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2006年8月9日(水) 二日目 <那智地域をハイキング(妙法山、那智の滝、熊野那智大社、補陀洛山寺)>
<那智をハイキング>
5時40分というかなり早い時間に起床。台風一過でいい天気です。今日は那智地域をハイキングする日なので、まだ涼しい朝のうちから動いておこうとこんなに早くから起きることになりました。しかしちょっと眠いね。そんな眠い目をこすりながら、朝食を準備しました。朝食は共同の自炊場で簡単に調理したもの(すのさんが)と、昨日買っておいたパン。こういう健康的な朝食もいいものです。。
朝食後はハイキングの準備。今日は一日山道を歩くことになるので、上はTシャツに下はジャージと、スポーツスタイルで挑むことになりました。何せハイキングだから。タオルや虫除けスプレーを鞄に入れて、7時前に出発。
<本日の朝食> | <宿泊場所の籠ふるさと塾> |
始発である7時過ぎの那智勝浦行きバスに乗って、途中にある山道の入り口で降りることに。どこのバス停で降りていいのか分からなかったので運転手さんに聞いたところ、何と入り口の目の前で降ろしてくれました。さすが地元民密着のバス。都会のバスではこうもいきません。
<登山道入り口> | <登山道> |
登山口から最初に目指すのは妙法山阿弥陀寺。750mある妙法山の中腹にある寺です。この妙法山を境にして、世界遺産の那智地区と過疎が著しい色川地区が分かれています。一つ山を隔てただけなのに、この違いは何なのでしょうか。やっぱり滝があることが関係しているのか。
山道の勾配はそれほどでもないですが、ずっと上り坂が続くので結構疲れます。あとなぜか僕にずっと虻が付きまとって離れてくれず困りました。虻に刺されたら痛いし。何でずっと付きまとうかね。途中からは汗がダクダク出てきて、開始15分でタオルの出番になりました。僕の場合あまり激しく運動すると喘息が出る可能性があるので、自分で体調を見極めながら慎重かつ大胆に歩かなければいけません。お陰さまで今回は喘息が出ることなく、40分くらい歩き続け8時10分頃阿弥陀寺に到着しました。。
展望台からの眺めはそれはそれは抜群で、山々の向こうに那智湾、那智勝浦の中心部(駅や商店街があるところ)、鯨で有名な隣の太地町はもちろんのこと、遠く潮岬まで見ることができ、紀伊半島の南側が一望できます。これはいい眺めです。紀伊半島はほとんど山だけど、その山々がどれも標高が高くなく、同じくらいの高さの山がずっと続いている感じなので、光景としては今まで見たことがない不思議な感じです。
<阿弥陀寺からの眺め 那智湾や太地町を望む> |
そして妙法山阿弥陀寺にお参り。阿弥陀寺は女人高野とも呼ばれ、男女関係なく信仰できた寺だそうです。この寺は熊野の民族や信仰とかなり深いかかわりがあります。死者の枕元に供える三合の飯が炊き上がるまでの間に、死者の魂は阿弥陀寺を訪れて鐘を撞くという言い伝えがあるそうで、人がいなくても鐘がなることがあるらしい。それが亡者の一つ鐘と呼ばれるもので、熊野の死者あの世へ旅立つ前に皆ここで鐘を撞いて行くのでしょう。
他にも境内には火生三昧跡なるものがあって、ここは平安時代の僧が焼身による捨て身行を行った場所のようです。なぜ敢えてそんなことまでして命を落とす必要があるのか、と僕は思ってしまうけど、宗教にはそんなことすらさせてしまうような何かがあるんでしょうね。
<阿弥陀寺本堂> | <亡者の一つ鐘> |
阿弥陀寺からはまた山道を歩いて、次は那智高原公園へ。ここまでの道は上ったり下ったりの道で、阿弥陀寺までの道よりは結構楽です。でも1.5キロくらいあるので、1時間くらいかかりました。高原公園は本当に広大な公園という感じで、子供用のローラースライダーがあったりします。あとこの辺りは富士山が望める限界の場所らしい。見に行かなかったけれども。
<遠くに那智の滝が見える> | <那智高原公園> |
ここからは一般的な山道を外れて、もう少し奥に歩いていき、那智の二の滝、三の滝を目指します。那智滝が一般的には有名ですが、那智には48の滝があると言われ、これを総称して那智四十八滝と呼ぶそうです。那智滝は別名「一の滝」。今日はその奥にある二の滝と三の滝を見に行ってみようかと。
那智四十八滝は昔ながらの修行の現場だったので、辿り着くまでの道も今までの山道と比べて険しくなっています。一の滝の上流を行くので、川越をいくつも行わなければならず、アップダウンも結構激しいものがあります。しかも昨日の台風の影響で、川はかなり増水していて、かなり危なっかしい様相を呈しています。
<二の滝を目指す> | <那智川を越えていく> |
奥に進んで行き、どうしても川を越えなければならない場所に出くわしました。普段なら岩を伝ってぴょんぴょん渡れるんでしょうが、前述の通り昨日の台風で水かさがかなり増しているので、岩を伝っていくにも危なっかしいところです。次の足場までジャンプしなければいけません。もしジャンプを失敗すると川にドボンと行くし、それよりも着地した瞬間にずるっと滑って岩に強打し、怪我をするのが一番恐怖でした。でもここを越えないと前に進めません。でも危ないよなぁ・・・。と悩んでいたら、すのさんが先にジャンプして向こうへ渡りました。なんという度胸!これは男として行かないわけにはいかないじゃないか。
意を決してジャンプし、両手両足をついて、無事着地成功!と思ったら、やっぱりずるっと滑って左足が膝まで川に浸かってしまいました。何てことだ・・・。と思って前を見上げると、何か視界がおかしい。前がぼやけて見える。おかしいと思ってメガネを上げようとすると、
・・・メガネがない!!!
どうやら着地の衝撃で川に落としてしまったようです。何と言うことか!すぐに探したものの、川の流れは速く、水かさもすごいので、いくら探しても見つかりませんでした。20分くらい探したんだけどねぇ・・・。浪人時代から6年間一緒だった茶色縁メガネよ、さようなら。那智の滝の藻屑となってくれ。しかしメガネがないと本当に困ります。僕は右だけ視力が悪いので見えないことはないんだけど、左右の視力が違うから裸眼だと余計疲れる。はぁ・・・。
ということでかなり意気消沈しながらも先へ進み、那智高原から1時間半かかってようやく二の滝に到着しました。那智原生林の中にあって他に人がいるわけでもなく、かなり厳かな雰囲気です。エメラルドグリーンの水面がまた美しい。そして二の滝からさらに奥へ30分ほど進むと三の滝。ようやく着きました。長く険しい道のりだった。こちらも聞こえるのは滝の音だけ。
<那智二の滝> | <那智三の滝> |
帰りは来た道を引き返すルートなので、途中また例のメガネを落とした川を渡らなければいけません。今回はもう安全志向で行きたかったので、靴を脱いでジャージを捲り上げて、川を歩いて渡りました。最初からこうしておけばメガネをなくすことも靴を濡らすこともなかっただろうに・・・。
このあとは熊野那智大社や那智の滝方面へ繋がる道を歩いてそっち方面へ向かっていたのですが、途中に看板が立っていて、そこにはなんと「熊野三山と熊野古道は世界遺産に登録されたので、今後社務所の許可なく二の滝とか三の滝とか行ったりしないように」と書いてありました。勝手に行っちゃいけなかったのか・・・。すみません。とすると、メガネがなくなったのは那智の神様がお怒りになった罰なのかもしれんね。そういうことにしておこう。
12時半、ようやく熊野那智大社や那智の滝、青岸渡寺などが集まる観光地エリアに到着。朝から歩き続けて大変疲れました。そして今日初めて観光客を見かけました。今日は阿弥陀寺で会った職員の人以外には全く人に会わなかったからな。それほど阿弥陀寺や二の滝・三の滝は人が行かないということなんだろうけど。そして大勢の観光客の中で僕らだけジャージにTシャツ、汗だくだくなので、明らかに浮いています。
まずは青岸渡寺とその隣にある熊野那智大社に参拝。青岸渡寺と那智大社はもともと神仏習合の修験道場で一つだったものが、明治時代の神仏分離令によって分かれたものだそうです。とりあえず、これで熊野三山は制覇。
<青岸渡寺> | <熊野那智大社> | |
<熊野那智大社の神木> | <入山心得は関西弁> |
参拝後は参道にあった「蓬莱閣」というお土産屋券レストランのようなところで昼食。1時半にしてようやく昼食にありつけました。今日も懲りずに「めはりずし定食」(650円)を注文。すのさんはマグロカレー。ここのめはりずしは鰹と醤油風味のご飯で、味付けが結構濃い感じでした。めはりずしは店舗によってそれぞれ特徴があるので、食べ比べてみるのもいいかもしれません。マグロカレーは・・・まぁそんなもんかという感じ。何となくレトルトっぽかったぞ。昼食後は参道の屋台で梅ソフトを。これって名物なのかな?
<めはりずし定食> | <暑い日には梅ソフト> |
昼食後はいよいよ那智の滝へ。滝つぼまでは階段を下りていかなければいけませんが、間近でみる那智の滝はやっぱり迫力があります。さすが、日本で最大の落差(133m)を誇る滝だけのことはある。昔の人がこれを御神体として祭ってきた気持ちがわかります。写真じゃあまり伝わらないけど、本当にすごい迫力です。思わずじっと10分間くらい眺めてしまいました。真夏日だというのに、滝つぼ周辺は涼しくて爽やかです。もしかしたらさっきのメガネもこの滝を落ちてるのかも。
<那智の滝> |
那智の滝を見てすっきりしたあとは、熊野古道の中でも有名な大門坂を下って麓へ下ります。普通大門坂は登るもんだけど、今日は一般的な観光ルートを通ってないから逆になってしまいまいした。大門坂は噂通りいい雰囲気の場所で、うっそうと茂っている大木と石畳が情緒を出しています。でも600mも続くから、実は歩いて上るとなると結構大変かもしれません。実際すれ違った人たちは息を切らして歩いていました。昔の人はこうやって苦労して熊野詣でしたわけね。今は車があるから簡単に行けるようになってしまったけど。
<大門坂を下りましょう> | <上るときはこんな感じ> | |
大門坂の入り口に到着して、とりあえずハイキングは終了。大門坂の入り口でバスに乗ったのが3時過ぎだから、今日は朝から約7時間半ほど歩きっぱなしでした。かなり疲れたけど、世界遺産の熊野・那智を存分に堪能できました。皆さんも熊野へ行った際は、時間があればできるだけ歩くことをお勧めします。昔の人がどうやって熊野詣でをしたか少しはわかるかもしれません。
バスに乗って麓に下り、那智のスーパーへ。世界遺産の那智も、麓にはスーパーだってあります。今日の夜もまた色川の方にお世話になるので、せめてものお礼と思いビールやおつまみを持参することにしました。スーパーには色川地区で作られた野菜やお茶が並んでいます。地方のスーパーは見るだけで楽しいね。
<A‐COOP那智> | <那智川下流> |
スーパーで買い物をしたあとは歩いてJRの那智駅方面へ。昨日から新宮駅だの紀伊勝浦駅だの那智駅だの出てきて混乱しますが、位置関係としては南から、紀伊勝浦—那智—新宮 です。紀伊勝浦と新宮は特急の止まる大きな駅ですが、那智は無人の小さな駅です。その那智駅近くに補陀洛山寺という、これまた世界遺産にも登録されている寺院があるので行ってみました。
補陀洛山寺は補陀洛渡海の住職を出した寺として有名です。補陀洛とは南海の彼方にあると言われていた観音浄土で、この寺の住職はこの補陀洛を目指して木の船で出航しなければならなかったそうです。しかも木の船には食料も持ち込まず、僧が乗り込んだら上から蓋をした上で釘を打ちつけて絶対に出られないようにするというもので、確実に死ににいくようなものです。さすがに江戸時代からは亡くなった僧を送り出す形にかえたみたいですが、本当に宗教はすごい力を持っているものだと思わされます。本当に修行を積んだ人間にとっては、死というものは乗り越えるべきものなのかもしれません。死をも恐れないその精神力は何かを超越しないと決して得られないものでしょう。
補陀洛山寺に参拝して、これで今日の観光日程は終了。那智駅に戻って昨日と同じ色川地区行きのバスを待つことにします。那智駅に隣接した交流センター内に「丹敷の湯」という温泉があったので、今日の疲れをとるべく入ってきました。一日ずっと歩き続けて汗びしょびしょだったので、すんごく気持ちがいい。施設もできたばかりで新しくて広く、かなり快適でした。しかも客は僕だけ。目の前に広がる那智湾を眺めながらの温泉は最高だ。
<補陀洛山寺> | <那智駅と交流センター> |
温泉ですっきりして、5時半のバスに乗って色川地区へ。今日お世話になるのは、那智勝浦町役場色川出張所で働く方。すのさんがインタビューで知り合った方だそうで、またしても初対面の僕に料理を振舞ってくれるなんて本当に有難い限りです。しかも家が少し高台にあって、そこから眺める景色が最高なのです。テラスに腰掛けながらビールなんか飲むと本当に最高だね。今は単身赴任されているそうでしたが、食材は全て地物で、おいしくいただきました。ゴーヤの炒め物と茄子の味噌煮が特においしかったー。
<テラスからの眺め> | <今日の夕食> |
その後7時くらいから、なぜか色川地区のミーティングに参加することに。すのさんが修論関係でお世話になっている人たちの集まりですが、僕が行って果たしていいのやら・・・と思っていたら、皆さん暖かく迎えてくれました。でもここでも料理(焼肉)が出て、さっき食事をしたばかりの僕はあまり食べられませんでした。ただオクラの卵ぶっかけはかなりおいしかった。食材が新鮮だと本当にうまいです。
色川地区は地方の実情に漏れず大変な過疎地ですが、珍しいことに都市からの移住して農業をする人が多く、今日はそういう人達が今後どういう風に活動を行っていくか、地域を盛り上げていくか、という話し合いだったような気がします。僕は端で眺めているだけだったけど、皆さん真剣に考えて真剣に意見を言い合っている。日本全国の過疎地で、これだけ真剣に将来を考えているところが一体どれだけあるでしょうか。僕はIターン研究については全くの素人なので何とも言えませんが、こういう地域もあるのかと頼もしさを覚えました。
<今日は満月> |
会合は11時過ぎにお開きとなり、僕らは参加者の方に宿泊場所まで送ってもらいました。ありがとうございます。今日は歩き回って疲れたし、温泉にも入っていたので、宿についてからはすぐに就寝。
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