このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
常磐炭鉱専用鉄道 小野田線 2
〜宝海隧道→磐崎坑ホッパー〜
湯本の街中に突如出現する宝海隧道は鉄道遺構として特筆すべきものであろう。
宝海隧道から先はかつてのヤマの鉄道の雰囲気を探す探索になる。
私のHPではこれまでも数々の廃線跡を訪ねてきた。その中には当然ながら隧道(トンネル)も出現する。
しかしながら、今回の小野田線探訪におけるこの宝海隧道はいろいろな面で特徴的である。
最初に気が付くのは、「断面」であろう。廃線跡にあるトンネルは数々存在するが、原型のまま保存、供用されているものは皆無である。現役で使われているトンネルはほぼ全てが車道化される際、拡幅等の改良工事を経てオリジナリティが失われる。
しかし、この隧道はどうだろう。華麗な馬蹄型のいわゆる「鉄道断面」のまま現役の隧道として使われている。驚くべき事だ。
近寄って撮影するとこの隧道の特異さが良く分かる。
小野田線に入線した蒸気機関車は主に平機関区所属の8630型や
C50型
が担当していた。
C50型の全高が3885mmであるから、この隧道の全高は4m30cm以上であろう。
C50型の全幅は2702mm。隧道の全幅は3m20cmほどであろうか。
幅3m少々では現在の自動車がこの隧道内ですれ違うのには多少神経を使いそうだ。
先ほどの青看が規制していた理由はこの隧道の形状も一因であろう。
内部に入ってみる。
現役で使用されている隧道だけあり、定期的な保守点検が成されているので通行に不安は無い。
逆に言えば隧道内は鉄道の痕跡が無い…と言うことにもなる。
足元の砂利道は凸凹しているので、少しだけ気を使った。
隧道を通り抜け、反対側の坑口を撮影する。
こちらも馬蹄型の華麗な断面だ。
「街道Web」のTUKA氏も指摘していたのだが、この隧道の大きな特徴がこの画像に写っている。
この隧道は「隧道である必然性が無い」のである。隧道でありながら山を貫いていない。普通であれば(たとえ明治時代の建築
だとしても)切り通しにするべき立地だ。
「大山衹神社」(おおやまつみじんじゃ)に対する炭鉱の人達の敬意の表れが、このような隧道の形態にさせたのだろうか。
隧道を抜けてもなおカーブは続いている。
行く手には住宅地が広がる。
画面右手の山はかつて常磐炭鉱(入山採炭)第四坑があった。
道の途中に杭が打たれている。
これでは車両が通行できない訳だ。この杭より向こうの住民の方は多少の遠回りを強いられる。
湯本駅方面に車で行っても道は狭くなる一方なので、わざわざ規制を破る人もいないだろう。
杭が打たれていた場所から10m程で、道路はそれまでの砂利道から舗装路に変わった。
それと共に道の両脇には立派な住宅が建ち並んでいる。どのお宅もかなり立派な佇まいだ。
目前の道路がかつての炭鉱鉄道だという事を知る住民の方はあまり居られないのかもしれない。
道はまだまだ左にカーブしている。180度ターンすらしかねない勢いだ。
小野田線跡は右手よりやってきた道路と合流する。「市道 宝海斑堂線」である。
これまで通ってきた小野田線跡も市道の扱いを受けている。今私が立っている道路は「市道 宝海団地5号線」と言う。
2つの市道は合流し、小野田線跡はヤマに向かってなおも進む。
長い長い長い左カーブもようやく終わりを告げ、小野田線は直進に移る。
資料によれば、小野田線はこの道路の左側辺りに敷設されていたようだ。
山に向かって僅かに上り勾配になっている。小野田線の頃からそうだったのだろう。
市道の脇に並行して走る道路には結構な高低差がある。
この市道が鉄道の築堤を拡幅して作られた物である事が伺える。
自転車で来れば良かった…と後悔してももう遅い。
いかにも鉄道跡らしい一本調子の上り坂の市道をテクテク歩くのはいささか疲れる。
この画像の地点では小野田線は私の立っている方(道路右側)にあったようだ。
そう考えるとこの先に見えるコンクリート壁も鉄道遺構に見えてくるから不思議なものである。
市道脇に詰まれた数本の木材…よく見ると枕木である。
木材には線路と犬釘が存在した事を示す跡が見受けられる。
何故この様な場所に放置されているのかは不明だが、私にとっては嬉しい発見であった。
右手に湯本第三中学校が見える交差点辺りで一本の細道が急速に市道に合流する。
細道も鉄道に由来する道だ。磐城炭鉱軌道(明治20年〜昭和15年)だった道である。
これから専用鉄道 小野田線と磐城炭鉱軌道は小野田坑まで並行して走る。
磐城炭鉱軌道(小野田坑〜湯本駅周辺)へ
右カーブを抜けると木々の向こうにおおよそ場違いとも思える巨大な建築物が見える。
あれこそが常磐炭鉱 磐崎坑の石炭積込所(ホッパー)である。
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