩に来た状況になります。私は今よりたくさんの悩みを抱え続けたと思います。」
沖田総司は市村鉄之助を微笑んで見ている。
市村鉄之助は辺りを確認する様子で見た。
沖田総司は市村鉄之助に微笑んで話し出す。
「近くに居るのは、私と鉄之助のみだよ。」
市村鉄之助は沖田総司を見ると、沖田総司に微笑んで話し出す。
「沖田さんと私のみですか。」
沖田総司は市村鉄之助に微笑んで頷いた。
市村鉄之助は沖田総司に真剣な表情で話し出す。
「今の私は、土方先生に武士として逢えません。私には、必要な精進がたくさんあります。」
沖田総司は市村鉄之助を微笑んで見た。
市村鉄之助は沖田総司を真剣な表情で見た。
沖田総司は市村鉄之助に微笑んで話し出す。
「鉄之助。話の途中だけど、戻る時間になった。」
市村鉄之助は沖田総司に不思議な様子で話し出す。
「沖田さん。何故、私に逢ってくださったのですか?」
沖田総司は市村鉄之助に微笑んで話し出す。
「何故だと思う?」
市村鉄之助は沖田総司を不思議な様子で見た。
沖田総司は市村鉄之助に微笑んで話し出す。
「鉄之助。鉄之助の住む場所で、私の住む場所で、再び逢おうね。」
市村鉄之助は沖田総司に微笑んで話し出す。
「はい。」
沖田総司は市村鉄之助を微笑んで見た。
沖田総司は微笑んで、静かに居なくなった。
市村鉄之助は桜の木を微笑んで見た。
桜の花が綺麗に姿で咲いている。
市村鉄之助は桜の木に微笑んでもたれ掛かった。
市村鉄之助は桜の木にもたれ掛かり、微笑んでゆっくりと目を閉じた。
市村鉄之助はゆっくりと目を開けた。
市村鉄之助は床の中で横になっている。
体は物凄くだるい。
ゆっくりと体を起こそうとした。
床の中で長く横になっていたせいか、体に力が入らない。
市村鉄之助は床の中で、苦笑して呟いた。
「体がだいぶなまっている。元に戻すためには、多くの時間が必要だな。」
市村鉄之助は床の中で、部屋の中をゆっくりと見た。
一枚の桜の花弁が市村鉄之助の床の傍に落ちている。
市村鉄之助は床の中で、桜の花弁を不思議な様子で見た。
桜の花弁は、ゆっくりと静かに見えなくなった。
市村鉄之助は床の中で、桜の花弁のあった場所を不思議な様子で見た。
医者が市村鉄之助を診た。
医者の観立ては、理由は分からないが、市村鉄之助の病が快方に向かっている、だった。
市村鉄之助も家族も、医者の診立てを不思議な様子で聞いた。
暫く後の事。
市村鉄之助は、ゆっくりとした足取りになるが、外出できるまでに回復した。
市村鉄之助は家の外に出た。
市村鉄之助は家の近くをゆっくりと歩いた。
春ではないが、桜の花の咲く木が見える。
市村鉄之助は桜の花の咲く木の傍に微笑んで来た。
市村鉄之助は桜の花の咲く木を見ながら、微笑んで呟いた。
「土方先生。私はまだまだ未熟者です。更なる精進を積みます。」
市村鉄之助は微笑んで視線を戻した。
市村鉄之助は微笑んでゆっくりと家へと戻っていった。
市村鉄之助が、明治六年の十一月に亡くなった噂を聞いた者がいる。
市村鉄之助は、新撰組の最後の方に入隊した隊士になる。
市村鉄之助は、土方歳三の傍に居たが、剣の腕は強くない。
市村鉄之助の名前を知る者は、新撰組の隊士以外では、ほとんどいない。
市村鉄之助の容姿まで知る者は、更に減る。
市村鉄之助の名前も容姿も知る者がいたとしても、当時とは雰囲気が違っている。
市村鉄之助の姿を見て、名前と容姿の両方が分かる者は、更に減る。
新撰組の隊士は、任務や戦いの中で、亡くなる、行方知れずになる、人物が多い。
噂の真偽を確認できる者は、僅かな者達に限られている。
市村鉄之助の人生は、秋に舞う桜の花弁のように、時の中に揺らめき続けている。
* * * * * *
〜 藤田五郎と十月桜 〜
東京。
町中。
警官の制服を着た男性が普通の表情で歩いている。
春ではないのに、桜の花の咲く木を見付けた。
警官は桜の木の下に普通の表情で来た。
桜の花は、春の桜のようにたくさん咲いていないが、秋の季節に淡い彩を添えている。
警官は辺りを普通の表情で見た。
辺りには変わった様子はない。
警官は桜の花の咲く木を見ると、普通の表情で呟いた。
「相変わらず面白い。」
警官は桜の花の咲く木を普通の表情で見た。
警官は辺りを普通の表情で見た。
辺りに変わった様子は無い。
警官は桜の花の咲く木を普通の表情で見た。
警官は視線を普通の表情で戻した。
警官は普通の表情で歩き出した。
桜の花の咲く木の近くで、沖田総司の明るい声が聞こえた。
「斉藤さん。警察の制服がとても似合っています。」
「斉藤さんは、新撰組で任務に就いていた時は、幕府と京に住む人達を守っていました。今の斉藤さんは、警官として、新しい治世と東京に住む人達を守っています。」
「斉藤さんらしくないけれど、斉藤さんらしいです。」
「矛盾しているようですが、矛盾していないです。」
「ねっ! 斉藤さん!」
「今は違う名前を名乗っているけれど、斉藤さんの呼び名のままで良いですよね!」
「ねっ! 斉藤さん!」
沖田総司の明るい声が聞こえなくなった。
数枚の桜の花弁が、地面へとゆっくりと舞い落ちた。
警官は普通の表情で立ち止まった。
警官は辺りを普通の表情で見た。
辺りには変わった様子はない。
警官は桜の花の咲く木を見ると、普通の表情で呟いた。
「本当に相変わらず面白い。」
警官は桜の花の咲く木を見て、普通の表情で呟いた。
「秋に咲く桜。良い。」
警官は視線を普通の表情で戻した。
警官は普通の表情で歩き出した。
警官の制服を着て桜を見ていた男性は、斉藤一と名乗っていた時がある。
警官の制服を着て桜を見ていた男性は、今は違う名前を名乗っている。
斉藤一は、たくさんの名前を名乗りながら生きてきた。
斉藤一は、新撰組三番組組長を務めていた時がある。
斉藤一は、新撰組最強の剣客、新撰組の中で一番の人斬り、と呼ばれていた時がある。
斉藤一は、新撰組の隊士の中で恐れられている人物だった。
斉藤一の名前を知る者は多い。
警官の制服を着た男性が斉藤一だと気付く者は、周りの者達の中には誰も居ない。
今の斉藤一は、違う名前を名乗り、東京で警官として、誠の心を抱きながら過ごしている。
様々な名前を名乗っていた新撰組三番組組長は、今も昔も、変わらずに過ごしている。
* * * * * *
ここらは後書きになります。
この物語は既に掲載している物語の改訂版です。
改訂前の物語の展開や雰囲気を出来るだけ残して改訂しました。
改訂前の物語を掲載するのは止めました。
ここからは改訂前の後書きを加筆訂正して書きます。
藤田五郎さん、市村鉄之助さん、沖田総司さんが、登場する物語に、「新撰組異聞外伝 短編 神無月 行き散る 想いを注いで」、があります。
「新撰組異聞外伝 短編 神無月 行き散る 想いを継いで」を書いた後に、市村鉄之助さんが多摩に着いてから後の物語を書きたいと思いました。
市村鉄之助さんは、明治六年(1873年)に病気で亡くなった説が一般的です。
市村鉄之助さんが亡くなったと伝わる年は、他にもあります。
知られている説は、二十代で亡くなった事になります。
市村鉄之助さんは若くして亡くなった事になります。
この物語では、亡くなった説の詳細は伏せさせて頂きます。
この物語は、市村鉄之助さんの亡くなったと伝わる明治六年(1873年)を基にして書きました。
市村鉄之助さんについてです。
安政元年(1854年)に生まれたそうです。
函館に居る時には、十六歳前後になります。
初期から新撰組に入隊している隊士ではなく、かなり後半になってからの参加だったそうです。
土方歳三さん付きの配属となりました。
上役の土方歳三さんの身の回りの世話もしていたそうです。
市村鉄之助さんは、土方歳三さんから品物を預けられて、函館から多摩へと向かいます。
市村鉄之助さんは、多摩に着いてからは、土方歳三さんの姉の旦那さんである佐藤彦五郎さんの家で、二年ほど過ごしていたそうです。
市村鉄之助さんは、多摩で二年ほど過ごした後に、大垣にある実家に戻ったそうです。
そして、市村鉄之助さんは兄の市村辰之助さんと再会したそうです。
市村鉄之助さんと兄の市村辰之助さんは、新撰組に一緒に入隊します。
市村辰之助さんは、京都から函館へと向かう最中に、脱退というか脱走をします。
市村鉄之助さんは新撰組に残りました。
市村鉄之助さんと兄の市村辰之助さんは、どのような思いで別れたのか、どのような思いで再会したのか、と思いました。
市村辰之助さんは、詳しい日付はわかりませんが、市村鉄之助さんより先に亡くなるそうです。
市村鉄之助さんは、明治6年(1873年)11月16日に、二十歳前後に病気で亡くなったと伝わる説が広く知られています。
土方歳三さんが函館に居る時に、市村鉄之助さんを呼んで、写真や遺髪や手紙(手紙というより和歌らしいです。手紙と和歌の両方になるのか良く分かりません。)などを、多摩に居る佐藤彦五郎さんに届けて欲しいという内容を話したそうです。
嫌だと返事をした市村鉄之助さんに、土方歳三さんは刀を振り回して声を荒げて怒鳴ったそうです。
市村鉄之助さんは、土方歳三さんの命を受けて、函館から多摩に向う事になります。
市村鉄之助さんが館から出ると、土方歳三さんの部屋から人影らしきものが見えたそうです。
市村鉄之助さんは、その時の人影は土方歳三さんだったと思う、と話していたそうです。
土方歳三さんは窓の外を見ていない可能性もあります。
私は土方歳三さんが見ていたと信じたいです。
土方歳三さんが市村鉄之助さんを函館から逃がした本当の理由はわかりません。
私が聞いた説には、土方歳三さんが、沖田総司さんに雰囲気や様子が似ている市村鉄之助さんを可愛がっていたので、生きていて欲しいから逃がした、という説があります。
私は、市村鉄之助さんは若いから生きていて欲しいと思った、自分の傍で世話をしてくれる様子を見て、自分の事を理解しているところがあると思った、だから、生きていて欲しくて逃がした、という説の方が正しいように思いました。
私はこの説を信じたいと思います。
市村鉄之助さんは、函館を出発してから数ヶ月程後に、多摩に着いて、土方歳三さんの家族に手紙や写真などを渡したそうです。
市村鉄之助さんは、新撰組の隊士の中で、函館での出来事があった関係で、名前が知られている隊士の一人だと思います。
市村鉄之助さんも、島田魁さんや斉藤一さんなどと同じく、生き残った隊士の一人です。
僅かの間だけですが、新政府の治世の明治の時代を生きた隊士の一人です。
この物語の中で、市村鉄之助さんが、函館から多摩へ行く間に沖田総司さんと話した内容について話す場面が登場します。
「新撰組異聞 夢現 行き散る者の想いを運んで」の物語の中の出来事をさしています。
藤田五郎さんについてです。
明治六年(1873年)の頃は、警察に務めるようになってから約一年後、時尾さんと結婚をする約一年前、となります。
「新撰組異聞」関連の時間設定では、沖田総司さんと藤田五郎さんは、姿が見えたり話したり出来ない状態です。
「新撰組異聞」関連の時間設定では、藤田五郎さんは、敬一君の存在を知らない事になります。
「十月桜(じゅうがつざくら)」についてです。
秋に咲く桜です。
満開になっても春の桜のようには咲きません。
場所によっては紅葉の時期と重なって咲きます。
桜と紅葉が同時に咲く様子、桜咲く桜は、とても不思議な印象です。
「神有月(かみありづき)」についてです。
「陰暦十月の異称」です。
「神有月」と呼ぶ理由は、「出雲の国に神様が集まるために、神様が居なくなるから、神無月」、「出雲の国では、神様が集まるから、神有月」、となります。
市村鉄之助さんが亡くなった頃は、旧暦にすると十月か九月の終わり頃になると思います。
そこから「神有月」と「十月桜」を題名に使いました。
楽しんで頂けると嬉しいです。
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