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新撰組異聞外伝 〜 春と草餅 蓬の香り 〜


〜 改訂版 〜


明治と呼ぶ時代を迎える前は、政務の中心に幕府が居た。


沖田総司は、幕府側の人物で、新撰組一番組組長の立場だった。


新しい時代を創ろうとする者達と幕府の間で戦いが起きた。


幕府が負けた形で戦いは終わった。


幕府側の人物だった沖田総司は、逆賊と呼ばれる立場になってしまった。


沖田総司は病に倒れたために、途中からは療養をしていた。


沖田総司は、明治と呼ぶ時代を迎える前に、療養先でひっそりと亡くなった。


幾日もの日々が過ぎた。


今は明治と呼ぶ時代になっている。


沖田総司の息子の幼い敬一と母親の美鈴は、沖田総司の家族と分からないように、京の土地で静かに暮らしている。


春の季節になっている。


ここは、京。


ここは、幼い敬一と美鈴の住む家。


縁。


美鈴は微笑んで繕い物をしている。


敬一が部屋の中から笑顔で元気良く出て来た。


美鈴は繕い物を止めると、敬一に微笑んで話し出す。

「敬一。お母さんが繕い物をしている時は、走って近付かないの。針は危ないの。針は刺さると痛いの。」

敬一は美鈴を寂しく見た。

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一は針が刺さったら、痛くて泣くと思うの。お母さんも、敬一の痛くて泣く姿を見て、痛くて泣くと思うの。」

敬一は美鈴を寂しく見ている。

美鈴は敬一を優しく抱くと、敬一に微笑んで話し出す。

「敬一が大きくなるまでは、お母さんが気を付けるわ。敬一はいつも笑顔でいてね。」

敬一は美鈴を不思議な様子で見た。

美鈴は敬一を優しく抱いて、敬一に微笑んで話し出す。

「敬一は、お父さんとお母さんの自慢の子なの。敬一もお母さんも、お父さんのように辛い時も笑顔で乗り越えましょう。」

敬一は美鈴を寂しく見ている。

美鈴は敬一を優しく抱いて、敬一に微笑んで話し出す。

「敬一は良い子よ。敬一の笑顔を見ていると、お母さんも笑顔になるの。」

敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「えがお。げんき。」

美鈴は敬一を優しく離すと、敬一に微笑んで話し出す。

「敬一。蓬を採りに出掛けましょう。帰ってきたら、蓬のお団子を作るわ。」

敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「たのしみ。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「楽しみね。」

敬一は美鈴を笑顔で見た。

美鈴は敬一を微笑んで見た。


少し後の事。


ここは、敬一と美鈴の家から少し離れている場所。


緑色の草がたくさん生えている。


美鈴は座りながら、蓬を微笑んで採っている。

美鈴の傍には、小さな籠が置いてある。

敬一は笑顔で座っている。


美鈴は傍に生えている蓬の葉を微笑んで採った。

敬一は美鈴を笑顔で見た。

美鈴は蓬の葉を持ち、敬一に蓬の葉を見せて、敬一に微笑んで話し出す。

「敬一。蓬の葉よ。」

敬一は蓬の葉を笑顔で見た。

美鈴は蓬の葉を持ち、敬一に蓬の葉を見せて、敬一に微笑んで話し出す。

「蓬のお団子は、蓬の葉を使って作るの。」

敬一は蓬の葉を見ながら、美鈴に笑顔で話し出す。

「よもぎ。おだんご。」

美鈴は蓬の葉を持ち、敬一に微笑んで頷いた。

敬一は美鈴を笑顔で見た。

美鈴は蓬の葉を小さな籠に微笑んで入れた。

敬一は傍に生えている蓬の葉を取ると、美鈴に笑顔で差し出した。

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一。蓬が分かったのね。偉いわ。」

敬一は美鈴に蓬の葉を差し出して、美鈴に笑顔で話し出す。

「よもぎ。えがお。げんき。」

美鈴は敬一から蓬の葉を受け取ると、敬一微笑んで話し出す。

「敬一。ありがとう。」

敬一は傍に生えている蓬の葉を採ると、美鈴に笑顔で差し出した。

美鈴は敬一から蓬の葉を受け取ると、蓬の葉を小さな籠に微笑んで入れた。

敬一は美鈴を笑顔で見た。

美鈴は蓬の葉を取ると、蓬の葉を小さな籠に微笑んで入れた。


少し後の事。


ここは、敬一と美鈴の家から少し離れている場所。


緑色の草がたくさん生えている。


美鈴は座りながら、蓬を微笑んで採っている。

美鈴の傍には、小さな籠が置いてある。

敬一は笑顔で座っている。


小さな籠の中に、蓬の葉が少しずつ増えていく。


敬一は蓬の葉を採ると、美鈴に笑顔で差し出した。

美鈴は敬一から蓬の葉を微笑んで受け取った。

敬一は美鈴を笑顔で見た。

美鈴は蓬の葉を小さな籠に入れると、敬一に微笑んで話し出す。

「敬一が手伝ってくれたから、予定より早く終わったわ。ありがとう。」

敬一は美鈴を笑顔で見た。

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「帰りましょう。」

敬一は美鈴に笑顔で頷いた。

美鈴は敬一を微笑んで見た。


美鈴は小さな籠を持ち、微笑んで居なくなった。

敬一は笑顔で居なくなった。


幾つかの季節が過ぎた。


美鈴と敬一は、京都を離れて東京で暮らしている。


東京は、沖田総司が親しくしていた藤田五郎の住む場所になる。


桜の花の咲く季節の事。


敬一は藤田五郎に逢いに行った。

藤田五郎は普通の表情だが、敬一に逢って話してくれた。

敬一は藤田五郎の家に幾度も出掛けるようになった。


藤田五郎と敬一が逢ってから、一年近くが経った。


春の季節になっている。


ここは、敬一と美鈴の住む家。


食卓の有る部屋。


美鈴は微笑んで縫い物をしている。


敬一は微笑んで来た。


美鈴は縫い物を止めると、敬一を微笑んで見た。

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「お母さん。時尾さんが渡したい物があるんだって。今から出掛けるけれど、お母さんは縫い物を続けて。見送りは要らないよ。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「行ってらっしゃい。」

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「行ってきます。」

美鈴は敬一を微笑んで見た。


敬一は微笑んで居なくなった。


少し後の事。


ここは、町の中。


敬一は元気良く歩いている。


敬一が通り過ぎる瞬間に、新芽と思えるほどの蓬の葉が見えた。


敬一は笑顔で立ち止まった。


敬一は蓬の葉を笑顔で見た。


蓬は柔らかい緑色の葉で地面に生えている。


敬一は笑顔で視線を戻した。


敬一は元気良く歩き出した。


少し後の事。


ここは、藤田五郎、妻の時尾、幼い息子の勉の住む家。


食卓の有る部屋。


時尾は微笑んで居る。

敬一も微笑んで居る。

敬一の前には、焙じ茶が置いてある。


時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一君。訪問を催促してしまってご免なさい。」

敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「気にしないでください。」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「五郎さんは部屋に居るの。五郎さんと遠慮しないで話して。」

敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「はい。」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「蓬のお団子を作ったの。苦手でなければ、蓬のお団子を用意するわ。」

敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「ありがとうございます。」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一君。五郎さんと早く話したいわよね。蓬のお団子は五郎さんの部屋に持って行くわ。」

敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「お気遣いありがとうございます。」

時尾は敬一を微笑んで見た。


敬一は微笑んで居なくなった。


少し後の事。


ここは、藤田五郎、時尾、勉の住む家。


藤田五郎の部屋の前に有る縁。


敬一は笑顔で来た。


障子が開いた。


藤田五郎の普通の表情の姿が現れた。


敬一は藤田五郎を驚いて見た。


藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「早く入れ。」


敬一は藤田五郎に驚いた表情で小さく礼をした。


敬一は藤田五郎の部屋の中に僅かに慌てて入った。


直後の事。


ここは、藤田五郎、妻の時尾、幼い息子の勉の住む家。


藤田五郎の部屋。


藤田五郎は普通に居る。


敬一は部屋の中に僅かに慌てて入った。


藤田五郎は障子を普通に閉めた。

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「僕が声を掛ける前に、斉藤さんが障子を開けたので、驚いてしまいました。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「敬一が部屋に来る状況は、気配や足音などで、直ぐに分かる。挨拶などの細かい内容は気にするな。」

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「はい。」

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「時尾さんから斉藤さんが部屋に居ると聞きました。斉藤さんと話しが出来ると嬉しいです。斉藤さんの部屋に来ました。」

藤田五郎は敬一を普通の表情で見ている。

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「今日は草餅を頂く話がありました。ありがとうございます。」

藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「お母さん。草餅の頂き物。喜びます。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「美鈴さんに草餅を受け取りに行く内容を話していないのか?」

敬一は藤田五郎に困惑した表情で小さく頷いた。

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。


部屋の外から、時尾の穏やかな声が聞こえた。

「お茶の用意。蓬のお団子の用意。出来ました。」


藤田五郎は障子を普通に開けた。


時尾がお盆を持ち、部屋の中に微笑んで入ってきた。


時尾は藤田五郎の前と敬一の前に、お茶を微笑んで置いた。

藤田五郎は時尾に普通の表情で頷いた。

時尾は敬一の前に蓬のお団子を微笑んで置いた。

敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「ありがとうございます。」

時尾は敬一を微笑んで見た。

敬一は蓬のお団子を笑顔で見た。

藤田五郎は時尾に普通の表情で頷いた。


時尾はお盆を持ち、部屋の外に微笑んで出て行った。


敬一は藤田五郎に笑顔で話し出す。

「いただきます!」

藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。

敬一は蓬のお団子を笑顔で食べた。

藤田五郎はお茶を飲みながら、敬一を普通の表情で見た。

敬一は蓬のお団子を一つ食べ終わると、藤田五郎に笑顔で話し出す。

「美味しいです!」

藤田五郎はお茶を飲みながら、敬一を普通の表情で見た。

敬一は藤田五郎に笑顔で話し出す。

「お母さんの作る蓬のお団子の次に美味しいです!」

藤田五郎はお茶を飲みながら、敬一を普通の表情で見た。

敬一は藤田五郎に慌てて話し出す。

「すいません! 時尾さんの作る蓬のお団子は、とても美味しいです!」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「敬一にとって、美鈴さんの作る物が一番に美味しい。俺も時尾も、分かっている内容だ。俺と敬一のみで話す時は、細かい気遣いは要らない。」

敬一は藤田五郎に安心した表情で話し出す。

「ありがとうございます。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「美鈴さんは蓬の団子を良く作るのか?」

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「僕がとても幼い頃から、お母さんと僕の二人で、蓬を採りに幾度も出掛けています。お母さんと一緒に蓬を採る時は楽しいです。お母さんの作る蓬のお団子は、とても美味しいです。」

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。

敬一は藤田五郎に言い難く話し出す。

「お母さんは僕に蓬のお団子を作る提案を幾度も話します。お母さんはいつも忙しいです。僕から、お母さんに蓬のお団子を作って欲しいと出来るだけ話さないようにしています。」

藤田五郎は敬一を普通の表情で見ている。

敬一は藤田五郎に言い難く話し出す。

「お母さんは、僕が黙っていても、美味しい物をたくさん作ってくれます。お母さんが僕に確認する度に、僕が食べたいと返事をしたら、お母さんの負担になります。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「美鈴さんは敬一の様子を見て確認している。美鈴さんは敬一が断り続けていると心配する。美鈴さんが敬一に確認した時に食べたいと思ったならば、美鈴さんに食べたいと返事をしろ。」

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「分かりました。次回からは、食べたいと思った時は、食べたいと返事をします。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「敬一。蓬の団子がたくさん残っている。早く食べろ。」

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「はい。」

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。

敬一は蓬のお団子を美味しく食べた。


少し後の事。


ここは、藤田五郎、妻の時尾、幼い息子の勉の住む家。


玄関。


藤田五郎は普通に居る。

時尾は包みを持ち、微笑んで居る。

敬一は微笑んで居る。


時尾は敬一に包みを渡すと、敬一に微笑んで話し出す。

「草餅が入っているの。美鈴さんと一緒に食べてね。」

敬一は時尾から包みを受け取ると、藤田五郎と時尾に微笑んで話し出す。

「ありがとうございます。」

藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。

時尾は敬一に微笑んで頷いた。

敬一は包みを持ち、藤田五郎と時尾に微笑んで軽く礼をした。

藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。

時尾は敬一に微笑んで頷いた。


敬一は包みを大事に持ち、微笑んで居なくなった。


時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「敬一君に美味しいと笑顔で言ってもらえると、とても嬉しくなります。」

藤田五郎は時尾を普通の表情で見た。

時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「敬一君にとって、一番に美味しい物は、美鈴さんの作る物ですよね。美鈴さんが羨ましいです。」

藤田五郎は時尾を普通の表情で見た。

時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「私も勉に美味しいと言ってもらえるように努力します。」

藤田五郎は時尾に普通に話し出す。

「時尾の作る物は、いつも美味い。時尾はいつも努力をしている。無理するな。」

時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「お気遣いありがとうございます。」

藤田五郎は時尾を普通の表情で見た。


少し後の事。


ここは、敬一と美鈴の住む家。


玄関。


敬一は包みを大事に持ち、微笑んで帰ってきた。


美鈴は微笑んで来た。


敬一は包みを持ち、美鈴に微笑んで話し出す。

「斉藤さんの家で時尾さんの手作りの草餅をもらったんだ。お礼は僕がしっかりと伝えたよ。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一。ありがとう。」

敬一は包みを持ち、美鈴を微笑んで見た。

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「後で草餅を一緒に食べましょう。」

敬一は包みを持ち、美鈴に微笑んで頷いた。

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「明日か明後日、一緒に蓬を採りに行きたいと思っているの。」

敬一は美鈴に微笑んで頷いた。

美鈴は敬一を微笑んで見た。


蓬のお餅に蓬のお団子。

春の香りを伝えてくれる食べ物になる。

優しい想いも伝えてくれる食べ物になる。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語は既に掲載している物語の改訂版です。

改訂前の物語を掲載するのは止めました。

以上、ご了承願います。

ここからは改訂前の後書きを加筆訂正して書きます。

この物語の補足です。

藤田五郎さんと敬一君が、逢う前の出来事、逢った以降の出来事、を想定して書きました。

藤田五郎さんと敬一君が逢った以降の多くの場面は、約一年後の時間設定です。

「草餅」について簡単ですが説明します。

雛祭りの時などに食べます。

ご存知の方も多いと思います。

「草餅」は、平安時代頃から食べられていたそうです。

宮中では平安時代から食べられていたようですが、広く食べられるようになったのは良くわかりませんでした。

物語の時間設定以前は、「草餅」を作る時には、「春の七種」の中の一つの「御形(ごぎょう)」を良く使用していたそうです。

「御形」の別名は、「母子草(ははこぐさ)」です。

そこから「母と子を一緒に搗く」と言う言葉を連想するために、縁起が良く無いという事で、江戸時代の頃から「蓬(よもぎ)」を使って「草餅」を作るようになったそうです。

「蓬」は、万葉集の歌にも詠われている、日本に古くからある植物です。

「蓬」は、お風呂、お灸、薬草、食用など、いろいろな事に使用されています。

「蓬」で「草餅」を作る時には、私の場合は、地面を這うほどの柔らかい葉を使って作ります。

蓬の葉が大きく成長をすると、葉が硬くなるためです。

全ての和菓子屋さんではありませんが、期間限定にして草餅や蓬餅を売っているのは、この事が理由の一つになっているのかなと思いました。

この物語は、染井吉野が咲く前の頃で、蓬の葉が場面を這っているような頃の出来事として書きました。

「草餅」の作り方や「蓬」の効能などについては、各自でお調べください。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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