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常磐炭鉱専用鉄道 高倉線 2
〜浜井場気動車車庫〜
常磐製作所の敷地の隅。道路の向かい側には常磐パッケージ(株)さんの門がある。
一見古ぼけた倉庫のようだが、この建物こそ高倉線を語る上で外してはならない遺構なのだ。
これは昭和27(1952)年頃に建造された「通勤用気動車」の車庫なのである。
前回好評だったので今回は更に詳しく見ていこう。
建物を斜め向かいに見てディティールを観察する。
資料「常磐地方の鉱山鉄道」には「木造モルタル建」と記されている。
外壁はアイボリーともベージュともつかない非常に味わいのある色になっている。外壁モルタルにはひびなど見られないことから定期的に補修されている事が伺える。
古めかしい桟の入ったガラス窓に年季が感じられるが、これはこの車庫の主たる気動車が転出した後に組み込まれたもののようだ。
気動車がいた頃、ガラス窓の部分にはガラリ(排気抜き)が設置されていた。
建物の上部にもガラリが設えられていた。
気動車の排気を充分に考慮した設計である。
排気に気を使う炭鉱ならではのきめ細やかな作りに好感が持てる。
歩を進め建物の西側を見ると、気動車の出入り口をコンクリートブロックで塞いだ跡が見える。
他の外壁にマッチしない色合いに違和感を覚える。
毎日この道を使っていらっしゃる方にはこの壁は何だろうかと疑問を覚える方もいるだろう。
この車庫にはどんな主(気動車)が居たのだろうか。
これが車庫の主、常磐炭鉱 キハ21型である。
画像は紀州鉄道(和歌山県) キハ605時代のものである。
常磐炭鉱キハ21の頃は、前面中央の窓は2枚組であったと伝えられる。
手持ちの資料に炭鉱当時のカラー写真が無いのでどのような色で塗装されていたのかは分からないのだが、上半分がアイボリー、下半分が濃い緑と想像する。
全長 12m24cm 全幅 2m72cm 全高 3m68cm5mm
定員120名(座席80名) 160馬力/1500回転
常磐炭鉱 キハ21型の消息
常磐炭田内の専用鉄道(専用側線)には鉱員輸送の為の通勤車両が在籍していた。
その中でもこのキハ21は新製車両として発注され、今もなお現存すると言う貴重な存在である。
常磐炭鉱 キハ21
昭和25(1950)年 宇都宮車両(現 富士重工)に新製車として発注され、昭和26(1951)に納車されるも、
運転士の免許等の準備に手間取り、運行が開始されたのは昭和27(1952)年中頃であった
浜井場停車場〜常磐炭鉱川平鉱間を1日数往復し鉱員輸送の任に当たっていた。
昭和33(1958)年末若しくは昭和34(1959)年に運行を停止したと思われる。
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岡山臨港鉄道 キハ1003
常磐炭鉱 キハ21としての活躍を終えた後、岡山県の岡山臨港鉄道に売却され「キハ1003」の車番が付与された。
臨港鉄道ではクリーム色に赤色の帯を巻き、乗客輸送に当たっていたがあまり運転されることは無かったようである。
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紀州鉄道 キハ605
昭和59(1984)年に和歌山県の紀州鉄道に譲渡されたキハ1003は、「キハ605」の車番が付与された
しかし、試運転時に振動が大きい事が判明し、営業運転されないまま紀伊御坊駅の側線に留置されていた。
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ふるさと鉄道保存協会
平成13(2001)年、紀州鉄道より「ふるさと鉄道保存協会」に車両が譲渡された。
キハ605は紀州鉄道と同じ和歌山県に存在する有田鉄道の協力を得て、有田鉄道終点 金屋口駅の車庫に格納される事になった。
現在では金屋口駅での静態保存を目指して修復作業が行われていると言う。
車庫から出た気動車は引込線を走り、高倉線本線と合流していた。
気動車運行停止後、引込線は撤去された。
市道 白水高野線は専用鉄道当時の線形を良く残している。
現役当時から高倉線は線路敷きと並行に道が通じていた為、撤去された線路部分はそのまま道路の一部として飲み込まれたのだろう。
これもまた良い按配のカーブである。
白水軽便鉄道(明治27年〜明治30年)が開通した頃、ここはどのような光景が拡がっていたのだろう。
馬車軌道とは言え、文明の利器たる鉄道を目の当たりにした住民はさぞ驚いた事だろう。
オレンジ色の屋根が目を引く白水郵便局の手前。
画像の付近から不動沢炭鉱の引込線が延びていた。
鉱業権主が時と共に変わり、炭鉱の名前も変わるのだが、鉄道にて石炭を搬出できるメリットは大きかったと思われる。
不動沢炭鉱引込線の分岐を境として、高倉線は勾配を増す。
明治時代の蒸気機関車では中々きつかったのではないかと思われる。
右側に分岐する道は 国宝 白水阿弥陀堂へ向かう道である。
鉄道とは直接関係無いが、国宝に敬意を表し立ち寄ってみる事にする。
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