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新撰組異聞外伝 〜 蝋梅の花の香りが包む頃 〜


〜 改訂版 〜


時は明治。


治世が幕府から政府に移って数年が経った。


幕府側で最後まで政府に戦った本人や身内への扱いは冷たい。

本人も身内も、静かに暮らす者が多い。


沖田総司は新撰組の一番組組長を務めていた。

新撰組の隊士の中では名前が知られる一人になる。


沖田総司は、途中で病になり、幕府と政府の戦いにほとんど加われなかった。

幕府と政府の戦いの結末を知らずに療養先で亡くなった。

新撰組隊士として亡くなったため、戦いにほとんど加わっていなくても、世間では幕府側の人物と考えられている。


沖田総司の幼い息子の敬一と母親の美鈴は、沖田総司の身内と気付かれないように暮らしている。


敬一と美鈴は、制限のある暮らしになっているが、穏やかに暮らしている。


今の暦は、臘月。


季節は冬になる。


ここは、京都。


寒い日が続いている。


ここは、落ち着いた雰囲気の寺。


境内。


季節の花が咲いている。


敬一は笑顔で居る。

美鈴は微笑んで居る。


参拝者は、敬一と美鈴のみになる。


敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「おかあさん。げんき。くらす。おまいり。する。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「お母さんは、敬一が笑顔で元気に過ごせるようにお参りするわね。」

敬一は美鈴を笑顔で見た。

美鈴は敬一を微笑んで見た。


僅かに風が吹いた。


敬一は境内を不思議な様子で見た。

美鈴は敬一に心配して話し出す。

「敬一。寒いの?」

敬一は美鈴を見ると、美鈴に笑顔で話し出す。

「さむくない。」

美鈴は敬一を安心した表情で見た。

敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「おいしい。かおり。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「蝋梅の花がお母さんと敬一の傍で咲いているの。敬一の話す香りは、蝋梅の香りかしら?」

敬一は美鈴を笑顔で見た。

美鈴は微笑んで近くを指した。

敬一は美鈴の指す先を笑顔で見た。


蝋梅の花が敬一と美鈴の傍に咲いている。


敬一は美鈴を見ると、美鈴に笑顔で話し出す。

「おいしい。かおり。ろうばい。」

美鈴は敬一を微笑んで見た。

敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「ろうばい。おいしい?」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「蝋梅の花は、蝋細工のように綺麗で、甘い香りがするけれど、食べないの。蝋梅の花と蝋梅のつぼみは、薬に使われているの。」

敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「ろうばい。たべない。みる。くすり。だいじ。」

美鈴は敬一に微笑んで頷いた。

敬一は蝋梅を笑顔で見た。

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一。お参りが終わったら、和尚さんに頼んで蝋梅を少しだけ分けてもらいましょうか。」

敬一は美鈴を見ると、美鈴に笑顔で頷いた。

美鈴は敬一を微笑んで見た。


敬一は笑顔で歩き出した。

美鈴は敬一を見ながら、微笑んで歩き出した。


暫く後の事。


ここは、京都。


夜空には月と星が静かに輝いている。


ここは、敬一と美鈴の住む家。


敬一と美鈴の部屋。


机の上に、蝋梅を挿した花瓶が飾ってある。


蝋梅の花の甘い香りが部屋を包んでいる。


敬一は床の中で気持ち良く眠っている。

美鈴は床の上に座り、敬一を微笑んで見ている。


敬一は床の中で眠りながら、微笑んで呟いた。

「おいしい。」

美鈴は床の上に座り、敬一に微笑んで話し出す。

「敬一。明日は蝋梅の花の香りに負けないお菓子を用意するわね。」

敬一は床の中で気持ち良く眠っている。

美鈴は床に横になると、微笑んで目を閉じた。


幾つもの季節が過ぎた。


敬一と美鈴は、京都から東京に住まいを替えて過ごしている。


季節は、冬になる。


ここは、東京。


朝も夜も、寒さを感じる日が続いている。


ここは、藤田五郎、妻の時尾、幼い息子の勉の住む家。


藤田五郎、時尾、勉、普通に居る。


玄関。


敬一が元気良く訪ねてきた。


時尾が微笑んで来た。

勉が笑顔で来た。


敬一は時尾と勉に笑顔で話し出す。

「こんにちは!」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「こんにちは。」

勉は敬一に笑顔で話し出す。

「こんにちは。」

敬一は時尾と勉を笑顔で見た。

勉は敬一に笑顔で話し出す。

「ろうばい。おみやげ。おいしい。」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「数日前に、勉と外出した時に、蝋梅を分けてもらったの。家に蝋梅の花が飾ってあるの。」

敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「家の中に蝋梅の花の香りに包まれた場所が在るのですね。素敵ですね。」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一君も蝋梅の花の香りが好きなの?」

敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「はい。」

勉は敬一に笑顔で話し出す。

「ぼく。すき。おにいちゃん。おなじ。」

敬一は勉に微笑んで話し出す。

「勉君と同じだね。嬉しいよ。」

勉は敬一に笑顔で頷いた。

敬一は勉を微笑んで見た。

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「玄関で長話をしているわね。ご免なさい。」

敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「大丈夫です。」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「五郎さんが部屋で敬一君の到着を待っているの。遠慮しないで部屋に行って。」

敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「はい。」

時尾は敬一を微笑んで見た。


勉は家の中に元気良く入って行った。

敬一は家の中に微笑んで入って行った。

時尾も家の中に微笑んで入って行った。


僅かに後の事。


ここは、藤田五郎、時尾、勉の住む家。


藤田五郎の部屋の前に在る縁。


敬一は元気良く来た。


障子が普通に開いた。


敬一は障子の開く様子を驚いた表情で見た。


藤田五郎が普通に現れた。


敬一は藤田五郎を微笑んで見た。


藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「挨拶は後だ。早く部屋の中の入れ。」


敬一は藤田五郎に僅かに慌てて話し出す。

「はい。」


藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。


敬一は部屋の中に僅かに慌てて入って行った。


直後の事。


ここは、藤田五郎、時尾、勉の住む家。


藤田五郎の部屋。


敬一は部屋の中に僅かに慌てて入った。


藤田五郎は障子を普通に閉めた。


敬一は藤田五郎に僅かに慌てて話し出す。

「斉藤さん。こんにちは。」

藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。

敬一は藤田五郎を微笑んで見た。


敬一の元に蝋梅の甘い香りが届いた。


敬一は部屋の中を不思議な様子で見た。

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。


床の間に、蝋梅が花瓶に挿して飾ってある。


敬一は蝋梅を微笑んで見た。

藤田五郎は敬一を普通の表情で見ている。

敬一は藤田五郎を見ると、藤田五郎に微笑んで話し出す。

「部屋に蝋梅が飾ってあります。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「時尾と勉が、外出した時に、蝋梅を分けてもらった。勉が時尾に俺の部屋に飾るように話したそうだ。勉の望みを受けて部屋に飾るのを了承した。」

敬一は藤田五郎に不思議な様子で話し出す。

「斉藤さんは、甘い食べ物が苦手なので、甘い香りも苦手だと思っていました。斉藤さんは、蝋梅の花の香りは、甘いですが平気なのですね。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「甘い食べ物は苦手だが、甘い香りは苦手ではない。強い香りの中に長く居ると、衣類や持ち物などに、残り香が長く残る、他の香りに気付き難くなる、などの、危険や面倒が増える。今の時代は、危険も面倒も、少ない。本当に嫌なら断るが、嫌ではないから、了承した。」

敬一は藤田五郎を微笑んで見た。

「さすが。斉藤さんです。」

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「僕も斉藤さんのようになりたいです。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「今の時代に総司が生きていたら、喜んで了承した。敬一が今の考えのまま成長したら、喜んで了承する。俺のようになりたいと思わなくても大丈夫だ。」

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「斉藤さんの話を聞いても、僕は斉藤さんのようになりたいです。」

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「僕が訪ねた時に、勉君が蝋梅の花の香りを美味しいと話しました。蝋梅は、薬にはなりますが、食べないですよね。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「蝋梅の花の香りは甘い。勉は美味しい香りと表現している。」

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「お母さんから聞いた話です。幼い頃の僕は、蝋梅を美味しいか質問する、蝋梅の香りを美味しいと表現する、など、したそうです。勉君と同じです。」

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。

敬一は藤田五郎に僅かに慌てて話し出す。

「斉藤さん。今の話は秘密にしてください。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「勉は敬一を慕っている。勉が今の話を知れば喜ぶ。」

敬一は藤田五郎を不思議な様子で見た。

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「敬一の望みを受けて、今の話は秘密にする。」

敬一は藤田五郎に恥ずかしく話し出す。

「勉君が喜んでくれるなら、時尾さんと勉君には、話して良いです。」

藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。

敬一は藤田五郎を恥ずかしく見た。


部屋の外から、時尾の穏やかな声が聞こえた。

「遅くなりました。お茶の用意が出来ました。」


藤田五郎は障子を普通に開けた。


時尾がお盆にお茶を載せて部屋の中に微笑んで入った。


藤田五郎は障子を普通に閉めた。


敬一は藤田五郎と時尾を微笑んで見た。

藤田五郎は時尾と敬一を普通の表情で見た。

時尾は藤田五郎の前と敬一の前に、お茶を微笑んで置いた。

敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「ありがとうございます。」

藤田五郎は時尾に普通の表情で頷いた。

時尾は藤田五郎と敬一を微笑んで見た。

藤田五郎は時尾に普通に話し出す。

「敬一は、幼い頃に蝋梅の花の香りを、美味しい香り、と表現したそうだ。敬一は、時尾と勉には教えて良いと話した。」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「勉は敬一君が大好きなの。勉は敬一君と同じ想いだと知ったら喜ぶわ。敬一君が帰ったら、勉に話すわね。」

敬一は時尾に恥ずかしく話し出す。

「勉君に喜んでもらえたら嬉しいです。」

時尾は敬一を微笑んで見た。

藤田五郎は時尾と敬一を普通の表情で見た。


時尾は部屋を微笑んで出て行った。


藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「お茶を飲み終わったら、稽古の準備を始める。お茶を飲んで、気持ちを落ち着かせろ。」

敬一は藤田五郎に笑顔で話し出す。

「はい!」

藤田五郎はお茶を普通の表情で飲んだ。

敬一はお茶を笑顔で美味しく飲んだ。


暫く後の事。


ここは、藤田五郎、時尾、勉の住む家。


敬一は既に居ない。

藤田五郎、時尾、勉が、居る。


時尾と勉の部屋。


床の間には、蝋梅が花瓶に挿して飾ってある。


蝋梅の花の甘い香りが部屋の中に広がっている。


時尾は微笑んで居る。

勉は笑顔で居る。


勉は時尾に笑顔で話し出す。

「おにいちゃん。ぼく。おなじ。」

時尾は勉に微笑んで頷いた。

勉は時尾に笑顔で話し出す。

「ぼく。おにいちゃん。おなじ。なる。」

時尾と勉に微笑んで話し出す。

「勉も敬一君のようになるために、たくさん努力をしましょうね。」

勉は時尾に笑顔で頷いた。

時尾は勉を微笑んで見た。


少し後の事。


ここは、美鈴と敬一の住む家。


玄関。


敬一が元気良く帰ってきた。


美鈴は微笑んで来た。


敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「ただいま!」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「お帰りなさい。」

敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「斉藤さんの部屋に蝋梅が飾ってあったんだ! 他にもたくさん話したい出来事があるんだ!」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「少し経つと、お茶の用意が終わるの。お茶を飲みながら話しましょう。」

敬一は美鈴に笑顔で頷いた。

美鈴は敬一を微笑んで見た。


敬一は家の中に笑顔で入って行った。

美鈴は家の中に微笑んで入って行った。


蝋梅の花の甘い香りが、寒さの感じる日々を穏やかに包んでいる。

蝋梅の花の甘い香りが、藤田五郎、時尾、勉、敬一、美鈴も、穏やかに包んでいる。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語は既に掲載している物語の改訂版です。

改訂前の物語の展開や雰囲気を出来るだけ残して改訂しました。

改訂前の物語を掲載するのは止めました。

以上、ご了承願います。

ここからは改訂前の後書きを加筆訂正して書きます。

「蝋梅(ろうばい)」についてです。

ロウバイ科の落葉低木です。

中国原産です。

主に観賞用です。

「臘梅」とも書きます。

別名は「唐梅(“からうめ”、または、“とうばい”)」です。

冬の季語です。

開花期氏、現在の暦で、12月下旬から3月上旬です。

甘い感じの良い香りのする花が咲きます。

蝋細工のような黄色い花びらが特徴です。

名前の由来は、「中国でも“蝋梅”という名前なので同じ名前になった」、「蝋細工のような梅に似た花」、「陰暦十二月の異称の“臘月(ろうげつ)”に梅に似た花を咲かせる」、この三つ辺りからといわれています。

花やつぼみから抽出した「蝋梅油」を薬として使用する事があります。

効能・使用方法などの詳細は、各自でご確認ください。

「臘月(ろうげつ)」は、冬の季語です。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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