ローマ旅行記 3
2014年10月29日() 3日目 <S.M.マッジョーレ大聖堂、チルコマッシモ、真実の口、コロッセオ>


<真実の口とコロッセオ>

 ローマ3日目は朝6時半起床。今日から学会が本格的に始まるけれど、午前中はセレモニーのみで午後からセッションが始まるので、午後から参加することにして午前中は昨日行けなかったコロッセオに行くことにする。時間がもったいないのでさっさと支度をして朝食も食べずに出かける。コロッセオが開く時間が8時半なので、それまでは朝早くから開いている名所名跡を見て回ることにした。ローマには朝7時頃から無料で開いている教会が多いので、早朝歩き人間やお金がない人間にとってはありがたい街だと思う。

 まずはその7時から開いている教会であるサンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂に行く。大聖堂はテルミニ駅から近く、泊まっているホテルからも徒歩3分くらいの距離にあって、非常に行きやすい場所にある。サンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂はサン・ピエトロ大聖堂などと並ぶローマ4大聖堂のひとつで、その敷地はバチカン市国の飛び地になっているという。そんな場所が中央駅近くにあるとは思わなかった。


<朝はまだ曇り空>

<サンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂の後陣>

<S.M.マッジョーレ広場のオベリスク>

<S.M.マッジョーレ大聖堂を正面から>

 朝早かったので入っていいものかどうか一瞬逡巡したけれど、恐る恐る中を覗いてみると大丈夫のようなので入ってみる。サン・ピエトロ大聖堂ほどではないにしても、さすがに歴史がある大教会の威圧感を醸し出している。朝早いので人がほとんどいないのもいい。やっぱり宗教施設は朝早い澄んだ空気の中で訪れるに限るなあと思う。キリスト教徒でない僕でも何となく神聖な気持ちになるような気がしないでもないので。椅子に座って佇んでいると、ちょうど雲の切れ間から顔を出した太陽の光がステンドグラスを通して教会内の注ぎ込んできた。その光が教会内の柱に反射してまた綺麗だった。一級の教会建築はその辺りのことも良く考えられているらしい。


<大聖堂内部>

<大聖堂の天井>

<ステンドグラス越しに朝日が差し込む>

<システィーナ礼拝堂>

<天井にはモザイク画も>

<神のご加護がありますように>

 サンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂で朝の神聖な空気に触れた後、朝の街を地下鉄B線カヴール(Cavour)駅を目指して歩いていく。5分くらい坂を下ると地下鉄カブール駅。中央駅であるテルミニ駅の次の駅だけど、そんなに混んでいない。でもテルミニ駅からやってくる電車は朝から激混みで、どう考えても乗れるもんじゃなかった。仕方がないので1本待ってみると、さっきの電車よりは空いていたので乗り込む。ローマに来て通勤ラッシュに揉まれるとは。やれやれ。


<カヴール駅に向かって歩いていく>

<地下鉄カブール駅に到着>

<薄暗いカブール駅>

<とりあえず3分後、5分後に来ます、と>

 地下鉄に乗って次の駅のコロッセオ駅を通り越して、その次のチルコ・マッシモ(Circo Massimo)駅で降りる。地上に出ると目の前には大きな国連食糧農業機構(FAO)の本部建物があった。そのFAOと道路を挟んだ向かい側には地下鉄の駅名にもなっているチルコ・マッシモと呼ばれる場所が広がっている。一見するとただのだだっ広い河川敷公園のようだけど、川はない。ここは紀元前7世紀につくられた巨大な円形競技場跡で、馬が引く戦車によるレースが行われていた場所らしい。30万人収容という規模から、その大きさは推して知るべし。

 ただ今では本当に兵どもが夢の跡といっただだっ広い広場なので、想像力を豊かにしながらチルコ・マッシモの周辺を散策するくらいしかなかった。今から1400年前の場所がそのまま跡地として残っているのもすごいけれども。ということで朝の太陽を浴びながら、チルコ・マッシモの周りをてくてくと歩いて行った。チルコ・マッシモでは犬を散歩させている人が多く、戦車競走が行われていた古代に比べると長閑な時代になったなあと思う。


<チルコ・マッシモ>

<チルコ・マッシモの向こうはパラティーノの丘>

<兵どもが夢の跡のチルコ・マッシモ>

<遠くにはヴィットリオ・エマヌエーレ2世紀念堂が見える>

 チルコ・マッシモの側面を600mくらい歩くと、サンタ・マリア・イン・コスメディン教会に到着した。ここはローマの休日で有名になった「真実の口」がある教会で、日中は真実の口に手を入れるために長蛇の列ができるらしい。ただ、まだ朝早かったために誰もいなかったので(真実の口の営業?は9時半から)、柵を隔ててではあるけど写真は撮り放題だった。この真実の口、元々は古代ローマのマンホールの蓋だったらしい。それがいつの間にか教会に飾られ、映画の影響で観光名所になるとは歴史は分からないものだと思う。嘘つきが真実の口に手を入れると手を食べられてしまうらしいので、僕の場合は手が何本あっても足りないな。。


<S.M.イン・コスメディン教会>

<教会の入り口に真実の口があった>

 真実の口を見た後、コロッセオまでぶらぶらと歩いていくことにする。途中で少し迷って遠回りをする羽目になってしまったけれど、ローマはどこを通っても歴史的な遺跡が目に入るので、それはそれで面白かった。途中でテレビかCMか何かの撮影もやっていて、それを見ることができたのもまた一興。ただ写真を見てもらっても分かるように、ローマは路上駐車がめちゃくちゃ多い。どこに行っても路地裏には車が止まっているので、道が狭くなって歩き辛いのが残念ではある。


<真実の口広場>

<サン・アナスタシア教会>

<石畳の裏道>

<ジャーノ門>

 で、結局やや遠回りしてうろうろしていたら昨日も訪れた市役所のあるカンピドーリオ広場に出てしまった。市役所裏からはフォロ・ローマノが良く見えるので、もう一度行って写真を撮ってくる。朝の逆光で写真は撮り辛かったけど、まだ人がいないフォロ・ロマーノは昨日見た時よりも遺跡感が増しているように思える。少し道に迷ったおかげで、昨日は見られなかったものを見られたのはよかったかな。


<今日もカンピドーリオ広場>

<朝のフォロ・ロマーノ>

<朝のフォロ・ロマーノその2>

<朝のフォロ・ロマーノその3>

 市役所裏の高台から大通りまで下りて行く途中、日本人の母娘らしい二人が地図を見ながら歩いてくるのが見えた。服装、髪型、挙動のどれをとっても日本人っぽい。ローマはやっぱり日本人が多いし、日本人はパッと見ただけで分かるなあと思っていたら、その母娘が僕の方にすたすたとやってきて「すみません」と声かけられた。僕が反射的に「はい」と答えると、母娘も「ああよかった、やっぱり日本の方でしたか」と。どうやら向こうから見ても僕は日本人に見えたらしい。まあ今日は午後から学会に行く予定で、スーツっぽい服装だったからそう思ったのかもしれない(ローマではスーツを着た人をほとんど見なかった)。聞けば母娘はこれから真実の口に行きたいけど、この道を行けばいけばいいのかどうか教えてほしい、と。この道をまっすぐ行くことは、つまり僕が間違って来た道を行くことになるので、出来れば間違えないように大通方面から行った方がいいですよと答えて別れたけど、行きの飛行機以来久しぶりに日本語で話したのでちょっと変な感じだった。わずか2日日本語を話さないだけでも、日本語が変になってしまう。

 その後、昨日も歩いた大通りをコロッセオに向かって歩いていく。ローマは現在3本目となる地下鉄C線建設の真っ最中らしい。ローマは大都市にもかかわらず、地下鉄は2線しかない。これはローマの地下を掘ると至る所で遺跡が見つかってしまい、工事が全然進まないかららしい。当初2013年に開通予定だったのが、いろいろあって2020年に伸びてしまったとか。観光地としてはいいんだろうけれど、住民にとっては不利益を被っているところもあるのだろう。・・・というようなことを考えながら歩いていると、コロッセオが目の前に見えてきた。朝9時半、予定より1時間遅れてしまったけど、17時間振りにコロッセオに到着。


<コロッセオの下に地下鉄C線建設中>

<17時間振りのコロッセオ>

 8時半の開場から1時間経っていたので、既に結構人が多かった。入場券売り場には列ができている。でも僕は黄門様の印籠のごとく、36ユーロで買ったローマパスを持っている。このローマパスを使えば、長い列に並んで入場券を買わずに入場することができる。おかげで入場券売り場の長い列を横目に、全く待ち時間なしに入場することができた。

 せっかくコロッセオに来たのだからきちんと見学したいと思ったので、日本語のオーディオガイドを借りようと思って入場後に列ができていた恐らくオーディオガイドの貸出口であろう場所に並ぶ。なかなか列が進まなくて、10分くらいでようやく僕の前のカップルに順番が回ってきた。ところが、そのカップルがどうやら怒っている。どうも彼らが借りたい英語のオーディオガイドはここではなく向こうの窓口で貸し出すらしい。この時点で僕も嫌な予感がした。前のカップルが文句を言いつつもしぶしぶ向こうの窓口に行った後、僕の番。「ジャパニーズオーディオガイド、プリーズ」と聞いたところ、ジャパニーズのオーディオガイドもこっちじゃなくて向こうだと。嫌な予感が的中して、じゃあこの並んだ10分は何だったんだ、どういうつもりなんだ、責任者を呼べ!と文句を言いたくなった。でも僕の英語能力では文句が言えない。そして私はおとなしい日本人。結局何もいうことができず、ひきつった笑顔で「アイシー、アイシー」と言って引き下がるしかなかった。こういう時はものすごくストレスが溜まってしまう。

 日本語のガイドを貸し出しているという別の窓口に行ってみると、そこも結構な列ができている。オーディオガイドを貸し出すだけでこの行列になってしまうのは、コロッセオの事務能力が低いからなんじゃないかと思ってしまう。並んでこれ以上時間を浪費したくなかったので、今回はもうオーディオガイドを諦めて、地球の歩き方と所々にある英語の説明看板を見て何とかすることにした。


<コロッセオの入り口に向かう>

<コロッセオに入りました>

<いざ競技場へ>

<コロッセオ内部>

 そしてコロッセオ内部へ。コロッセオは1階部分と2階部分を一周見学することができる。昔の決闘場だった場所は既に床がはぎ取られていて、昔の地下遺構をそのまま見ることができる。地下は猛獣の折になっていたらしい。ちょうど行きの飛行機で見たテルマエロマエ2でもコロッセオでの決闘場面があったので、いいタイミングだった。昔はここで人間同士の殺し合いが行われていて、それを大勢の観客が野次を飛ばしながら見ていたというのだから、現代の倫理観に照らしてみるまでもなく、決して趣味が良いものではないよなあと思う。そういう時代の奴隷に生まれなくてよかった。とりあえず、一生に一度は見ておきたい場所のトップ100には入るであろうコロッセオをこの目で見ることができてよかった。万が一また来ることがあれば、今度こそは日本語のオーディオガイドを借りることにしよう。 

 コロッセオにある程度満足したので、地下鉄に乗って一旦ホテル方面に戻る。早めの昼食はホテルの近くにある「パスタリート・ピッツァリート」へ。地球の歩き方によれば、チェーン展開するパスタとピッツァの専門店とのことで、外観を見ると一人でも入りやすそうな雰囲気。そして何よりパスタリートと言っているくらいなので、パスタ専門店だからパスタの質もまあまあ間違いないだろうということで即決した。

 店に入って、メニューを眺めながらとりあえずモレッティの生ビール。まだ朝11時前だけど、もうこの際いいやと。ビールは3.9ユーロで、500mlが出てきた。午前中から飲むビールには背徳感が浮かんでいてたまらない。パスタは麺の種類とソースの種類を選べるということで、昨日の14ユーロカルボナーラと比較するために、ここでもカルボナーラを注文する。本当はトマトベースのスパゲティを食べたかったのだけど、ここは本場のカルボナーラを食べておかなければいけないという強迫観念に駆られていたらしい。麺は一般的なスパゲティにして、カルボナーラを注文する。料金は9ユーロ(1260円)だった。これだったらまあまあか。

 15分くらい待ってやってきたのは、それはもうてんこ盛りのカルボナーラだった。本場のカルボナーラなので、もちろん生クリームは使われていない(と思う)。スパゲティもわずかに芯が残っているアルデンテ。チェーン店のスパゲティなのでやや大味な感じもしたけれど、そこそこおいしかった。そこそこおいしかったけど、やっぱり量が多過ぎた。はしやの大盛りスパゲティで量が多いのには慣れているつもりだけど、さすがにここまで多いと食べ切れない。そもそもカルボナーラは濃厚なので、途中でフォークが止まってしまう。3分の1の量で充分だったかな。ここの店は何人かで行って、分け合うのがいいようです。


<パスタリート・ピッツァリート>

<10時半からやっている店内>

<とりあえずモレッティの生ビールを>

<9ユーロのカルボナーラは超大盛り>

 食後一旦ホテルに戻り、その後バスに乗って学会会場へ行く。午後は学会に参加。学会に行くときにも大学のキャンパスを間違ってしまい、一緒にバスに乗っていた台湾人とタクシーに乗って移動するなんてこともあったけど、それはここの本題ではないので置いておきます。


<ローマの郊外にある学会会場周辺>

<学会会場近くのバス停>

 この日の学会予定が終わった後、バスに乗ってテルミニ駅まで戻る。テルミニ駅まで戻ると既に夕方で、太陽が傾きかけていた。太陽が傾きかけてきたということは、そろそろ夕食の時間。一人で海外にいると一番問題になるのがこの夕食で、昨日はマクドナルドで済ませてしまった。でも食にはこだわりたい人間の一人として、昨日マクドナルドで食べてしまったことを非常に後悔したので、今日はせめてグローバリゼーションにまみれずに現地のものを食べようと思っていた。ただし本格的なレストランは難しい。そこで調べてみると、テルミニ駅の中にセルフ形式のレストランがあるという。駅の中にある大衆食堂みたいなものだけど、イタリアの雰囲気を味わうのであればちょうどいいだろうということで、そのセルフレストランへ行ってみることにした。

 テルミニ駅に行くと、確かに中2階に「チャオ」というイタリア全国に展開するセルフレストランがあった。中を覗いてみると、結構きれいで日本の古い駅にありがちな大衆食堂という感じが全くない。席からの眺めもいいし、これならなかなかいいんじゃないかと思い、今日の夜はここで食べることにする。


<夕方のホテル前>

<夕方のテルミニ駅>

<駅の中2階にあるチャオというセルフレストラン>

<チャオの店内>

<チャオの店内から駅を眺める>

<反対側も眺める>

 「セルフセルトラン」の通り、大学の学食のようにまずはお盆を持ち、食べたい料理がある場所まで行って調理してもらう形式だった。全部イタリア語で書いてあったので何が何だか分からなかったけど、置いてある食材を指さしてお願いしたり、前の人と同じものをという感じで頼んだりして事なきを得た。今回は豚肉のステーキ(5.5ユーロ)、サラダバー(3ユーロ)、フライドポテトとアーティチョーク(3.5ユーロ)。これに500mlビールと赤ワイン275mlで合計17.5ユーロ(約2450円)。セルフレストランの割には何だかんだで高くなってしまったけど、まあ仕方がない。

 豚肉のステーキはその場で焼いてくれて、焼きたてほやほやを出してもらえる。これは大学のような生協食堂とは大きく違うところ。あとはイタリアでよく食べられるアーティチョーク(イタリア名カルチョーフィ)の塩ゆでがさっぱりとしておいしかった。これはビールにもワインにも合う。ビール500mlを飲んだあとで赤ワインに移ったので、駅のセルフレストランにもかかわらずいい気持ちになってしまい、食事に1時間ぐらいかけてしまった。そんなに混雑もしてなくてゆったりとできる場所だったので、明日以降も食事場所を探すのが面倒になったらここで済ませてしまおう。


<本日の夕食>

<豚肉のステーキ>

<フライドポテトとアーティチョーク>

<地元の赤ワインを飲む>

 食後、酔いを醒ますためにテルミニ駅やホテルの周辺を散歩してからホテルに戻ることにした。

 しばらく歩いていると小雨が降りだしてきたので、急いでホテルに戻ることにする。雨が降り出すと、どこからともなく折りたたみ傘を手にした中東系の男たち現れて、道行く人に売り始めていた。確か彼らはスマホ自撮り用の棒を売っていた人たちでは?彼らはどういう形態でどういう商売をしている人たちなんだろうか。

 少し雨に打たれて酔った頭もすっきりしたので、ホテルに戻って昨日も見たフランスのクイズ番組を見ながら明後日に迫った報告の準備を進める。


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