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首脳が来ると航空機はどうなるか
APEC対応による遅延を体験する


遅延便が並ぶ...(羽田空港)


毎月から毎週のペースで航空機を利用していると様々なケースに遭遇します。
そのうち最大のリスクとも言える欠航体験は過去にレポートしましたが、遅延については10分ないし15分程度であればある意味日常茶飯事ということもあってあまり気にしてませんでした。
しかし今回はそうも言ってられない遅延に当たってしまいました。
天候や機材繰りといったありきたりの理由ではなく、APEC開催に伴う遅延という特殊ケースですが、金曜最終の満席便。これが大幅に遅れたのです。


※写真は2010年11月撮影



●遅延に対する不感症
航空機を恒常的に利用するようになると、数分単位の遅れは日常茶飯事というか、5分程度までの遅れは遅れと見做さないようでもあるので、鉄道のように1分単位での遅れを気にしなくなりました。

というか、「出発」にしても搭乗締め切り、プッシュバック、そして離陸というステップがあり、「到着」にしてもゲートへの到着、降機開始と基準となるべき時間が多数存在する中、「出発15分前までのセキュリティ通過」という関門を抜けるとあとはあなた任せであり、最終的に到着までの間にはかなり余裕があるわけです。
到着にしても羽田空港の場合ゲートによっては10分程度の差がつくわけで、定刻の69番ゲート着よりも10分遅れの62番ゲート着のほうが速いという現実もあるわけで、15分程度の遅れに関しては不感症になった感じです。

また朝夕の羽田空港は発着便集中、空域輻輳による時間の調整が日常茶飯事でもあり、定刻ならもうけ、という感覚にもなっています。
まあそもそも航空ダイヤというのは同時刻に何便もが発着しているわけで、「定刻」の概念があるのかも疑問ですが。

そういう意味では今回の遅延、その前兆があったわけですが、ある意味毎度の光景ゆえ気にも留めなかったのが事実です。
毎度の神戸発20時55分発のNH416便での帰京だったのですが、時間が空き、空港で時間でもつぶそうと早めに入った神戸空港で目に入ったのがBC116便の遅延情報。

定刻20時20分発が発着便規制で40分遅れの21時発へ変更とあり、それはそれで結構な遅延ですが、BC116便は日常的に20〜30分程度の遅延となることが多く、40分遅れの情報にも今日はかなりひどいな、という程度の感想しか持たなかったのです。

●謎の機材繰り
そういう時でもNH416便は定刻運航であることが多かったのですが、空港内で時間つぶしをしているさなかに入って来たアナウンスに耳を疑いました。

なんとNH416便は機材繰りの影響で35分遅れの21時30分発になるとのことです。早着なら羽田22時15分のリムジンに、と思っていたのですが、これではいつもの22時40分発もダメで、最終の23時発になりそうです。
NH416便まで遅れるというのは珍しいことですし、事前に出発時刻が変更というのは最終的には強風で欠航した 2009年2月の時 以来の経験とあって嫌な予感もよぎりました。

しかし機材繰りということですが、通常NH416便になるのは札幌からのNH406便であり、同便は定刻に到着しています。
乗り場変更の様子から見ると、沖縄からのNH436便の折り返しになるようですが、定刻で21時着と、20時55分発への充当がありえない便を回すというのはどういう機材繰りなんでしょうか。実は同便で何人か同僚と乗り合わせたんですが、(いつもなら前運用になる)札幌発は着いているのに、と言う常連らしい指摘を聞いており、妙な運用変更で遅れというのも困ります。

羽田行きが相次いで...(神戸空港)


●待つことしきり
ビジネスリピートでの利用だったので、遅延のアナウンスがあった時点でキャンセルして新神戸に急ぐという手もありましたが、新幹線の最終だと23時10分の津田沼リムジン「最終便」よりも遅いので、当然ですが待つことを選択。

実はこのあたりでアップグレードポイントを使おうかなと思ってたんですが、仕事が終わった時点で確認すると満席。というか普通席も満席のようで、空港に着くとキャンセル待ちの表示が出ていました。まあフレックストラべラーの募集は無かったので、オーバーブッキングにはなっていないようです。

出発ロビーで待っているとNH436便が到着。修学旅行生が次から次へと降りてきており、搭乗率的には優秀ですが、収益面ではどうなんでしょうね。
一方こちらはそのうちに繰り返し流れる出発遅延の案内に不穏な内容が加わりました。というのも発着便規制で羽田到着はさらに遅れる見通しというのです。神戸着の便もNH415便が門限超過の22時5分着に変更されており、かなり厳しい状況です。
そんな中BC116便は21時10分頃にプッシュバックしており、神戸出発は見通し通りのようです。

NH415は門限後の到着

空港で待たされ、上空でも待たされる見通しとは最悪ですが、ここで気が付いたのはAPECの影響。実は前日朝羽田を出たとき、政府専用機が羽田に駐機していたんですが、明日からの首脳会議に備えた各国首脳の到着がどうも重なったのでは、と気付いたのです。
そういう時にアップグレードが叶っていれば無料のアルコールで寛ぐ目論見もあったんですがそれも叶わず、妙な規制で缶ビールなどアルコール類の販売が中止になった売店では見つくろうべきものもないわけで、ひたすら待つだけです。

余談ですがこの売店の規制、ビールなどの棚に「飲食店としての免許なので開栓して販売します」という妙な表示があったのですが、まあ利用者の立場を考えてそのまま販売していたわけです。
これは伊丹の制限区域内の売店も同じ表示があったわけですが、神戸の場合は秋口から販売停止になってしまったのです。

無聊を慰めるすべに乏しい制限区域内で、かつ機内サービスが簡素化されたANA、SKYしか運行しない神戸空港です。セキュリティ通過の際の液体制限も鬱陶しいわけで、飲料はここで買うのが煩わしくないですし、少なくともセキュリティ通過から機上で飲めるまで20分はあるなかで、ビール等がぬるくなることもないというのに、酒類販売としての免許は出さないわ、抜け道のような販売とはいえ販売を停止させるわと、利用者のほうを全然向いていない監督官庁の姿勢と言えます。

さらに言えば有料サービスと銘打っておりきながら、NH416便では缶ビールの販売を切らしていることもあったわけで、ビール党にとっては話になりません。

こういった点も苦戦している神戸空港の評価を確実に下げてしまうわけで、神戸市や関係団体は利用者のことを考えていない規制を速やかに撤廃するように努力すべきです。

●出発したが...
実は先週もNH416便を利用したんですが、この時は通常15分前の搭乗が、30分近く前に開始となり、早々に落ち着いた機内にギリギリのポートライナーで来た客が出発間際にパラパラと乗り込んでくるような状態でした。

それが今回は大幅遅れと天国と地獄のような状況です。
それでも21時半にはプッシュバックしており、なんとかなるか、という期待を持ったのも事実です。

この時間、各地からの最終便の到着と重なっており、それを避けるべく東向きへの離陸。回り込んで空港を見下ろす位置まで来ると、着陸しようとする機体が見えました。

右下に明石、三木、西脇と見て、三田を遠望し、いつもの航路に入るまでは順調。22時40分頃の到着というアナウンスもあり、松阪付近を見やり伊勢湾上に出ると、昼頃までの天候の名残か雲がかかりました。

このあたりで軽く変針した感じで傾いたんですが、雲が切れて眼下に広がる都市の煌きに、普段見たことがない光景だけに、どこの街かと記憶をフル稼働させましたがイメージに合いません。
そのうちに見えてきた臨海部らしい地形を見て仰天です。眼下に見えるのは名古屋港。名港トリトンです。羽田行きなのに名古屋港付近を西に進んでいます。進むどころか戻っており、これはどういうことでしょうか。

ちょうどこのあたりでオーディオサービスで聞いていたNHKラジオがニュースに変わり、各国首脳が続々羽田に到着とのことで、混雑どころか閉鎖で神戸に戻るのか?いや、22時の門限も過ぎているので関空??と不安になったのです。

その瞬間に操縦席からのアナウンスが入り、APEC各国首脳到着の影響で待機命令が出て、伊勢湾上で旋回しているという説明です。
羽田に向かうことは確かなようで一安心ですが、航路上に20機程度が待機しており、羽田からの時刻の見通しはまだないが、到着は23時半頃ではという見通しが示されました。

とたんに機内がざわつきました。そりゃそうです。到着が23時半ならバスや電車に乗れるのは早くて45分頃でしょうか。自宅近辺の最終電車はもちろん、下手をしたら羽田からのアクセスもない時間になりかねません。私も23時10分の最終リムジンどころかどうやったら帰れるのか、という状況に追い込まれました。
23時10分の最終リムジンのあと、確か国際線ターミナルからの直行リムジンがあったはずですが、京成津田沼到着が新京成最終にギリギリ間に合う0時25分頃ですから、羽田発は何時だったか。正確な時刻を覚えていませんでしたが、いずれにしろ23時半の到着では間に合わないでしょう。

それどころか秋葉原0時45分の総武線最終にも乗れるかどうか。0時半頃に出るはずの船橋行き深夜リムジンで船橋からタクシーか、と落胆したのです。

●「保険」をさっそく使う
一回りしてエンジン音が高まり、ようやく進んだようです。
再び雲が切れると伊豆大島らしき灯りが見え、操縦席から大島上空を通過し、現時点での到着見通しが23時10分頃と示されました。

やがて5点衝のシートベルト着用サインが鳴り、着陸コースに入ったことを示しました。
NHKラジオはまだ22時のニュースが続いており、かなり早まりそうです。

木更津上空を経て海ほたるを見やるあたりで23時の時報。
A滑走路に着陸ですが、D滑走路には離陸寸前の機体が。国際線なのか、遅れの国内線でしょうか。あとで聞くとC滑走路での着陸もしていたようで、てんてこ舞いの様相です。

タキシング先は59番ゲート。これで69番とか54番だったら致命的でしたが、59番ならほぼベストです。
最後はかなりのリカバリーショットという感じですが、金曜夜の763での満席便、上級会員も半数以上(神戸空港の優先搭乗時の実見)ですから、「最終が出てしまいました」という際のフォローが大変ということでしょうか、優先的に突っ込ませた感じです。

公式の到着時刻は23時9分ですが、降機開始は15分頃でしょうか。到着ロビーに出ると23時17分のエア急がちょうど出たようで、次は28分発のエア急。モノレールは24分の普通に28分の空港快速とあり、浜松町先着は28分の空港快速です。

取り敢えず国際線ターミナルに急いで津田沼リムジンを試します。もし間に合わなければ品川か浜松町に出て、秋葉原経由でも総武線最終には乗れるので気は楽です。

モノレールの駅で国際線ターミナルまでの所要を聞くと5分とのこと。これなら24分のモノレールのほうが早そうです。
ところがホームに出て仰天。7分かかるじゃないですか。快速と勘違いしていたようですが、これは困ります。31分に到着ならもしリムジンが35分発ならアウトです。

駅ではリムジンの時刻は分からないとのこと。改札前の案内所もてんてこ舞いで、カウンターの時刻表が6月号と10月31日改正の情報が全く期待できない様子は困ります。取り敢えずモノレールに乗って京成バスのサイトで確認したら45分発とのことで、ここでようやく安心しました。

空港快速が浜松町先着ゆえガラガラの普通ですが、新整備場からは交代勤務の明け番なのか大量の乗車。そして乗客が待つ国際線ターミナルに到着しました。

意外と改札回りが狭いな、と思いつつ改札を出ると、リムジン乗り場が分かりません。
ここでモノレールからリムジン乗り継ぎはまずないので当然と言えばそれまでですが、案内があるに越したことはありません。
通路の表示を見ると「路線バス」とあり、蒲田あたりへの一般バス?と思いましたが、乗り場への階段に各方面の案内があり、ここがリムジン乗り場と判明。国内線のように「リムジンバス」の表示が欲しいところです。

ここでチケットを購入しないといけないことに気がつきました。慌ててターミナルに戻ると幸いチケットカウンターはモノレール改札のすぐ脇。
予想されたことですが空席ありで、購入して乗り場に向かいますが、ターミナルを出ると左モノレール、右京急で、正面にエレベーターがあり、リムジンはその裏手の通路と、動線、視線的には分かりやすいとは言えない構造です。

国際線ターミナルのリムジンバスチケットカウンター

乗り場は5番。国内線は1タミ2タミとも6番ですからちょっと違います。
乗り場にはちょうど40分発の行徳・市川行きがいます。後方6番には西船橋・船橋行きの京急バスが。いずれも国内線に寄らない直行便で1桁後半といった入りです。

市川行き発車のあと、45分の津田沼行きが到着。京成車です。
10人弱の乗車で、国際線利用らしき人がメインの反面、国内線遅延の影響で流れてきたような人も。
テープの放送が出発時に流れませんでしたが、直行便の用意が無いのでしょうか。津田沼到着時には流れてましたから。

津田沼行きの到着

バスはA滑走路の下をくぐるトンネルからR357に向かうと思いきや、空港西ランプに回り、昭和島から東海への渡り線経由で湾岸線に入りました。大回りに見えますが、国際線から空港中央ランプへは環八通りを回り込むか、トンネルから2タミ→1タミ経由しかなく、R357に入ると次は大井南ランプ(大井本線TBの横)なので、実はこれが最速のようです。

湾岸線の交通量が案外と多く、湾岸習志野から京成津田沼着は1分延の0時26分。湾岸習志野を出てからの信号待ちが比較的少なかったことを考えると、浜田や香澄での信号待ちに引っ掛かれば0時半頃の到着もあり得ます。
今回は31分の新京成最終に間に合いましたが、絶対に大丈夫かというと怪しいところですし、定時でも預け荷物があると厳しいです。同じ鉄道連絡でも37分の最終通勤特急佐倉行きは大丈夫でしょうが。

なんとか間に合った...(京成津田沼)


●特殊なケースとして諦めるべきなのか
今回の遅延はAPECの首脳到着と重なったという特殊事情でした。
しかし、航空会社の事前のアナウンスとしてはAPEC対応として、空港アクセス(リムジンバス、自動車)への影響と、保安体制の強化によるセキュリティ通過にかかる時間の増加しかなかったわけで、まさか航空便そのものに影響が出るとは思いませんでした。

そもそも「テロとの戦い」以降警備が厳重になっているなか、市民生活への影響が多大な大都市圏でのこうした国際会議の開催をすべきかという問題があるわけで、洞爺湖サミットのような人里離れた影響の少ない地域で開催すべきでしょう。

しかも今回は、羽田空港の発着に事前の予告なしに影響が出たわけです。
金曜の夕方以降という1週間でも一番混雑する時間帯。それも客単価の高いビジネス需要が太宗を占める時間帯に大きな影響が出たわけです。私が乗った便も763(270人乗り)が満席(厳密にいえば最終的にキャンセルらしき数席の空席は出た)、かつ上級会員が多数という状況ですし、関空行きのSFJの最終MQ029/NH3829便は機材繰りがつかず欠航し、ANA運航の最終NH975便は定刻21時発が2時間近く遅れて23時前の出発となり、関空着は0時50分頃と、金曜の最終便という状況でこの結果は悲惨の一言に尽きます。

百歩譲ってこういう事態もあり得る、というのであれば、やはり必要なのは地上側のフォローです。
以前乗った関空着最終便が遅延した際、関空の到着ロビーに航空受けで待たせているリムジンの時刻と乗り場を示した看板がでてましたが、今回のケースではリムジンバスのきっぷ売り場に漫然とこの後の国内線ターミナルから出発する便を表示するだけでなく、国際線ターミナルから出る直行便情報を張り紙で良いから出すべきでしょう。
京急やモノレール、連絡バスだけでなく、タクシーで移動してでも乗りたいと言う人はいるでしょうし。

さらに進めて、直行便をこういう異常時には国内線始発として臨時延長することも考えられます。目的地到着時刻は動かせませんから、2タミ→1タミ→国際線の順で運行し、国際線発の15分前に2タミを出るイメージです。これならモノレールなどでの移動時間を考えると互角ですし、本当は定期化して欲しいものです。

最後に津田沼リムジンですが、京成津田沼での「接続時間」の短さは残念です。いっそ5分羽田発を繰り上げる(市川行きと入れ替えてもいいのでは)とか、逆に新京成の時間を繰り下げるとか、早朝深夜に確実にいるというか目立つ乗り継ぎ客をさらに取り込む努力が必要でしょう。
これなら23時40分発の西船橋行きリムジンから東葉高速への乗り継ぎのほうが便利であり、東葉沿線以外でも北習志野などからタクシーという方が実用的というのが利用してみての結論でした。





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