松澤 有子 [日本]
Yuko Matsuzawa [Japan] enishi
enishi 旧赤倉小学校の体育館の床を埋め尽くす、一面のクモの巣。
ステージ右上には、大きな、そして、きれいなクモの巣が張られている。
この体育館を埋め尽くすクモの巣を張った主が潜んでいるのか。
クモの巣は、かつて、学校で使われていた一輪車や脚立をも包み込み、その使われなくなった時間を思わせる。 「第4回大地の芸術祭」会期中の8月1日、作品を訪れました。
体育館で作品を撮影していると、「ありがとうございます」と、松澤氏が声を掛けて下さいました。
松澤氏によると、体育館が暗いために、写真をあきらめる人が多いとのことでした。
このクモの巣には、数千本もの待ち針使われているとのことで、その量に驚きました。
地域の方々が手伝って下さったとのことですが、なかなか、相当の地道な作業だろうと想像するに難くありませんでした。
また、ステージ右上のクモの巣の影の中に、偶然にも、クモがいるような影が見えるとも教えて頂きました。
照明を点けたら、意図していなかったところで、その主の姿が現れる、その話を伺い、きっと偶然ではなく、場が作り出してくれたんだなと感じました。
「ベンチに座って、作品を眺めて下さい」と勧められたので、しばらく作品を楽しみました。 「第4回大地の芸術祭」会期最終盤の9月12日、再び作品を訪れました。
NHKの「日曜美術館」で、作品の制作過程が取り上げられており、改めて作品を見たくなり、訪れることにしました。
この日も松澤氏が、来訪者を出迎えていらっしゃいました。
自身、ベンチに座って作品を楽しんでいると、女性のグループの方々が松澤氏と話しをされており、会期終了後、作品はどうなるのかの問いに、赤倉集落が数日後に体験学習で子供たちを受け入れるが、この体育館が宿泊所になるため、すぐに作品は撤去されると話していらっしゃいました。
それを聞いて、女性のグループの方々は「もったいない」と松澤氏に訴えていらっしゃいました。
そのやり取りを聞いていて、作品のはかなさも大地の芸術祭の一部であり、今回もいい作品に出会えたなと、この空間を心に刻みました。 2009年作品
旧赤倉小学校 体育館 |