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新撰組異聞外伝 〜 弥生の頃 鼓草が咲いて 〜


〜 改訂版 〜


沖田総司には、とても大切に想う二人の家族がいた。

沖田総司がとても大切に想う二人の家族は、息子の敬一、妻の美鈴、になる。

沖田総司は明治と呼ぶ時代を迎える前に病で亡くなった。


沖田総司は、敬一に一度も逢えずに亡くなった。

沖田総司、敬一、美鈴は、三人で同じ場所で同じ時間を一度も過ごしていない。


幾日もの日々が過ぎた。


明治と呼ぶ時代となっている。


武士の時代は終わり、新しい政府の時代になっている。


今は春の季節。


ここは、京。


色とりどりの春の花が綺麗に咲いている。


敬一と美鈴は、幕府側の関係者の家族だと分からないように、静かに過ごしている。


ここは、幼い敬一と美鈴の住む家。


庭。


美鈴は敬一の様子を見ながら、洗濯物を微笑んで干している。

敬一は美鈴を笑顔で見ている。


美鈴は洗濯物を干すのを止めると、敬一を微笑んで見た。

敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「てつだう。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一。ありがとう。今の敬一には、洗濯物は大きくて重いの。敬一が手伝うのは大変なの。お母さんが一人で干すわ。」

敬一は美鈴に寂しく話し出す。

「てつだう。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「お母さん。洗濯物を干し終わったら、花を見に行きたいと思っているの。敬一も一緒に来てくれるかしら。」

敬一は美鈴に寂しく話し出す。

「てつだう。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「お母さんが花を見に行く時に、敬一に手伝いを頼みたいと思っているの。良いかしら?」

敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「てつだう。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一。ありがとう。」

敬一は美鈴を笑顔で見た。

美鈴は洗濯物を微笑んで干した。

敬一は美鈴を笑顔で見た。


暫く後の事。


ここは、京。


蒲公英の花のたくさん咲く場所。


美鈴は微笑んで座っている。

敬一は笑顔で座っている。


美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「蒲公英の花が綺麗に咲いているわね。お父さんにも蒲公英の花を見てもらいましょう。」

敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「おとうさん。たんぽぽ。みる。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一。お母さんと一緒に蒲公英の花を一緒に摘んでくれる?」

敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「てつだう。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一。ありがとう。」

敬一は美鈴を笑顔で見た。

美鈴は傍に咲く蒲公英の花を微笑んで摘んだ。

敬一は傍に咲く蒲公英の花を摘むと、美鈴に蒲公英の花を笑顔で渡した。

美鈴は敬一から蒲公英の花を受け取ると、敬一に微笑んで話し出す。

「敬一。ありがとう。お父さんが喜ぶわ。」

敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「てつだう。」

美鈴は蒲公英の花を持ち、敬一に微笑んで話し出す。

「蒲公英の花を少し多く摘みましょう。」

敬一は美鈴に笑顔で頷いた。

美鈴は蒲公英の花を持ち、敬一を微笑んで見た。

敬一は蒲公英の花を摘むと、美鈴に蒲公英の花を笑顔で渡した。

美鈴は蒲公英の花を持ち、敬一から蒲公英の花を微笑んで受け取った。

敬一は美鈴を笑顔で見た。

美鈴は数本の蒲公英の花を持ち、敬一に微笑んで話し出す。

「敬一。家に帰りましょう。」

敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「たんぽぽ。もつ。」

美鈴は数本の蒲公英の花を持ち、敬一に微笑んで話し出す。

「蒲公英はお母さんが持って家まで帰るわ。敬一はお父さんとお話しをする時に手伝ってね。」

敬一は美鈴に笑顔で頷いた。


敬一は笑顔で歩き出した。

美鈴は数本の蒲公英の花を持ち、敬一を見ながら、微笑んで歩き出した。


幾つかの季節が過ぎた。


美鈴と敬一は、東京に住まいを替えて暮らしている。


季節は春になっている。


ここは、東京。


染井吉野の花の咲く頃になっている。


藤田五郎と敬一は、染井吉野の花の咲く中で逢った。


更に幾日か経った。


季節は春になっている。


ここは、東京。


染井吉野の花がほとんど散った姿や染井吉野の葉桜になった姿を、見るようになった。


ここは、敬一と美鈴の住む家の近く。


敬一は元気良く歩いている。


たくさんの蒲公英の花の咲く様子が見えた。


敬一は笑顔で立ち止まった。


敬一は蒲公英の花を笑顔で見た。


蒲公英の花は綺麗に咲いている。


敬一は数本の蒲公英の花を笑顔で摘んだ。


辺りに心地好い風が吹いた。


敬一は数本の蒲公英の花を大事に持ち、元気良く歩き出した。


少し後の事。


ここは、敬一と美鈴の住む家。


玄関。


敬一は数本の蒲公英の花を持ち、元気良く帰ってきた。


美鈴は微笑んで現れた。


敬一は数本の蒲公英の花を持ち、美鈴に微笑んで話し出す。

「お父さんに見て欲しくて蒲公英の花を摘んだんだ。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「花瓶を直ぐに用意するわね。」

敬一は美鈴に数本の蒲公英の花を微笑んで渡した。

美鈴は敬一から数本の蒲公英の花を微笑んで受け取った。

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「僕は、今から斉藤さんの家に出掛けるね。お母さんはお父さんと二人で、蒲公英の花を見ながら、楽しんで話してね。」

美鈴は数本の蒲公英の花を持ち、敬一に不思議な様子で話し出す。

「敬一はお父さんと話さないの?」

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「お父さんと話してから斉藤さんの家に出掛けるね。」

美鈴は数本の蒲公英の花を持ち、敬一に微笑んで頷いた。

敬一は美鈴を微笑んで見た。


少し後の事。


ここは、敬一と美鈴の住む家。


沖田総司の位牌の在る部屋。


沖田総司の位牌の前。


美鈴は蒲公英の花を挿した小さな花瓶を持ち、微笑んで居る。

敬一は微笑んで居る。


美鈴は蒲公英の花を挿した小さな花瓶を、沖田総司の位牌の前に微笑んで静かに置いた。

敬一は沖田総司の位牌に微笑んで話し出す。

「蒲公英の花が綺麗に咲いていたから、お父さんに見て欲しくて摘んだんだ。お母さんと一緒に楽しんで見てね。」

美鈴は敬一を微笑んで見た。

敬一は美鈴を微笑んで見た。


暫く後の事。


ここは、藤田五郎、妻の時尾、幼い息子の勉の住む家。


藤田五郎は仕事で居ない。

時尾と勉は、居る。


玄関。


藤田五郎が普通に帰ってきた。


時尾は微笑んで現れた。


藤田五郎は時尾に普通の表情で頷いた。

時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「五郎さん。お帰りなさい。」

藤田五郎は時尾に普通の表情で頷いた。


勉が数本の蒲公英の花を持ち、笑顔で現れた。


藤田五郎は勉を普通の表情で見た。

勉は数本の蒲公英の花を持ち、藤田五郎に笑顔で話し出す。

「おかえり。」

藤田五郎は勉に普通の表情で頷いた。

勉は藤田五郎に数本の蒲公英の花を渡すと、藤田五郎に笑顔で話し出す。

「おとうさん。たんぽぽ。みる。」

藤田五郎は勉から数本の蒲公英の花を普通の表情で受け取った。

時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「今日は、五郎さんの以前の同僚の息子さんが訪ねてきました。息子さんが、お父さんに見てもらうために、蒲公英の花を摘んだと話しました。勉もお父さんに蒲公英の花を見てもらうと話しました。私と勉と息子さんの三人で、蒲公英の花を摘みに出掛けました。蒲公英の花を先程まで器に挿して飾っていました。五郎さんが帰る時間を見計らって丁寧に蒲公英の茎を拭きました。蒲公英の茎は汚れていないと思います。」

藤田五郎は数本の蒲公英の花を持ち、時尾に普通に話し出す。

「食事の時に蒲公英の花を食卓に飾ってくれ。食事が終わったら、俺の部屋に蒲公英の花を飾ってくれ。」

時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「分かりました。」

藤田五郎は時尾に数本の蒲公英の花を普通に渡した。

時尾は藤田五郎から数本の蒲公英の花を微笑んで受け取った。

勉は藤田五郎と時尾を笑顔で見た。


少し後の事。


ここは、藤田五郎、時尾、勉の住む家。


勉は自分の部屋で寝ている。

藤田五郎と時尾は、普段通りに起きている。


食卓の在る部屋。


食卓には、数本の蒲公英の花が小さな花瓶に挿して飾ってある。

蒲公英の花は、時間の関係で閉じ掛けている。


藤田五郎は蒲公英を見ながら、普通の表情で食事をしている。

時尾は藤田五郎と蒲公英を微笑んで見ている。


暫く後の事。


ここは、藤田五郎、時尾、勉の住む家。


藤田五郎の部屋。


藤田五郎は普通の表情で居る。


机には、数本の蒲公英の花が小さな花瓶に挿して飾ってある。


藤田五郎は蒲公英を普通の表情で見た。


蒲公英の花は時間の関係で閉じている。

蒲公英の花の閉じている姿は、小さな花瓶の中で眠っているように見える。


藤田五郎は蒲公英を見ながら、普通の表情で呟いた。

「月明かりの下で、蒲公英の花の咲く姿を見ながら酒が飲みたい。総司は、不思議な言動をする、不思議な出来事を起こせる。総司を呼び出す。暫くの間、俺の傍に総司を居させる。」


部屋の中が、穏やかさと困惑を含む不思議な空気に包まれた。


藤田五郎は障子を普通の表情で静かに開けた。


庭の桜が満開になって咲いている。


藤田五郎は横を普通の表情で見た。


藤田五郎にとって、穏やかだが不思議な春の夜が始まろうとしている。




*      *       *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語は既に掲載している物語の改訂版です。

改訂前の物語の展開や雰囲気を出来るだけ残して改訂しました。

改訂前の物語を掲載するのは止めました。

以上、ご了承願います。

ここからは改訂前の後書きを加筆訂正して書きます。

「鼓草(つづみぐさ)」についてです。

「蒲公英(たんぽぽ)」の別名です。

題名は「鼓草」にしましたが、物語の中では「蒲公英」と「たんぽぽ」にしました。

「蒲公英」は、薬用などに使われていたそうです。

「蒲公英」は、古くから咲く花のようです。

「西洋蒲公英」は、明治時代になってから日本に渡来したようです。

「日本蒲公英」が、いつから咲いているのか良く分かりませんでした。

最近の良く見掛ける「蒲公英」は、「西洋蒲公英」が多いようです。

「日本蒲公英」は、観る機会が少ないかも知れませんが、咲く場所は在ります。

関東で咲いているのが「関東蒲公英(かんとうたんぽぽ)」、関西で咲いているのが「関西蒲公英(かんさいたんぽぽ)」、と呼ばれているそうです。

「関東蒲公英」の開花時期は、三月下旬から五月中旬頃で、見頃は四月頃です。

「日本の蒲公英」は、雨の日や夜は閉じます。

この物語では、藤田五郎さんが家に帰ったのは、ある程度の時間になっているので、閉じ掛けている蒲公英を見た事になります。

白詰草で冠を作る事が多いですが、蒲公英でも冠を作る事はあります。

私は残念ながら蒲公英で冠を作った事はありません。

蒲公英で冠を作った人の話を書くと、手がべとべとになり作り難いとの事でした。

敬一君が藤田五郎さんに自分の名前を名乗るのは、今回の物語より後の出来事になります。

沖田総司さんは藤田五郎さんに敬一君の名前を教えていないため、藤田五郎さんも時尾さんも敬一君の名前を知りません。

その関係で、時尾さんは敬一君の名前を言わずに、「息子さん」という抽象的な呼び方をしています。

「弥生」についてです。

「やよい」と読むと、「陰暦三月の異称」です。

「いやよい」と読むと、「陰暦三月に異称。草木がますます生い茂ること。」です。

この物語では「やよい」と読んでいます。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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