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新撰組異聞外伝 〜 夏 水浴びで学ぶ 〜


〜 改訂版 〜


時は明治。


治世が幕府から政府に移って幾年か経った。


幕府側で政府に最後まで抵抗した本人や身内への扱いは冷たい。

本人も身内も静かに暮らす者が多い。


沖田総司は新撰組の一番組組長を務めていた。

新撰組の隊士の中では名前が知られる一人になる。


沖田総司は、幕府の治世の途中で病になり、幕府と政府の戦いにほとんど加われなかった。

幕府と政府の戦いの結末を知らずに療養先で亡くなった。

新撰組隊士として亡くなったため、戦いにほとんど加わっていなくても、世間では幕府側の人物と考えられている。


沖田総司の幼い息子の敬一と母親の美鈴は、沖田総司の身内と気付かれないように暮らしている。


敬一と美鈴は、制限のある暮らしだが、穏やかに暮らしている。


今は夏。


ここは、京都。


暑い日が続いている。


ここは、幼い敬一と美鈴が住む家。


縁。


美鈴は微笑んで縫い物をしている。


敬一は美鈴の傍に笑顔で来た。


美鈴は縫い物を止めると、敬一を微笑んで見た。

敬一は美鈴を笑顔で見た。

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一。汗をたくさんかいているわね。水浴びをしましょう。」

敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「おかあさん。しごと。みずあび。あと。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「汗をたくさんかいたままだと、気持ちの悪くなる時や風邪をひく時があるわ。水浴びしましょう。」

敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「みずあび。おかあさん。いっしょ。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「お母さんは敬一の水浴びを手伝うの。お母さんは水浴びをしないわ。」

敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「ぼく。ひとり。みずあび。しない。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「お母さんは敬一が終わった後に水浴びするわ。」

敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「みずあび。する。」

美鈴は敬一を微笑んで見た。

敬一は美鈴を笑顔で見た。


少し後の事。


ここは、敬一と美鈴の住む家。


庭。


水の入った大きなたらいが置いてある。


敬一は大きなたらいに笑顔で浸かっている。

美鈴は敬一を微笑んで見ている。


敬一は水浴びしながら、美鈴に笑顔で話し出す。

「きもち。よい。たのしい。」

美鈴は敬一に微笑んで頷いた。

敬一は水浴びしながら、美鈴を笑顔で見た。

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一。水浴びしながら勉強しましょう。」

敬一は水浴びしながら、美鈴に笑顔で話し出す。

「べんきょ。する。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「暑い日のお水は、冷たくて気持ち良いわ。寒い日のお水は、冷たくて辛いわ。お水を温めると、お湯になるわ。お水は、毎日の気温、温める時間、温める方法によって、温度が変わるわ。温かいお湯に浸かると、気持ち良いわ。熱いお湯に浸かると、辛いわ。お風呂に合うお湯の温度、麦茶を作る時に合うお湯の温度、お味噌汁を作る時に合うお湯の温度、煮物を作る時に合うお湯の温度、合うお湯の温度は全て違うの。」

敬一は水浴びしながら、美鈴を不思議な様子で見た。

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「雨も川も雪も、お水が基になっているの。敬一にも、お母さんにも、鳥にも、花にも、お水は大切なの。」

敬一は水浴びしながら、美鈴に笑顔で話し出す。

「おみず。たいせつ。おとうさん。おかあさん。たいせつ。おなじ。」

美鈴は敬一に微笑んで頷いた。

敬一は水浴びしながら、美鈴を笑顔で見た。

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「優しくて大切なお水だけど、たくさん雨が降る、川の水量が増える、物凄く熱いお湯、お水は危ないと感じる時があるの。お水は、優しい時と物凄く怖い時があるの。」

敬一は水浴びしながら、美鈴に微笑んで話し出す。

「おみず。おとうさん。おかあさん。すこし。ちがう。」

美鈴は敬一を微笑んで見た。

敬一は水浴びしながら、美鈴を笑顔で見た。

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「お水は、合う温度を教える時も、大切な気配を教える時も、危険を教える時も、最初は小さな兆しで教えるの。お母さんも敬一も、お水が教える小さな兆しに、しっかりと気付かなければならないの。敬一。お母さんと一緒に少しずつ勉強していきましょう。」

敬一は水浴びしながら、美鈴に笑顔で頷いた。

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「少し経ったら、水浴びを終えて体を拭いて、浴衣に着替えましょう。」

敬一は水浴びしながら、美鈴に笑顔で話し出す。

「ぼく。おわる。あと。おかあさん。みずあび。する。」

美鈴は敬一に微笑んで頷いた。

敬一は水浴びしながら、美鈴を微笑んで見た。


幾つかの季節が過ぎた。


敬一と美鈴は、京都から東京に住まいを替えた。


今は夏。


ここは、東京。


藤田五郎、妻の時尾、幼い息子の勉の住む家。


庭。


縁の傍に、二つの大きなたらいが置いてある。

二つの大きなたらいの中に、水が入っている。


勉は大きなたらいに笑顔で浸かっている。

敬一も大きなたらいに笑顔で浸かっている。


敬一は水浴びしながら、勉に微笑んで話し出す。

「勉君。気持ち良いね。」

勉は水浴びしながら、敬一に笑顔で話し出す。

「たのしい。きもちよい。」


時尾は手拭を持ち、微笑んで来た。


勉は水浴びしながら、時尾を笑顔で見た。

敬一は水浴びしながら、時尾に微笑んで話し出す。

「水浴びさせて頂いてありがとうございます。」

時尾は手拭を持ち、敬一に微笑んで話し出す。

「勉が楽しく水浴びする機会は少ないの。敬一君が勉の水浴びに付き合ってくれて嬉しいわ。」

敬一は水浴びしながら、時尾に微笑んで話し出す。

「勉君と一緒に水浴びできて嬉しいです。」

勉は水浴びしながら、時尾に笑顔で話し出す。

「おみず。べんきょう。」

時尾は手拭を持ち、勉を不思議な様子で見た。

敬一は水浴びしながら、時尾に微笑んで話し出す。

「お水は、合う温度を教える時も、大切な気配を教える時も、危険を教える時も、最初は小さな兆しで教える。僕も勉君も、お水が教える小さな兆しに、しっかりと気付かなければならない。勉君はお父さんとお母さんから、お水が教える兆しを少しずつ教えてもらうように。以上の内容を話しました。」

時尾は手拭を持ち、敬一に微笑んで話し出す。

「敬一君。良い話を教えてくれてありがとう。勉にお水が教える兆しを少しずつ教えていくわ。」

敬一は水浴びしながら、時尾を微笑んで見た。

時尾は手拭を持ち、勉と敬一に微笑んで話し出す。

「手拭を用意したの。手拭は縁に置くわね。少し経ったら、浴衣と別な手拭を用意するわ。」

敬一は水浴びしながら、時尾に微笑んで話し出す。

「はい。」

勉は水浴びしながら、時尾に笑顔で話し出す。

「はい。」

時尾は勉と敬一を微笑んで見た。


時尾は縁に手拭を微笑んで置いた。


時尾は微笑んで居なくなった。


暫く後の事。


ここは、東京。


空の色が僅かに橙色の気配を見せ始めている。


藤田五郎は普通に歩いている。

敬一は微笑んで歩いている。


敬一の歩調が僅かに遅くなった。


藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「敬一。疲れたのか?」

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「平気です。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「眠いのか?」

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「平気です。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「平気と答える場合は、辛さを感じる時が多い。敬一。無理をせずに、辛い内容を話せ。」

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「さすが斉藤さんです。少し眠いです。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「今日は、剣術の稽古を受けて、勉の水浴びに付き合ってくれた。疲れを感じるのは当然だ。」

敬一は藤田五郎を微笑んで見た。

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「敬一。背負う。」

敬一は藤田五郎に慌てて話し出す。

「斉藤さんに失礼です! 遠慮します!」

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。

敬一は藤田五郎を慌てて見た。

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「水は、大切な気配を教える時も、危険を教える時も、最初は小さな兆しで教える。俺達は、水が教える小さな兆しに、しっかりと気付かなければならない。さすが美鈴さんだと思った。」

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「僕の自慢のお母さんです。お父さんが選んだ女性です。お母さんはさすがです。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「敬一は水が教える兆しを全て分かるのか?」

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「勉強中です。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「敬一は美鈴さんを守るのだろ。水の教える兆しを早く正確に覚えろ。」

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「はい。」

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。時間に余裕が有る時で良いので、お水が教える兆しを教えてください。」

藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。

敬一は藤田五郎を微笑んで見た。


水は、優しい時と怖い時がある。

水は、大切な気配を教える時も、危険を教える時も、最初は小さな兆しで教える。

藤田五郎、時尾、勉、敬一、美鈴は、水の教える小さな兆しに、早く正確に気付くように努力しながら過ごしている。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語は既に掲載している物語の改訂版です。

改訂前の物語の展開や雰囲気を出来るだけ残して改訂しました。

改訂前の物語を掲載するのは止めました。

以上、ご了承願います。

ここからは改訂前の後書きを加筆訂正して書きます。

「浴衣(ゆかた)」についてです。

「浴衣」自体は、平安時代にはありました。

江戸時代の寛政年間(1789〜1801年)の頃に流行したそうです。

江戸時代の弘化年間(1844〜1848年)に、更に盛んになったそうです。

江戸時代に藍染技術が発達した事により、紺色と白色の柄の浴衣を利用していたそうです。

江戸時代は、町民などに対して贅沢を禁止するという事で、いろいろな制限がありました。

いろいろな制限の中で作られた浴衣ですが、綺麗な柄や印象的な柄がたくさんあったそうです。

江戸時代は、現在のように浴衣を着て花火を見る事は、一般的にはしていなかったようです。

江戸時代は、お風呂に入る時、お風呂の後、寝る時、などに、浴衣を着たそうです。

浴衣を着て夏祭りや花火などに参加するようになるのは、かなり後になるそうです。

明治時代になると、浴衣の柄が更に豊富になったそうです。

浴衣に紺色や白色以外の色を使用するようになったのは、明治20年(1887年)頃からのようです。

明治時代のいつ頃か分かりませんが、浴衣を着て外出する事があったそうです。

江戸時代の途中から明治時代の間に、浴衣を着て盆踊りや花火を楽しむようになっていったようです。

「水浴び(みずあび)」についてです。

「水を浴びること。体に水をかけること。水浴。」、「泳ぐこと。水泳。」、の意味があります。

夏の季語です。

この物語は「水を浴びること。体に水をかけること。水浴。」の意味で使用しています。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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