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三回目の知床調査 2
2010年10月13日(水)  <羅臼(国後展望台、町役場聞き取り)、知床(財団聞き取り)>


<もう一つの知床 魚の城下町羅臼へ>

 昨日は1時に電気を消して寝ようとしたものの、蝿のうるささと打ち合わせで頭が冴えてしまったこともあって、なかなか寝付くことができませんでした。前日が徹夜だったので体は疲れ果てているわけで、体と頭が分離していわゆる金縛りみたいな状態が続くこと2時間。深夜3時半過ぎにようやく寝つき、5時半起床。2時間睡眠になってしまいました。まあでも、調査先でテンションだけは高いので、どうにかなるだろうと。

 このホテルグランティアの良いところは源泉かけ流しの大浴場&露天風呂が付いているところで、鉄分多目でアルカリ性の赤黒い温泉にゆっくりと浸かることができます。広さも下手な温泉旅館の浴場より広いので、人が多くても快適です。ということで、誰もいない朝5時半の温泉をゆっくりと堪能してからレストランでバイキングの朝食。冬に比べると品数が少ないような気もしましたが、それでもお替り自由だと食べ過ぎてしまいます。朝からご飯を2杯食べてしまった。


<今日は曇天>

<今日の朝食>

 今日も一応ノーネクタイのスーツを着て、7時50分にホテルのロビーに集合。暖かかった昨日とは違い、今にも雨が降り出しそうな天気で、気温も13,4度といったところ。こんな天気ですが、今日から2日間はレンタカーを借りてヒアリング先を回る日程になっています。知床斜里駅で車を借りて、8時過ぎに出発。僕は免許がなく、D1Y君もペーパーだということで、運転は全てFさんにお任せすることに。申し訳ない限りです。最初の目的地である羅臼までは、ウトロ経由で知床峠を越える60kmの道のり。


<本日のレンタカー>

<斜里−ウトロ間はまっすぐな道が続く>

 斜里市街を出発してしばらくは直線道路が続きます。オホーツク圏最長を誇る20kmの直線道路。その終点で車を降りてしばし休憩&撮影タイム。去年の夏はバスの中からしか見られなかったので、実際に降りてじっくり見ると迫力が違います。ああ北海道。欲を言えば天気がよかったら。隣の畑では僕の大好きなジャガイモが大量かつ無造作に置かれていて、若干テンションが上がりました。


<28kmに及ぶ直線道路の終点から>

<大量のじゃがいも>

<収穫を終えたじゃがいも畑>

 直線道路の後は左側にオホーツク海が広がる海沿いの道を行き、9時過ぎにウトロの道の駅に到着。ここでトイレ休憩も兼ねて若干の休憩。本格的に雨が降り出しました。この道に駅に来るのももう3回目。前回食べておいしかった串いもレンジャーを今回も食べたいところではあったけれど、朝食を食べ過ぎてしまったために全く腹が減っておらず、今日は諦めることに。残念です。多分また明日来ることになるので、明日は腹を空かせて来たいもの。ただ、冬に食べたときは120円だったのが、今では200円に値上げされ、それでは売れなかったのか150円に値下げされています。


<道の駅ウトロ・シリエトク>

<道の駅内部>

<珍しいジャガイモがおいしそう>

<串いもレンジャーに後ろ髪を引かれつつ>

 ウトロからは世界遺産指定地域に入り、そこから20kmに及ぶ知床横断道路を越えて半島南側の羅臼へ。途中の知床峠から見える景色が良いので、峠では天気が良いことを願っていました。しかも今の知床峠は紅葉真っ盛りで美しいらしい。しかし標高が高くなるに従って天気が悪くなり、峠の辺りでは霧で何も見えない状態に。国後島の景色や紅葉もお預けになり残念です。そもそも運転すら厳しい状態でしたが、Fさんの安全な運転で峠を通り過ぎ、羅臼側に降りていくと段々と視界が開けて来ました。そして羅臼の街に到着する頃にはまさかの晴天。山一つ越えると天気も変わるというけれど、驚くような変わり方でびっくりです。


<知床峠が全く見えない>

<峠を過ぎると少し視界が開けてきた>

<羅臼側になると雨も止み>

<羅臼側はいい天気>

 知床横断道路の終点近くにある、環境省羅臼ビジターセンターへ。羅臼側から知床に来た人にとっては、一通りの情報が手に入る良い場所なのではないかと思います。しかし羅臼側は晴れているためか空気が乾いていて寒いです。通ってきた知床峠方面を見ても、綺麗に晴れているように見えるんだけどなあ。


<羅臼ビジターセンター>

<羅臼ビジターセンター>

<ビジターセンターから知床峠方面を望む>

<ビジターセンターの庭は紅葉しています>

 10時半、ようやく羅臼市街地に到着。ヒアリングは午後からの予定なので、それまでの時間は羅臼の町をじっくりと見物することに。世界遺産に指定されている「知床」は斜里町と羅臼町にまたがっています。しかし今までは斜里町の方ばかり見学していて、羅臼町の方は後回しになっていました。去年の夏にとんぼ返りで漁業にヒアリングしたくらい。右翼の人達が「北方領土を返せ!」と叫んでいたことくらいしか記憶がありません。もちろん斜里町側に主なスポットがあったり、自然保護を主導的に担ってきたのが斜里町だったりする現状があるので、斜里町に拠点を置くことは仕方がないことではあります。でももう一方の羅臼をきちんと見ておかないと、研究上はどうしても片手落ちになってしまう。というわけで、今回はきちんと羅臼の現状を見ておく意味で羅臼にやってきました。

 とか何とかいいつつ、まずは去年の夏にも訪れた漁協直営の海鮮工房で買い物。羅臼といえば魚の街。第1次産業どころか、町の経済全体に占める漁業の割合は半端ありません。鮭に昆布にホッケにキンメと、地物の新鮮な魚がずらりと並んでいます。この前来たときは実家に何も送れなかったので、今回は昆布製品各種とホッケを実家に送りました。5000円分の親孝行。


<漁協直営の海鮮工房>

<うっすらと国後島の島影が見える>

<獲れたての羅臼産秋鮭>

<羅臼産真ほっけの開きを実家に送る>

 前来たときに食べえ昆布ソフトがおいしかったので、今回もと思ってカウンターに行ったら、「本日は売り切れました」の文字。朝11時で本当かいな。残念だけど昆布は諦めて、代わりに羅臼海洋深層水ソフトを食べました。羅臼は町としても海洋深層水事業を展開しようとしているようなので、その一環ということでしょうか。基本はバニラ味ですが、海洋深層水独特のしょっぱさが効いていて、これはこれでなかなかおいしかった。まあ、昆布ソフトを食べたかったけど。


<羅臼海洋深層水ソフト>

<羅臼の自動販売機>

 お土産を買い、ソフトクリームを食べた後は、とりあえず羅臼の町全体を眺めようと、高台にある望郷台へ。羅臼の町とオホーツク海、さらには遠くに北方領土である国後島の島影が見えます。羅臼は人口6000人の小さな町。全体的にこぢんまりとしています。斜里側は天気が悪かったため、羅臼での眺望は期待していませんでしたが、これだけの眺めを堪能できるのだから晴れてよかった。


<羅臼の町と海、遠くに国後島の島影>

<後ろを見れば知床連山>

<国後島が見える>

 望郷台の下は「羅臼国後展望台」という資料館を兼ねた建物になっていたので入ってみました。結構しっかりとした施設で、他に来ていた観光客に職員のおばさんが北方領土について力説していました。館内には観光地によくある望遠鏡もあり、しかもタダです。だから国後島も見放題。近くて遠い、事実上の「外国」。日本に戻ってくることはあるのだろうか。

 望郷台から下りたら既に正午。昼食です。D1Y君が調べてよさそうだった、 「鰍(かじか)」 という寿司屋へ。Fさんが注文していた海鮮ちらしもおいしそうでしたが、羅臼に来たからには本場羅臼のほっけを食べないわけにはいかないと、ほっけ焼き定食を注文しました。1680円と結構いい値段です。しかし、出てきたほっけの大きさを見ればその値段も納得。羅臼産の巨大な真ほっけが、自分の脂で煌々と輝いています。びっくりするくらい脂が乗っていて、しかも身が引き締まっている。昨日の夜食べたほっけもよかったけど、その比じゃありませんでした。今まで食べてきたパサパサのほっけは何だったのかと思うほど、ほっけの概念が変わってしまった。あとここはご飯がおいしく、ほっけの量も多かったものだからご飯のお代わりまでして腹はパンパンです。食べ過ぎはよくないと思っていても、おいしいから食べてしまう。北海道は怖いところです。ご馳走様。


<ほっけ焼き定食>

<脂の乗った大きな真ほっけ>

 食後、店の前の羅臼川河口で鮭の遡上を眺めました。ちょうど今は鮭が遡上する時期。羅臼で生まれた鮭も長年の回遊を経て戻ってきたようです。しかし川を上ろうとしても、まずは大量の海鳥が待ち構えています。無理ゲーみたいな光景です。こういうのをかいくぐって川を上り、きちんと産卵して寿命を全うする鮭は勝ち組なのでしょう。川の中をのぞくと一生懸命遡上する鮭が見えますが、その隣で力尽きて沈んでしまった鮭もいたりして、生物の厳しさを感じます。


<羅臼川に遡上しようとする鮭を鳥が待ち構える>

<羅臼川>

<力尽きてしまった鮭>

<カラスが力尽きた鮭を食べる>

 鮭の頑張りを見て感動していたものの、どこか別世界のことと考えている自分。昼食を食べ過ぎて眠くなってしまい、どうしようもなくなりました。みんなそうだったみたいなので、車に戻ってヒアリングの時間までの1時間程仮眠をとることに。この仮眠のお陰で、かなり頭がすっきりしました。何せそれまで2日間はあまり寝られてなかったので。

 2時から羅臼町役場でヒアリング。3名の職員さんに対応していただいて、1時間40分ほど。斜里町とは違う論点をきちんと聞く事ができたこともあり、大きな収穫になりました。やっぱり聞いておいてよかった。


<羅臼町役場>

<羅臼は魚の城下町>

 ヒアリング後はやや急いで車に乗り、知床横断道路を経て再び斜里町側へ。本当はもう少し羅臼を堪能したかったところですが、急遽次のヒアリングの日程が変更になったため、バタバタと羅臼を後にしました。結局羅臼をじっくり見ることができなかったなあ。今度来るときは泊りがけで来たいものです。

 羅臼が綺麗に晴れていたので、帰りの知床峠は晴れているかもとかすかに期待しましたが、案の定と言うか峠付近になって雲がかかり出し、またしても何も見えなくなってしまいました。本当に山一つで天気が全然違います。4時半に横断道路の斜里側の起点に位置する知床自然センターに到着。無事5時からの約束に間に合いました。


<羅臼岳がうっすら見える>

<夕暮れの知床自然センター>

 約束の5時まで少し時間があったので、自然センターの中をうろうろと観察。自然センターに来るのはもう3度目なので、特に新しく見るところがあるというわけでもありません。しかし来るたびに知床の情報が変わっているので、それはそれで面白いです。何しろここは世界遺産知床の管理最前線。知床の情報が欲しければ、ここに来ればまず間違いありません。


<自然センター>

<来年から知床五湖が変わります>

 今年は知床が世界遺産に登録されて5周年。5周年を記念して、6月に横浜でイベントが開かれており、僕らもそこに行きました。そのイベントで、来場者に「知床への願い」というものを書いてもらったそうですが、それが自然センターに展示されています。「知床よ永遠に」とか、「大切な自然をいつまでも大切に」といった願いがたくさん書かれています。しかし、中には若干違うんじゃないかというのもありました。今知床ではシカが増えすぎて、その害が深刻な影響を及ぼしていますが、だからと言ってシカを食べつくすのは・・・。気持ちは分からんでもないけど。


<知床への願い>

<・・・ちょっと違う気が。>

 5時からセンター内にある事務所で知床財団の方にヒアリング。去年の夏にも話を聞いて以来、いろいろ行ったり来たりした結果、知床研究の一番の核になるのはこの知床財団だということが分かってきました。そういう意味では今回の調査の一つ目の山場でもあります。夏にも対応していただいたYさんから2時間以上に渡って話を伺うことができ、良いヒアリングになったのではないかと思います。

 ヒアリングが終わった頃にはすっかり暗くなっており、ホテルに戻ったのは8時過ぎ。夕食は2月にも行った、ホテル近くの 「しれとこ来々軒」 で軽く済ますことに。味噌バターチャーシュー麺と餃子にビール。チャーシューがてんこ盛りでおいしい。近所にあったら週2くらいで食べにいってしまうようなラーメン屋です。一日寒かったので、味噌バターチャーシューがより一層おいしく感じられます。味噌ラーメンは寒さが最大のスパイスですね。


<味噌バターチャーシュー麺>

<餃子>

 今日はさすがに疲れてしまったので、打ち合わせはなしにして、ホテルに戻ってすぐに就寝。温泉にも入らずに10時過ぎには寝てしまいました。


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