このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

新撰組異聞外伝 〜 節分の頃 数え年 〜


〜 改訂版 〜


今は正月と呼ぶ月。


ここは、東京。


正月に関連する行事も一通り終わり、次の月へと移ろうとしている。


寒い日が続いている。


或る日の事。


ここは、藤田五郎、妻の時尾、幼い息子の勉、生まれて数ヶ月の息子の剛の住む家。


沖田総司の息子の敬一が元気良く訪ねている。


客間。


時尾は微笑んで居る。

勉は笑顔で居る。

敬一は微笑んで居る。

敬一の前には、温かい湯気の立ち上る焙じ茶が置いてある。


敬一は勉に微笑んで話し出す。

「勉君。一緒に居ると楽しいね。」

勉は敬一に笑顔で話し出す。

「いっしょ。たのしい。」

敬一は勉を笑顔で見た。

時尾は勉に微笑んで話し出す。

「勉。敬一君と少し話したいの。少し待っていてね。」

勉は時尾に笑顔で話し出す。

「はなし。おわる。まつ。」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一君。今年も節分の豆撒きを一緒に行ないたいと思ったの。」

敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「お母さんに相談してから返事をしたいです。良いですか?」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「分かったわ。」

敬一は時尾を微笑んで見た。

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「昨年の節分は、敬一君と一緒に豆撒きを行なえたから、私も勉も、とても楽しい節分を過ごせたの。今年も一緒に豆撒きを行なえると良いなと思っているの。」

敬一は時尾に照れて話し出す。

「僕も楽しい節分が過ごせました。時尾さんと勉君に、楽しんで頂けて嬉しいです。」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一君。照れないで。」

勉は敬一に笑顔で話し出す。

「まめまき。いっしょ。」

敬一は勉に微笑んで話し出す。

「豆撒きが一緒に行なえない可能性があるから、期待しないで待っていてね。」

勉は敬一に笑顔で話し出す。

「まつ。」

敬一は勉に微笑んで話し出す。

「勉君。一緒に遊ぼう。」

勉は敬一に笑顔で話し出す。

「あそぶ。」

時尾は勉と敬一を微笑んで見た。


暫く後の事。


ここは、敬一と母親の美鈴の住む家。


食卓の有る部屋。


敬一は笑顔で居る。

美鈴は微笑んで居る。

食卓には、温かい湯気の立ち上る焙じ茶が置いてある。


敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「今年も斉藤さんの家の豆撒きに誘われたんだ。節分の日に出掛けても良いかな?」

美鈴は敬一に微笑んで頷いた。

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「斉藤さんの家に早い内に返事を伝えるね。」

美鈴は敬一に微笑んで頷いた。

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「僕達の豆撒きは、僕が斉藤さんの家から帰った後でも間に合うよね。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「今年は敬一に迷惑を掛けないように予定を空けたの。敬一が帰るまでに準備を終わらせるわ。敬一は、斉藤さんとご家族と一緒に、楽しんで節分を過ごしなさい。」

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「外せない用事が出来たら、僕に遠慮しないで用事を優先してね。準備を早めに終えれば、お母さんが帰った後に節分を行なっても間に合うと思うんだ。」

美鈴は敬一に微笑んで頷いた。

敬一は美鈴を微笑んで見た。


数日後の事。


今は夜。


ここは、藤田五郎、時尾、勉、剛の住む家。


勉と剛は、部屋で既に寝ている。

藤田五郎と時尾は、普段どおりに起きている。


食卓の有る部屋。


藤田五郎は杯の酒を普通の表情で飲んでいる。

時尾は微笑んで酌をしている。

食卓には、酒と肴が載っている。


時尾は藤田五郎の杯に酌をしながら、藤田五郎に微笑んで話し出す。

「敬一君が節分の豆撒きを一緒に行ってくれるそうです。」

藤田五郎は杯の酒を飲みながら、時尾に普通の表情で頷いた。

時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「敬一君が、今年は美鈴さんと二人で豆撒きが行なえると、楽しく話していました。敬一君を豆撒きに誘わない方が良かったのかと悩んでしまいました。」

藤田五郎は杯の酒を飲みながら、時尾に普通に話し出す。

「美鈴さんは、都合が悪ければ、敬一に断るように話す。敬一は了承の返事をしたのだろ。問題無い。」

時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「当日は敬一君の帰宅が遅くならないように気に掛けます。」

藤田五郎は杯の酒を飲みながら、時尾に普通の表情で頷いた。

時尾は藤田五郎を微笑んで見た。

藤田五郎は杯の酒を飲むのを普通の表情で止めた。

時尾は藤田五郎を微笑んで見た。

藤田五郎は時尾に普通に話し出す。

「部屋に戻る。」

時尾は藤田五郎に微笑んで軽く礼をした。


藤田五郎は普通に居なくなった。


少し後の事。


ここは、藤田五郎、時尾、勉、剛の住む家。


藤田五郎の部屋の前に在る縁。


藤田五郎は普通に歩いてきた。


藤田五郎は庭を普通の表情で見た。


庭には、季節外れの桜の花が咲いている。


藤田五郎は視線を普通に戻した。


藤田五郎は部屋の中に普通に入っていった。


直後の事。


ここは、藤田五郎、時尾、勉、剛の住む家。


藤田五郎の部屋。


藤田五郎は部屋の中に普通に入った。


部屋の中は、節分が近い頃に思えない暖かさに包まれている。


藤田五郎は横を普通の表情で見た。


沖田総司が藤田五郎を微笑んで見ている。


藤田五郎は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「敬一と鈴に、気を遣って頂いてありがとうございます。」

藤田五郎は沖田総司に普通に話し出す。

「礼を言われる理由が見当たらない。」

沖田総司は藤田五郎を微笑んで見た。

藤田五郎は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は藤田五郎に寂しい微笑みで話し出す。

「敬一と鈴が、節分の日に三人分の歳の数の豆を用意します。敬一と鈴は、新しい年を迎える度に豆の数が一つずつ増えていきます。私は同じ豆の数のままです。」

藤田五郎は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は藤田五郎に苦笑して話し出す。

「当たり前の内容を話していると思っていますね。」

藤田五郎は沖田総司に普通に話し出す。

「総司が当たり前の内容だと思わないから話しているのだろ。悩まずに、続きを話せ。」

沖田総司は藤田五郎を寂しい微笑みで見た。

藤田五郎は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は藤田五郎を見ながら、寂しい様子でため息をついた。

藤田五郎は沖田総司に普通に話し出す。

「美鈴さんと敬一は、笑顔で生活している。総司。落ち込むな。」

沖田総司は藤田五郎を寂しい微笑みで見た。

藤田五郎は沖田総司に普通に話し出す。

「落ち込む総司を慰める。面倒な行為になる。仕方が無い。総司を節分の日に呼ぶ。後は自分で何とかしろ。」

沖田総司は藤田五郎に苦笑して話し出す。

「ありがとうございます。」

藤田五郎は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「戻る時間が近付きました。」

藤田五郎は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は藤田五郎に微笑んで軽く礼をした。

藤田五郎は沖田総司に普通の表情で頷いた。


沖田総司は微笑んで、静かに居なくなった


数日後の事。


節分の当日を迎えた。


ここは、敬一と美鈴の住む家。


玄関。


敬一は笑顔で居る。

美鈴は微笑んで居る。


美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「斉藤さんとご家族に、迷惑を掛けないようにね。」

敬一は美鈴に笑顔で頷いた。

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一。気を付けて行ってらっしゃい。」

敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「行ってきます!」

美鈴は敬一を微笑んで見た。


敬一は元気良く居なくなった。


少し後の事。


ここは、藤田五郎、時尾、勉、剛の住む家。


藤田五郎は、仕事に出掛けているので家に居ない。

時尾、勉、剛は、家に居る。


敬一が元気良く訪ねている。


藤田五郎の家から、楽しい声が聞こえた。

「鬼は外〜! 福は内〜!」

「鬼は外〜 福は内〜」

「おにはそと〜! ふくはうち〜!」


時尾、勉、敬一にとって、楽しい節分の時間が過ぎていく。


暫く後の事。


ここは、敬一と美鈴の住む家。


食卓の有る部屋。


敬一は笑顔で居る。

美鈴は微笑んで居る。

食卓の上には、豆の入る枡や小さい包みが置いてある。


美鈴は敬一に枡を微笑んで渡した。

敬一は美鈴から枡を笑顔で受け取った。

美鈴は枡を取ると、敬一に微笑んで話し出す。

「豆撒きを始めましょう。」

敬一は枡を持ち、美鈴に笑顔で頷いた。


僅かに後の事。


ここは、敬一と美鈴の住む家。


一室。


敬一は豆を撒きながら、笑顔で声を出す。

「鬼は外〜! 福は内〜!」

美鈴は豆を撒きながら、微笑んで声を出す。

「鬼は外〜 福は内〜」

敬一は枡を持ち、美鈴を微笑んで見た。

美鈴も枡を持ち、敬一を微笑んで見た。


敬一と美鈴にとって楽しい時間が過ぎていく。


少し後の事。


ここは、敬一と美鈴の住む家。


敬一と美鈴の豆撒きが終わった。


食卓の有る部屋。


敬一は笑顔で居る。

美鈴は微笑んで居る。

食卓の上には、空の枡と小さい包みが置いてある。


美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「歳の数の豆を食べましょう。」

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「お父さんの分の豆を持って行っても良いかな?」

美鈴は敬一に小さな包みを微笑んで渡した。

敬一は美鈴から小さい包みを受け取ると、敬一に微笑んで話し出す。

「僕の分の豆ももらって良いかな?」

美鈴は敬一に小さな包みを微笑んで渡した。


敬一は小さい包みを持ち、美鈴から小さい包みを微笑んで受け取った。

美鈴は敬一を微笑んで見た。

敬一は小さい包みを持ち、美鈴に微笑んで話し出す。

「お父さんの部屋に行くね。」

美鈴は敬一に微笑んで頷いた。


敬一は小さい包みを持ち、微笑んで居なくなった。


僅かに後の事。


ここは、敬一と美鈴の住む家。


沖田総司の位牌の在る部屋。


沖田総司の位牌の前。


敬一は小さい包みを持ち、微笑んで居る。


敬一は沖田総司の位牌の前に二つの小さい袋を置くと、沖田総司の位牌に微笑んで話し掛ける。

「お父さんの分の豆を用意したんだ。歳の数の豆は、節分の日の間にゆっくりと食べてね。残った豆は、少し時間をずらして食べてね。」


敬一は部屋の外へ微笑んで出て行った。


少し後の事。


ここは、敬一と美鈴の住む家。


食卓の有る部屋。


美鈴は食卓の傍に微笑んで座っている。


敬一は部屋の中に笑顔で入った。


美鈴は敬一を微笑んで見た。


敬一は食卓の前に笑顔で座った。


美鈴は敬一に不思議な様子で話し出す。

「敬一の分の豆を入れた包み。何処に置いたの?」

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「後で食べたいと思ったから、お父さんの所に置いてきた。」

美鈴は小さい包みを渡すと、敬一に微笑んで話し出す。

「節分の豆は、縁起物になるわ。歳の数の豆を食べて、ご利益に与りましょう。」

敬一は美鈴から小さい包みを微笑んで受け取った。

美鈴は敬一を微笑んで見た。

敬一は小さい包みを持ち、美鈴に微笑んで話し出す。

「お父さんの部屋で豆を一緒に食べよう。」

美鈴は敬一に微笑んで頷いた。

敬一は小さい包みを持ち、美鈴を笑顔で見た。

美鈴は小さい包みを微笑んで持った。


敬一は小さい包みを持ち、笑顔で居なくなった。

美鈴は小さい包みを持ち、微笑んで居なくなった。


僅かに後の事。


ここは、敬一と美鈴の住む家。


沖田総司の位牌の在る部屋。


沖田総司の位牌の前には、敬一が置いた二つの小さい包みが有る。


敬一は微笑んで居る。

美鈴も微笑んで居る。

敬一の傍と美鈴の傍には、小さい包みが置いてある。


美鈴は敬一に微笑んで話し出す

「お父さんが食べやすいように包みを一つにしましょう。」

敬一は美鈴に微笑んで頷いた。

美鈴は二つの小さい包みを、一つの包みに微笑んでまとめた。

敬一は美鈴を微笑んで見た。

美鈴も敬一を微笑んで見た。

敬一は小さい包みを広げると、沖田総司の位牌と美鈴に微笑んで話し掛ける。

「いただきます。」

美鈴は小さい包みを広げると、沖田総司の位牌と敬一に微笑んで話し掛ける。

「いただきます。」

敬一は小さい包みから豆を取ると、笑顔で食べ始めた。

美鈴は小さい包みから豆を取ると、微笑んで食べ始めた。


翌日の事。


ここは、敬一と美鈴の住む家。


沖田総司の位牌の在る部屋。


敬一は沖田総司の位牌の前の小さい包みを微笑んで見た。


小さい包みの中に豆が残る様子が分かる。


敬一は小さい包みを寂しい表情で取った。


小さい包みの中の豆の数が減っている様子が分かった。


敬一は小さい包みを不思議な様子で広げた。


小さい包みの中には、敬一の歳の数の豆が残っていた。


敬一は小さい包みを持ち、沖田総司の位牌を見ると、沖田総司に微笑んで話し出す。

「お父さん。ありがとう。お母さんと分けて食べるね。」


敬一は小さい包みを持ち、部屋の外へ微笑んで出て行った。


敬一の歳の数だけ残った節分の豆は、沖田総司、藤田五郎、敬一、美鈴の想いが重なった節分の豆になる。

節分を過ぎたのでご利益には与れないかも知れないが、たくさんの想いが込められた節分の豆になる。




*      *      *      *      *      *




ここからは、後書きになります。

この物語は既に掲載している物語の改訂版です。

改訂前の物語の展開や雰囲気を出来るだけ残して改訂しました。

改訂前の物語を掲載するのは止めました。

以上、ご了承願います。

ここからは改訂前の後書きを加筆訂正して書きます。

この物語は、藤田五郎さんと敬一君が逢ってから二度目の節分の頃を想定して書きました。

この物語で登場する前回の節分の話は、「新撰組異聞外伝 短編 節分」の出来事が基になっています。

藤田五郎さんと時尾さんの間には、次男の剛君が前年の十月に生まれている事になります。

節分の豆が敬一君の歳の数だけ残っていた理由は、皆様のご想像にお任せいたします。

「節分(せつぶん)」についてです。

幾つか意味がありますが、この物語では「立春の前日」を差します。

現在の「立春の前日」は、「二月三日」を差す事がほとんどだと思います。

本来は、各季節の始まりの日(立春・立夏・立秋・立冬)の前日を言います。

現在では、「春の節分」だけが行われています。

季節の変わり目には邪気が生じると考えられています。

邪気を追い払うために、この日の夕暮れに柊の鰯の頭を刺したものを戸口に立てておいたり、炒った大豆を撒いて歳の数だけ食べたりする風習があります。

敬一君の時代には、既に、豆を撒いたり豆を食べたりする風習はあったようです。

しかし、鬼の役を決めて豆を投げるという事をするのが、いつから始まったのかは分かりませんでした。

「節分」という行事自体はかなり古くから宮中で行なっていました。

しかし、その時の様子は、現在とは少し違っていたようです。

「数え年(かぞえどし)」についてです。

「生まれた年を一歳として、正月ごとに一歳ずつ増やして数える年齢」です。

現在は「数え年」ではありませんが、昔は「数え年」のため、正月を境に全員が一歳ずつ増えていました。

数え年だった頃は、「数えで何歳。数え年は何歳。」の言い方をする事がありました。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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