ローマ旅行記 4
2014年10月30日() 4日目 <ポポロ広場、スペイン広場、ディオクレティアヌスの浴場跡、マッシモ宮(国立博物館)>


<スペイン広場や博物館を回ってみる>

 午前4時に起床して午前中は明日の報告準備。報告スライドの準備は終わっていたのだけど、報告内容の原稿(いわゆるカンニングペーパー)を作るのに予想以上に時間がかかる。というのも海外の出先で準備すると印刷できないので、原稿は全て手書きで作らないといけないから。何だか久しぶりにシャーペンを握ってペンだこを気にしながらカリカリとノートに英文をしたためていったように思う。日本国内なら最近だと出先でもコンビニでPDFファイルを出力できるので手書きしなくてもいいのだけど、ローマにはそんな便利なことをやってくれる場所はないので、黙々と手書きで作らないといけない。改めて、日本は便利な国なのだと思う。

 ホテルの部屋の西洋人仕様の高い机と椅子に悩みながらも、とりあえず8割方完成させたところで昼になった。さすがに疲れてきたのと、学会は午後またセレモニーのようなものがあることと(個別セッションは基本的に最終日に偏っている)、ローマパスの効力が今日で切れてしまうことなど、天気がものすごく良いことなど、様々な要因を勘案した結果、午後は観光に費やすことにした。

 シャワーを浴びて支度をして出かける。朝食を食べてなかったので、かなりの空腹だった。ホテルの朝食タイムも既に終わっていたので、テルミニ駅にあるバールで軽く食べることにした。何を食べようかと迷っていると、店前のディスプレイに豚の丸焼きが飾られていて、その上にはその焼豚の肉を挟んでいるであろうハンバーガーのようなものが目についた。豚の丸焼きはポルケッタといい、ローマではよく食べられるらしい。ということで今日の朝食兼昼食はこのポルケッタのハンバーガーにすることにした。ちなみにこういう形態のハンバーガーのことをパニーニというらしい。そのポルケッタのパニーニを買ってバールの立ち飲みカウンターに行き、エスプレッソを注文する。エスプレッソは1ユーロだったので、2日前にバチカン近辺で飲んだ4ユーロのエスプレッソはやっぱりぼったくり価格だったみたい。

 エスプレッソをくいっとやりながらポルケッタのパニーニを食べる。ポルケッタはやや豚肉が固かったけど、仄かに香草の匂いが漂っていてなかなか香ばしい。パンがもう少し柔らかければなあという感じではあったけれど、お腹が空いていたのでこれでも十分だった。やっぱりイタリアの朝は(もう昼だけど)、立ち飲みのバールでエスプレッソをクイッ!だな。


<グストではなく隣のバールで遅い朝食>

<ポルケッタ(豚の丸焼き)のパニーニ>

<ポルケッタのパニーニは3.9ユーロだった>

<エスプレッソとパニーニで4.9ユーロ>

 食後、地下鉄A線に乗ってフラミニオ(Flaminio)駅へ行く。一昨日、昨日でローマの主な見どころは大体見たので、今日は残りの目ぼしい場所に行くことにする。まず目指したのはローマの北の玄関だったというポポロ広場。今日は天気が良くて暑い。フラミニオ駅を出てポポロ門(フラミニオ門)をくぐるとポポロ広場になる。ポポロ門の隣にはサンタ・マリア・デル・ポポロ教会があって、ここも入場無料かつ美術作品がたくさんあるということなので入ってみる。


<今日も落書き一杯の地下鉄に乗る>

<フラミニオ駅近くのゲート>

<フラミニオ広場前の通り>

<ポポロ門>

<ポポロ門とサンタ・マリア・デル・ポポロ教会>

<ポポロ門から見たポポロ広場>

 現在のサンタ・マリア・デル・ポポロ教会は1472年に当時の教皇の命によって建設されたというので、ルネサンス初期の教会建築ということになる。ガイドブックを見ると、「チボの礼拝堂」「チェラージ礼拝堂」「ロヴェーレ家の礼拝堂」「キージ家の礼拝堂」など、いろいろな礼拝堂にそれぞれ有名な絵画やフレスコ画がある。その一つ一つについて、僕は詳しく理解することができないのが残念この上ないけれど、とりあえず迫力のある宗教絵画が多くあることは分かった。チェラージ礼拝堂にある絵画は三つとも有名らしい(例えばカラヴァッジョの「聖パオロの改宗」など)ので写真を撮ってみたけれど、ご覧の通り写真が暗くて何が何だか分からなくなってしまった。2ユーロで2分間照明を照らされるような仕組みになっているので、せっかくなんだから2ユーロ支払えばよかった。ただ、他の誰かが2ユーロ払ってくれると照明のおこぼれに与れるので、自分で2ユーロ支払うのも何だかなあという感じがしないでもない。完全なフリーライダーになってしまうけれど。


<サンタ・マリア・デル・ポポロ教会>

<チボの礼拝堂>

<チェラージ礼拝堂>

<キージ家礼拝堂>

 教会から出て、ポポロ広場の隣にあるピンチョの丘に登ってみる。ここの丘にあるテラスからはポポロ広場とローマが一望できるということで、少し汗をかきながら上る。そんなに高い場所にあるわけではないけど、暑さのおかげで汗をかいてしまった。11月も近いのにこの暑さとは。ピンチョの丘のテラスからは確かにローマが一望できるけれど、中心地の方の景色は逆光になってあまりきちんと見えなかった。眼下のポポロ広場は良く見える。そして遠くにはサン・ピエトロ大聖堂も。少し高い場所から見ると、人がアリのように見えてちょっと気持ち悪い。


<ピンチョの丘のテラス>

<ピンチョの丘のテラスから眺めるポポロ広場>

<ピンチョの丘から眺めるローマの郊外>

<テラスより少し下から眺めてみる>

 ピンチョの丘から降りてポポロ広場へ。広場なので何てことないけれど、オベリスクの周りには人が結構集まっている。大道芸人がアコーディオンでサンタ・ルチアを演奏していて、その響きが青い空によく映えるような気がする。街中に広場がたくさんある都市はその雰囲気が良いと思う。


<ポポロ広場とポポロ門とS.M.デル・ポポロ教会>

<双子教会>

 ポポロ広場からバブイーノ通りを歩いてスペイン広場に向かう。地下鉄の駅にしてちょうど一駅分。狭い路地で直射日光が差して来ないので、散歩するにはちょうど良かった。


<バブイーノ通り>

<バブイーノ通りその2>

<やや気持ち悪い像がある>

<スペイン広場に到着>

 15分くらいぶらぶらしながら歩いてスペイン広場に到着。映画「ローマの休日」のおかげで、ローマと言えばスペイン広場か真実の口かということになったようで、今日のスペイン広場も老若男女人種を問わず大賑わいだった。僕も小さい頃にローマの休日を見たことがあって、オードリー・ヘップバーン扮するアン女王がこのスペイン広場の階段でジェラートを食べていた場面は鮮明に覚えていた。あれ以降、スペイン広場でジェラートを食べる人が多くなって、ごみが散乱したために、今ではスペイン広場では飲食禁止になっているらしい。が、イタリアには決まりがあってないようなものなのか、階段ではピクニックのように弁当を広げて臭いをまき散らしながら昼食を取っている集団が結構いた。そもそも駅も全面禁煙になっているはずなのに、かなりの人がスパスパ吸っていたからなあ。

 僕もとりあえずスペイン広場の階段に座ってみる。が、一人だと話し相手がいないので手持無沙汰でやることがない。僕のように一人で来ている人も結構いたけれど、皆一様に手持無沙汰のようんだった。そもそもこれだけ人が多いとスリの危険性があるので、座るのはやめ階段の上まで行き、写真を撮ることにした。階段の上からはローマ一のショッピングストリートであるコンドッティ通りを正面に見ることができる。僕はブランド物のショッピングには興味がないので、コンドッティ通りは歩かなかったけれど。


<スペイン広場の階段にやってきた>

<高い場所からコンドッティ通りを眺める>

<人がわんさかいます>

<本を読む少年がなかなか絵になる>

 スペイン広場はローマでも有数の集客力のある場所なので、その分物売りや危険な人物も多い。ミサンガを巻きつけて金をせびる輩は見なかったけれど、一輪のバラを強引に持たせて金をせびる輩は見かけた。僕もそういう輩から何度も「ニーハオ」を声を掛けられ、最初は無視していたものの、あまりにニーハオニーハオしつこいので、ついにイライラが頂点に達し、ニコニコしながら日本語で「ニーハオじゃないよ。お前はバカなんだね。」と返事をしてその後無視をした。嫌んなるね、本当にもう。。

 ということで良いところも悪いところも含めて一通りスペイン広場の雰囲気を感じることができたので、地下鉄に乗ってテルミニ駅に戻ることにする。スペイン広場のそばにはA線スパーニャ(Spagna)駅があるので、そこからテルミニ駅に戻る。スパーニャ駅のコンコースはストリート・アートで埋め尽くされていて、なかなか見ごたえがあった。


<地下鉄A線スパーニャ駅>

<スパーニャ駅構内のストリート・アート>

 テルミニ駅到着後、もう遠くに出かけるのはやめにして、最後はホテル周辺をぶらぶらすることにする。テルミニ駅周辺にはローマの国立博物館が数か所かり、ここもローマパスで共通入場料7ユーロが無料になる。まずはテルミニ駅前にあるディオクレティアヌスの浴場跡へ。300年頃に皇帝ディオクレティアヌスの命によって作られた、今でいうところの健康ランドのような施設の跡地で、中世には教会や修道院に転用された後、今はローマ国立博物館の一部になっている。行きの飛行機でテルマエロマエ2を見たので、浴場跡を見物するというのは何ともタイムリーだった。ただ、テルマエロマエは五賢帝ハドリアヌスの時代の話なので、ディオクレティアヌスよりも200年前のことらしい。

 ディオクレティアヌスの浴場跡に入って遺跡を見つつうろうろする。半分は博物館のようになっているので、石碑やローマ時代の文字なんかも見ることができる。中世には教会とか修道院になったということなので、どこからどこまでが浴場の遺構なのかははっきりとは分からなかったけれど、何となくここが大浴場だったんだろうなあというのは雰囲気で分かる。床に残っている当時の大きなモザイクが時代を感じさせる。2000年近く前に高度な入浴文化があったというのは温泉大好き私達日本人もびっくり。今回はディオクレティアヌスの浴場よりも古いカラカラ浴場の遺跡に行けなかったので、次があればそっちに行ってみよう。


<ディオクレティアヌスの浴場跡へ>

<浴場跡の建物>

<壁画の展示>

<浴場跡は展示場になっている>

<昔の手洗い場?もしくは個人用浴場?>

<彫刻をアップで>

<床のモザイク>

<多分浴場跡の遺構>

<浴場跡は後年教会などに転用された>

<一応、影で自分の写真も撮る>

 浴場跡の奥には中庭を囲む「ミケランジェロの回廊」があるので行ってみる。回廊には古代ローマ時代の彫像が展示されていて、なかなか見ごたえがある。回廊は「ミケランジェロの」となっているけれど、実際はミケランジェロの死後に弟子が設計したらしい。ちなみにこの回廊の途中にペットボトルの水の自動販売機があって、500mlで0.5ユーロとお得だったので買おうとするも、コインを全く受け付けてくれなかった。5分くらい粘ったけど2ユーロ、1ユーロ、50セント、20セントのどの硬貨も受け付けてくれない。やっぱり海外の自動販売機は当てにならないな。

 続いてディオクレティアヌスの浴場跡のすぐ隣にあるサンタ・マリア・デッリ・アンジェリ教会へ。ここは浴場跡の隣というよりは、浴場跡の遺構を活かして教会にしたらしい。教会正面は浴場跡のくぼみを活かした形になっていて、一般的な教会建築とは少し趣が異なっている。1561年にローマ教皇の命でミケランジェロが建て直したということで、ミケランジェロが浴場跡の遺構を最大限に活かしたかったからこういう形になったそうだけど、天才の考えることは良く分からんと思う。

 教会の中は正面から想像できないほど大きく、特に翼廊が長い。翼廊が長いので教会全体として十字型になっている。こういう教会の作りとギリシャ正十字形というらしい。


<サンタ・マリア・デッリ・アンジェリ教会>

<教会内部>

<これまでの教会に比べて翼廊が広い>

<1702年に作られた日時計・子午線>

 サンタ・マリア・デッリ・アンジェリ教会の正面はロータリーの共和国広場になっている。多くの人が噴水でくつろいでいたので、僕も噴水の方に行ってみようと思ったが、街の中心部で交通量が多いので噴水に行くまでが一苦労。横断歩道もないので結構危ない。ローマは交通量が多い上に横断歩道もあってないようなもので、皆赤信号であろうが青信号であろうが車のちょっとした隙を縫って歩いていく。最初はその様子を見ておっかなびっくりだったけど、4日くらいすると慣れてくるもので、僕も「はいはいちょっと通りますよ」と大量の車を制しながら道を渡れるようになった。でもこの共和国広場の噴水だけはレベルが違う。いつ轢かれるか分かったもんじゃない。

 何とか噴水までたどり着き、でも特に何があるというわけでもなかったので再び元の道に戻り、続いてローマ国立博物館の一つであるマッシモ宮へ。個々に入って今日の予定を締める予定だったけれど、朝・昼とポルケッタのパニーニしか食べていなくて腹が減ったので、かなり早めの夕食(まだおやつの時間だけど)を食べてからじっくりと博物館を見ることにした。


<共和国広場>

<マッシモ宮>

 夕食は今日もテルミニ駅2階のセルフレストランチャオで。今日はパスタを食べようと思い、昨日見ておいしそうだったカルボナーラにしようと注文すると、今日はカルボナーラはやってないと。折角カルボナーラ食べ比べをしようと思ったのに。。仕方がないのでミートソースのペンネにする。あとはまるごと大きなモッツアレラチーズとポテトとビール。会計をしたらなんと昨日よりも高い18.5ユーロ(約2600円)もした。そして改めて見てみると、全体として色が全然おいしそうじゃない。実際にもペンネは固く、モッツァレラチーズは多過ぎ、芋は油っぽいということで、満足せずに腹ばっかり膨れる散々な食事になってしまった。やっぱり料理の彩りというのは重要です。


<本日の昼食兼夕食>

<今日はビールだけにしておく>

 食後マッシモ宮へ。「ローマ国立博物館の新館」を謳っている通り、古代ローマの彫刻や美術作品がてんこ盛り。まず、1階から2階は紀元前2世紀から4世紀にかけての彫刻作品が並んでいる。どの作品も、日本で言えば国宝クラスの美術品になるに違いない。が、日本語のオーディオガイドがないので詳しいことは良く分からない。英語のオーディオガイドはあるようだったので、英語がもっと得意であればなあと思う。ということで、とりあえずいくつかの彫刻作品の写真を。ここもフラッシュを炊かなければ写真撮り放題なので、その辺りはありがたい。

 3階はモザイク画とフレスコ画のコーナーになっていて、個人的には彫刻よりもこっちの方が面白かった。特に皇帝アウグストゥスと妃のリヴィアの家から発見されたというフレスコ画は、今から2000年前に描かれたとは思えないくらい青々としている。写真だとその青々感があまり表現できないけれど。モザイク画は何というか、今で言うといかにも素人が作りましたという手作り感満載の作品なのだけど、その方が味があるように思えるので返っていいのかもしれない。


<モザイク画>

<大きめのモザイク画がたくさん>

<リヴィアの別荘のフレスコ画>

<ファルネジーナ荘の壁画>

 マッシモ宮では分からないなりにもじっくりと作品を見たので、全て見終わる頃には2時間近く経っていた。解説があったらもっと時間がかかっただろうし、美術品に興味がある人にとっては1日あっても足りないかもしれない。ローマ国立博物館はこのマッシモ宮と浴場跡に加えてアルテンプス宮も含まれているらしい。今回はもう時間がないのでアルテンプス宮には行けないのが残念だ。

 5時過ぎにホテルに戻り、仮眠を取ってから明日の報告に向けての最終準備をする。質問への想定問答集を作っていたら、量が多すぎて全然終わらなくなってしまった。日本語のように質問にさっと答えられるのであれば、こんなことをしなくてもいいんだけどなあ。


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