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東京見聞録  
2005年2月4日(金) 三日目
 <きび刈り初日 〜二年ぶりのきび刈りと二日酔い>


<きび刈り初日 〜二年ぶりのきび刈りと二日酔い 曇り時々

 朝7時起床・・・。

 ううぅ、気分悪い・・・。完全に二日酔い。夕べは調子にのって飲みすぎた。でも今日からさとうきび刈りは始まるのです。二日酔いだからといって休めないのです。学生気分じゃだめなのです。仕事は厳しいのです。ということで、味噌汁だけ飲んできび刈りの準備。(きび刈りはものすごく体力を必要とする仕事です。本当は味噌汁だけしか食べないで畑に出るなんてもってのほかです。みなさんは真似しないでね)周りを見てみると、シバさんとlovebeerさんも二日酔いの様子。仲間がいたか、よかった。。

 家から持ってきた長靴を履き、軍手をはめ、帽子を被り、首にタオルを巻いて準備万端。7時45分頃、ゆずるさんが迎えに来て、畑に出発。今日はlovebeerさん、すの、すぱくりが佐藤家の畑、せっちゃん、みなみちゃん、よっしーはナカソコさんのところで仕事です。今日は昨日よりも暖かいのが幸い。 


<朝の出発前>

 ここでさとうきび刈りの基礎知識を。

 ★ここでの説明はあくまで「西表島における手刈りによるさとうきび刈り」です。
 ★島によってはやり方が異なるところもあります
 ★(映画『深呼吸の必要』に出てくるきび刈り方法は宮古島のもので、西表島のやり方とはかなり異なります)
 ★その辺を念頭に置いて聞いてください。


●●●労働時間●●● 
 
 きび刈りの労働時間は午前8時〜午後5時です。
 途中10時、12時、3時に休憩を挟みます。10時と3時の休憩は20分〜30分、12時の休憩は1時間です。
 *佐藤家だけは昼休みを1時間半とるので、午後が30分ずつ繰り下がります*
 10時、3時の休憩は畑に座って、おやつを食べたりお茶を飲んだりします。
 12時の休憩は一般的には家に帰って、弁当や昼ごはんを食べるところが多いようです。


●●●きび刈りの方法●●●

 さとうきび刈りには大きく分けて二種類の作業があります。「倒し」「かさぎ」です。

 「倒し」とは、なたを使って畑に生えているさとうきびを刈っていくことです。さとうきびは根っこあたりは畑にそって生えていて、あるところから急に上に伸びていきます。そして根っこのほうがより甘いところになっています。よって、甘いところを収穫するには、畑に沿って生えているところをなたで切って、さとうきびを倒さなければいけないのです。「さとうきび刈り」とはいいますが、実際には「さとうきび倒し」ですね。経験と力と要領とスタミナが要るので普通は若い男が担当します。倒しは本当にしんどい仕事です。

 「かさぎ」とは、倒して山のように積まれたさとうきびの葉っぱを落としていく作業です。先っぽが二股に分かれた珍しい鎌を使います。まず頭の部分の葉っぱを鎌の根元で切り落とし、次に鎌の先っぽの二股の部分できびの部分に残った葉っぱを落としていきます。この作業を「かさぎ」と言います。普通は使わない言葉ですよね。僕もきび刈りで初めてこの言葉を知りました。「かさぎ」は男も女も両方が担当します。

 基本的に倒してないとかさげないので、朝のうちは男が倒し、女がかさぎという分担が行われます。倒し手が多ければ10時まで倒すだけ倒して、残りの時間は男も女もかさぎになることもあるけど、男が少なく女が多いと、男は午後3時までひたすら倒すというかなり悲惨な状況になります。

 書いて説明しても分かりにくいので、写真を見てどんなものか感じてください。


<1 さとうきびの根っこ>

さとうきびが生えているところ。
何本かが同じところから生えている。
根っこに行けば行くほど甘いので
なるべく根っこから倒す。
慣れないと根がどこにあるか
わからないこともよくある。

<2 さとうきびを倒す>

「なた」を使ってさとうきびを倒す。
決して「刈る」のではない。
倒す時のポイントは
・手首のスナップを利かす
・きびに対してなたを45度に入れる
・なたのスピードを早く

<3 倒したきびを運ぶ>

倒したきびはまとめて近くに運ぶ。
きびは横にして山状に積み上げていく。
山が自分の腹から肩くらいの高さになったら
次の山を作る。

山を作る時のポイントは
 ・山を崩さないように積み上げること
・かさぎやすいように積み上げること
    

<4 運ばれたきびをかさぐ>

山状に積み上げられたきびをかさぐ。
右手にかさぎ専用の鎌を持ち
これでまず先端の葉っぱ(尖頭部)を落とす
 次にきびについた葉っぱを取る。
 かさいだきびも山状にして積んでいく。

かさぎのポイントは
・鎌キャッチという技ができるようになること
・左手の軍手も使ってかさぐこと

<5 かさぎ終わったあとのさとうきび>

かさぎ終わったきびは写真のように
山状に積み上げられる。
この山をロープで縛って終了。
   
一日が終わると山がいくつもできる。
山は小さいもの(100kgくらい)から
大きいもの(400kgくらい)まで様々。

<6 休憩する>

休憩は1日3回で
10時と12時と3時。

10時と3時の休憩は20分程度、
12時の休憩は昼休みで1時間程度。
甘いものを食べて栄養を補給する。
    

 この写真は2月7日の休憩時間に撮ったもので、やらせです。なので迫力に欠けると思いますが、本当にやったらもうちょっと迫力ある写真がとれたかも。。さとうきび刈りとは、この流れを一日繰り返す、ある意味単純作業の繰り返しなのです。

 倒しはパワーとスタミナだけではできません。経験とセンスが必要です。だから腕は細くても仕事は速い人はたくさんいます。そしてこの島の男のかっこよさは、倒しの速さで決まるのです。顔もお金も学歴も一切関係ありません。倒せる男がかっこいい男なのです。

 かさぎは慣れと技術、妥協が必要です。全部の葉っぱを取ろうとすると時間がかかりすぎます。葉っぱは少しくらい残ってもいいのです。どうせ製糖工場に運ばれてから余計な葉っぱは落とされます。神経質になるとかさぎは速くなりません。僕は倒しよりもかさぎのほうが得意です。「かさぎのすぱくり」と呼ばれるとか呼ばれないとか。。

 こうしてかさがれて山になったさとうきびは、5時以降に製糖工場によってクレーン車で運ばれていきます。製糖工場で黒砂糖になり、「西表島の黒砂糖」として売り出されます。

●●●きび刈り後・・・●●●

 5時で仕事は終わり。まさに至福の時です。疲れは凄いけど、心地よい疲れです。
 農家さんによってはその後ビールやお酒、食事を奢ってくれるところもあります。畑でまず一本缶ビール、それから家に移動して夕食をご馳走してくれるというところもあります。暑い日に一日作業して、5時に終わって畑で飲むビールは本当に最高です!!このときの一杯のために仕事をしていると言っても過言ではありませんっ!

 以上、さとうきび刈りの基礎知識でした★

 話を元に戻します。

 今日の畑は大富集落の近くにある畑。体験に来た人は最初の二日間、佐藤家で働きます。その後、シバさんによって「こいつは他の農家に応援に出しても大丈夫だ」と判断されたら、三日目からは他の農家さんのところにも行くことになります。ということで、すぱくりとlovebeerさんは初日なので佐藤家。すのは今日の午後イノシシ狩りに行くので、午前中だけ佐藤家です。

 8時、畑到着。2年ぶりに見るさとうきび畑。が、二日酔いでそれどころではない・・・。

 最初は倒し。シバさん、lovebeerさん、すのさんとシュウさん、マナちゃん、すぱくりの二組に分かれて倒すことにしました。というか、佐藤家は女の子もみんな倒すのです。すのさんも「倒してみたい」ということで倒すことになったらしい。

 久しぶりになたを持つ。予想以上に重い。とりあえず3人並んで倒しスタート。

 久しぶりにきびを倒す。予想以上に硬い。なかなか切れない。時間が経つにつれ汗もだくだく出てくる。30分くらい経って、きび刈りがこんなにきついものだということをようやく思い出しました。そして普通でもきついのに、今日は二日酔い。僕の体はもう限界を迎えてしまいました。こそこそと畑の奥へ行き・・・(以下自粛)

 戻って倒しを続けるも、もう気力がない。1畝の一本づつしか倒せない。もうふらふら。となりで倒しているマナちゃんを見ると、おれよりも早く的確に倒している。すごい女の子です。完全なる敗北。その時。遠くを見るとシバさんがうずくまっている。続いてlovebeerさんも何か変な格好をしてうずくまっている。もしや二人ともおれと同じか・・・??

 まさに倒れそうになった時、救いの「きゅうけ〜い」の声。救われた・・・。何とか10時まで持たせることが出来ました。そしてここで休憩すれば、ちょっとは変わるはず。二時間6人で倒したんだから、10時からは全員でかさぎのはず。休憩中は水を飲み、お菓子を食べ、体力を補給しました。やっぱり休憩はいいね。憩いのオアシスだ。

 10時25分からきび刈り再開。案の定全員かさぎでした。ほっと一息です。かさぎは倒し程体力を使わないので喜んでいたんだけど、やっぱり気分はまだ悪いんだよな・・・。そして久しぶりのかさぎは全く能率が上がらない。2年前の自分がやっていたかさぎのイメージとは全く違うことしか出来ないのです。頭ではわかっているけど体がついていかない。そんな感じ。

 気分の悪さに悩まされ、かさぎのスピードに違和感を感じていると、雨が。最初は小降りだったけど、次第に強くなってきました。きび刈りは大雨だろうが大雪だろうが(大雪は降ることないけど)休みはありません。雨なら合羽を着て作業をするのです。トラックに置いてあった合羽を着て、再び作業。いくら西表が暖かいといっても、雨が降るとさすがに寒いです。雨の中作業をしていると、畑がぬかるんで滑ったりもします。これも困る。でも文句は言ってられません。もくもくとかさぎました。ただ横を見てみると、シュウさんは雨の中Tシャツ一枚で作業してる!やっぱりこの人は伝説の人だ・・・。

 途中雨が降ったり止んだりし、ようやく12時。一旦『さとうきび畑』に戻ります。そして昼食。この頃にはようやく酔いも醒めて、かなり腹が減っていました。昼はそうめんを茹でて、各人が好きに味付けして食べました。そうめんを大量に食べたけど、やっぱりきび刈りをするには食べないとだめですね。が、シバさんは昼ごはんを食べない様子。どうやらまだ気分が悪いらしい。結局シバさんは1時半近くまでテラスのソファーで横になっていました。そしてlovebeerさんもまだ気分が悪いらしい。やっぱり昨日寝る前にウコンを大量に飲んだのがよかったのか?? 

 1時半からきび刈り再開。午後はイノシシ狩りですのが抜けたので総勢5人です。雨は上がったけど曇り空。午後もかさぎだったけど、やっぱりなかなか調子に乗れません。経験者とはいえ、一日目はこんなもんなのかと思いつつ3時半の休憩を迎えました。

 実は今日、僕は食事当番になっていました。ということで仕事は3時半上がりです。正直なところ、今日が食事当番で助かった。迎えにきてくれたゆずるさんの車で一足お先に宿に戻りました。

 この日、シバさんが午前中ぐったりだったので、倒す山の数をあんまり考えてなかったらしい。普通は倒す量とかさぎのスピードを考えて、5時(佐藤家は5時半)までに終わるように調整するんですが、今日はシバさんの頭が働いてなかったのか、明らかに10時までに倒しすぎてました。3時半に僕が上がった時に、どう考えてもあと1時間半を4人でかさぎ切れる量じゃなかったです。かさぎきれないと当然残業になります。今日はみんな絶対残業だな〜と思いながら、悔いの残る初日の畑を後にしました。

 帰ってシャワーを浴びて食事の準備。ゆずるさんが用意してくれた食材で、9人分の夕食を作ります。今日のメニューはご飯、味噌汁、アジフライ、マーボー茄子(ご飯がすすむ君使用)、ロールキャベツです。イノシシ狩りから帰ってきたすのさんにも手伝ってもらいながら(イノシシは取れなかったらしい。残念)生まれて初めて揚げ物を作りました。ということで記念の写真。


<今夜の夕食>
 
<頂き物のシークワーサー>

 夕食が出来たのが6時。でもみんな帰ってこない。ということで先に夕食を済ませてしまうことにしました。アジフライが旨い!マーボー茄子もなかなか。そこへナカソコさんのところへ行っていた3人が帰ってくる。遅れて佐藤家のメンバーも帰ってくる。案の定残業だったようで、みなさんへとへと。特にシバさんとlovebeerさんは、体から「へとへと」と音が出そうなくらいへとへとの様子。lovebeerさんは今日が初きび刈りですからね。初きび刈り+雨+二日酔い+残業でかなり大変だったと思います。お疲れ様でした。

 昨日の反省から、今日は酒は飲まないことに。やっぱり体あってのきび刈りです。反省します。

 そういえば、近くの方からシークワーサーをいただきました。普通シークワーサーというと緑色を思い浮かべるところですが、このシークワーサーは黄色い。そして皮まで食べられます。すっぱいけどおいしかった。

 夕食後はみんなで話をし、プロテインを飲む。たくましい体作りの第一歩です。そしてゆずるさんから「明日すぱくりはリュウさんのところに行ってくれ」とのこと。身構えました。一応経験者とはいえ、今日は二日酔いの上に3時までしか働いていません。そんなんで明日他の人の畑にいっていいのだろうか・・・。この日は明日のことも考えて11時前就寝。早く寝ることにしました。


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