トビアス・レーベルガー [ドイツ]
Tobias Rehberger [Germany] フィヒテ(唐檜)
Fichte 松代大荒戸線の途中、林の奥へと続く階段がある。
階段をしばらく下っていくと、杉の林の中に、ウッドチップが敷き詰められた、小さな屋外図書館が現れる。
黄色の本棚、黄色のベンチ、そして、黄色の電灯…。
本棚に並べられたドイツの本。
「フィヒテ」とは、唐檜という意味の他に、ドイツ人の思想家にも因んでいる。
静かな森の中の図書館で、木々に囲まれながら物思いにふけりたい、そんな思いを抱かせる空間。 初めてガイドブックを見たとき、この空間にとても気を引かれました。
「森の中の図書館」、その空間を想像するだけで、胸が高鳴りました。
そして、実際、作品を訪れたとき、その素晴らしさは想像を超えていました。
「森」と「図書館」というアンバランスさがとても保たれていて、つまり、とてもバランスが取れた空間に感じ、人工物と自然が共存している空間に感じました。
自身にとって、空間を楽しむ作品としては、一番好きな作品です。 周囲の雪もすっかり溶けた2004年の4月、撮影に出掛けてきました。
まだ、本棚には一冊の本も入っていませんでした。
また、ウッドチップが敷き詰められた地面は、自然に落下した、杉の葉っぱに変わっていました。 近年稀にみる大雪によるアート作品への被害が伝えられた2005年7月、作品を訪れてみました。
インターネットで報じられている通り、この作品にはほとんど被害はなかったようです。
何よりうれしいことに、あれだけ一面を覆っていた杉の葉がすべて除去されており、元のウッドチップが顔を出していました。
どなたが除去して下さったのかはわかりませんが、作品の本来あるべき姿に対する同じ気持ちを持った方がいらっしゃることをとてもうれしく思いました。 2003年作品
松代大荒戸線沿い(松代城山)
常設 |