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新撰組異聞外伝 〜 十薬湯を巡る長閑な一日 〜
はじめに。
この物語は、「沖田惣次郎と姉の沖田みつ」と「山口一と姉の山口勝」の二つの短編の構成です。
ご了承ください。
物語の世界へどうぞ。
* * * * * *
〜 沖田惣次郎と姉の沖田みつ 〜
ここは、多摩。
梅雨が終わり掛けている頃。
蒸し暑い日が続いている。
ここは、試衛館。
近藤勇の部屋の前に在る縁。
沖田惣次郎は部屋の中に向かって元気良く声を掛ける。
「惣次郎です!」
障子が普通に開いた。
近藤勇の微笑む姿が見えた。
沖田惣次郎は近藤勇を笑顔で見た。
近藤勇は沖田惣次郎に微笑んで話し出す。
「惣次郎。部屋の中に入れ。」
沖田惣次郎は近藤勇に笑顔で話し出す。
「はい!」
近藤勇は沖田惣次郎に微笑んで頷いた。
沖田惣次郎は近藤勇に軽く礼をした。
近藤勇は沖田惣次郎に微笑んで頷いた。
沖田惣次郎は部屋の中に笑顔で入った。
直後の事。
ここは、試衛館。
近藤勇の部屋。
近藤勇は微笑んで居る。
沖田惣次郎は笑顔で居る。
近藤勇は沖田惣次郎に微笑んで話し出す。
「障子を締め切ると暑いかな?」
沖田惣次郎は近藤勇に笑顔で話し出す。
「大丈夫です!」
近藤勇は沖田惣次郎に微笑んで話し出す。
「昨日、乾燥させた十薬と煎じた十薬をたくさんお裾分けで頂いた。」
沖田惣次郎は近藤勇に笑顔で話し出す。
「十薬湯に浸かれるのですね!」
近藤勇は沖田惣次郎に微笑んで話し出す。
「惣次郎を見ると楽しい様子が伝わる。私も楽しい気持ちになる。」
沖田惣次郎は近藤勇に笑顔で話し出す。
「十薬は摘む時は独特の匂いを発します! 十薬を摘む時は着物など気遣う内容がたくさんあります! 乾燥させた十薬と煎じた十薬なので安心です! 楽しみです!」
近藤勇は沖田惣次郎に微笑んで話し出す。
「惣次郎は他の塾生よりしっかりとした身なりだ。惣次郎が着物を気にするのは分かる。」
沖田惣次郎は近藤勇に笑顔で話し出す。
「着物に匂いと汚れが付くと、洗っても落ちない時があります! 私に出来る方法を試みても落ちない時は、姉上に着物の仕立てを頼む状況になります! 姉上には出来るだけ迷惑を掛けたくありません!」
近藤勇は沖田惣次郎に微笑んで頷いた。
沖田惣次郎は近藤勇に笑顔で話し出す。
「稽古では激しい打ち込みをします! 稽古着の稽古中の汚れと破れ、稽古着が古くなったための汚れと破れは、仕方の無い時があります! ですが、稽古着が酷く汚れるのと酷く破れるのは、稽古不足の証拠です! 更に、破れの目立つ稽古着で稽古を受け続けると、稽古着が気になり、稽古に真剣に取り組めない状況になる時があります! 私は出来るだけ汚れの無い稽古着と破れの無い稽古着を身に付けるように努めています!」
近藤勇は沖田惣次郎に微笑んで頷いた。
沖田惣次郎は近藤勇に笑顔で話し出す。
「着物の汚れと破れなどの身だしなみ気を配る行為は大切です! 困っている人を助ける行為も大切な行為です! 敵を倒す行為も大切な行為です! 困っている人を助ける時は、着物を気にすると助けられなくなります! 敵を倒す時に着物を気にすると、敵に倒される可能性があります! 身だしなみを気にする行為は、難しいと思う時があります!」
近藤勇は沖田惣次郎に微笑んで話し出す。
「武士としての心得を意識する気持ちは大切だ。身だしなみを意識する気持ちも大切だ。武士として、主君などを守るために敵を倒す行為も困っている人を助ける行為も、共に大切だ。惣次郎。成長したな。」
沖田惣次郎は近藤勇を照れて見た。
近藤勇は沖田惣次郎を微笑んで見た。
沖田惣次郎は近藤勇を笑顔で見た。
近藤勇は沖田惣次郎に微笑んで話し出す。
「惣次郎の話を聞くのが楽しくて、私が惣次郎に話したい内容を話していなかった。」
沖田惣次郎は近藤勇に笑顔で話し出す。
「近藤さん! 話をお願いします!」
近藤勇は沖田惣次郎に微笑んで話し出す。
「今回の頂いた十薬を少しだけになるが、おみつさんにお裾分けする。」
沖田惣次郎は近藤勇を不思議な様子で見た。
近藤勇は沖田惣次郎に微笑んで話し出す。
「惣次郎は幼い頃に試衛館で修行を始めた。惣次郎が試衛館で住み込みの修行を始めるまでは、おみつさんが母親代わりに育てていた。おみつさんは惣次郎を今も気に掛けている。惣次郎は稽古で忙しい日が続くために、おみつさんとゆっくりと過ごす機会が少ない。私はおみつさんに惣次郎の元気な姿を見せる機会が少ないので、申し訳ないと思っている。」
沖田惣次郎は近藤勇に不思議な様子で話し出す。
「今の話と姉さんに十薬をお裾分けする行為は、関係があるのですか?」
近藤勇は沖田惣次郎に微笑んで話し出す。
「おみつさんに十薬を届ける時に、惣次郎はおみつさんに元気な姿を見せて、おみつさんを安心させる。」
沖田惣次郎は近藤勇に笑顔で話し出す。
「近藤さんの話と十薬をお裾分けする行為が繋がりました!」
近藤勇は沖田惣次郎に微笑んで話し出す。
「天気が悪くなる様子が無ければ、出掛けるのは明日にしなさい。早めに出掛けなさい。帰りの時間は気にせずに、おみつさんと過ごしなさい。」
沖田惣次郎は近藤勇に笑顔で話し出す。
「はい!」
近藤勇は沖田惣次郎に微笑んで話し出す。
「お裾分けする十薬は、出掛けるまでに用意する。明日も惣次郎を私の部屋に呼ぶ。惣次郎。出掛ける用意をしておきなさい。」
沖田惣次郎は近藤勇に笑顔で話し出す。
「はい!」
近藤勇は沖田惣次郎に微笑んで話し出す。
「話は終わった。」
沖田惣次郎は近藤勇に笑顔で話し出す。
「お気遣いありがとうございます!」
近藤勇は沖田惣次郎に微笑んで頷いた。
沖田惣次郎は近藤勇に笑顔で軽く礼をした。
近藤勇は沖田惣次郎に微笑んで頷いた。
沖田惣次郎は部屋を笑顔で出て行った。
翌日の事。
ここは、多摩。
今日は、曇り空だが、時折になるが晴れる。
雨の降る気配はない。
蒸し暑さが続いている。
ここは、沖田惣次郎の姉の沖田みつが住む家。
一室。
障子は開いている。
沖田みつは微笑んで居る。
沖田惣次郎は笑顔で居る。
沖田惣次郎の傍に、包みが置いてある。
沖田惣次郎は沖田みつに包みを差し出すと、沖田みつに笑顔で話し出す。
「試衛館に、乾燥させた十薬と煎じた十薬が、たくさん届きました! 近藤さんから姉上に乾燥させた十薬の一部を届けるように頼まれました! 包みの中には近藤さんから姉上に宛てた文も入っています!」
沖田みつは沖田惣次郎から包みを受け取ると、沖田惣次郎に微笑んで話し出す。
「蒸し暑い中を来てくれてありがとう。」
沖田惣次郎は沖田みつを笑顔で見た。
沖田みつは包みを脇に置くと、沖田惣次郎に微笑んで話し出す。
「近藤さんからの文を直ぐに読むわ。返事を書くかも知れないから、暫く待つかも知れないわ。」
沖田惣次郎は沖田みつに笑顔で話し出す。
「はい!」
沖田みつは包を微笑んで広げた。
包みの中には、近藤勇が沖田みつに宛てた文と乾燥させた十薬が入っている。
沖田みつは文を取ると、包みを丁寧に軽く閉じた。
沖田惣次郎は沖田みつを笑顔で見た。
沖田みつは文を微笑んで読み始めた。
沖田惣次郎は大の字に笑顔で寝転んだ。
部屋の中へ風が吹いた。
沖田惣次郎は大の字で横になり、微笑んでゆっくりと目を閉じた。
沖田みつは文を微笑んで読み終えた。
沖田惣次郎は大の字で横になり、微笑んでゆっくりと目を閉じている。
沖田みつは文を机に置くと、沖田惣次郎を微笑んで見た。
沖田惣次郎は大の字で横になり、微笑んで眠っている。
沖田みつは沖田惣次郎を微笑んで見た。
少し後の事。
ここは、多摩。
強い日差しは弱まり掛けている。
ここは、沖田みつの住む家。
一室。
沖田みつは沖田惣次郎を微笑んで見ている。
沖田惣次郎は大の字で横になり、微笑んで眠っている。
沖田惣次郎は大の字で横になり、微笑んでゆっくりと目を開けた。
沖田みつが沖田惣次郎を微笑んで覗き込んでいる。
沖田惣次郎はゆっくりと起きた。
沖田みつは沖田惣次郎を微笑んで見ている。
沖田惣次郎は沖田みつに恥ずかしく話し出す。
「寝てしまいました。」
沖田みつは沖田惣次郎に微笑んで話し出す。
「惣次郎は蒸し暑い中を出掛けてきたから疲れたと思うの。気にしないで。」
沖田惣次郎は沖田みつを恥ずかしく見た。
沖田みつは沖田惣次郎に微笑んで話し出す。
「惣次郎。汗をかいたわよね。十薬湯を入れた大きなたらいを用意するから、汗を流しなさい。お風呂に浸かる楽しい気持ちとお風呂に浸かる気持ち良さには及ばないけれど、似た気持ちと気分は味わえると思うの。」
沖田惣次郎は沖田みつに微笑んで話し出す。
「いつも気遣いありがとうございます。」
沖田みつは沖田惣次郎に微笑んで話し出す。
「惣次郎は武士よ。惣次郎は身なりを常に整える必要があるわ。遠慮せずに十薬湯に浸かりなさい。」
沖田惣次郎は沖田みつに微笑んで話し出す。
「はい。」
沖田みつは沖田惣次郎を微笑んで見た。
沖田惣次郎は沖田みつを微笑んで見た。
少し後の事。
ここは、多摩。
ここは、沖田みつの住む家。
庭。
大きなたらいが有る。
大きなたらいの中には、十薬湯が入っている。
沖田惣次郎は大きなたらいに気持ち良い表情で浸かっている。
沖田惣次郎は大きなたらいに浸かり、手拭で体を拭き、微笑んで呟いた。
「気持ち良いな〜」
日差しは、時が経つにつれて弱まっている。
沖田惣次郎は大きなたらいに浸かり、手拭で体を拭き、微笑んで呟いた。
「今日はゆっくりと過ごす時間が長かったな。」
風が吹いた。
沖田惣次郎は大きなたらいに浸かり、空を見ると、微笑んで呟いた。
「山口君も十薬湯に浸かるのかな? 山口君にいつ逢っても良いように、身なりを整えて、困ってる人を助けて、稽古もして、過ごそう。」
沖田惣次郎の長閑な一日がゆっくりと過ぎていく。
* * * * * *
〜 山口一と姉の山口勝 〜
ここは、江戸の町。
梅雨が終わり掛けている。
蒸し暑い日が続いている。
ここは、山口一と姉の山口勝が住む家。
庭。
山口一は竹刀を使い、普通の表情で素振りをしている。
縁。
山口勝が微笑んで来た。
山口勝は山口一を微笑んで見た。
庭。
山口一は素振りを止めると、竹刀を持ち、山口勝を普通の表情で見た。
山口勝は山口一の傍に微笑んで来た。
山口勝は山口一に微笑んで話し出す。
「一。廣明を知らない?」
山口一は竹刀を持ち、山口勝に普通に話し出す。
「兄さんは父さんに用事を頼まれて出掛けている。」
山口勝は山口一に微笑んで話し出す。
「近い内に十薬風呂に浸かりたいと思っているの。十薬を摘みに出掛けたいと思っているの。廣明の帰りを待つと遅くなるかも知れないわね。一も十薬を摘む手伝いで来てくれると嬉しいな。」
山口一は竹刀を持ち、山口勝に普通に話し出す。
「出掛ける準備をする。」
山口勝は山口一に微笑んで話し出す。
「いつもありがとう。」
山口一は竹刀を持ち、山口勝に普通の表情で頷いた。
山口勝は山口一を微笑んで見た。
少し後の事。
ここは、江戸の町。
草原のような場所。
一部に十薬がたくさん生えている。
山口勝は微笑んで居る。
山口一は普通に居る。
山口勝は山口一に微笑んで話し出す。
「たくさんの十薬を摘みましょう。」
山口一は山口勝に普通の表情で頷いた。
山口勝は十薬を微笑んで摘もうとした。
山口一は山口勝に普通に話し出す。
「十薬を摘む時に姉さんの着物に汚れか匂いが付いたら困る。十薬は俺が摘む。」
山口勝は山口一に微笑んで話し出す。
「気を遣わないで。」
山口一は山口勝を普通の表情で見た。
山口勝は山口一に微笑んで話し出す。
「十薬を摘むために一緒に来てくれたお礼と私を気遣ってくれたお礼を兼ねて、お父さんとお母さんに、一が十薬湯の一番風呂に浸かれるように頼むわ。」
山口一は山口勝に普通の表情で軽く礼をした。
山口勝は山口一を微笑んで見た。
山口一は十薬を普通の表情で摘み始めた。
山口勝は十薬を微笑んで摘み始めた。
暫く後の事。
ここは、江戸の町。
山口一と山口勝が住む家。
山口勝の気遣いがあり、山口一が当面の十薬湯の一番風呂に浸かると決まった。
十薬湯の準備が少しずつ整っていく。
縁。
山口一は十薬湯の準備を普通の表情で見た。
山口勝が微笑んで来た。
山口一は山口勝に普通の表情で軽く礼をした。
山口勝は山口一に微笑んで頷いた。
山口一の長閑な一日がゆっくりと過ぎている。
* * * * * *
ここからは後書きになります。
「風呂」についてです。
江戸時代の銭湯は、現在とは違い「蒸し風呂」のようになっていて、「戸棚風呂」と呼ばれる形だったそうです。
熱くなっている小石の上に水を掛けて蒸気を出していたそうです。
浴槽には膝の高さほどのお湯しかありませんでした。
下半身はお湯に浸して、上半身は小石から出る蒸気で温めていたそうです。
蒸気が逃げないようにするために、「石榴口(ざくろぐち)」が考えられたそうです。
天井から低く板を下げて、蒸気を逃げないようにしていました。
お風呂に入る人達はこの板をくぐって、風呂場の中へと入っていったそうです。
現在のお風呂に近い、深く浸かるお風呂も江戸時代に出来ました。
「据え風呂」というそうです。
慶長年間の末頃に出来たそうです。
井戸水などから沸かすお風呂だったそうです。
一般の庶民の家に広まったそうです。
普及していたのは「鉄砲風呂」や「五右衛門風呂」だったそうです。
「鉄砲風呂」は、鉄の筒に燃えている薪を入れてお湯を温めるお風呂です。
鉄の筒でやけどをしないように、筒を遮るように柵で防護していたそうです。
江戸で主流になっていたお風呂だそうです。
「五右衛門風呂」は、下の鉄釜を熱して温めるお風呂です。
やけどをしないように、「釜板、兼、底板」を下に敷いてお風呂に入ったそうです。
関西で主流になっていたお風呂だそうです。
「ドクダミ」についてです。
ドクダミ科の多年草です。
花期は、5月〜7月です。
花のように見えるのは、白色の総苞片です。
花は中心の黄色い部分です。
総苞片は四枚です。
「毒痛み」、「毒矯み」、の字で書きます。
漢方名は「十薬(じゅうやく)」です。
「ドクダミ」を馬に与えると十種類の効能があるという事から付いた名前だそうです。
「ドクダミ」は、お茶や薬用風呂などに利用しています。
江戸時代の書物に「ドクダミ」の名前での記載があるそうです。
「ドクダミ」の名前で呼ばれるようになったのは、江戸時代からになると思われます。
「ドクダミ」には、かなり古い歴史があります。
日本には中国から伝わったといわれています。
平安時代前半の書物に「之布岐(しぶき)」の和名での記載があるそうです。
「之布岐」は、「一度根をおろすと根絶できないほどにしぶとい草」から名付けられたそうです。
当初は野菜のような感じで食用として利用されていたそうです。
江戸時代から「ドクダミ」を薬草として利用していたそうです。
「ドクダミ」の花は綺麗ですが、「ドクダミ」を抜いたり切ったりした時の匂いがかなり独特だそうです。
そのため、雑草と同じように扱われてしまう事があるそうです。
「ドクダミ」を乾燥させると独特の匂いは無くなるというか分かり難くなるそうです。
私が「ドクダミ茶」を飲んだ時には、匂いは気になりませんでした。
「ドクダミ」は、乾燥葉と生葉では効能や使用方法が違ってきます。
詳細は、各自でご確認ください。
「ドクダミ湯」について簡単に説明します。
にきび・あせもを鎮める、新陳代謝を活発にする、腰痛、冷え性、などに効果があるそうです。
「ドクダミ」の生葉や茎を良く水洗いします。
一回相当分で一握りの「ドクダミ」を、布袋やネットなどに入れます。
沸かす方法のお風呂の場合は、水の時から布袋やネットを入れて煮出します。
お湯から入れる方法のお風呂の場合は、お湯の当たるようにして布袋やネットを置きます。
布袋やネットなどを揉みながら入ると効果的だそうです。
「ドクダミ」の生葉や茎ではなく、乾燥をさせた葉や茎を使う方法もあります。
この物語では、沖田惣次郎さん達は「乾燥させた生葉と茎」、山口一さん達は「生葉と茎」を使用しています。
「ドクダミ」の効能、「ドクダミ湯」、の詳細は、各自でお調べください。
楽しんで頂けると嬉しいです。
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