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新撰組異聞外伝 〜 小豆粥と小正月の訪問者 〜


少し経つと小正月になろうとする頃。


ここは、東京の町。


綺麗な青空が広がっている。


沖田総司の息子の敬一と母親の美鈴の住む家。


縁。


美鈴は微笑んで空を見上げている。


敬一が美鈴の横に笑顔で来た。


美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一。小正月の朝は粥柱を入れた小豆粥を作るわね。」

敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「楽しみだな〜!」

美鈴は敬一を微笑んで見た。


ちょうど同じ頃。


ここは、東京の町


藤田五郎、妻の時尾、幼い息子の勉の住む家。


藤田五郎は出掛けているので家に居ない。

時尾と勉の二人だけとなっている。


ここは、縁。


時尾と勉は、縁に座って青空を見ている。


時尾は勉を見ると、微笑んで話し出す。

「勉。綺麗な青空ね。」

勉は時尾を見ると、笑顔で頷いた。

時尾は勉に微笑んで話し出す。

「少し経つと小正月なの。小正月の朝に小豆粥を作るの。みんなで一緒に食べましょうね。」

勉は時尾に笑顔で話し出す。

「おにいちゃん。いっしょ。たべる。」

時尾は勉に微笑んで話し出す。

「敬一君はお母さんと一緒に小豆粥を食べるの。勉はお父さんとお母さんと一緒に小豆粥を食べましょうね。」

勉は時尾に笑顔で頷いた。

時尾は勉を微笑んで見た。


その日の夜の事。


ここは、藤田五郎の家。


夕食は終わっている。

勉は部屋で寝ている。

藤田五郎と時尾の二人は、寝る時間には早いので起きている。


ここは、食卓の在る部屋。


藤田五郎と時尾は、食卓を囲んで座っている。

藤田五郎は肴を食べながら、酒を普通の表情で飲んでいる。

時尾は藤田五郎の様子を見ながら、微笑んで酌をしている。


時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「少し経つと小正月ですね。敬一君の家には小正月の訪問者は訪れるのでしょうか?」

藤田五郎は杯の酒を飲むのを止めると、時尾を普通の表情で見た。

時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「敬一君に何か出来る事はないかと思いました。」

藤田五郎は時尾に普通に話し出す。

「考えておく。」

時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「ありがとうございます。」

藤田五郎は杯の酒を普通の表情で飲み始めた。

時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「私達の家にも小正月の訪問者は訪れて欲しいですが、勉が幼いので心配です。」

藤田五郎は杯の酒を飲みながら、時尾に普通の表情で話し出す。

「確認してみる。」

時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「ありがとうございます。」

藤田五郎は普通の表情で杯の酒を飲み始めた。


それから何日か後の事。


小正月の当日となっている。


ここは、敬一と美鈴の住む家。


台所。


美鈴は微笑んで小豆粥の支度をしている。


敬一は美鈴の近くに微笑んで来た。


美鈴は小豆粥の支度をしながら、敬一を微笑んで見た。

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「お母さん。おはよう。」

美鈴は敬一を見ると、微笑んで話し出す。

「敬一。おはよう。もう少しで小豆粥の支度が整うの。待っていてね。」

敬一は美鈴に微笑んで頷いた。

美鈴は小豆粥の支度を微笑んで続けた。


敬一は食卓の在る部屋へと微笑んで居なくなった。


それから少し後の事。


ここは、食卓の在る部屋。


敬一は食卓の前に笑顔で座っている。


美鈴は小豆粥の入った鍋を持って、食卓に微笑んで来た。


敬一は美鈴を微笑んで見た。

美鈴は脇に小豆粥の入った鍋を置くと、敬一に微笑んで話し出す。

「先にお父さんの分の用意をしましょう。」

敬一は美鈴に笑顔で頷いた。

美鈴は小豆粥の入った鍋のふたを微笑んで取った。


鍋から湯気が勢い良く立ち上った。


敬一は鍋から立ち上る湯気を笑顔で見た。

美鈴は小豆粥を器に微笑んで装った。

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「お父さんに小豆粥をたくさん食べてもらおうよ。」

美鈴は敬一に微笑んで頷くと、小豆粥を器に追加した。

敬一は美鈴を微笑んで見た。

美鈴は小豆粥の入った鍋のふたを微笑んで閉じた。


敬一は沖田総司の位牌の在る部屋へと微笑んで歩き出した。

美鈴は小豆粥の入った器を持ちながら、沖田総司の位牌の在る部屋へと微笑んで歩き出した。


それから僅かに後の事。


ここは、沖田総司の位牌の在る部屋。


沖田総司の位牌の前。


美鈴は小豆粥の入った器を持ちながら、沖田総司の位牌の前に微笑んで来た。

敬一は沖田総司の位牌の前に微笑んで来た。


美鈴は沖田総司の位牌の前に、小豆粥の入った器を微笑んで置いた。

敬一は沖田総司の位牌に微笑んで話し出す。

「お父さん。今日は小正月です。お母さんが朝食に粥柱の入った小豆粥を作りました。食べてください。」

美鈴は沖田総司の位牌と敬一を微笑んで見た。


敬一と美鈴は、部屋から微笑んで出て行った。


それから僅かに後の事。


こは、食卓の在る部屋。


敬一と美鈴は、食卓の前に微笑んで座った。


敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「お母さん。今日は小正月だよね。少しだけど手伝うよ。僕に小豆粥を装わせて。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「ありがとう。」

敬一は鍋から小豆粥を器に装うと、美鈴に笑顔で差し出した。

美鈴は敬一から小豆粥の入った器を微笑んで受け取った。

敬一は小豆粥を器に笑顔で装った。

美鈴は小豆粥の入った器を持ちながら、敬一に微笑んで話し出す。

「いただきます。」

敬一は小豆粥の器を持ちながら、美鈴に笑顔で話し出す。

「いただきます!」

美鈴は敬一を微笑んで見た。

敬一は小豆粥を美味しそうに食べ始めた。

美鈴は敬一の様子を見ながら、小豆粥を微笑んで食べ始めた。


敬一は小豆粥を嬉しそうに食べ終わった。

美鈴は小豆粥を微笑んで食べ終わった。

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「お父さんが小豆粥を食べてくれたか確認しようよ。」

美鈴は敬一に微笑んで頷いた。


敬一と美鈴は、沖田総司の位牌の在る部屋へと微笑んで向かった。


それから僅かに後の事。


ここは、沖田総司の位牌の在る部屋。


沖田総司の位牌の前。


敬一は沖田総司の位牌の前に笑顔で来た。

美鈴は沖田総司の位牌の前に微笑んで来た。


敬一は沖田総司の位牌の前の小豆粥の入った器を笑顔で覗いた。


沖田総司の位牌の前の器の中の小豆粥の量に変化はない。

器の中の小豆粥は冷めているので湯気は立っていない。


敬一は器を残念そうに見た。

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「お父さんは忙しくて朝食を食べる時間がないのかも知れないわね。」

敬一は美鈴を見ると、残念そうに話し出す。

「小正月の朝に小豆粥を食べるのは、一年に一回だけの行事だよ。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「時間が経って落ち着いてから小豆粥を食べるかも知れないわね。お父さんが落ち着いて食べられるように部屋を出ましょう。」

敬一は美鈴に残念そうに頷いた。


敬一は部屋から寂しそうに出て行った。

美鈴は敬一の様子を見ながら、部屋から微笑んで出ていった。


それから僅かに後の事。


ここは、食卓の在る部屋。


敬一は食卓の前に寂しそうに来た。

美鈴は食卓の前に微笑んで来た。


敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「朝食の後片付けは僕がするね。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「ありがとう。」

敬一は美鈴を微笑んで見た。

美鈴も敬一を微笑んで見た。


敬一は卓の上に載った器や箸などをお盆に載せると、台所へと微笑んで歩き出した。


それから暫く後の事。


ここは、東京の町。


空の色は橙色に染まり始めそうな気配を見せ始めた。


ここは、敬一と美鈴の住む家。


台所。


敬一は小豆粥の入っている鍋のふたを微笑んで開けた。


鍋には小豆粥が少しだけ入っている。


敬一は小豆粥の入った鍋のふたを閉じると、台所から微笑んで居なくなった。


それから僅かに後の事。


ここは、沖田総司の位牌の在る部屋。


沖田総司の位牌の前。

小豆粥の入った器は、そのまま置いてある。


敬一は沖田総司の位牌の前の小豆粥の入った器を微笑んで見た。


器の中の小豆粥の量に変化はない。

冷めているため湯気も立っていない。


敬一は小豆粥の入った器を手に取ると、微笑んで部屋から出て行った。


それから僅かに後の事。


ここは、台所。


敬一は小豆粥の入った鍋の前に来ると、器の中の小豆粥を微笑んで鍋に戻した。


美鈴が敬一の傍に不思議そうに来た。


敬一は空の器を持ちながら、美鈴に微笑んで話し出す。

「お父さんが忙しくて小豆粥が食べられないなら、今が小正月の朝食になるかも知れないよね。お父さんには温かい小豆粥を食べて欲しいから、温め直そうと思ったんだ。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「お母さんも手伝うわ。」

敬一は空の器を持ちながら、美鈴に微笑んで話し出す。

「僕の考えだから一人でやるよ。」

美鈴は敬一を微笑んで見た。

敬一は空の器を持ちながら、美鈴に苦笑した表情で話し出す。

「僕が台所に居たら夕飯の支度が出来なくなるね。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「お母さんもお父さんに温かい小豆粥を食べてもらいたいわ。三人分の夕飯の支度も一緒にしましょう。」

敬一は空の器を持ちながら、美鈴に微笑んで頷いた。


美鈴と敬一は、小豆粥の温め直しと夕飯支度を微笑んで始めた。


それから少し後の事。


ここは、東京の町。


陽が落ち始めて、紺色の空になってきた。


穏やかな小正月の夜になろうとしている。


ここは、藤田五郎の家。


勉は先に夕飯を終えて、部屋で寝ている。

藤田五郎と時尾は、夕飯の時間なっている。


ここは、食卓の在る部屋。


藤田五郎と時尾は、食卓を囲んで夕食を食べている。


時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「勉は気持ち良さそうに寝ています。小正月の訪問者が訪れても、勉は寝かせたままにしておこうと思います。」

藤田五郎は時尾に普通の表情で頷いた。

時尾は藤田五郎を微笑んで見た。


それから少し後の事。


ここは、藤田五郎の部屋。


藤田五郎は夕食を終えて、部屋の中に普通に入ってきた。


部屋の中が突然に暖かくなった。


藤田五郎は横を普通の表情で見た。


沖田総司は藤田五郎を笑顔で見ている。


藤田五郎は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は藤田五郎に笑顔で話し出す。

「斉藤さん! こんばんは! 小正月の訪問者です!」

藤田五郎は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。普通だな。」

沖田総司は藤田五郎に苦笑しながら話し出す。

「神様や氏神様や鬼の格好は、恥ずかしくて出来ませんでした。」

藤田五郎は沖田総司に普通に話し出す。

「見慣れた姿で小正月の訪問者と言われても雰囲気が無い。」

沖田総司は藤田五郎を苦笑しながら見た。

藤田五郎は沖田総司に普通に話し出す。

「今の言葉は訂正する。総司はそのままの姿が一番良い。」

沖田総司は藤田五郎を苦笑しながら見ている。

藤田五郎は沖田総司に普通に話し出す。

「俺の家に小正月の訪問者として訪れたのだから、敬一と美鈴さんの家にも早く行け。二人は総司が小豆粥を食べるのを待っているはずだ。」

沖田総司は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「ありがとうございます。時間の許す限り、敬一と美鈴の傍に居ます。」

藤田五郎は沖田総司に普通の表情で頷いた。


沖田総司は微笑みながら静かに居なくなった。


藤田五郎は普通に部屋を出た。


ここは、藤田五郎の部屋の前に在る縁。


藤田五郎は縁に立つと、普通の表情で庭を見た。


庭の姿は変わらない。


藤田五郎は時尾と勉の部屋へと普通に歩き出した。


それから僅かに後の事。


ここは、時尾と勉の部屋。


藤田五郎は部屋の中に普通に入ってきた。


時尾は藤田五郎を微笑んで見た。

勉は気持ち良さそうに眠っている。

藤田五郎は時尾の横に来ると、勉の様子を普通の表情で見た。

勉は床の中で気持ち良さそうに眠っている。

時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「小正月の訪問者は、まだ訪れていないようですね。」

藤田五郎は時尾に普通に話し出す。

「先程着たが、直ぐに別の家に行ってもらった。」

時尾は藤田五郎を微笑んで見た。

藤田五郎は時尾と勉を普通の表情で見た。

時尾は藤田五郎と勉を微笑んだ表情で見た。


それから少し後の事。


ここは、敬一と美鈴の住む家。


敬一と美鈴は、既に夕食を終えている。


ここは、沖田総司の位牌の在る部屋。


敬一と美鈴は、部屋の中に微笑んで入ってきた。


敬一は沖田総司の位牌の小豆粥の入った器を笑顔で覗いた。


小豆粥の入った器は空になっている。


敬一は美鈴を見ると、笑顔で話し出す。

「お母さん! お父さんが小豆粥を食べてくれたよ!」

美鈴は敬一を見ると、微笑んで頷いた。

敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「正確には違うけれど、夜に小豆粥を食べたから、小正月の訪問者になるのかな?!」

美鈴は敬一に微笑んで頷いた。

敬一は沖田総司の位牌の空の器を手に取ると、美鈴に笑顔で話し出す。

「僕が器を洗うね!」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一。ありがとう。」

敬一は空の器を持ちながら、美鈴に笑顔で頷いた。


敬一は空の器を持ちながら、笑顔で部屋を出て行った。

美鈴は敬一の後に続いて、微笑んで部屋から出て行った。


藤田五郎と時尾と勉の住む家と、敬一と美鈴の住む家に、少し不思議な小正月の訪問者が訪れた。

藤田五郎だけが、少し不思議な小正月の訪問者を知っている。


不思議な小正月の訪問者が訪れる小正月の時間は、穏やかに過ぎていく。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

「小正月(こしょうがつ)」は、「陰暦の一月十五日、又は、陰暦の一月十五日を前後数日ほど含んだ日」を言います。

ちなみに、「一月一日から七日」までを「大正月(おおしょうがつ)」と言います。

現在の「小正月」は、現在の暦で「一月十五日」を「小正月」としている場合が多いです。

現在の「松の内」は、一月一日から一月七日を差している事が多いです。

本来は、元日から「小正月」までを松の内としているそうです。

現在でも「小正月」までを松の内としている地域があるそうです。

「小正月」には「二番正月」という別名があります。

「松の内」に忙しく働いた主婦をねぎらう意味で「女正月」と呼ぶ地方もあるそうです。

「小正月」の朝に「小豆粥(あずきがゆ)」を食べるという習慣があります。

「上元(じょうげん)」の日に「小豆粥」を食べると、一年中の疫病が避けられると言われているそうです。

「小豆粥」は、「小豆を入れて煮たお粥」です。

「小豆粥」は「桜粥(さくらがゆ)」という別な呼び方もあるそうです。

「小正月」に食べる「小豆粥」は、「お餅」も入れて食べる事が多いそうです。

この「お餅」を「粥柱(かゆばしら)」と言うそうです。

「小正月の訪問者(こしょうがつのほうもんしゃ)」は、「小正月の夜に家々を訪れて祝言を述べて回る年神に扮装した人」を言います。

「小正月の訪問者」の中には「なまはげ」がいます。

ちなみに、この物語では藤田五郎さんも沖田総司さんも扮装はしていません。

この物語の時間設定は、藤田五郎さんと敬一君が出逢ってから初めて迎える「小正月」になります。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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