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東京見聞録  
2006年12月28日(木) 四日目   <福井→東尋坊→芦原温泉→小浜(遠敷の里、漁港)→舞鶴泊>


誰もいない東尋坊>

 もちろん今日も早起きです。起床は6時。しかし毎日早起きは疲れる上に、昨日の夜から本格的に振り出した雨は止むことなく降っています。なので部屋でうだうだしていたらいつのまにか7時になっていました。これではいかんと、7時過ぎにホテルをチェックアウトし、四日目の行動開始。午前中は福井の二大観光地の一つである、東尋坊へ行きます。ちなみにもう一つは永平寺ね。他にも一乗谷とか丸岡城とか九頭竜湖とかいろいろあるけど、とりあえず永平寺・東尋坊が僕から見た二大観光地。

 まずは福井駅のコインロッカーに大きな荷物を預け、福井駅から第3セクターのえちぜん鉄道に乗って三国を目指します。今日は雨もさることながら、風が非常に強いです。横殴りの雨なので傘があまり役に立ちません。


<えちぜん鉄道 福井駅>

<福井もチームマイナス6%>

 福井駅7時26分発のえちぜん鉄道に乗って、約50分かけて三国駅へ。朝ということもあってか、電車内は地元の高校生で満員でした。冬休みなのに多いなぁと思っていたら、課外があるとか何とか言っていた。履修漏れかなんかあったのかな?で8時12分に三国駅到着。高校生も一斉にこの駅で降りました。どうらや三国高校があるらしい。

 しかし寒い!!雨は幾分小降りになったものの、海が近いので風の威力は福井よりも大幅アップです。本当はこの三国駅で無料レンタサイクルを借りて、東尋坊までのんびりサイクリングを、と考えていたのですが、いくらなんでもこの天気で自転車に乗るのは危険だ、自転車ごと海に落ちかねないと思ったので、バスで行くことにしました。バスの時間までは駅の待合室でストーブに当たりながら暖を取りつつ、寒いのでガクガク震えていました。本当に寒い。

 やがてバスが来たので東尋坊へ。東尋坊へ着くと有難いことに雨はあがったみたいだったけど、さらに風が強くなってたまりません。東尋坊入り口バス停で下りたのは僕一人で、周りを見渡してもまだ誰も観光客なんかいない模様。こんな天気で朝早いんだから当たり前か。。

 バスを降りてさて東尋坊へ向かおうかとすると、お土産屋のおばちゃんが店から出てきて話しかけてきました。「おはようございます。荷物無料で預かっていますから、どうぞ預けていってください」と。僕は結構身軽で来ていたので、丁重にお断りしたのですが、それでもおばちゃんは「いやいや、是非預けていってください。大丈夫ですか?」としつこく誘ってきます。結局断ったけど、後から考えてよく分かりました。あのおばちゃんは僕が自殺しに来たと勘違いしたんじゃないだろうかと。大体こんな天気の朝早く、誰もいない時に来たら、そりゃ自殺する人じゃないかと思われる確率も高いはずです。しかも僕の顔は普段から幸薄いと言われ(すのさん談)、その上に修論でやつれていて、格好も結構汚いので、ますます怪しいじゃないか。トイレに入って自分の姿を確かめてみましたが、確かに自殺しそうな人に見えなくもありませんでした。自分としてはそれが一番悲しい。

 気を取り直して、商店街っぽいところを抜けて東尋坊へ。ちなみに「東尋坊タワー」という寂れたタワーがあったものの、今回は無視しました。僕はタワーが好きだけど、何かしょぼい。あんなのに500円は払いたくない。

 さてさて、写真で見たことがある崖と海が見えてくると、一気に風が強くなってきました。ひぃぃ〜、これは本当に飛ばされる!!!台風中継をして飛ばされそうなっているリポーターとか見て、「あんなん嘘だろ」といつも思ってましたが、今日始めて彼らの気持ちが分かりました。本当に踏ん張ってないと間違いなく飛ばされます。目も口も開けられないとはまさにこのことです。

 これは本当にたまらんので、とりあえず少し風が穏やかなところに非難。他には誰も人がいなかったので、もしも風で海に落ちでもしたら間違いなく自殺と思われます。風で海に落ちて自殺と勘違いされて、翌日の新聞に「修論がうまく書けなかった大学院生、未来を悲観して自殺か?」みたいな記事が出たら、それこそ死んでも死にきれん。

 まあでも本当に自殺しようとする人が多いらしいのがこの東尋坊で、崖近くに「救いの電話」なる公衆電話が設置されていました。「命を大切に!! おつなぎします しあわせな明日へ」「旅先からふるさとへ電話してみませんか」と呼びかけてます。こういう公衆電話があるとは聞いていたけど、本当にあるんだねぇ。しかしその公衆電話のすぐ横には「東尋坊自殺者の霊」なる供養塔が立っていて、この二つを離せばいいのになぁと思いました。みなさん、しあわせな明日があるかどうかは自分次第ですが、命は大切にしましょう。


<救いの電話2番>

<命を大切にね>

 風の弱いところでずっといても仕方がないので、意を決して崖近くまで近づいてみました。風は本当に強いけど、その分崖に打ちつける波は高くて、ものすごい迫力があります。冬の日本海は荒々しい。

 東尋坊を眺めていると少し青空が出てきて太陽の光が差し込んできました。僕は自称「いざという時の晴れ男」ですが、今日の東尋坊はまさにそんな感じ。雨が降らなくてよかった。しばし東尋坊の荒々しさに目と心を奪われていたものの、やっぱり突きつける風が辛いので、30分くらい見て立ち去ることにしました。本当に30分間、他に誰一人観光客がいなかったのはよかったのか悪かったのか。何か異様だった。というか本当にここは東尋坊だろうな?

 東尋坊から再びバスに乗って、JRの芦原温泉駅へ。別に温泉に入るでもなく、ただの乗り継ぎです。電車の発車まで少々時間があったので、キオスクでカツサンドを買ってこれを遅めの朝食としました。せっかく北陸に来ているのに、どこでも食べられるようなものを食べてしまったよ。。

 10時44分、芦原温泉駅発。今日は初日以来の青春18切符を使います。すなわち移動が長いのです。今日は最終的に京都北部の舞鶴まで行かなければいけません。終点福井着が11時2分。コインロッカーの荷物を取るために一旦改札を出て、再び11時14分福井発の電車に乗ります。そして終点の敦賀まで。敦賀着12時8分。

 敦賀で北陸本線に別れを告げ、若狭湾沿いに進む小浜線に乗り換えます。ところがこの路線が凄かった。電車は新しいのに、一両しか運転しないもんだから、電車は大混雑です。僕は運よく見つけた2.5人分の席を見つけ、先に座っていたおじさんに頭を下げながら座ってとりあえず席を確保し、ほっと一息ついていました。2.5人分のところに男二人なので、まあ快適です。よかったよかった。しかし発車2分くらい前に、マスクをした身長180cm以上ある大男が息を切らしながらやってきて、「すみません、ここいいですか」と言うと同時に強引に僕とオジサンの間に入ってきました。お前、おれが「だめです」って言っても座るだろ!

 その男は年の頃20〜25、髪はボサボサでマスクをし、ものすごく息を切らしてものすごく苦しそうな顔をしています。手にはデパートの紙袋で、その中身はびっしりの少女マンガの単行本。ひ〜!しかもこの男、図体がでかい上にもごもごのジャンパーを着ていたから、すんごい圧迫されるのです。さらにこの男は電車が発車して、息が荒いにも関わらずすぐに眠りに落ちてしまったのですが、その息が臭いのなんの。もうね、本当に勘弁してくれと。

 ということで、敦賀を12時20分に出て小浜に1時22分に着くまでの1時間、本当に地獄でした。口が臭いというのは相当な殺人道具になるね。みなさん、歯医者に行って歯だけはきれいにしておきましょう。

<遠敷の里と小浜の街>

 若狭小浜にやってきました。小浜は奈良時代から日本海側の玄関口として栄えた街で、当時を偲ぶ史跡がたくさんあるそうです。それが「遠敷の里」(おにゅうのさと)と呼ばれる地域。この辺りには古い寺社仏閣がたくさんあります。そしてもう一つの小浜の顔は、鯖街道の基点としての顔。海産物がおいしそうです。今回はこの二つを両方とも楽しむことにしました。

 まず駅前の観光案内所でレンタサイクルを借ります。3時間借りて料金は500円。今日は予報では雨が降ると言われていたけど、小浜は気持ちよく晴れています。まさに絶好のサイクリング日和。晴れ男でよかったよかった。

 レンタサイクルに乗って遠敷の里方面へ。しゃこしゃこ20分程漕いで、最初に到着したのが若狭国分寺。既に当時の伽藍はないですが、今でも「国分寺」という寺として現存しているようです。周りは至ってのどか。 


<国分寺>

<国分寺裏の古墳遺跡>

 さらに自転車を漕いで、福井県唯一の国宝建造物がある明通寺へ向かいます。明通寺へ向かう道はのどかで、山があって川があって畑があって田んぼがあって、まさに「遠敷の里」という風情。


<里です>

<のどかな田舎の風景>

 最初はこののんびりとした風景を眺めながら、しゃこしゃこ自転車を漕いでいましたが、なかなか寺に着きません。途中でいい加減疲れてきました。結局明通寺に着いたのは、小浜駅を出発してから1時間後。よく漕いだ。明通寺に着いて拝観料400円を払い、本堂へ。本堂ではお坊様がこの寺について解説してくれました。

 明通寺の起源は806年、坂上田村麻呂が創建したそうです。本堂と三重塔は鎌倉時代に建設されたものだそうで、これが現在国宝に指定されています。山の中にひっそりとたたずむ寺という感じで、大変趣がありました。


<本堂と三重塔(国宝)>

<本堂と三重塔>

 続いて自転車を漕いで神宮寺へ。神宮なのにこれ如何にと思ったら、本堂の中に仏像と神棚が同居していました。ウィキペディアを見てみると、神仏習合思想に基づいて神社を実質的に運営していた寺院を神宮寺というらしいですね。ここ若狭神宮寺は奈良の東大寺二月堂で行われるお水取りの水を送る、「お水送り」の寺だそうです。寺の一角に井戸があって、その水が遠く奈良まで運ばれるそうで、飲んでみるとまろやかでおいしい水でした。やっぱり小浜は奈良との関係が深い。


<神宮寺本堂>

<お水取りに使われる水>

 その後も自転車をしゃこしゃこ漕いで、若狭彦神社や若狭姫神社を見たり、JRの利用促進看板を見たりして小浜駅へ。日もだいぶ沈んで寒くなりかけていたので、自転車を漕ぐのは結構辛いものがありました。手がかじかんでたまりません。しかし遠敷の里はよかった。今度はもっと時間を取って、じっくりと散歩をしてみたいと思います。


<しかし小浜はJRだとすこぶる不便だと思う>

<将来北陸新幹線が来るかもしれない小浜駅>

 4時に小浜駅に着いて自転車を返却し、第2の目的である海の幸を食べに歩いて漁港方面へ。時刻は5時になろうかというのに、まだ昼食をとっていません。朝食もカツサンドだけだったし、腹が減りまくってます。

 漁港へ向かう途中、鯖街道の起点であるという商店街を通りました。昔はここから鯖街道を通って、京都まで鯖が運ばれていたみたいです。そういえば去年京都に行ったときに食べた鯖寿司は小浜の鯖を使っているって言ってたかな。商店街には無料の鯖街道資料館があったのでしばし見学しました。京都へ運ぶ間にうまい具合に脂が乗っておいしい鯖になるんだって。しかし商店街は鯖街道の起点とは思えないほど静か。鯖もあまり見かけない。時間が時間だったのかもしれないけど。


<鯖街道の起点、いずみ商店街>

<鯖街道資料館>

 途中道に迷いながらも、5時前にようやく 「若狭フィッシャーマンズワーフ」 に到着。ここの一角にある「とれとれ寿司鮮魚コーナー」で小浜の海の幸を買って食べます。ここは買ったものをすぐ食べるスペースがあって、蟹と海老の出汁がしみている味噌汁も無料サービスでした。いいところだ。ここで「小浜の地魚尽くし握り」と「氷見産寒ブリの握り」を買って食べました。また氷見の寒ブリか!と思われるかもしれないけど、ついつい手が出てしまいました。小浜なのにね。。あとは明日の朝食用に、焼き鯖寿司を一つ。小浜ではやっぱり焼き鯖寿司を買わないわけにはいきません。

 寿司は出来合いのパックだけど、ネタが新鮮で、下手な料理屋なんかよりも断然おいしかった。これについてくる一杯無料の味噌汁がまたうまいのです。体が温まる。そして腹が減っていたから、ブリも地魚もおいしいの何のです。幸せ幸せ。


<氷見産寒ブリの握り>

<小浜の地魚尽くし握り>

 電車の時間もあるので、食べ終わったらまたそそくさと歩いて駅へ。しかしこの旅でおれはどれだけ歩けばいいのだろうか。既に豆は2回できて2回潰れました。関節も痛い。でも歩かないと次に進めません。我慢だ我慢。。


<小浜漁港の夕暮れ>

 5時58分の電車に乗って東舞鶴へ。北陸に別れを告げていよいよ北近畿に突入です。懸念された小浜線の電車ですが、今度は2両で、しかもさっきのような男がいなかったので快適に過ごせました。自転車を漕いだり歩いたりで結構疲れていたし、外は暗くて景色も見れないので、いつの間にか寝てしまい、気がつくと今日の宿泊地、東舞鶴。6時46分着。

 東舞鶴で予約していたホテルは、駅から歩いて20分くらいかかる舞鶴港側のホテルで、またまた歩かなければいけません。ホテルへ向かって歩いている途中、僕はふとラーメンが食べたくなりました。確かに海の幸はおいしい。でも旅行を始めてから、ずっと淡白な(寒ブリなんかは脂はのっているけれども・・・)魚ばっかり食べている。ここらでこってりしたものが食べたいなぁ、と本能が疼いてしまったのでした。こうなったらもう止めることができません。まあ舞鶴は割と大きな街だし、商店街を探せばどこかラーメン屋は見つかるだろう。できれば「舞鶴ラーメン」みたいなご当地ラーメンがあればいいな、と思って歩いていました。

 しかし歩けど歩けどラーメン屋は見つからず。もう今日は諦めるか、と思ったそのとき、視線の先に煌々と輝く「天下一品」の文字。さすがにラーメンが食べたいからといって、東京でも簡単に食べられる天下一品に行くわけなんて、ま、まさかねぇ。有り得ない。天下一品に入るくらいだったら、舞鶴発祥と言われる肉じゃがでも食べられる店を探すさ。とにかく有り得ない。有り得ない。しかしその光に導かれ、僕は入ってしまったのでした。。No Reason、ラーメン。あぁ、美味いわ。

 意志が弱いためにラーメンを食べてしまった後は、一直線にホテルへ。7時半頃チェックイン。今日も大変疲れたので、早めにシャワーを浴びて就寝。


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