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新撰組異聞外伝 〜 雨水から桃の節句へ 〜
〜 改訂版 〜
藤田五郎と時尾が結婚してから初めて年を越した。
暦は、一月から二月へと移った。
今は二月の中旬になる。
ここは、東京。
寒い日が続いている。
ここは、藤田五郎と妻の時尾の住む家。
食卓の有る部屋。
藤田五郎は杯の酒を普通の表情で飲んでいる。
時尾は藤田五郎を見ながら、微笑んで食事をしている。
藤田五郎は杯の酒を飲みながら、時尾に普通に話し出す。
「俺を気にしていたら、落ち着いて食事が出来ない。俺を気にせずに食事しろ。」
時尾は食事をしながら、藤田五郎に微笑んで話し出す。
「お気遣い。ありがとうございます。」
藤田五郎は杯の酒を飲みながら、時尾を普通の表情で見た。
時尾は食事を止めると、藤田五郎に微笑んで話し出す。
「五郎さん。話しても良いですか?」
藤田五郎は酒を飲むのを止めると、時尾に普通の表情で頷いた。
時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。
「良く考えると、急いで話す内容ではないです。後で話します。お酒を飲むのを止めてしまって申し訳ありません。」
藤田五郎は時尾に普通に話し出す。
「酒は飲みたい時に飲んでいる。俺を気にせずに話せ。」
時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。
「はい。」
藤田五郎は杯の酒を飲むと、時尾を普通の表情で見た。
時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。
「桃の節句が近付いてきたので、雨水の日に雛人形を飾りたいと思っています。」
藤田五郎は杯の酒を飲みながら、時尾に普通に話し出す。
「時尾の雛人形を飾るのだろ。俺の許しは必要ない。」
時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。
「お気遣い。ありがとうございます。」
藤田五郎は杯の酒を飲みながら、時尾を普通の表情で見た。
時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。
「雛人形を雨水の日に飾っていたから、五郎さんに逢えました。今年からは、お礼も含めて、雛人形を飾ります。」
藤田五郎は杯の酒を飲みながら、時尾を普通の表情で見ている。
時尾は藤田五郎を微笑んで見た。
幾日か後の事。
雨水の日を迎えた。
ここは、藤田五郎と時尾の住む家。
藤田五郎は居ない。
時尾は居る。
一室。
時尾は床の間に小さなお内裏様とお雛様を微笑んで飾っている。
お内裏様とお雛様は、寄り添うように並んでいる。
時尾はお内裏様とお雛様を微笑んで飾り終わった。
時尾はお内裏様とお雛様を微笑んで見た。
少し後の事。
ここは、藤田五郎と時尾の住む家。
玄関。
藤田五郎が普通に帰ってきた。
時尾は微笑んで来た。
藤田五郎は時尾に普通の表情で頷いた。
時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。
「五郎さん。お帰りなさい。」
藤田五郎は時尾に普通の表情で頷いた。
時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。
「雛人形を床の間に飾りました。違う場所が良い可能性が有ります。確認をお願いします。」
藤田五郎は時尾に普通の表情で頷いた。
時尾は藤田五郎を微笑んで見た。
藤田五郎は家の中に普通に入って行った。
時尾は家の中に微笑んで入って行った。
少し後の事。
ここは、藤田五郎と時尾の住む家。
一室。
お内裏様とお雛様が飾ってある。
お内裏様とお雛様は、床の間に寄り添うように並んでいる。
時尾は部屋の中に微笑んで入った。
藤田五郎は部屋の中に普通に入った。
藤田五郎はお内裏様とお雛様を普通の表情で見た。
時尾はお内裏様とお雛様を見ると、藤田五郎に恥ずかしく話し出す。
「小さい雛人形です。新しい暦になってからは、桃の節句に桃の花が咲いていません。桃の花を折り紙で作りました。恥ずかしいです。」
藤田五郎は時尾を見ると、時尾に普通に話し出す。
「時尾の両親が時尾のために用意した雛人形だ。桃の花も折り紙だが丁寧に作ってある。恥ずかしく思う理由は無い。」
時尾は藤田五郎を見ると、藤田五郎に微笑んで話し出す。
「ありがとうございます。」
藤田五郎は時尾を普通の表情で見た。
時尾はお内裏様とお雛様を見ると、藤田五郎に微笑んで話し出す。
「会津の戦いが終わって家に戻ったら、家は壊れていて住める状態ではありませんでした。家の中に残した高価な物は無くなっていました。家族で何か残っていないか探しました。私のお内裏様とお雛様が、無事に残る姿を見付けました。高価な物では無いので、見向きをされなかったのだと思います。」
藤田五郎は時尾を普通の表情で見ている。
時尾はお内裏様とお雛様を見ながら、藤田五郎に微笑んで話し出す。
「雛人形が戦いの中でほとんど無傷の状態で残っていました。驚きました。運の良いお内裏様です。運の良いお雛様です。」
藤田五郎はお内裏様とお雛様を普通の表情で見た。
時尾はお内裏様とお雛様を見ながら、藤田五郎に微笑んで話し出す。
「この雛人形は、私と共に会津の戦い生き残りました。この雛人形は、会津藩から斗南藩に名前を変えても、私と共に桃の節句を過ごしてくれました。この雛人形は、私に良縁を与えてくれました。私にとってはとても大切な雛人形です。」
藤田五郎は時尾を普通の表情で見た。
時尾は藤田五郎を微笑んで見た。
藤田五郎は時尾に普通に話し出す。
「来年からは、雛人形の飾る日も雛人形を飾る場所も、時尾の判断に任せる。俺への確認は必要ない。」
時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。
「ありがとうございます。」
藤田五郎は時尾に普通の表情で頷いた。
幾日か後の事。
桃の節句の当日を迎えた。
ここは、藤田五郎と時尾の住む家。
藤田五郎は居ない。
時尾は居る。
一室。
時尾は微笑んで普段通りに家事をしている。
時尾は微笑んで家事を終えた。
時尾は部屋から微笑んで出て行った。
少し後の事。
ここは、藤田五郎と時尾の住む家。
玄関。
時尾は小さい包みを持ち、微笑んで帰ってきた。
少し後の事。
ここは、藤田五郎と時尾の住む家。
藤田五郎は居ない。
時尾は居る。
食卓の有る部屋。
時尾は小さい包みを持ち、微笑んで来た。
時尾は小さい包みを食卓に微笑んで置いた。
時尾は小さい包みを微笑んで広げた。
包みの中には、草餅が入っている。
時尾は包みを微笑んで閉じた。
少し後の事。
ここは、藤田五郎と時尾の住む家。
藤田五郎は居ない。
時尾は居る。
一室。
お内裏様とお雛様が飾ってある。
お内裏様とお雛様は、床の間に寄り添うように並んでいる。
時尾は草餅の二つ載った皿に持ち、部屋の中に微笑んで入った。
時尾はお内裏様とお雛様の前に草餅の二つ載った皿を微笑んで置いた。
お内裏様が草餅を微笑んで見たように感じた。
お雛様も草餅を微笑んで見たように感じた。
時尾はお内裏様とお雛様に微笑んで話し掛ける。
「今日は桃の節句です。草餅を用意しました。五郎さんは甘い物が苦手なので、草餅を作るのを止めて買いました。美味しい評判の草餅です。是非、食べてください。」
お内裏様が時尾を微笑んで見たように感じた。
お雛様も時尾を微笑んで見たように感じた。
時尾はお内裏様とお雛様に微笑んで話し出す。
「明日は仕舞う日になると思います。来年を楽しみに待っていてください。」
お内裏様が時尾を微笑んで見たように感じた。
お雛様も時尾を微笑んで見たように感じた。
時尾は部屋を微笑んで出て行った。
直後の事。
ここは、沖田総司の息子の敬一と母親の美鈴が住む家。
縁。
敬一は微笑んで雑巾掛けをしている。
一室。
美鈴は微笑んで縫い物をしている。
少し後の事。
ここは、敬一と美鈴の住む家。
一室。
美鈴は微笑んで縫い物をしている。
敬一は部屋の中に微笑んで入った。
美鈴は縫い物を止めると、敬一に微笑んで話し出す。
「敬一。縁の雑巾掛けが終わっていたのね。ありがとう。」
敬一は美鈴に微笑んで話し出す。
「お母さん。今日は桃の節句だね。」
美鈴は敬一に微笑んで頷いた。
敬一は美鈴に微笑んで話し出す。
「お母さんは雛人形を飾った時がないね。お母さんの雛人形は何処に在るの?」
美鈴は敬一に微笑んで話し出す。
「敬一。出掛ける時間は大丈夫?」
敬一は美鈴に恥ずかしく話し出す。
「楽しかったから、想像より早く時間が進んでいた。少し経ったら出掛けるね。」
美鈴は敬一に微笑んで話し出す。
「桜餅と蓬餅。敬一が帰るまでに、用意しておくわ。敬一が帰ってきたら、お父さんと一緒に食べましょう。」
敬一は美鈴に笑顔で話し出す。
「分かった!」
美鈴は敬一を微笑んで見た。
少し後の事。
ここは、敬一と美鈴の住む家。
玄関。
敬一は微笑んで居る。
美鈴も微笑んで居る。
美鈴は敬一に微笑んで話し出す。
「行ってらっしゃい。」
敬一は美鈴に笑顔で話し出す。
「行ってきます!」
美鈴は敬一を微笑んで見た。
敬一は元気良く出掛けて行った。
少し後の事。
ここは、敬一と美鈴の住む家。
敬一は居ない。
美鈴は居る。
縁。
美鈴は微笑んで来た。
美鈴は空を微笑んで見た。
青空が広がっている。
美鈴は青空を見ながら、微笑んで呟いた。
「総司さんと敬一に逢う機会を作って頂いたのに、お礼をしていません。何時になるか分かりませんが、必ず迎えに行きます。暫く待っていてください。」
白い雲が青空の中をゆっくりと通り過ぎていく。
美鈴は青空を見ながら、微笑んで呟いた。
「今から戸締りを始めます。戸締りが終わったら、桜餅と蓬餅を買いに行きます。」
美鈴は微笑んで視線を戻した。
美鈴は微笑んで戸締りを始めた。
暦が変わり、桃の節句に桃の花の咲く姿を見る時が少なくなった。
暦が変わっても、時代が変わっても、雛人形は大切な想いを繋いでいる。
* * * * * *
ここからは後書きになります。
この物語は既に掲載している物語の再改訂版です。
改訂前の物語の展開や雰囲気を出来るだけ残して改訂しました。
改訂前の物語を掲載するのは止めました。
以上、ご了承ください。
ここからは改訂前の後書きを加筆訂正して書きます。
「新撰組異聞外伝」関連の物語では、藤田五郎さんと藤田時尾(旧姓:高木時尾)さんが結婚したのは、明治七年(1874年)となっています。
この物語は、藤田五郎さんと藤田時尾さんが結婚した翌年の明治八年(1875年)に、初めて迎える桃の節句を想定して書きました。
藤田五郎さんと敬一君が逢う前の物語です。
この物語では、藤田時尾さんが雛人形を飾る場面が登場します。
身分の高い家や裕福な家では、女の子が生まれると一人ずつ雛人形を用意したようです。
それ以外の家では、お金や家の広さなどを考えると、女の子の人数分の雛人形を揃えるのは、無理な場合があったと思います。
雛人形の内容によっては、女の子の人数分を揃える事が出来たかも知れません。
藤田時尾さんが自分の雛人形を持っているのかについては、藤田時尾さんが長女で、女の子の人数も多くないようなので、豪華かは不明ですが、一人ずつ雛人形を持っていた可能性があると考えました。
藤田時尾さんは、新政府軍と会津藩の戦いの時に、鶴ヶ城に篭城して怪我人の手当てをしていました。
藤田五郎さんは、新撰組から離れて会津藩に残り、新政府軍と戦っています。
戦いに負けた「会津藩」は、「斗南藩(となみはん)」に名前を変えて、現在の青森県に移ります。
藤田五郎さんは、元会津藩士として斗南藩で生活しています。
藤田時尾さんも同じように斗南藩で生活をしていたと思います。
明治八年の時点では、暦は旧暦から新暦に変更になっています。
そのため、桃の花が咲くのは、現在の三月三日では時期的に早い事になります。
「雨水(うすい)」についてです。
「二十四節気の一つ」です。
現在の暦で二月十九日頃、または、この日から啓蟄までの期間を言います。
温かさに雪や氷が解けて雨水として降り注ぐ日です。
昔から、農耕の準備を始めるのは雨水が目安とされて来たそうです。
また、この日に雛人形を飾り付けると良縁に恵まれるとされています。
「雛祭り」についてです。
元々は「上巳の節句(じょうしのせっく)」と言われていて、中国の思想と日本の風習が一緒になったものだそうです。
「上巳の節句」は、「五節句の一つ」です。
「上巳の節句」が三月三日に固定されたのは、室町時代の頃からとされているそうです。
そして、桃の花が咲く時期の頃という事もあり、「桃の節句」と言われるようになったそうです。
「雛祭り」は、女の子の健やかな成長を願う伝統行事です。
「上巳の日」には、人形に穢れを移して川や海に流していたのが、その人形が次第に精巧なものになって流さずに飾っておくようになり、雛祭りとして発展していったそうです。
初めの頃は、宮中や貴族の間で行われていたそうですが、やがて武家社会でも行われるようになり、江戸時代には庶民の行事となったそうです。
元々は五月五日の端午の節句とともに男女の別なく行われていたそうですが、江戸時代の頃から、男女を別にして行うようになったそうです。
以前は、雛人形を高い場所に置かずに、畳などと同じ高さにおいて雛祭りを行っていたそうです。
そのため大きな雛人形が作られました。
50cm前後ある雛人形を観ました。
実際に見ると、大きくて驚きました。
江戸時代の後期あたりに、現在のような「雛人形」の形が、ほぼ完成したようです。
七段飾りもこの頃に登場したようです。
雛人形の道具は、本物を小さくしただけという道具をたくさん見ました。
「雛あられ」は、意外と新しい食べ物のようです。
明治時代の頃に京都で発祥した風習というか食べ物のようです。
「雛あられ」は「桜餅」と同じく、「関東風」と「関西風」があるそうです。
「関西風」は、小粒のあられです。
「関東風」は、お米をポンとはぜたポン菓子なので、お米の形をしています。
「雛祭り」で昔から食べられていた物に「草餅」があります。
昔は「草餅」に「母子草(ははこぐさ)」を使用していたそうです。
「母と子を一緒に搗く」と言う言葉を連想するために、縁起が良く無いという事で、江戸時代の頃から「蓬(よもぎ)」で「草餅」を作るようになったそうです。
楽しんで頂けると嬉しいです。
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