鈴木 淳子+沖 啓介 [日本]
Junko Suzuki + Keisuke Oki [Japan] 祈りの舟−田から舟
The Boat for Prayers - TAKARABUNE 神社の境内に現れた「宝船」。
地域で収穫された稲の藁で作られている。
田から頂く恵みに感謝し、次の年の豊作を祈る。
その祈りを乗せて、宝船は天へと出航する。 諏訪神社を訪れると、藁で作られた宝船がありました。
まるで、目の前に広がる水田への出航の時を待っているという感じでした。
帆に当たる部分には、「宝」ではなく「田」という文字が書かれていました。
「宝」という言葉は、「田から」頂くものということに由来しているということを知りました。
普段、何の気なしに頂いているお米ですが、そのありがたさを改めて実感できる空間でした。 2006年9月8日、二十四気の一つ、白露で、満月でもあるこの日、「お焚き上げ」が行われました。
すっかり辺りも暗くなった18時半頃、作品を訪れると、ロウソクの灯かりが船を照らし出していました。
民俗楽器の演奏も行われており、この作品の作家のお一人でもある沖氏と、「レインボーハット」の関口氏が演奏されていました。
沖氏からの「月が出ました」との声を受け、東の空を見ると、見事な満月が顔を出していました。
しばらくして、作家の鈴木氏と沖氏の挨拶があり、その後、願いや祈りが書かれた折り紙の船を船にのせました。
お神酒等が振る舞われたあと、この地の祝い歌でもある「天神囃子」が歌われ、いよいよ船に火がつけられました。
オレンジ色の炎は、瞬く間に中に敷き詰めてあった藁に燃え広がっていきました。
さすがにしっかり作ってあるだけあって、船の外枠はなかなか燃えません。
消防団の方が、少しずつ壊していきながらだんだんと灰にしていきました。
もうもうと上がる煙を見て、折り紙に書かれた願いや祈りが無事に天へと昇っていっただけでなく、今日までにこの作品を見にきた方の思いも一緒に運んでいったような気がしました。
最後にすっかりと灰になった藁は、来年の「宝(田から)=稲」を育む肥料となるということです。
目の前で作品が焼失するというのは、もちろん初めての体験でしたが、ただ単純に「燃やす=消滅する」ではなく、「燃やす=天に昇る」という、古(いにしえ)からの日本人の心を感じることができたような気がしました。 翌9日に作品(のあった場所)を訪れると、灰もほとんどありませんでしたが、そこに舟があったという記憶だけがその空間にありました。 2006年作品
諏訪神社(元町)
第3回期間中のみ |