2011年 夏の韓国調査 3
2011年8月10日(水)  <ソウル→鎮安、鎮安(農村の取り組み視察)、鎮安→長水>


<ソウルから鎮安へ>

 6時前に起床。昨日良かった天気は再び悪くなり、これから向かう南の鎮安という場所は大雨が降っているという話でした。衛星放送から流れてくるNHKのニュースでは、日本は猛暑で東京は38度まで気温が上がったと言っていましたが、こちらは雨続きで気温も25度前後とかなり過ごし易い気温ではあります。でも雨。今日は外を歩くことになりそうなので、雨だと嫌だなあと憂鬱になりながらまずは朝食。今日もシンプルに攻めましたが、朝からフライドポテトがあってテンションが上がりました。


<今日もシンプルな朝食>

<今にも雨が降りそう>

 8時半にホテルをチェックアウトし、バスに乗って移動。これから行くのはソウルからバスで約3時間、全羅北道の鎮安(チナン)という町です。鎮安は李氏朝鮮とビビンバ発祥の地である全州にもほど近く、馬耳山(マイサン)という奇妙な形をした山で有名な町です。ソウルから高速に乗り、一路鎮安へ。

 韓国の都市間をバスや鉄道で移動すると、日本以上に人が都市に集中していることが分かります。ソウルの街並みは高層ビルだらけだけど、一度郊外に出ると辺り一面は田んぼだらけで人家が極端に少なくなります。日本のように街並みが連続的になっているのとは違い、まるで見えない線があるかのようです。日本だと北海道に近いかもしれません。何と言うかドラゴンクエスト的な世界。


<漢江を越えて南下スタート>

<ソウル市内は高層建築がたくさん>

<ひとたび郊外に出るとすぐに緑が広がる>

<高速に乗ると田舎になってくる>

 途中サービスエリアで休憩をしました。韓国にもサービスエリアがあり、中身も日本のサービスエリアとよく似ています。噂によるとこれから行く鎮安や、その後に行く長水という町は相当な田舎らしく、もしかしたら水すら売っていない可能性があるということで、このサービスエリアで飲み物を補給していきました。


<サービスエリアに寄る>

<何かの意図があるに違いないパンダ達>

<鎮安の取り組みを見学する>

 ソウルから約3時間、12時に鎮安の町に到着。想像していたよりもずっと都会でほっとしました。良く考えれば馬耳山という観光スポットの拠点になっているぐらいだから、そこそこ都会なのは当たり前か。朝方は雨が酷かったそうですが、我々が到着する頃には何とか止んで一安心。まずは鎮安の行政サポート部隊(?)が入っている建物で、今回の担当者の方々と軽く御挨拶し、それから皆で昼食を食べに近場の食堂へ行くことに。


<鎮安の行政サポート部隊が入っている建物>

<雨で川の流れがすごいことになっている>

 近場の食堂は「白飯定食の店」ということで、白いご飯に合いそうなおかずがたくさん出てきました。いわゆる気軽な韓定食の店といったところです。白飯定食の店を名乗るだけあって、ご飯自体がおいしかった。焼秋刀魚も出てきて、秋刀魚好きとしては今年初めて食べる秋刀魚に心が躍ります。テンジャンチゲやキムチでご飯を食べるのもおいしかったけど、何だかんだで焼秋刀魚で食べるご飯が一番おいしかった。残念なのは醤油と大根おろしがないので、味わいが2割減に感じられてしまった点です。


<白飯定食の店>

<いろいろとおかずが並ぶ>

<お決まりのテンジャンチゲ>

<おぼろ豆腐>

<ポッサム>

<焼秋刀魚も出てきた>

 食後、再び行政のサポート部隊が入っている建物に戻り、1階にある朝鮮人参の紹介&お土産コーナーを見物。鎮安は朝鮮人参の産地としても有名なのだそうです。標高が300m〜400mと高く、朝鮮人参の栽培に適しているらしい。確かに朝鮮人参は涼しい場所で育つイメージがあるので、比較的高地で涼しい鎮安は良い場所なのかもしれません。ただ、朝鮮人参のあの独特の土臭さは健康には良さそう!と感じられるけど、好き好んで食べるかというとどうだろうか。朝鮮人参の飴をもらったので食べてみると、口の中一杯に素敵な土の香りが広がりました。。


<鎮安は朝鮮人参の産地>

<いろいろな朝鮮人参の加工品が並ぶ>

<高そう>

<朝鮮人参を収穫する人>

<朝鮮人参のお土産を売る店>

<獲れたて朝鮮人参>

 その後、1時間半程担当者の方からこの地での取り組みの説明を受け、実際に取り組みの現場を見てみることに。いつの間にかまた雨が降り出していて、これから外を歩くのになあと気分が滅入りましたが、調査なのでそうも言ってられません。バスに乗り最初の現場へ向かう途中、有名な馬耳山が見えました。雨の影響で頂上部分が隠れてしまっていますが、確かに二つ合わせて馬の耳に見えます。今回は行けなかったので、今度鎮安に来ることがあれば登ってみよう。


<有名な馬耳山>

<鎮安の車窓>

 一つ目の現場は納屋を改装して農業の展示場にしているところでした。鎮安の町では、いくつかの集落が創意工夫を凝らして農業に関する様々な取り組みを行っているそうです。ここもその一つで、ちょっとした周りの景色も含めて展示場になっています。こういう取り組みは日本でもどこかで見たことがあるなあ・・・と思って考えたら、去年行った水俣の「村まるごと博物館」の取り組みでした。集落の生活というものをそのまま見せることによって村全体を博物館とする「村まるごと博物館」の取り組み。鎮安の取り組みはそれに非常によく似ています。


<一つ目の現場>

<納屋を改装して農業の展示場に>

<緑が広がる>

<いろいろいただ真っ赤な唐辛子>

 二つ目の集落は街並み全体が博物館になっているような場所。確かに風情があると言えば風情がある街並みです。ここの集落の住宅は表札代わりに自分を良く表すような絵を飾るようで、家によって個性が出ています。中には竹島が大きく書かれている地図を飾っている家もあり、ここの家に住む人はきっと祖国愛が強いのでしょう。


<鎮安の農村の街並み>

<農村風景その2>

<竹島がかなり大きく書かれている>

<こういうドラマが好きな人の家?>

 歩いて行くと、昔の朝鮮の家がそのまま残されている場所がありました(右下写真)。誰も住まなくなったのでいずれ取り壊すそうですが、こういうのはアメニティとして綺麗に整備して残すべきものなのでしょうか、それとも周りの景観に合わせて壊してしまうべきなのでしょうか。一説では昔の家屋にはアスベストが使われているとのことで、それも考えると結構複雑な問題になりそうです。確固たる基準がない議論は難しいですね。

 さらに移動して三か所目は、納屋だった場所を買い取ってギャラリーとしたところ。農村や農村の人々を撮った写真がたくさん飾られています。


<チリサン>

<初めに出てきたおかず達>

 最後の四か所目の集落は、十数年前に移住してきた牧師さんが先導して集落作りを行っている場所。牧師さんからの取り組みに関するありがたいお話を30分程伺い、その後この場所で夕食となりました。


<集会場兼農村レストランのような建物>

<隣に教会がある>

 夕食はこの集落で採れた野菜を中心にしたヘルシーな韓国田舎薬膳料理。集落の奥様方が作ってくれる。文字通りの家庭料理です。ただ牧師さんが管轄しているので酒類は一切出していないそう。調査で酒のない夕食なんて。。地元で採れた体に良いものということで、初めて見る食べ物も多かったですが、それはそれでヘルシーな感じがしておいしかった。何の葉っぱか分からない葉の天ぷらには若干驚きましたが。あと、最後に出てきたおやつのよもぎ餅。恐らく砂糖を使っておらず、よもぎ本来の味がしてほんのり甘くおいしかったですが、なぜか何度もお替りが出てくるので最後の方はよもぎで腹一杯になってしまいました。どれもそんなに辛くなく、本来の韓国料理はこういうものなのかもしれません。体には本当に良さそうなので、毎日食べれば長生きしそうです。


<田舎薬膳料理>

<中央の大根のスライスで具材を巻いて食べる>

<ご飯とお味噌汁>

<何度も出てきた甘くないよもぎ餅>

 夕食で鎮安の取り組み見学は無事終了。ここからはバスに乗って翌日の目的地である長水(チャンス)郡に前乗りすることに。鎮安から長水までは南に約30分と行ったところです。この日のホテルは「モーテル」となっていて、オンドル部屋はツインで1泊1350円(一人当たり)となっていたので一体どんなところに泊まることになるかと、興味半分不安半分でした。

 そしてモーテルに到着。街灯もない田んぼの真ん中に、ぽつんとそびえ立つモーテル。モーテルの文字がピンク色で怪しく輝いています。フロントはまさにラブホテルのそれといった感じで受け付けの人は見えないし、部屋によっては鍵がなく、外から鍵がかけられないというありさま。「どうするんだ?」とフロントに聞いたら、「出かけるときは私たちが怪しい奴が入って行かないか見ているから大丈夫」とか。。何だかすごいところに泊まることになってしまったなあという感じです。

 韓国ではラブホテルと一般的な安旅館の区別がないモーテルがたくさんあるので、僕もそういうモーテルには泊まったことはありますが、フロントもきちんとしていたし鍵もしっかりついていました。ここほどラブホテル寄りのモーテルは初めてびっくりです。部屋に入るとまあそこそこの設備ではあったけれど、布団や枕にはシーツがなく、これまで使ってきた人々の臭いが染み込んでいます。同室になったD2Y君は布団を敷いて寝ていたけれど、僕にそんな勇気はなく、布団を引かずにオンドルの床で寝ることに。知らない人達のいくつもの逢瀬が染み込んだあと布団で寝るなんて嫌だわ。。あと、エアコンは18度・20度・25度の温度設定しかできないと、節電中の日本なら怒られそうな作りで、窓を開ければどこからともなく漂ってくる畜舎の臭い・・・と、もはや素敵として言いようがない場所でした。


<どう見てもラブホテル>

<オンドル部屋で男二人>

 モーテルに着いたのが8時過ぎで、テレビを付けるとちょうどサッカーの日韓戦の後半が始まったところ。ただ今日は夕食で酒を飲まなかったためか、この後すぐに懇親会に出かけようということで、後半最初の10分程度しか見ることができません。しかし結果的にはその後半10分だけで日本が2点も入れたので、ちょうど良いところを見ることができたのではないかと思います。昨年のワールドカップ以降、日本は強くなったなあ。実況も解説も当たり前のように韓国語だったので、何を言っているかはわかりませんでしたが、かなり落胆してお通夜みたいな雰囲気だったことだけは伝わってきました。

 サッカーもそこそこに再びフロントに集合し、今日鎮安を案内してくれた担当者の案内で歩いて居酒屋へ。ただ、モーテル以外には田んぼと川と畜舎くらいしかありません。こんなところを歩いて行って居酒屋なんてあるんかな・・・と思っていたら何と、川沿いの掘立小屋みたいなところが居酒屋だとかで招き入れられました。完全に物置だと思ってた・・・。外見もさることならが、店の中もかなり凄く、べニアの壁には一面の落書き。誰かが歩けば床がへこんで小屋全体が揺れるし、揺れると天井から虫が落ちてきます。店の女将にトイレはどこかと聞けば、そんなものないから川の近くでしてくれとか。男性の小ならいいけど、大とか女性とかはどうするんだろうか。

 ということで、屋台とも店舗ともつかない謎の店でビールやマッコリその他。僕は夕食を食べ過ぎて食事には何も手を付けられませんでした、食事は普通に食べられたそうです。この店は一体誰がどんな目的で建てたのだろうか。それだけが気になります。


<川沿いにある掘立小屋のような店>

<店の中も何と言うかすごい>

<お通し?>

<豆腐と豚キムチ>

 10時半にお開きになり、モーテルに戻ってから就寝。オンドルの床が固い・・・。


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