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東京見聞録  
2005年2月3日(木) 二日目午後
 <西表島到着、さとうきび畑の仲間達>


<西表上陸:『さとうきび畑』の仲間達>

 3時半、フェリーは西表島大原港に到着。去年の5月以来、9ヶ月ぶりに西表島に降り立ちました。

 大原港まで迎えに来てくれていたのは、 農宿『さとうきび畑』 のオーナーであり、援農ネットワークの代表でもある佐藤ゆずるさん。ゆずるさんの車で宿のある集落古見(コミ)まで送ってもらいました。ゆずるさんによれば、今日は今年一番寒いらしい。西表で14度前後っていうのは、結構珍しいことみたいです。

 今回のさとうきび刈り体験や援農の総取締りをしているのが、このゆずるさん。ゆずるさんに初めて会ったのは今から3年前のきび刈りの時です。それからは事あるごとにお世話になっています。去年の5月にはきび刈りでもなく遊びに行って、3泊ほど家に泊めてもらいました。そして今回もまたお世話になります。「さとうきび刈りをしに、今年も西表島に行きたい」と伝えたのが直前だったにもかかわらず、快く「いいよ」と言ってくれました。本当にありがたい限りです。

 さて、自称23歳のゆずるさんの車で宿のある集落古見へ。今年の宿である『さとうきび畑』は、去年の8月にオープンした新しい宿です。実はそれまでのきび刈りでは定常的な宿泊施設がなく、きび刈りのバイトや体験の学生は、誰もいないボロ家に泊まったり、工事現場のプレハブに泊まったり、挙句の果てにはゆずるさんの家(竹富町公営住宅)に泊まったりしていました。この問題を早急に解決するために、今までゆずるさんにお世話になった人がお金を出し合って(僕も心ばかりの寄付をさせてもらいました)、ゆずるさんの家の近くにある古見小学校元校長さんが住んでいるプレハブを半分借り、念願かなって宿としてオープンすることとなったのです。5月にゆずるさんのところに泊まった時は、ちょうど宿運営を申請するための問題が浮上してきたところで、一緒に少しだけうんうん悩んだ覚えがあります。それを乗り越えて宿が出来て本当によかった。感激感激。

 車で20分、宿に到着。完成した宿を見るのは初めてでしたが、なかなかいい感じでした。 


<農宿『さとうきび畑』>

 宿について、ゆずるさんからいろいろと説明を受ける。聞けば今この宿には1人のお客さんと3人のさとうきび刈りの佐藤家専属バイトさん、4人の体験者(すの含む)が泊まっているらしい。これまで僕がさとうきび刈りに行ったときには、15名を越える学生達でごった返していたので、今回のように少ない人数は初めての体験です。そして今まではバイトさんと学生の寝るところが違っていたけど、今回は同じところで共同生活するらしい。これも初めての体験。

 今回僕(とlovebeerさん)はゆずるさんに直接申し込んでさとうきび刈りをやらせてもらうことにしたのですが、通常学生はさとうきび刈り体験のネットワークを通してきび刈り参加を申し込みます。このネットワークは3年前から始まっていて、僕も3年前、2年前はこのネットワークを通じて参加しました。だから僕は一期生ということになります。そしてこのネットワークを立ち上げた当時の学生は、今年は他の農家さんのバイトとして、さとうきび刈りに参加しています。

 ただし、きび刈り3年目ともなるとこのネットワークを通してやるのも何か違うような気がしてきたのです。自分のことは自分でやらねば、と。昨年5月に遊びに行ったときに、ゆずるさんに言われた「きび刈りは2年来てようやく分かる。1年目は新たな発見に対する驚きと、西表に対する認識を持つことに重点をおけばいい。でも2年目はもっと内部がよく見えてくる。この島の現状、問題点、農家間のごたごた、などなどなど・・・。そういった『西表の嫌な現実』『裏の部分』を感じてもらえればきび刈りは卒業かな」という言葉が事あるごとに頭を駆け巡りました。

 ということは、3年目をやるならそれ以上のことを自分の中に生み出さなければならない。そしてそれ相応の気持ちとスキルと持って望まなければならない。そういう思いで、今年は独自に連絡をとってさとうきび刈りをすることにしたのです。これからきび刈りが終わるまで、「3年目」という言葉は僕の中に重くのしかかってきます。

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 ゆずるさんと話をしていると、時刻はそろそろ4時半。今日の食事当番であるシバさんが帰ってきました。

 シバさんは佐藤家のきび刈りバイトの一人です。会うのはこれで3回目。2002年、2003年、今年と、僕のきび刈りと全く同じ年に佐藤家でバイトをしているのです。最初に会った時は26歳だったけど、今は29歳。でも外見は全く変わってない・・・。彼は何と言っても佐藤家のムードメーカーです。島(←泡盛のことをこう呼ぶ)を飲みつつ、バカ話から真面目な話まで、何でも繰り広げられます。

 久しぶりの再会ということで、まずはビールで乾杯!どうやら畑で島を少し飲んできたらしく、ちょっとご機嫌。気前がよくなったのか、「よ〜し、今日はおごりだから、おれの島飲んでいいよ。おつまみも。ほら」と言って八重泉を差し出してくれました。さすが、気前のいいオトコ。


<八重泉とたこせんべい>

 最初は3人で結構真面目な話をしていました。シバさんは西表で自分の生き方、というかこれからの人生を見つけたらしく、今後は関東で農業を頑張っていくんだとか。有機農業を行って、市場を通さずに顔の見える流通を行いたいそうです。何か2年間のシバさんと違って、真面目な話をするもんだから、かっこよく見えてしまった。
 
 あと、シバさんは基本的には西表島が嫌いだそうです。。バイトだから長い期間西表にいるし、2年間で感じるものもあったんでしょう。じゃあ何で今年も西表島に来たかといえば、今年は出稼ぎらしい。去年一年間茨城の農家で研修してたけど、金がなくなってこっちにさとうきび刈りをしに来たそうな。ただ、自分の今後を気付かせてくれたのは西表でありさとうきび刈りであり、それには感謝している。という名言を残してくれました。やっぱりこの島には何かがあるに違いない。

 そうこうしているうちに、時間は6時。仕事を終えたみんなが続々と帰ってきました。まずは佐藤家で働いていた人々。バイトのシュウさんとマナちゃん、そして体験できているみなみちゃんとせっちゃんが帰宅。

 シュウさんは「伝説のテラシュウ」と呼ばれているほどの人で、さとうきび刈り歴10年を越える超ベテラン。実は僕も何度か噂には聞いていたけど、実際に会うのは初めてです。何が伝説かというと、畑を上半身裸、素足で駆け回るのです。島の人は長袖長靴をはいて作業し(島の紫外線は思いのほか強いし、ハブが出る可能性もある)、バイトにもそうするように言っていたようですが、シュウさんはその伝統を根底から覆したらしい。そして仕事も速い。そういう意味で「伝説のテラシュウ」なのです。
 
 ただ仕事面以外では本当に優しい男です。ものすごく博識で、穏やかな口調で話します。知識は豊富だけど、決してひけらかさない。そして物事によく気がつく。こういう男になりたいものです。

 欠点がないように見えますが、一つあげるとすれば、あんまり風呂に入らないことかな・・・。「今日シャワーいいや」って言うことがよくあったけど、みんなから「今日だろ!」って突っ込まれることしばしば。。。

 マナちゃんは佐藤家の女性バイトです。年は僕と同じで、この日が誕生日。2002年の3月に体験として来たことがあるらしく(つまり当時僕と入れ替わりで来てたみたい)、今年はバイトとして参加している女の子です。ただ、普通の女性バイトとは大違い。普通男性は体力のいる「倒し」、女性は葉っぱを落とす「かさぎ」という作業を行いますが、マナちゃんは女性にはきついと言われる「倒し」をやるらしい!倒す女の子です。初めて見たよ。。。そんな豪快な雰囲気漂うマナちゃんですが、フィンランドの少数民族にも興味があるらしく、現地の言葉の試験を受けたり(そして合格したり)、現地を訪れたりしています。博学で繊細な、優しい女の子です。

 佐藤家の専属バイトはこの「シバさん」「シュウさん」「マナちゃん」の3人です。この3人は基本的に農家から(佐藤家の場合、ゆずるさんから)お金を貰って、12月末から4月、場合によっては5月頭までという長期間にわたってさとうきび刈りをします。それだけに能力が無いと、すぐにクビを切られる厳しい世界です。

 そんなバイトとは違って、お金は貰わずに短期間さとうきび刈りをするのが体験です。この時点で体験としてやってきていたのがみなみちゃんとせっちゃん。そして後述のすのとヨッシー。

 みなみちゃんはついこの前20歳になったばかりの大学生。東京家政大学で学んでいて、将来は先生(保母さん?)になりたいんだとか。素直で元気な女の子です。美人です。ごはんが大好きで、びっくりするほどもりもり食べます(こういう言い方を女の子にするのはどうかと思うけど。。。)

 せっちゃんは小柄な女の子。かさぎは初心者と思えないくらい、めちゃくちゃ速いです。何でも実家が農家らしい。現在とある会社員ということで、今はお休みをもらってきび刈りに来ているそうです。僕より年下だと思っていたら、何と結構年上だった・・・。最後までそれを知らずに、タメ口でずっと話してました。でも西表では基本的にみんなタメ口になります。そしてそれが西表のいいところでもあると思います。

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 みんなが帰ってきて、ようやくシバさんが食事を作り始める。しかし既に酔っ払い。僕も結構飲んで酔っ払い。僕は次の日のことも考えて、島のウコン割りを飲んでたけど、これが薬みたいでまずい。。シバさんは女の子に手伝ってもらいながら夕食を完成させました。みんなで美味しく食べていると、他の農家さんのところへ派遣されていたすのとヨッシーが帰宅。

 ヨッシーは大阪のとある大学に通う大学3年生。今は1年休学しているらしい。将来は大学院に進み、農業の研究をするそうな。真面目で料理が上手い、優しい男の子です。

 すのさんは・・・まぁいいか。きび刈りに関しては僕より先輩の4年目。3年前、初めて僕にきび刈りのことを教えてくれたのがすのでした。あれからもう3年か・・・。彼女は毎年欠かさずきび刈りに参加し、西表のリゾート開発問題の調査にも加わっています。西表が好きなのです。

 ということで、『さとうきび畑』で生活するのは当面はこの9人。たまにお客さんが泊まるけど、2月の上旬はこの9人を中心として佐藤家のきび刈りが行われます。

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 さて、夕食後。実はこのあたりから僕の記憶は既に薄れてきていますが、この日は2月3日。節分です。テラスに出てみんなで豆まき。lovebeerさんのブログを見ると、僕が鬼のすのさんに向かって力いっぱい豆を投げていたという記述が出てくるけど、それは事実誤認です、多分。だって酔って覚えてないんだもの。。


<みんなで豆まき>
 
<道路で大の字になるすぱくり>

 豆まきをした後はマナちゃんの誕生日祝い。ゆずるさんが買ってきておいたケーキとワインで、みんなでお祝いしました。マナちゃんおめでとう!お祝いの頃には記憶が結構戻ってきてたような。

 確か時間は11時頃。ゆずるさんも家に帰り、みんながまったりし始めた頃、急に眠気が。もう限界だったので、お先に休ませてもらうことにしました。明日から早速仕事ですからね。一応寝る前に今日石垣で買った春ウコンを大量に摂取。思えばこの時のこの行動が、次の日に明暗を分けることになったのかも・・・。


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